DIOの娘がSCに混ざってお父様に会いに行く話 作:チョモランマ
初めて感じたのは、柔らかく暖かな感触だった。
生まれたばかりだからか、ぼやけている視界。その中央に写ったのは、黒い髪に青い瞳の女性。それが私の母だった。
「ほら、あなたにそっくりの黄金色の色彩の子よ」
「…ずいぶんと私の血が濃く出たらしいな」
「抱いてみる?」
「興味はないな」
「あら、そんな言い方。 …ほぉら、この人があなたのパパよ」
声しか聞こえなかった男の姿が見える位置に移動させられる。依然としてはっきりとしない視界に入ってきたのは、黄金色の髪に、黄金色の瞳を持つ大男だった。
彼はつまらなそうにしていたが、それはきっとポーズだ。
体はこちらを向いていて、その口ぶりほど冷淡な心持ちであるようには見えなかった。これが私の父だった。
「興味があるから作った子供でしょう?」
「私が興味があるのは、君と私の血を引く子の存在そのものだ。我が子との触れ合いなど望んでいたわけでは…」
「本当にその程度の興味しかないのだったら、今ごろあなたはここには居なかったでしょう」
「………」
「大丈夫よ」
戸惑う様子の父に対して、母は私の身体を差し出した。
視界がぐいと動いた。
「あなたが思っているほどこの子はわけがわからない存在ではないし、あなたが少し触れたくらいのことでこの子はこわれたりはしないわ」
しぶしぶといった様子で私を受け取った父の腕の感触は、先程に比べればいくぶんか固いけど、やはり暖かかった。
「………」
父は難しい顔をして私を覗き込んでくる。
「生まれたての赤子を見るのは初めてだ。ましてや、触れるのは…」
頬に何かが触れる。父の手だろう。
「…飛び出した目、歯のない口、シワっぽい顔。なんと美しくない生き物だ」
「ひどい。女の子なのよ?」
そうか。私は女の子なのか。
私は自分の手を持ち上げて、頬に触れるものを掴んだ。やはり父の手だった。それはとても大きくて、右手をいっぱいに使っても指の一本を握るのがやっとだった。
父はピクリと眉を動かした。
「……不思議な感覚だ」
「不思議な?」
「私の手の中にあるこの生き物には、無限の"可能性"があるように感じる。どれだけ大きくなるのか。どれだけ強くなるのか。善悪、どちらの道を選ぶのか。あるいは、そのいずれにもなる前に幼くして命を落とすのか……! それを思うとたまらなく不思議な感覚になる…!!」
父の言葉に母は、ふふ、と笑った。
「それは親の心というものよ」
「そうかな…」
腑に落ちないような父から、母は私を受け取った。父の指を掴んでいた私の手もほどけた。なんだか、とても名残惜しかった。
「それで、名前は考えてきてくれた?」
「いや…男だとばかり思っていたからな」
「もう、どちらかなんてわからないじゃない。それじゃあ、今決めてよ」
「ふむ……」
「ふふ、こーいうのは"フィーリング"で決めればいいのよ」
無責任な母の言葉である。
父は、少しの間考えた後、おもむろに口にした。
「『ドリス』」
口にしてから、父は少し「違ったかな」というような顔をした。この頃には私の視界はもうかなり鮮明になっていた。
「Doris! いい名前じゃない」
「いや、待て。これは口当たりを確かめてみただけで」
「いいえ、この子はドリス。最初に発せられた言葉には重みがあるのよ。うふふ、いい名前をもらったわね、DOLLY(ドーリィ)ちゃん」
でも…、と母は続けた。
「苗字はどうしましょうか。私のものと、あなたのもの、どちらを名乗ればいいかしら?」
「名前はもう決まりか…」
諦めたように呟いた父は、母の問いに答えずに、ふいにどこか宙を見つめた。その目は、遠くを見ているかのようだった。
そして母に向き直る。その瞳はやはり黄金色だった。
「私は何者でもない。単なるディオさ」
その子には君の「一条」という苗字をあげるといい。父はそう言った。
その背後には、黄金色のオーラを纏う機械生命じみた「何か」…いうなれば「戦士」が立っていた。
そいつの名を私はなぜだか知っていた。
"世界"ザ・ワールド