……はい。
まぁ諸にそんな感じで草生えますねコラボイベ。ってかマジで強すぎ。アビも100%カット(ウーノ)、色んな弱体効果(ソーン)、風属性限定とはいえ全体ポンバ(シエテ)とか……。
というか原作設定的に十天三人いればユグマリって圧倒できる設定なのか……? じゃあアポロさんってマジで弱いんじゃ?
私の見間違いなら申し訳ないのですが、リーシャさん出てきてました? ちゃんと彼女いました? 仲間外れにされてないですよね? ガチャピンさんは昔から仲間だったけどリーシャさんとは出会わない世界線とかそういうわけじゃないですよね?
……そんなことより新章開始だから言わないといけないことがあったんすよ。
わかっている方も多いと思いますが、この話から始まる“黄金の空”編から原作本編暁の空編及び、十賢者のフェイトエピソードのネタバレを含みます。特に十賢者は「俺ぁ全員自力で入手するんだよぉ!」という方もいるかもしれませんので、ご注意ください。
あとオリキャラもぼちぼち出てきますのでご了承ください。
空図の欠片集めの旅
蒼い空を白い雲が泳いでいる。風に身を任せて形を変え、優雅にのんびりまったりと。
やや風が強い中を、そんな空を見上げて俺――ダナンは歩いていた。
俺が俺の旅を始めようと思って最初に訪れた地は、ポート・ブリーズ群島だ。ここには風を司る星晶獣ティアマトが眠っている。まずはグラン達が旅した軌跡をなぞって空図の欠片を集めようという寸法だ。仲間を集めるにもこの空域にいた大半の強者は“
それでも心当たりは一つだけ存在しているので、最初にそいつへ声をかけようと思いシェロカルテの情報を買ってこのポート・ブリーズ群島を訪れたというわけだった。
それが俺が捕まっていた黒騎士を奪還するために潜入した中でアマルティア島から脱獄させた、ゼオという少年である。
異名は“野盗皆殺し”。
そこそこ強いらしいがなぜそんなことをして各地を回っているのか、という疑問はある。とりあえず会って話を聞いてみようと思ってはいるが。それから仲間になってもらうかを判断しようというところだ。
シェロカルテの乗る商船に同乗してポート・ブリーズに来て、群島なのでどこの島にいるかを聞いて回りようやくこれから会えそうというところである。
街に入って歩き、目的の場所に辿り着く。
大衆酒場のアルテオという店だ。昼間の今はほとんどただの飯屋と化している。扉を開けて中に入り僅かに視線の集まる中見渡して目的の人物を見つけ、傍に歩いていく。
俺の視線の先にはガツガツと食べカスを零しながら割りと汚く料理を掻き込んでいる、赤髪に褐色肌のヒューマンの少年がいた。
「よぉ、ゼオ。俺のこと覚えてるか?」
向かいの席近くに立って彼に声をかける。目つきの悪さが俺といい勝負な赤い瞳が見上げてきて、んぐっと詰め込んでいた食べ物を飲み下して笑った。
「よォ、ダナン。久し振りだなァ」
相変わらず和服を着込んだ姿ではあったが、違う点は刀を二本腰から外して置いてあるということと、和服の上に胸当てをつけていることか。あと身形が投獄されていた時よりも良くなっている。
「ああ、全くだ。お前のことを探してたんだぜ」
俺は周囲は奇異の視線を向けてくるのも構わず対面に座った。店員を捕まえて料理を注文する。
「オレを? アンタ、物好きだな」
「逃がしてやった恩があるだろ。それを返すのに、ちょっと話があってな」
「そういうことか。なら断るわけにもいかねェなァ」
ハハ、とゼオは笑う。
「まぁ話を聞いてから決めてくれりゃあいい。俺は騎空団を作るつもりなんだが、今仲間集め中でな。お前も入ってもらおうかと思って」
「――」
俺はなんの気なしに言ったが、ゼオは反して言葉を失っていた。ポカンとしていると言うのが正しい表現だ。
「……っ、ハハハハッ! オレを、アンタの騎空団にってか! ハハ、やっぱアンタ面白ェ!」
少しして我に返ったのか、大声で笑い出す。周囲もざわついていた。ゼオがあまり近寄りたくない存在だから驚いているんだろう。まぁ俺には関係ない。ある程度知った上で仲間に入れても問題ないと判断している。なにより今のところ決まっている仲間が一癖も二癖もある連中だ。今更だろう。
「だがホントにいいンかよ? オレァ“野盗皆殺し”で、こいつらも持ってるンだぜ」
一頻り笑った後、確認してくる。ついでに顎で置いてある二本の刀を示した。
「問題ねぇ。元々アマルティアに投獄されてる時点で犯罪者なのは知ってたし。まぁお前が“善良市民皆殺し”とかだったらまた別だけどな。んで、その
俺は正直に答えてやる。
妖刀というのは極東由来の特殊な刀のことを言う。曰く持ち主の生命力を吸い取り、曰く人の生き血を啜り、曰く持ち主に寄生して意思を持つ。言葉の通り妖しげな力を持つ刀ということのようだ。とはいえ数が少ないため滅多に遭遇することはないという話だが。
「……そりゃ、ホントに物好きな野郎だな」
「まぁな。とはいえ無理にとは言わねぇよ。なんかやりたいことあるんだろ? シェロカルテにも人を探してるとか聞いた気はするし」
「そうだなァ。ま、オレの目的が終わったらでいいンなら考えてやってもいいぜ」
「そんなもんでいい。考えといてくれ。返事が決まったら、シェロカルテの店を経由してくれれば俺に伝えられる、はずだ」
「おう」
とりあえず俺の話したい本題は終わった。運ばれてきた料理を受け取りゼオとなにか世間話でもしようかと思っていると、
「なァ、アンタ」
「ん?」
ゼオの方から話しかけてきた。
「オレが人探ししてるってェのは聞いたンだよな?」
「ああ」
彼も人脈の広いシェロカルテを頼ったらしくそう聞いていた。
「心当たりあったらでいいンだが、男のドラフで、拳一発で人体が弾け飛ぶようなヤツ知らねェか?」
やけに真剣な眼差しで尋ねてくる。……拳一発で人体が弾け飛ぶってなんだよ。流石に心当たりねぇなぁ。そいつがゼオの探してる人ってわけか。
「流石にそれだけじゃなんとも言えねぇな。俺は実際に会ったことがねぇが、あいつとか違うか? 元帝国中将のガンダルヴァとか。あいつは凄ぇ強いって聞いたし、本気になればそれくらいできるかもしれねぇ」
俺とアポロがルーマシーサバイバル生活を送っている中、あの時点でのグラン達が束になっても敵わなかったという強者だ。タワーに行った後はリーシャとカタリナが倒したらしいが、それはあいつらが強くなっていたことが原因だろう。充分警戒できる人物と言える。
「いンや。オレもシェロカルテからその名前聞いてアガスティアまで行ったンだけどよォ。騒がしかったから遠目で見て違うとわかったンだ。適当に帝国兵斬って帰っちまったけどな」
あの時お前いたのかよ。
なんとか連絡を取って呼ぼうとしていた俺からしてみればツッコみたくなることだ。
「そうか。なら“蒼穹”の騎空団にいたヤツだが、ガンダゴウザって言う巨漢のドラフがいるんだが、どうだ? 拳で戦うし、本気になった十天衆のシスといい勝負してたから紛れもなく強いはずだぞ。どっちかと言うと一発一発の威力が高い戦い方だ。まともに食らったら人は死ぬ」
「そいつァ知らねェなァ。……ってかアンタ今十天衆とか“蒼穹”とかっつうヤベェ名前言わなかったか?」
十天衆どころかあいつらまでヤバい認定されてんのかよ。まぁ十天衆全員が所属する騎空団なんてヤバいに決まってるか。
「見た目の特徴は、そうだな。禿げた爺さんだ」
「あ、じゃあ違ェな」
ゼオの回答はあっさりしたモノだった。どうやらいい線はいっていたみたいだが違うらしい。
「そいつを見たのは十年前くらいだからその時より老けてンだろうが、それでも三十代半ばってとこだ」
「ふぅん。じゃあ違うか。となると俺に心当たりはもうねぇな」
「そうか。まァそんなすぐ見つかるとは思ってねェし、しょうがねェな」
「悪いな。俺も旅してる最中遭遇したらあんたに伝えるようシェロカルテに言っとくわ」
「……あいつに遭遇して生きてられっかよ」
俺の言葉に、ゼオはぼそっとそう呟いた。聞こえていたが聞こえなかったフリをしておくべきか? どうやら喜ばしい再会を目指してるわけじゃなさそうだし。いや、少しは聞いておくか。仲間にするつもりで誘ってるんだしな。
「ってことは復讐か?」
「っ……!?」
告げた質問にゼオが驚いて腰を浮かせた。それが答えみたいなモノだ。どうやら隠し事は苦手らしい。
「……チッ。バレちまったらしょうがねェな」
「今のは自分からバラしたようなモンだろ」
「うるせェ。……ああそうだ、復讐だ。そいつを殺さなきゃオレァ生きていけねェ」
ゼオは拗ねたように頬杖を突きながら言う。
「なるほどな。妖刀もそのための手段ってわけか」
妖刀は先程挙げたように使い手が危険になる可能性が高い。そんなモノを持ち歩くくらいだから、復讐なんて身を焦がしてでもやり遂げたい目的を持っているヤツなら納得がいく。
「そーいうこった。こいつらは全て同じ妖刀なンだがな。人の生き血を啜らせることで刀が増えてくみてェだ」
「それで“野盗皆殺し”、か」
「ああ。それ以外だと、ずっと生き血を啜らせることで“鬼”になるンだと」
鬼と来たか。とはいえ鬼という名前は聞いたことがない。覚えがあるのは“鬼”教官とか。後は緋色の騎士バラゴナが“緋色の鬼”なんて呼ばれていたとか聞いたな。鬼がなんなのかと聞かれれば答えられないが、おそらく恐いとか強い存在という意味合いで使われている言葉だとは思っている。
「鬼ってのはオレの故郷に伝わる昔に絶滅したっつう種族でな。額から角を生やした滅茶苦茶力の強ェ凶暴な種族だったンだとよ。ンで、この妖刀ムラマサは人の生き血を啜り続けることで持ち主を鬼に変えちまう刀ってェわけだ」
ムラマサと言うらしい刀を見てゼオは笑う。そこまで聞いてゼオの目的の全貌が掴めた。
復讐相手を探す旅をしながら、そいつを殺すための力を得るために野盗やなんかを殺して回っている、と。
「難儀な生き方してんなぁ。ま、お前が根っからの悪人じゃなくて安心したわ。生き血を啜らせるのも選んでるみたいだし、復讐ってんなら他にやりたいことないだろ? 終わったら俺が扱き使ってやるよ」
「暗い話題してンのによく笑ってられンな。あと復讐者のこと決めつけてンじゃねェよ」
「じゃあ違うってのか?」
「……違わねェけど」
やっぱりそうなんじゃねぇかよ。
「じゃあいいだろ」
「ああ、その後でいいなら入ってやンよ」
俺の言葉にゼオは笑って応えた。よし、これで一応一人確保か。
「あ、そうだ。ゼオ、折角だし俺と一緒にティアマトんとこ行かねぇか?」
「あン?」
俺の出した名前にゼオがきょとんとする。店内も少しざわついた。
「ちょっと空図の欠片を貰いにな。ティアマトが力を示せってことで戦う気なら戦うし、大人しく渡してくれるなら貰って終わり。道中魔物をけしかけてくるだろうし、途中で盗賊見かけたら始末しときゃいい。どうだ?」
すんなり渡してくれるならそれに越したことはない。だが力を示せと戦うことになる可能性だってある。まぁあいつらが一番最初に倒した星晶獣らしいし俺一人でも勝てるとは思うがな。
「なるほどなァ。まァオレの興味は人斬りだけだが、付き合ってやンよ。だが盗賊相手は手ェ出すンじゃねェぞ?」
「ああ。その時はお手並み拝見だな」
二人で笑い合い、俺とゼオは街の人が心配しているのも気にせず同行を決めたのだった。
因みに彼はもう標的が次の島に渡ってしまったとわかりやけ食いしていたところだったらしい。
◇◆◇◆◇◆
「ハハハッ! 恨むンなら、悪事に手を染めたてめえを恨むンだなァ!」
ということで、街の人に盗賊の情報を貰って居場所を割り出し襲撃していた。
同行前に話した通り、盗賊はゼオの獲物だ。嬉々として命を刈っていく様はどっちが悪人だと言いたくなるモノでもあったが。
しかし戦い方は面白い。
普段腰に提げている二本の刀。これを抜いて振り回すのはまぁ普通だ。二刀流なら基本的に片方を短めの刀にすると聞くが、彼は同じ長さの刀を二本振るう。とはいえ剣術がないわけではないらしく、流石にオクトーとまではいかないがそれなりに洗練しているようだ。
面白かったのは、二本の刀を抜いた瞬間に彼の背後に刀が六本現れたことだった。二本の刀も、虚空に現れた六本の刀も全て同じ長さではあったがデザインが一つ一つ違っている。おそらくムラマサの能力で増えていった刀なのだろう。それらの刀が飛んでいって盗賊達を狩っていったのだ。武器を飛ばすとはなかなか珍しい能力だ。
よし。こいつは対シエテ用と考えておこう。十天衆に対抗できるヤツとしたらいい候補なんじゃないか? ……つってもそう簡単に対抗できる人材がいるわけもねぇし、そもそも十人集めるのは流石に面倒だよな。半分くらいでいいんじゃないか。
それなりに速く飛ばせるらしく、盗賊達は瞬殺されていった。突き刺さった刀が妖しい赤い光を放ったかと思うと物凄い勢いで盗賊の身体が干涸らびていき、全身の血を吸い上げたところで刀は消えていった。
「おぉ、マジで生き血を啜ってるんだな」
「おう。まァ本来は殺すだけでも充分なンだが、人数を限らせるなら全部貰ってった方がいいってンでこうしてるンだ」
「なるほどな」
ゼオは悪人を選んで殺しているらしい、というのはわかる。そこで誰彼構わず殺さないために、殺した相手の血は全部妖刀に吸わせて量を補っているということか。
だからと言って善人だとは思わないが、まぁ“蒼穹”に入るには血生臭すぎる能力だよな。
「変わった戦い方だよなぁ。刀飛ばせるなんて」
「アンタほどじゃねェよ。恰好変えて戦い方ころころ変える方がおかしいだろ」
俺の言葉をそっくりそのまま返してやるとばかりに言われてしまった。確かに考えてみればそうだな。だが俺の『ジョブ』を活かすなら色々な戦い方をして相手に掴ませないという利点がある。
「それはあれだ。固有能力ってヤツだ。まぁなんつうか、どんな武器でも使えてどんな魔法でも使えるようになる能力?」
「強すぎンだろそれはよォ」
「努力の成果だっての。正々堂々戦ったら、多分いい勝負になるだろうがな」
「そうかよ」
これは世辞ではない。事実盗賊十人をあっさりと仕留めた手腕は認めている。なによりそれでも余裕があった。本気で戦ったらClassⅢの俺と互角ぐらいには戦えるだろうな。もちろん戦法をころころ変えて翻弄しなければ、だが。
「……なァ。アンタはなんのために力を欲する? オレの話はしただろ」
ティアマトの眠る場所へ向かう中そんなことを尋ねてくる。
「俺は、そうだな。はっきりとしたモノを探してる最中だから明言はできねぇんだが……殺したいヤツがいて、超えたいヤツがいる。守りたいヤツもいる。そのためだな今んとこ」
「気になンな。特に守りてェヤツの話。アンタ好きな女でもいンのかよ」
ゼオはそういうところは年頃なのか少しニヤニヤして言ってきた。……まぁ少しくらいなら話してもいいか。信頼を得るには、まず自分から情報を晒すことも大事。シェロカルテに教わったことである。
「好きな、って言えるかは微妙だがいるぜ。二人な」
「マジかよ! モテてンじゃねェか!」
「いや多分三人、四人、か」
「増えてンじゃねェか! 気になンなァ。教えろよ」
「お前にはまだ早い。生憎とオトナな関係でな」
「嘘だろ!? クソ、オレァ復讐ばっかでそンなのと出会いがねェよ畜生」
今にでも血涙を流しそうな様子である。
「まぁ頑張れ。復讐が終わったら、そういうのもいいんじゃねぇか?」
「……けどよォ。オレァこの手で何十、何百って人を殺してンだぜ? そンな人並みな願いを持っていいンかよ」
やけに殊勝な態度だ。荒っぽくて凶暴に見えはするが、案外根は真面目なのかもしれん。
「俺だって人を殺してる。それでもって傍にいてくれるヤツに出会ったんだ。運のいいことにな」
「それが四人ってンならもう運じゃねェ」
「だな。まぁでも、世の中にはそういう物好きがいるってことだ。それはまぁ、復讐が終わってそれからの生き方を探してる時に改めりゃいいんだよ」
「なるほどなァ。……ってオレァなんでアンタにこんな話してンだ?」
「俺に聞くなよ。お前根は真面目っぽいから、あんま人寄せつけなかったんだろ? だとしたらこうして同年代のヤツと話すの久し振りか初めてなんじゃねぇか?」
「それだ! そういや十年前からこンな風に話してねェかもな。ハハッ!」
笑い事じゃねぇだろ。とは思ったがなんだかんだ感性までおかしくなっているわけではなさそうだった。これなら問題ないか。そんなヤツが人斬りになってでも復讐したいって、さて過去になにがあったんだかね。まぁその辺りは追々聞くかもしれないが。
「そろそろ着くな。気を引き締めていこうぜ」
「おう。星晶獣となんて戦ったことねェし、戦えンなら楽しみだぜ」
俺はゼオと二人でティアマトの下へ辿り着くのだった。