DIOの娘がSCに混ざってお父様に会いに行く話 作:チョモランマ
今回主人公が自分の超能力にピンポイントで「スタンド」って名付けたのとか、スタンドに関する考察で正解ばかりを引き当てるのはちょっと強引ですが、その辺を丁寧に描写しようとすると、別に面白くもない話を長いことしないといけなくなるので省略します。どうかご容赦ください。
この祥子・ドリス・一条には超能力が備わっている。
これは大変特別なものである。しかし、私固有のものというわけでもない。
この世の一部の人間には、この超能力を開花する才能のようなものがあるらしい。強靭な意思や、強烈なこだわりなど、何かしらのパワーが強い人間ほどその才能を有しており、その性向にふさわしい特殊な超能力を得るようだ。
ちなみに、この超能力を有していると他者と会話する際に言語のギャップをある程度解消する効果があるようだ。私が生まれた時から両親の言葉を理解していたのは恐らくこのためだろう。(らしい、ようだ、というのは、私以外に超能力を発現させた人間を見た事が無いからだ。才能を持つ人間自体は身近にそれなりにいるのだが、その像(ビジョン)を視認できる人間すら未だに出会ったことはない…)
私はこの超能力に、「スタンド」と名付けた。始めて見たスタンドの像が、お父様の傍に寄り添って立つ黄金の戦士だったからだ。
高校生活は想像通りのものだった。
私の進学した学校は学力が低く、そして非行少年が多い。
学校には、喧嘩の相手を病院送りにして長期入院させるとか(承太郎のことだ)、気に入らない料理を出したレストランのコックの胸倉を掴んで500円玉を投げつけて帰ってくるとか(承太郎のことだ)、そういうのを貴ぶような、ケチなアウトロー気どりが山ほどいる。
学問ができる環境ではないし、部活動はろくに機能していないし、見るべき人間が一人も居ないとまでは言わないがそれも私に利益をもたらすほどではなかった。
しかし、それ故に私には自由になる時間がたくさんあった。この時間は、私にとって有益なものだった。
退屈な授業の時間。
妙な髪型の生徒が数人歩き回り、後ろでボードゲームに興じているものも数人。がやがやとした雰囲気に、教師もやる気が無い。
(ちなみにこの連中が授業を受けるつもりが無いのに学校に来ているのは、留年をしたくないからだ。これだけ好きなように振る舞っておいて留年は嫌だというのだからみみっちいものである。大っぴらに悪事を働くならば、報いを受けて地獄の底まで落ちる覚悟を決めるか、あるいは全てを思うがままにできる悪の帝王にまでのし上がるような決意をもってするべきではないか? さもなければ、私のようにうまくやるべきなのだ)
…さておき。こんな環境では、私が少々不自然な動きをしたところで誰も気付くことはない。
私の身体に隠れた机の中では、一人でに鉛筆が高速で動き、教室内の人間の似顔絵を量産していた。私以外には認識できないが、そこには物質を透過できるスタンドがいて、鉛筆を握っているのである。
黄金の戦士「ザ・ワールド」。お父様のスタンドであり、大事な私のスタンドだ。
彼について説明する前に、私自身の持つスタンド能力について説明しておく必要があるだろう。
まず、私のスタンドは「金の錫杖"ゴールデン・ワンド"」という。これは私が名付けた。スタンドの像は、その名のとおり金色に輝く宝飾品のようなワンドである。
能力は「ワンドで接触した相手のスタンドをコピーする」こと。
生まれつきこのスタンドを発現していた私は、生まれたばかりでお父様に抱き上げられた時、無自覚のうちにこの能力を発動していたらしい。つまり、あの時お父様の傍に見えたスタンド「ザ・ワールド」は、私がお父様からコピーして作り上げた私自身のスタンドだったということだ。まだスタンドに目覚めていない相手からもコピーできるからこそ、私は自分以外のスタンド使いを知らないにも関わらずそれが己のみが持つ能力ではないと知ることができた。
最初は1つしかコピーしたスタンドを保有できなかったが、15年間の修業の末に、現在では3つまでストックすることができるようになった。もちろんそのうちの一つは生まれた時から変わらずお父様の「ザ・ワールド」だ。
「ザ・ワールド」は私の知る限り最も素早く精密で力強い、しかも多少私から離れても活動ができる素晴らしいスタンドだ。しかも、このスタンドは他のものよりも圧倒的に私に「馴染んだ」。
そもそもスタンドとはいわば精神の具現であるからして、本人に適したものが発現するものだとこのドリスは考察している。それを考えれば、人のスタンドを私が急に手に入れたところで使いこなせるわけがないし、ものによっては全く扱えないことだってあるはずなのだ。
しかし「ザ・ワールド」はそんなハンディキャップを感じさせないほどに私にとって扱いやすいスタンドだった。この事実は、私とお父様との間に確かな絆があることを感じさせた。
私が考え事をしながらスタンドの精密動作の訓練をしているうちに、授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
「……っと、チャイム鳴ったし終わりにするか。号令ー」
だらだらと教壇で話していた教師は、その音が聞こえるやいなや話を中断して号令を促した。生徒達は起立の号令がかかる前に立ちあがり、日直の早口の号令は椅子がひかれる音でかき消されたまま、なんとなく煮え切らない感じで授業は終わった。いつものことだ。
それから少し間をおいて、同クラスの女子が近づいてきた。中学校の頃から親交のある馴染みの顔だ。昼食の誘いだろう。
「祥子、今日も弁当?」
「うん、そうだよ」
ちなみに私は日本では基本的に一条祥子と名乗っている。
私に最初に与えられた名はドリスだが、両親がいろいろ話し合った結果、私にはもう一つ日本人名である祥子という名前も与えられた。ドリスはミドルネームになり、私は結局「祥子・ドリス・一条」になった。
母はアメリカ人であったが、苗字から想像できる通り日本人とのハーフである。名前はアンジェリカ・一条という。私自身はイギリス2、アメリカ1、日本1と、一口には表現が難しい血が流れていることになる。
ところでイギリス2をくれたお父様だが、彼は私が生まれて1年後に失踪している。母子二人だけとなった私たちは、それから数年後に母の父方の親戚を頼って日本に移住したのだった。
母は私に決して言わないが、お父様は吸血鬼という超常の存在であり、それなりの悪事を働く者だったようだ。そしてそれゆえに、いずれお父様は私たちを置いてどこかへ消えてしまうのだろうという認識が、当初から夫婦ふたりの間で暗黙のうちに共有されていた。「一条祥子」という日本人名は、まさにその時のために私に与えられたものだった。(1歳の子供がまさか二人の会話と機微をここまで理解しているとは両親も思わなかっただろう)
私もまた、アメリカで2番目に手に入れたスタンドを用いることで少しずつお父様譲りの金髪金目を黒く変えていった。このスタンドの詳細もまたいずれ紹介するが、とにかく、体色を多少変えるだけのことなので必要なスタンドパワーはほぼゼロであり、私はこれを常に維持している。
日本で生活する都合により甘んじて黒髪黒目となっているが、これを解除したら、私は未だにお父様と同じ金髪金目のままだ。
友人はへらへらと笑う。
「祥子は高校に入ってもマメだねぇー。毎朝早く起きて弁当作りとか、アタシ絶対耐えらんない」
「そんな大したことじゃないよ。確かにちょっと作ってはいるけど基本的には昨日の夕飯おかずだしね」
私は卒業後の海外への渡航資金を貯めるため、節約しながら細々と貯金をしていた。弁当を作っているのもその一環だ。スタンドを使えば金を稼ぐ方法などいくらでも思いつくが、それらはいずれもリスクを伴うため、母のいる日本国内では自重しようと考えている。
「そのちょっとが朝の30分でしょ。無理無理~」
「ははは。それより買うなら早く買ってきなよ。私も待ってるから一緒に食べよう」
私は特にためになるわけでもエンターテイメント性があるわけでもない会話を打ち切る。友人は私の言葉に納得してそそくさと教室を出て行った。
卒業と同時に切れるであろう人間関係であっても、ある程度良好に保っておくのは無駄な事ではない。
友人が昼食を買ってくるのを待つ間、私は教室の窓から外を眺めた。春の日差しは麗らかで、悪くなかった。
お父様が息災であることを、私はなんとなくであるが感じて知っている。私の左肩の後ろにある星型の痣がそれを教えてくれていた。(同じ物がお父様にもあるのを私は記憶している。ゆえに私はこれも一応スタンドを用いて隠匿している)
どの国にいるのかすら定かではないが、流石に地球上には居ることだろう。同じ空の下、吸血鬼であるお父様はいかにして過ごしているだろうか。私は思いを馳せた。
最初の導入と説明が終わって、次回から原作キャラクターの登場が多くなってきます。