ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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本作ではグランジータ達がコロッサス戦をするところに合流するので、飛ばしていたティアマトさんとの戦いです。
割りとさっくりいきます。


ティアマト戦

 ポート・ブリーズ群島の中でも強風が吹き荒れる地域に、ティアマトはいる。そう言われていた。

 襲い来る魔物を蹴散らして神殿のある場所に辿り着くと、なにもなかったのだが。

 

「――――」

 

 竜巻が巻き起こったかと思うと巨大な影が姿を現した。

 竜が二体と、それに囲まれた緑髪の女。それが星晶獣ティアマトだ。

 

「こりゃ壮観だな。星晶獣と相見えるなんて滅多にねェ機会だぜ」

 

 ゼオはニヤリと少し獰猛な笑みを浮かべる。……そのはずなんだよなぁ。なんで俺、めっちゃ星晶獣に遭遇してんだろ。いや俺というかあいつらのせいか。俺と関わりのあったヤツなんていないし。

 

「ティアマト。俺はあんたの持ってる空図の欠片が欲しい。どうすればくれる?」

 

 問答無用で襲いかかる気はないので、まずは声をかける。強風が吹き荒れているので少し大きめの声になってしまった。

 

「――――」

 

 彼女の言葉はわからない。だが一層風を強めて竜が吼えたので、戦って力を示せということだろう。

 

「戦えってことか。いくぜ、ゼオ。加減したら死ぬかもしれねぇし全力でいけよ!」

「当然だ! 星晶獣相手に加減なんかしてられっかよ!」

 

 ゼオが応えて二本の妖刀を抜いた。六本の刀が虚空より出でて柄を中心に扇状に広がる。

 

 俺はどうしようか。有利に運ぶためにはイクサバを使うとして、刀得意『ジョブ』のどれにするかって話だ。【クリュサオル】か【ザ・グローリー】か【剣豪】ということになる。

 まぁ【剣豪】にするか。他二つより扱いやすいし。二刀流の【クリュサオル】と刀剣の力を引き出して戦う【ザ・グローリー】は少し特殊だ。真っ向から叩っ斬るなら【剣豪】がいい。

 

「【剣豪】」

 

 ということでClassEX【侍】の上位EXⅡの【剣豪】を発動した。

 【侍】は武者鎧を纏ったどちらかと言うと防御型の『ジョブ』だったのだが、逆に【剣豪】は【侍】と比べると軽装になっていることもあって攻撃寄りの『ジョブ』となっている。

 

 この『ジョブ』を発動して最初に感じる変化は口に咥えた葉っぱだ。紅葉の茎を咥えている。なぜかはよくわかっていない。精神状態が【剣豪】になってもよくわからなかったので、おそらくただカッコ良さそうだからという理由に違いない。白装束を上に着込み利き腕でない方を露出させている。腹部と露出させている右手にさらしを巻いており、右手には黒い籠手を嵌めていた。肌の上にそのまま灰色のマフラーをしているが寒いならもう片方も袖を通せと思うばかりだ。おそらくただのファッションだろう。下半身は黒い袴で覆っており、右腰に脇差と呼ばれる短い刀を二本提げていた。

 武器として取り出し左手に持って肩に担ぐのは、スツルムから貰ったイクサバだ。

 

「いっちょやったるかの」

 

 どこの訛りなのか全くわからない言葉遣いで話すようになる。あと制御できないと視界に入ったヤツを斬りたい衝動に駆られるのでただの危険人物と化す。

 

「お、おォ? 和装に刀っつうとオレみたいだな。それも『ジョブ』ってヤツか?」

「そうじゃ。【剣豪】っちゅう『ジョブ』でな、刀の扱いなら負けんぜよ」

「口調まで変わってンじゃねェか。面白ェ能力だな」

 

 ゼオは朗らかに笑う。口調どころか性格まで変わるから厄介なんだけどな。まぁ俺の思った通りの返答はしてくれるようになるのでいいんだが。

 因みに【剣豪】は刀と弓を得意としているが、なぜ刀の扱いに限定したのかは明白だ。遠距離武器のスペシャリストがClassⅣに存在しているから、それと比べたら弓の扱いとして負けると考えたんだ。

 

「喋っとらんでいくんじゃ」

「わァってるよ!」

 

 ゼオは俺に言われて臨戦態勢を整える。計八本の刀身に炎が灯った。どうやら火属性を得意としているらしい。

 

「ハハッ! いくぜェ、星晶獣!」

 

 嬉々としてティアマトに向かっていく。強風吹き荒れる中を切り裂くように六本の刀が飛んでいき、ゼオ自身も風の中を突き進んでいった。

 

「剣禅一如」

 

 俺は自身への強化を行う。身体が軽くなり、確率で攻撃威力が上昇するようになるのだ。

 【剣豪】は先程も言った通り攻撃寄りの『ジョブ』であり、自分をアタッカーとする『ジョブ』だ。なので味方への強化は一切ない。武器を変えることによる奥義効果での強化は兎も角として。

 

 俺も少し遅れてティアマトへと向かっていく。弓を持っていない状態では遠距離攻撃が、斬撃を飛ばすぐらいしかないので接近する必要がある。

 

 無論ティアマトも黙って接近を許すわけがない。風の刃を形成して放ってくる。刃は強風に乗って更に速度を上げ飛んでくるが、EXⅡも絶大な力を誇るClassⅣと同等の力を持っているので簡単に避けることができた。ゼオも二本の刀を振り回して迎撃している。飛ばした刀が風の刃を避けて飛んでいかないのは精度がそこまで高くないからなのか。それでも勢いを殺すことなく飛んでいっていた。

 あともう少しで辿り着ける、というところまで迫ったところでティアマトの一部である竜が咆哮する。そして俺達それぞれに向けて口から横向きの竜巻を放ってきた。

 

「この一刀に切り開けぬ道はなし」

 

 俺はやや冷徹に呟くと両手で握ったイクサバを上段から振り下ろし、竜巻を両断する。裂けた竜巻は俺から逸れやがて強風に紛れて消えていった。

 

「火焔斬童ッ!」

 

 ゼオの様子を見てみると、両手に持った二刀に大きく炎を纏わせ交差するように振るったところだった。特大の斬撃と化して竜巻とぶつかり合い、相殺する。流石にこの程度では手こずらないか。

 

「決めちゃるぜ、ゼオ!」

「おう!」

 

 長く戦えば消耗し、防御にほとんど能力がない【剣豪】では面倒になる。接近できたので一気に決めるのが吉と見た。

 

「受け切れるモノなら受けてみせよ。――烈刀一閃!」

 

 俺は刀を横一文字に振り抜き炎の斬撃を放つ。竜の頭に直撃させ怯ませた。本体の方はゼオが飛ばした刀で牽制し動きを封じてくれている。

 

「無明に至りし時、此処に。――無明斬」

 

 これもまた自分を強化する効果だ。しかしその効果は絶大で、僅かな間ではあるが三倍の速度で動くことが可能になる。普段一度斬っている間に三度斬りつけられるのだからそれは強い。その代わりかなり消耗するのは言うまでもないが。

 

 肉薄したティアマトへと一息に三度斬りつける。竜の頭を一つ潰した。そのままもう片方の竜も斬り捨てる。俺の速度が上がったせいかティアマトの動きがゆっくりに見えていた。

 最後、トドメの一撃として奥義を叩きつけようか。

 

「無双閃ッ!」

 

 烈刀一閃は斬撃を放つ技ではあるのだが、加えて自分の奥義火力を一時的に高めてくれる効果を持っている。【剣豪】は【侍】と同じく奥義を連発できる『ジョブ』なので、その効果はより大きいモノとなる。

 赤い斬撃がティアマトを襲う。声にならない悲鳴が零れ大きく怯ませることができた。だがまだもう一発撃てる。しかもイクサバのおかげで次の一撃はより強力だ。

 

「もういっちょ、無双閃!」

 

 容赦なく奥義を叩き込んだ。ティアマトは大きく後退して力なく俯く。……これならやっぱり俺一人でも勝てたな。

 

「ハハッ! 流石だぜ! ンじゃオレも本気でいくしかねェよなァ!」

 

 俺の攻撃を見て楽しげに笑ったゼオがトドメを刺すべく追撃を仕かけた。

 

「八つ裂きになって燃えちまいな。――修羅紋焔華(しゅらもんえんか)!」

 

 ゼオの操る六本の刀がティアマトの頭上で敵に切っ先を向ける。位置は円を描くようになっていた。それらがティアマトを突き刺し、発火させる。そこに二刀を振り被ったゼオが迫り渾身の力で振り下ろした。

 

「――――!!」

 

 ティアマトの悲鳴が響き渡るが、まだ倒れないようだ。流石に星晶獣はしぶといなと思って刀を構えたが。

 

「まだまだいくぜェ! 修羅紋焔華!!」

 

 ゼオもまた奥義を連発してみせた。……ほう。そういやオクトーも奥義を二連発してきたな。【クリュサオル】もできるし二刀流のヤツは奥義が二回撃てるんだろうか? だが【侍】と【剣豪】は一刀流だしな。でもナルメアは刀使いでオクトーの剣術にも関わりのある道場にいたというのに奥義の連発はできないらしい。なぜだ?

 ゼオの奥義が叩き込まれると、ティアマトは遂に力尽きたのか倒れて消えていく。空図の欠片はどうやって渡してくれるのかと思っていたら、頭上からゆっくりと結晶が降りてきていた。星晶獣ってのはなんでもありだな。

 

「よっしゃァ! やったぜ!」

 

 ゼオは刀を納めると俺に駆け寄ってきて手を掲げた。ハイタッチかと思ってこちらも手を挙げるとバチンと手を叩いてくる。ちょっと強めだったので痛い。

 俺は戦闘が終了し強かった風もやや収まったので『ジョブ』を解除する。ティアマトから貰った空図の欠片は大きめの革袋に入れる。……ちょっと武器が多くなりすぎたんだよなぁ。他の収納方法を考えないといけない。

 

「おう。ってかお前も奥義連発できたんだな」

「おうよ。っつーかそりゃこっちのセリフだぜ。……それにしてもあれだよなァ」

 

 俺も道中ではどちらも使わなかったので、奥義を連発できたことにお互い驚いたようだ。

 ゼオはふと俺の全身を繁々と眺めてきた。

 

「ん?」

「いやァ、さっきまでのアンタの恰好、なかなかカッコ良かったなァと思ってよォ」

「そうか? 意味もなく片腕袖通してねぇんだぞ?」

「そこがイカしてんだよ。オレもいざという時上脱げるように鎧やめようかと思ってンだ。上脱ぐとあれだ、気合い入ンだろ?」

 

 その感性はよくわからん。

 

「ま、その辺は勝手にすりゃいいさ。俺の場合勝手に衣装が変わるから能力を発動した時の服装は変えられないんだよ」

「そうなンか」

 

 それでジータは割りと露出多めの服装になるしかないわけなんだが。

 

「ああ。で、お前はこれからどうする――つってもまた人探しか」

 

 俺のやりたかったことは二つとも成し得た。ゼオに会うことと、ティアマトから空図の欠片を貰うこと。もうポート・ブリーズにいる必要はないだろう。

 

「そうだなァ。次どこ行ったかはわかってっから、もっと強くなりながら追ってやるさ」

「そうか。またどこかで会ったら、その時は進捗聞かせてくれよ」

「おう。あ、そうだ。そンならいいモンがあンぜ」

 

 騎空団に入ってくれるかもしれない人材だ。強さも申し分なさそうだし、俺としては引き入れたい。

 とそこでゼオが言って掌を上に向けて手を差し出す。するとそこに一本の刀が出現した。長さ的にムラマサの一本だろうか?

 

「これは?」

「オレの持ってるムラマサの分体? とかそンなンだ。これを持ってると本体持ってるオレから同じ島にいると居場所がわかンだよ。偶然会えそうならオレから声かけてやっから」

「ああ、なるほどな。……因みにだが俺がこいつ使っても鬼になったりしねぇよな?」

「ハハッ! 当然だろ。こいつァ本物じゃねェ。協力してくれるってンならこいつで人を斬ってくれりゃァオレの方にカウントされっからよォ。アンタが使う分にはただの妖しい刀だぜ」

 

 なるほどなぁ。つっても俺も善良な一般市民を切り刻む趣味はないので盗賊や野盗相手にはなるが。早めに復讐相手に遭遇してこいつに死なれても困るし、人を始末する機会があればこいつを使っておくか。

 

「了解。んじゃ適当に盗賊とかを斬っておいてやるよ。俺の騎空団に入るんだ。勝手に死ぬんじゃねぇぞ」

「……おう、また会おうぜ」

 

 俺の言葉にゼオはぱちくりと目を丸くしていたが、苦笑いに近い笑みを浮かべて言った。……まぁ、あんまり生きて帰ろうとは思ってないんだろうな。だが俺の騎空団に入ると言った以上簡単には見捨ててやらん。それくらいは、まぁしてもいいだろう。これはあれかね、グランやジータ達と関わった影響なのかね。

 俺にしてはお節介かもしれないな、と思いつつゼオに手を振って別れた。

 

 ――ところで。

 

「……あいつは火属性が得意で、二刀流で、刀を飛ばせるのか」

 

 一人ゼオの背を見送りながら呟く。

 俺が思う十天衆に対抗できるヤツらを集めるという目的の一つとして考えられる能力だ。強さも相当だし、もし本当に鬼とやらになったとしたらClassⅣとぐらい張り合えるかもしれない。面白い戦力だし、あいつは勝手に一部として考えておこう。

 

 となると十天衆みたく何人かの集団として集めるのがいいだろうか。

 

 “十天衆"は十種ある武器種それぞれの最強の使い手の集まり。

 “七曜の騎士”は真王に仕える全空最強の七人の騎士。

 

 しかし“蒼穹”に加入した十天衆に対抗するとは言っても、十人も集めるのは骨が折れる。というかそんなヤツらがまだ存在しているかどうかも怪しい。強いヤツらはほとんどが“蒼穹”の騎空団に入っちまってる可能性だってあるからな。できれば十人の半分、五人ぐらいがいい。だが五人だと少ない気もしてくる。五人でも高望みな気はするが……。

 じゃああれだな、六人にしよう。一旦。だって火、水、土、風、光、闇の六属性あるし。それぞれの属性で一人ずつくらい見つかればいいかな、というところで考えよう。空の世界は広いし。

 

 となるとどんな集団にするかというところだが。まだ一人しか決まってないし関連性をまだ見ぬヤツらに求めるのもちょっと不利なんだが。

 とりあえず共通点が見つかったら変えればいいとして、一旦どういうヤツらを集めるか決めておこう。

 

 とは言っても現段階では未定すぎるので本当に仮ではあるんだが。

 

 六属性それぞれの刀使いを集めてみようか。




というわけで、全属性に古戦場EX+とかで使える奥義キャラを実装してくれ、という私の私怨私情に塗れた欲望に基づき。

もとい、ダナン的に都合が良かったので。

ゼオ君は普通に侍キャラなので奥義ゲージの最大値が200になってる火属性の子です。奥義を一回ずつ撃ちます。
一応オリキャラに関しては三アビ取得フェイトみたいな立ち位置の話を更新後にアビ紹介みたいなヤツを載せようと思っています。話数稼ぎですね。

グラブル公式サイトの新キャラ紹介みたいなのを想定しています。

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