「さて。異変も解決したことだし、紫に報告するわよ」
「ちょっと待ったっ」
博麗さん(というらしい)が急に呟いたものだから、思わず待ったをかけてしまった。博麗さんと霧雨さんは「?」と疑問符を浮かべながら僕を見ている。
で、長考する訳だが……果たして会って大丈夫なのかな?いや、ここに来た以上避けられない訳だし会ってもいいよな……。うーん。でも僕、一応死んだことになってるしなぁ。いや、もう考えてても仕方ない。いいや。
「ごめん。やっぱなんでもなかったです。どうぞ」
「……そう?じゃ、呼ぶわ。紫!」
博麗さんが叫ぶと、僕らの前に存在する空間が裂けた。中から懐かしい奴が出てくる。何故か煎餅を持っていた。
紫はくぁぁっと欠伸をして、博麗さんと霧雨さんに目を向けた。
「霊夢、魔理沙。異変解決お疲れ様。予想以上に早く終わっ……」
「?紫、どうしたのよ」
紫が僕の方を向いてフリーズした。手に持った煎餅もそのとき落とし、勿体ないっ、と博麗さんが拾っていた。
とりあえずどうしようかと迷ったので、僕は右手を顔の横にもってきて。
「お久!」
と言った。紫はもちろん、僕との再開を喜ぶように泣き出して……。
「何がお久よっ!?」
なかった。博麗さんと霧雨さんは終始混乱していた。僕はとりあえず、博麗さん家の神社にでも帰ってから話そうと提案。提案は受理された。
◆◆◆
「あんたは今まで何してたの!皆心配してたのよ!?」
「痛い痛い!や、やめて!僕が悪かったよ!というか、まず説明をさせて!」
「「((……状況が掴めない……))」」
博麗神社に来た僕は、現在紫に襟元を掴まれぶんぶんと縦に振られていた。首が痛い。僕の心中を察したのか、ようやく紫は襟元を放し話を聞く体勢になってくれた。僕ははぁ……とため息をつきながら語りだす。
「――と、まあそういうことだよ」
「ちょっと言わせてもらっていいかしら?」
「どうぞ」
紫はにこーっと笑いながら言った。
「……いっぺん、スキマん中で反省してこいやぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
僕の足元に突如スキマが発生。咄嗟に手で耐えるが、頭部に何者かの拳骨が飛来(十中八九紫だろうが)。僕は激痛に悶え、スキマの中に落ちていった。
「……ねぇ、あれ、いいの?」
「ふふ、いいのよ。さぁ、宴会の準備を始めましょうか」
「「あっはい」」
◆◆◆
スキマの中に落とされて数時間が経過した。さっさと出たかったのだが、能力が封じられていたため不可能。恐らく、紫が能力が使える境界をいじくったんだろう。全く。
「することがないよ……。早く僕を解放してくれ……」
虚空に向かって呟く。返事はこない。紫の『いっぺん』って、時間に換算するとどれほどなんだろうか。もうそろそろ勘弁していただきたい。
はぁ、とため息を漏らすと、首筋に鋭利なものが触れ、拘束された。
「……んぇ?」
「お前は何者だっ。何故この場にいる!」
凛々しい女性の声が聞こえたかと思えば、それは脅し。
対抗でもしようか……とも思ったが、よく考えれば今、僕の戦闘能力は結構下がっている。僕が気配すら感じとれずに近づかれるってことは、かなりの実力者だろう。つまり、大人しく従うしかない。……頑張ればいける気もするけど、危険を犯す必要はない。
「えーと、僕は黒橋 想也っていいます。紫にスキマへ落とされたため、ここに居ます」
「……?そうか、お前が先程大結界を破った侵入者だな!既に紫さまが動いていたか」
「いや、それは違いますよ」と口に出かけたが、その表現があながち間違ってないので、否定が出来なかった。
よく考えれば、能力を行使すれば簡単に抜けられたじゃないか。何故強行突破したし、僕。
「ふむ。ならば私が見張っておく必要があるか?紫さまに確認をとってくるとしよう。黒橋。大人しくしていろよ!」
「あ、はい」
拘束がとかれる。結局誰だったのか視認しようと後ろを向いたが、既に女性は居なかった。
男ーー黒橋から情報を聞き出した私は、スキマを行使し紫さまの元へ出た。
紫さまは私に気づいたようで此方を向く。私は素早く紫さまに近づいた。紫さまが私に聞く。
「藍。宴会の誘い、終わったかしら?」
「はい。無事完了しました。それとその際、黒橋 想也という男をスキマの中で発見しました。なんでも紫さまが捕らえたようで。流石です」
返答をすると、紫さまは「あ」と呟いた。
「?どうしたんですか?」
「……想也なんだけど、連れてきて頂戴」
「え?あ、はい」
紫さまの命を遂行すべく、私は再びスキマを行使し、黒橋をこの場に落とした。黒橋はなんだなんだ、と慌てている。
「って。紫じゃないか。随分手荒なまねしてくれるじゃん?」
「……今、あんたは能力使えないのよ?私に戦いを挑んでも、負けるのがオチだと思うけれど」
「なめるなよ。僕は能力がなくてもそれなりに戦えるよ。……自信ないけど」
と思えば、黒橋は紫さまと口論を始めた。この人間は一体なんなんだ?見たところ普通の人間と変わりないが……。
「紫さま。黒橋は何者なのですか?先程大結界を破ったのはこいつのようですが……」
私の問いに、紫さまは「あら?言ってなかったかしら」と言った後、私に黒橋の正体を告げる。
「『西行妖』……話したわよね?想也は、昔『西行妖』が暴走した際に封印して、死んだ人間よ。今はなんやかんやで生き返ったらしいけど」
「……えっ?えぇぇぇぇぇええ!?」
私は思わず、自分が出せる限界ほどの大きさの声で叫んだ。