DIOの娘がSCに混ざってお父様に会いに行く話 作:チョモランマ
付け加えて、そのために生まれついてのスタンド使いは稀に死神13(デスサーティーン)のマニッシュ・ボーイのような、生まれながらにして高い知能を発揮するような人物がいると解釈しています。主人公ドリスがこれにあたります。(飽くまでごく一部であって、生来のスタンド使いの全てがそのような状況にあるというわけではないです)
ディオ。 DIO。
なんと甘美な名だろうか。
それこそがこのドリスの父の名である。
最後にお父様と会ったのはもう15年近く前の事だが、大きく、逞しく、美しいその黄金の姿は私の脳裏に焼き付いている。
私は未だにお父様の姿を夢に見る。そしてその夢の中でお父様は、かつてそうであったのと同じように、私の頬に触れて甘く優しく語りかけてくれる。
…もちろん、彼がいわゆる悪人であるということは認識している。なんとなれば、殺人行為の是非について母と話しているのも見た事がある。吸血鬼というものがどういった存在なのかはよく知らないが、きっと人を殺めたことも沢山あるのだろう。
しかし私にそっと触れたその手に籠ったものは、単なる興味だとか壊れやすいものを丁寧に扱う慎重さなどではなく、優しさであったと私は信じている。
とある日、私が家に帰ると玄関に私と母のもの以外に二つの靴が並んでいた。一つは上品な女性もので、もう一つはあまり見ない大きなサイズの頑丈そうな男性ものだ。
「これは…」
来客をもてなすために供されたであろう紅茶の香りが玄関にも香ってきているのを感じながら靴を脱いでいると、すぐに母がやってきて出迎えてくれる。
ぱたぱたとスリッパで駆けてくる仕草や、満面の笑みを浮かべているのを見ると我が母ながら実に若々しいものである(母はまだ30代半ばなので事実若いが)
母は実に機嫌よさそうに口を開いた。私はその理由に見当がついていた。
「ドーリィ、おかえりなさい!」
「ただいま。お爺ちゃんが来てるの?」
私の問いかけに、母は頷いた。
一応説明するが、血縁上私がお爺ちゃんと呼ぶべき人物は、日本筋である母の父方の曾祖父以外には居ない。しかし私は彼をそのような親しげな呼称で呼ぶつもりはない。だいたい、母の親戚にはそもそも私達母子が日本に移住するためにいっとき接触しただけで、それ以来交流らしいものは一切ない。
まあ、親戚などいようがいまいが私にとってはどうでもよいことである。
そんなことよりも…
母の出てきた後ろから、女性と、格別大柄な男性が姿を現す。
「ホリィさんに、お爺ちゃん!」
「お帰りなさい祥子ちゃん。お邪魔してるわ」
「オーッ! ドリス! 大きくなったのォ!」
気安く私の名を呼ぶ二人は、空条承太郎の母である空条ホリィと、その父であるジョセフ・ジョースターだ。
ジョセフは初めて会ったときに比べればかなり白髪っぽくなったが、アメリカでも稀な長身と、木の幹のように隆々とした四肢は全く衰えていない。
ずんずんと近寄ってきたジョセフは、ひょいと片手で私を抱き上げた。
かつてお父様が私にそうしてくれたように。
「…ッ!」
「前に会ったときにはこぉーんなもんだったのにのォー フフフ」
「…お爺ちゃん、私は初めて会った時にはもうその10倍は大きかったよ。それに、残念だけど前から身長は3cmくらいしか変わってない」
人差し指と親指で「こぉんなもん」のサイズを示してすジョセフ。
私は少しの動揺を隠し、微笑んでみせながらその髭っぽい頬を引っ張ってやった。
「胸は5cmは大きくなったけどね」
私がそのようなことを言うとは思ってなかったのか、ジョセフは赤面しながら「ウォッ!?」とたじろいで、私を床におろした。
「お、お前トシゴロの女の子がそういうことをじゃなァ~!」
わたわたとしながら 私を諫める言葉を探すジョセフ。それを尻目に私は、どくどくと鼓動を刻む心臓を鎮めた。
お父様はこんなにがさつではないし、もっと知的だ。だが、この男はどこかお父様を彷彿とさせるところがある。体格などまさにお父様と殆ど同じだし、私のことをドリスと呼ぶのも、お父様と母を除けばこの男だけだ。
そのせいか、彼にはふとした瞬間にドキリとさせられることがある。今回もまさにそうだった。
「パパったら、年頃だとか言うなら、出会い頭に抱っこなんてするものじゃないわ。日本じゃそういうのはデリカシーがないって言うのよ?」
「い、いやぁ、わし等は全員アメリカ人じゃし」
「ここは日本です! それにパパ、もともとはイギリス人じゃない」
「まあ、そうじゃけど……10代のころからずっとアメリカに居るんだから、もうアメリカ人みたいなもんじゃろ?」
…しかしまあ、承太郎と同じで、この男もからかい甲斐がある。こういうところはお父様とは全然違う。
このドリスと母アンジェリカは、基本的にはアメリカ人である。
そして母は、スタンドによって黒髪黒目を偽装している私とは違って容姿も完全に西洋人だ。母はもともとネイティブスピーカーと遜色ない程度に日本語を話せたが、それでもやはり最初は文化の違いも相まっていささか日本に馴染めない部分があった。そういった時に知り合い、母が意気投合したのが空条ホリィだった。
奇しくもホリィのもとには承太郎という私と同年齢の子供が居たため、すぐに付き合いは家族ぐるみになった。ジョセフともその流れで知り合ったのだ。ジョセフは日本という遠い国に娘を送り出したことを(その当時既に10年近く経っていたのに未だに)快く思っていなかったらしく、娘の身近にいるアメリカ人ということで私たちをことのほか好意的に受け入れてくれた。そんな付き合いの中で、私はお父様を彷彿とさせるこの男に親しみを込め、当時の承太郎に倣って「お爺ちゃん」と呼ぶことにしたのだった。(承太郎は今では「爺ちゃん」だとか「ジジイ」と呼んでいる)
ただ、基本的にアメリカでそれなりに多忙な生活を送っているらしいジョセフが来日する機会は年に何回もないし、彼が日本に来たとしても私達の方のタイミングが合わなければそれまでだ。私が彼と最後に会ったのはもう3年前。私と承太郎が中学校に入学した時以来である。
「それで、お爺ちゃんは今回どうして日本に?」
一通り挨拶を終えて私達は居間へと移動した。ホリィとジョセフは、まだ私の家に居てのんびりとしていくつもりらしかった。
そこで私は気になっていたことを尋ねた。するとジョセフはその質問を待っていたとばかりに不敵に笑った。
「フフフ、わしが日本に来るのに理由が必要かね?」
「いや、遠慮なく来てくれていいけど…でも理由もなく来るほど暇じゃないんでしょう」
「まあな。…孫に会いに来たんじゃよ」
「承太郎に?」
私は首を傾げた。ジョセフの来日は不定期ではあったが、事前には予告があって、私にもそれが伝えられていた。今回はその予告が無かったから突発的なものだったのだろうと考えていたのだが、それにしては平凡な理由だった。
私の言葉に、ジョセフは否定するように手を振った。
「んん? 違う違う。承太郎の顔もそりゃ見るが、今回は違うのう。…だいたいあいつはデカくなりすぎじゃッ。最近可愛げも無くなってきてわしゃ悲しいわい」
「ま、まあ、承太郎はそういう年頃だから… でも、孫って、お爺ちゃんの孫は承太郎しかいないでしょう?」
「チッチッチ」
…それともまさか隠し子でもいてそれが発覚したとか? だとしたらなかなか不愉快だが。
得意げに人差し指を揺らすジョセフを私は胡乱な思いで見たが、ジョセフは私の思いもよらないことを言った。
「今回はなドリス。お前さんに会いに来たんじゃよ。お前さんもわしの孫みたいなもんじゃ!」
「わ、わたしに?」
「うむ。聞けばなにやらわしに会いたいだとか、カワイイことを言っておったそうじゃないか! 他ならぬ孫からそんなことを言われたら、お爺ちゃんとしては会いに行かんわけにはゆくまいよ」
「!」
ニンマリと笑って私を見るジョセフ。ホリィもその隣で茶目っ気のある笑みを浮かべた。
「祥子ちゃん、ずっとパパに会いたいって言ってたでしょう? それなのにここしばらく予定が合わないものだから、どうにかならないかって聞いてみたのよ」
確かに私は2年ほどにわたって、ずっとジョセフと会いたいと主張していた。
私は思わず両手を合わせて喜んだ。
「ありがとう…すごく嬉しいよ!」
私は他人のスタンドをコピーして3つストックできる力を持っているが、そのストック数が3つにまでなったのはつい2年前のことだった。それまでは、ザ・ワールドと、もう一つの容姿を操作するスタンドに占有されていて、他のスタンドを取得する余地がなかったのである。
私は以前から空条家の人間がスタンドの才能を持っているのではないかとにらんでいたから、新たなストックが空いたことを認識するなりすぐに二人に接触し、予想通り存在していた二人のスタンドを吟味した。
それから試行錯誤を経て結局私はホリィのスタンドを第三のストックとして保有するに至ったが、ジョセフと会う機会はそれ以来なかったために彼のスタンドは確認ができていなかった。
ホリィのスタンドはラズベリーの枝が茨になったような姿をしていて、その名を「"茜色の護符"マジェンタ・ペンタクルズ」という。
傷や病を癒し、また生体に影響を与える物質を生産することもできるという能力を持つ、なかなか使いでのある便利なスタンドだ。
私はいずれお父様を探しに旅立つつもりだが、おそらくそれはまっとうな旅行にはならないだろう。道中の安全や利便性のためにこのスタンドが非常に役立つのは明らかであり、ジョセフのスタンドがこれに匹敵するほどに有用である確率はあまり高くない。しかし、スタンドとは稀有なものである。確認すらせずにそれを捨てるのは愚かな事だった。
ちなみに承太郎のスタンドはお父様のものとタイプがかなり似ていた。似ているのならお父様のザ・ワールドが優位であるのは明らかなので、これは軽く一通り研究してから破棄した。
当然、私は今回の機会にこっそりとジョセフのスタンドをコピーした。(近所に住んでいるホリィのスタンドはいつでも再取得できるので、それと交換だ)
ジョセフのスタンドもまた茨の姿をしていた。名を「"隠者の紫"ハーミットパープル」。使いこなせるようになるまでそれなりの修練を要するスタンドだった。
このハーミットパープルが情報を司るタイプのスタンドであり、それを鍛えた末に、私が喉から手が出るほど欲しかった「お父様の居所」という情報と、「お父様が私達母子のもとから去っていった原因」を知ることができるとは、このときの私は思いもしなかった。
ドリス 「I'm 祥子」
ジョセフ「サッチーコォ」(マッカーサーと同じ発音)
ドリス 「ノンノン、祥子」
ジョセフ「サチコゥ?」(アップルと同じ発音)
ドリス 「ドリスでいい」
ホリィのスタンド能力の詳細は公式的には不明ですが、回復系のスタンドだというのは確かだそうですね。スタンド名も不明なので、このSSでの名前はオリジナルです。
次回から2回ほど閑話を挟んで原作本編開始になります。