東方事反録   作:静乱

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 ※キャラ崩壊注意。


STAGE-3 狂い始めた関係

 衝撃により起こった爆風から抜けると、そこは空中。蒼い蒼い空に輝く太陽。今日も爽やかな、良い天気である。

 

「……なんで空を見た感想語ってんだよ」

 

 ピンチの時にまず周囲の確認してその感想的なものを語る癖、……これ、直した方がいいな。

 さて、とりあえず難を逃れるべく、空を飛ぼうとする。

 

「……空、どーやって飛ぶんだっけ」

 

 継続は力なり、っていうのはどうやら本当のようだ。そりゃ、何ヵ月も空飛んでなきゃ、駄目人間の僕は飛び方忘れるよね。ざっけんなオラ。

 駄目人間僕はそのままの勢いで空を仰ぐ。山の上の方に進んでいるようだ、下に白狼天狗が見える。どうやらここは妖怪の山のようだな。そういえば、『山』とアバウトに言われただけで、どこの山かは説明されていなかった。そうかー、妖怪の山かー……。

 

 ……妖怪の、山?

 

「……え?」

 

 ご都合主義のように、気付いた時には、もう遅い。

 下に見えるは天狗達の住む大きな屋敷。一時期僕が居た場所。今も構造は頭に入っている。いや、そんなことはどうでもいい。今問題なのは、『射命丸 文』という存在に遭遇すること。

 文は情報を集めるのが得意だ。なにせ、(内容は度外視するとして)新聞を独自で作り、発行しているほどなのだから(売れてるかどうかは再び度外視して)。天狗の屋敷に入ってしまえば、遅かれ早かれ、文の耳にも届く。

 

 ……彼女だって、気まずく思ってる筈だ。いや、気まずいなんてレベルではないかもしれない。だったら会いに来るなんてことはないだろうが……しかし、来ないとも言い切れない。確信を持てない。

 

「……一体どうすればいいんだ……」

 

 空中を進みながら呆然と空を見つめる。ていうか、ぶっちゃけ会いたくないのだ。いや会いたいけど。会いたくないけど会いたい。けど。

 けど、だ。

 何を言っていいか分からない。何を話していいか分からない。僕は彼女どう接すればいい?

 

 それこそ開き直って、恋人のように接すればいいのか? ……それで何になるっていうんだ。

 本当に愛している訳でないのに、そういう風に接したところで、逆に彼女を傷付けるだろう?

 

 なら、いつものように明るく接すればいいのか? どうやって?

 僕はそこまでポジティブシンキングな奴じゃない。明るく文と話そうとしたって、どうせ言葉が見つからない。それ以前に、できたところで根本的な解決にはならないだろう。

 

 つまり、僕の思い付く限りでは八方塞がり。とりあえず悲鳴でもあげてみるか。ははは。ははははは。

 

「……誰かっ、助けてぇええええええええええええ!!」

 

「侵入者が助けてとは、滑稽なものだな」

 

「……うへぇ、天狗さん……」

 

 悲鳴を上げたおかげか、見張り天狗さんが僕に気付き、屋敷に落ちる寸前で受け止められた。……と同時に拘束される。

 

「何をするだぁー、許さんー」

 

 棒読み。

 

「随分と感情の込もっていない言葉だな。

 ……何をするもなにも、俺は俺の使命を実行しただけだ。侵入者を止め、拘束し、殺すという使命をな」

 

 そう言って、手に持った大剣を僕の首に突き付ける天狗さん。これなら悲鳴を上げなかった方が幾分良かったか。助けを求める悲鳴を上げて死にそうになるってどういうことなんだよ。絶対可笑しいだろ。

 頭の中だけは達者な思考回路だな、僕は。口に出すこともなく、困ったときは心の中へ逃避して、本当、臆病で駄目な奴だ。

 

「ではな。恨むなよ」

 

「がッ……お、げがっ……」

 

 僕の首を貫く大剣。そこから噴出し滴る血液。喉が熱い、終わらない激痛。飛ばない意識。

 早く飛べ。飛んでくれ。次起きた時には回復できてるんだから、早くしてくれ。早く。

 早く。

 早く早く早く早く早く早く早くはりぃはりぃはりぃはりぃはりーはりーははりーハリーハリーハリーハリーハリーハリー。

 

 ハリー。

 

「……げ、がぁ……。し、げぼ、ねな、がべぐが、いや、ごぼっ」

 

 気持ち悪い発音だなぁと呑気に構える。喋る度に激痛が走ったが、どうせどうしようもないから気にしないことにしよう。壊れた頭。今なら文とも話せそうだ。

 

「……! お、まえっ! 何故、生きてるっ」

 

 剣を抜いてから聞け、とジェスチャーで表現する。天狗さんは僕が怖いようで、大人しく剣を引き抜いた。

 

「……ごほっ、げほっ。全く、随分と手荒な真似してくれるよなぁ。ぼくでなくちゃ死んでたぜ?」

 

「……お前は何者だ! 人間の姿を模した、何か違うモノなのか!」

 

「おいおい、ぼくに対する謝罪はねーんだ?」

 

 やれやれ、と肩を竦めるぼく。とりあえず親睦を深めようと、ぼくは彼ににじりよった。

 一歩。

 

「っ! く、来るなっ」

 

「なんで? ぼくは人間、君は天狗。恐怖を覚えるのは、ぼくの立場だろう?」

 

 ぼくは君と仲良くなりたいだけなんだよ。天狗と友達になれるなんて滅多にない。まぁ、既に何人もいるんだけれどね。

 二歩。

 

「~~っ!! 違うっ、お前は人間じゃない! 化け物だ!」

 

「化け物? 違うね、ぼく……おや、完全に乗っ取れたようだよ。『ボク』は……  だ」

 

「……  ……だと……?」

 

 この天狗さんは幸運だね。『ボク』の正体を一番最初に聞けるだなんて。モブの割にはいい仕事してやがる。

 さて、最後の三歩目。にっこり微笑む。

 

「ひっ」

 

「それじゃ、これからヨロシクね。天狗さん」

 

「止め……」

 

 さようなら、天狗さん。

 ざくっ、ぐしゃ、ごきり、ぶちっ。グチャ、グチャ。うは、返り血うぜぇ。

 

 

 

 

 

「うぇ、気持ち悪。あの天狗さん最低だな、血ぃぐらい抑えろよ……ん?」

 

 数分後、血塗れの身体にうんざりしていたら、視界に移った奴が居た。射命丸 文、『僕』の悩みのタネの一つ。

 ……それにしても、あの恐怖のような怒りのような悲しみのようなよく分からない表情はなんだ? あ、この身体、『僕』のなんだった。大好きな『僕』が殺人……いや、殺妖をしたっぽいんだ。そんな感じになるだろう。

 仕方ねぇなぁ、この辺りも『ボク』がどうにかしとくか。

 

「よう、文」

 

 いきなり目の前に現れた『僕』の姿に、文は驚愕する。

 

「!? そ、想也さ……。……それはなんなんですかっ! そんな血塗れになって、怪我でも……」

 

「おいおい、分かってるだろ? 文は見てたじゃないか、全てを。『ボク』はあの天狗さんを引き裂いたんだ。ぐちゃぐちゃに、滅茶苦茶に」

 

「ーー!!」

 

 『ボク』のふざけた態度に仲間を殺された怒りが遂に抑えられなくなったか? 文は弾幕を放とうとする。当然させる筈がない。

 

「っ!? ……腕、がぁ……っ!」

 

「『僕』の能力はなんでもできる能力だ。知ってるだろ? 【文が手を拘束されていない事実】を反対にすれば、ざっとこんなものさ。文程度がどうこうできる訳がない」

 

 文の表情が恐怖と憎悪に満ちる。それと同時に、軽蔑の視線も。仲良くいこうよ。人間、このくらいのこと気にしてちゃ友達なくなるぜ?

 

「な、んでこんなことっ! 貴方は、想也さんは、そんなことする人じゃない……!」

 

「そうだな。『僕』はこんなことする奴じゃねぇよ。だけれど、現に『ボク』がこんなことをしているんだよ。

 『僕』は『ボク』、『ボク』は『僕』。『僕』がやったことは『ボク』のやったことで、『ボク』のやったことは『僕』のことだ。わかる?」

 

 歪んだ笑顔を浮かべて。

 文に説明してあげる。

 『ボク』って優しいね!

 

「……意味が分かりませんっ! もう、嫌、お願いだから、元に戻って……!」

 

「元に戻る? それはもう少し後だな。折角だ、『僕』がお前に言えないこと、『ボク』が言ってやるよ」

 

「止めてください! 聞きたくないっ、聞きたくないっ……!」

 

「手が動かないんだから聞けない訳ねぇだろ。耳元で、それが心の奥底に焼き付くまで、何度でも言ってあげるから、感謝しろよ?」

 

「いやぁっ!!」

 

 もがく文。嫌だ、聞きたくないと、目尻に涙を浮かべ。恐怖に顔を歪め。いつもの想也さんに戻ってと、優しい想也さんに戻ってと、泣き叫ぶ。

 ま、どーでもいいけどー。

 

 

 

「知ってる、文。『僕』はな? 多々良 小傘が好きなんだよ」

 

「ーー!! ……や、めて、くださ……」

 

 耳を塞ごうともがく。無駄。

 

「やーめない。でな、文のことは、ただの友達にしか思ってないんだ。時と場合によってはうざい人とも思ってる」

 

「……やめて……! そんなこと分かってる……。私が想也さんに迷惑かけてるってことは分かってるから……。お願いだからこれ以上、私を追い詰めないで……」

 

 衰弱していく文の精神。気にしなーい。

 

「それでな? お前、多々良 小傘が憎いだろ? 『僕』が愛している多々良 小傘を、文の大好きな『僕』を取っていった多々良 小傘を」

 

「そんなこと……、そんなこと……!」

 

 自分の気持ちを否定する。素直になれよ、文。

 

「いいかい文。『ボク』は君を応援してるんだぜ。文ルートもありだと思うからな。欲望を解放しろよ。そうすればきっと、『僕』を……黒橋 想也を、自分のものにできる。魅力的だろ?」

 

「違う……! そんなの、そんなのは違う……!」

 

 まだ拒否するのか。普通なら折れてもいいくらいなのに。

 もう一押しくらいでどーにかなるかな? そうだ、面倒だし、『僕』の真似でもしてみるか。

 

「『文。大好きだよ』」

 

 ふわり。

 『僕』っぽい声ーー暖かい声で。耳元で愛を囁く。ふわりと、優しく抱きしめてやる。

 

「『君の全てが大好きだ。性格も、綺麗な髪も、身体のパーツも、全部大好きだ』」

 

「……あ。いつもの、想也さんだぁ」

 

 弱くなった心は、一つ。小さな飴をやるだけで。それが『偽者』だったとしてもーー『裏』だったとしても、登場が明らかに不自然でも、簡単に折れる。

 

「『よし、よし』」

 

「あぁ……! 優しい、いつもの、想也さん。私の、大好きな、想也さん……」

 

 完全に安心しきった声で、甘えるような声で『僕』を呼んで、安らかに寝息をたて始める文。あららぁ、随分簡単なことだったねぇ。楽勝過ぎて笑っちゃうぜ、ははは。

 

「……これで文は、『僕』を求め始めるだろう。文ルートの準備は着々と進んでいるよ。ドロドロの三角関係の始まりだぜ」

 

 ……さて、じゃあ、今日の『ボク』パートはここまで。ばいばい皆、きっと次『僕』が目覚めるのは、霧雨と合流する直前だろうよ。

 

 

 

 

 

 

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