数分前図書館を脱出した僕は無事入り口まで戻ることができた。次は行ってない方向に進んでみることとする。
「……しっかし、広すぎるな。それなりのスピードで走ってる筈なんだけど」
少しばかり愚痴ってみる。
ここの主さんには申し訳ないけど、流石にこの広さは無駄だろ。僕みたいな方向音痴からしては迷惑極まりないよ。
……いやでも、暮らしてる人が多いのかな。それなら仕方ないのかも……
「……広すぎて悪いわね」
「!」
声が聞こえれば戦闘の合図。
刹那、僕の周りをナイフが覆った。
勿論、当たれば致命傷は免れない。素早く剣を出現させできる限り弾く。しかしそれは一方向の物のみ、他方向のナイフを軌道を変えることなく、僕の背中や足に突き刺さる。痛みに耐えかねて、僕ってよくダメージ食らうよなぁと場違いなことを考えてしまった。
「くっ……!」
ない頭で次の行動を考え、跳躍。相手を視認していない状況で攻撃を受け続ける訳にはいかない。距離をとらなければ。バックステップ。
「が……!」
しかし、再び背中に激痛。
首を回して背後を見れば、銀髪メイド服の少女が僕をナイフで刺していた。口に血が入ってきて、不快感を覚える。
メイドさんは僕に、冷たい目で言った。
「先程侵入者を一人逃がしたのよ……もうなりふり構っていられない。お嬢様のためにも、貴方には死んでもらうわ」
拝啓、天国のお父様とお母様。
幻想郷って、弾幕ごっこっていう不殺のルールがある筈なのにとても物騒です。
「い、やいや。流石に物騒じゃないですか、メイドさん。僕、まだ死にたくないです……よっと!」
軽い足払いをかけて体勢を崩す。メイドさんはナイフから手を離し地面に手をつこうとしていたので、咄嗟に距離をとり傷を消す。
工程が終わった頃には既にメイドさんは立ち上がりナイフを構えていた。仕切り直しだ。
メイドさんは後ろに跳ぶように足を少しずらして。
「……!?」
瞬間、メイドさんはその場から消えていて、代わりに大量のナイフが僕めがけて飛んできた。先程のように剣でうち払い、メイドさんを探す。
僕の真上辺りにいたかと思ったら横に、代わりにナイフ。僕の横にいたと思ったら後ろ、代わりにナイフ……というローテーションをメイドさんは繰り返していた。
「(……種が解らない。彼女は瞬間移動のようなことを繰り返している。瞬間移動と言い切ってしまえばそれまでのことだけれど、正直あんな数のナイフを誤差なく移動させるなんてことは僕だって不可能だ。ならどうやって……?)」
結論が浮かび上がらない。兎に角、そのまま避け続ける。
「くっ!ちょこまかと……!」
メイドさんが呟く。少々苛立ってきているようだ。これで少しは戦い易くなってくれるといいんだけど……そう簡単にはいかないか。ナイフは変わることなく、大量に飛来してくる。不味いな、このままじゃ。
「いっ……!」
とうとうカスり始めた。これはダメージ覚悟の特攻をすべきか。……ええぃ!
「らぁぁぁああ!」
【ナイフがこの場にある事実】を反対に。そのまま蹴りを叩き込むべく、跳躍した。
「……!?くっ!」
しかし迎撃がくる。一本のナイフが僕めがけて飛来。足に突き刺さった。だけど、ここで止まってはいられない、今が最大のチャンス。
そのまま蹴りを入れる!
「ぐっ!?」
無事、命中。メイドさんは墜落する。気を失ってはいないようだが、これでほぼ勝ちは確定だろう。僕はナイフを抜いて、メイドさんに近づいた。
「ぐ、うぅ。お嬢様、申し訳ありません……。……殺しなさい」
……なんでこう、物騒なんだろ幻想郷。不殺のルールあるんだからそれやろうよ……。
僕はとりあえず返答した。
「いや、なんでそんな物騒なこと言うんですか。殺しませんよ。寧ろ傷治しますよ」
そう言った直後に能力でメイドさんの傷を治療。これでさっきまでの戦闘の傷はなくなっただろう。流石に襲われるのは嫌なので、動きは封じたけど。
「!?な、何故!?」
「いや、人殺しとかできませんって。殴るとかはともかく。兎に角、僕は行きます。ではでは!」
「な、ちょ、待ちなさ、な、なんで動けないのよ!?」
後ろで騒いでる気がしたけれど、まぁ仕方ない。無視して走り出した。
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「うひゃひゃひゃひゃ!最高だぜ!最高にハイってやつだぜ!」