ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

103 / 245
日付変わってたごめんなさい。

いやぁなにと邂逅するんでしょうねぇ誰と邂逅するんでしょうねぇ。
全然わっかんないなぁ。


初めての邂逅

 ゼオと別れた俺は、思いつきで六属性それぞれ刀を使うヤツを集めようと決めた。

 そこで人脈の広いシェロカルテに、腕利きの刀使いの噂があったら仕入れておいてくれと頼んでおく。

 

「腕利きの刀使いですか~? 随分と変わった依頼ですね~」

「まぁな。十天衆みたいな集団を作ろうかと思って、ゼオ見て考えた結果だ。あんまりいなさそうだったり、俺が出会ったヤツが刀使いじゃなかったら変えるような適当なヤツだから、もしあったらでいい」

「わかりました~。今後とも是非ご贔屓に~」

「ああ。じゃあな」

 

 そんなやり取りをしつつ、俺は次の目的地へ向かった。次はバルツ公国だ。

 行くと以前入った地下施設が封鎖されていたので、仕方なくバルツ公国のザカ大公を尋ねた。俺の名前は知らない可能性もあったのでグランの名前を出してやったらすんなり会えた。ヤツらから多少話を聞いていたのかザカ大公は俺の存在を知っており、直々に案内してもらってバルツにいる星晶獣コロッサスの下へ到着し、難なく空図の欠片を手に入れることができた。ザカ大公は話のわかるヤツだ。

 ついでに鍛冶が盛んな場所でもあるので武器防具のメンテナンスもしておいた。

 

 次は順番を変えてルーマシー群島へ向かう。サバイバルをしたので庭みたいなモノだし、さっさと最奥の泉へ行ってユグドラシルに呼びかけ空図の欠片を貰った。そういや最初訪れた時ロゼッタが戦わせたくないみたいだったし、おそらく戦いを好む星晶獣ではないのだろう。

 ここまでは割りと順調だ。

 

 その間に音楽の祭典で妙な連中と共鳴(レゾナンス)したり、なんてこともあったのだがここでは割愛する。だがおかげで武器が増えてしまった。どんどん担ぐ革袋が大きくなっていく。そろそろ常備するには重いので運び方を変えたいところだ。グラン達はどうしているのかと聞いたことがあるのだが、グランは『召喚』があるので問題ないらしく、ジータは騎空艇の自分の部屋に置いているらしい。頻繁に使うヤツは持っていくが、使わないモノは置いていくそうだ。あとグランが『召喚』した武器を借りるという選択肢がある。……俺も『召喚』の能力が欲しかった。

 

 俺は決まった拠点とかがないので武器を置いていくことができず、こうして嵩張っているわけだ。ほとんどが仲良くなった証にくれたヤツなので捨てることもできず、持ち歩くしかない。馬車でも購入すること考えておかないといけないなぁ。

 

 一先ず次の目的地アウギュステを訪れた。

 

 リヴァイアサンの祠があるという場所を知ったので、そこへ向かう。

 近づいても魔物が襲ってくることは多くならず、難なく祠に辿り着いた。ティアマトの時とは違って既に少し小さな状態で俺を待ち構えている。

 青い肌を持つ手足のない竜。以前見た時はとんでもない大きさだったが、どうやら真の姿で戦うようなことはしないらしい。

 

「空図の欠片が欲しい。どうすればいい?」

 

 俺は最近同じようなことを聞いているな、と思いながらリヴァイアサンに尋ねる。今の大きさは以前より小さく、全長百メートルほどの大きさだ。それでも大きいことに変わりはないので、戦うなら油断ならない相手となるだろう。

 星晶獣は大半が喋れないことが多いのか、リヴァイアサンは一つ吼えると俺に殺気を叩きつけてくる。……なるほど、こいつは戦いを望むか。

 

「わかった。じゃあやろうか」

 

 相手は水を司る星晶獣だ。それに有利となるような武器と言えば、あれか。音楽の祭典で組むことになった内の一人、“蒼穹”の騎空団に所属している人型星晶獣バアルから貰った武器。槍なので使える『ジョブ』としては【スパルタ】か【セージ】か【アプサラス】となる。全てClassⅣの『ジョブ』だ。

 【スパルタ】は強敵相手によく使うファランクスという防御障壁を使える『ジョブ』で、防御寄り。

 【セージ】は全体回復のヒールオールなどを使う回復寄りの『ジョブ』。

 【アプサラス】はちょっと特殊だが攻撃寄りの『ジョブ』と言っていいだろう。

 

 ティアマトとも戦って思ったが、ClassⅣまたはEXⅡなら割りと攻撃寄りでも戦える。いずれも身体能力が格段に上がるので強いというのもあるが、強い能力は持っているのだから特性を理解すればそれぞれの強みを発揮して更に上の段階へいける。

 なので今回は【アプサラス】にしようと思う。

 

 【アプサラス】を発動しバアルから貰ったマイムールクローズを構える。

 【アプサラス】になると頭に被り物をする。上半身の服は黒く肌に貼りつくほどで、しかし袖がなく肩までとなっている。少し離れているが袖が別にあり、なんだかやけに袖口の大きい灰色の袖がついていた。下半身を覆うズボンは膨らんだデザインとなっており、大きな袖口と合わせて動きにくい気もする。加えて足首と上半身の袖を繋ぐように布が装着されており、風を受けるととても動きづらいだろうと思う。

 

 相手は水なので、多分大丈夫だ。ダメそうだったら【スパルタ】にしよう。

 

「いざ舞わん、ってね」

 

 【アプサラス】になるとやけに柔らかな口調になってしまう。こんなの俺じゃない、とは思うがグランやジータベースと考えれば違和感がない。逆に【ベルセルク】は口調的に俺っぽいし。

 バアルの武器はなかなか強い。まず雷を放てるという点が他の武器にないところだ。星晶獣の力を武器にしたらしいからだろうか。

 

 魔力を込めればマイムールクローズが雷を放ち始め、槍を振ると溜めた雷が放たれる。身構えていたリヴァイアサンは水の壁を築いて防ごうとするが容易く貫き直撃させた。流石に威力は弱まっていたが、リヴァイアサンにダメージを与えられている。放つ他にも雷を纏って自分を強化することもできるので便利な武器だ。バアルはかなり強い星晶獣なのかもしれない。

 

 怯んだ隙に雷を纏って強化し距離を詰めた。リヴァイアサンは水弾を放ってくるが今の俺なら造作もなく対処できる。

 一つ目を槍の突きで壊し、続けて左側に来た二発目は槍を振って相殺した。そのままくるりと背を向けるように回りながら槍の柄部分で三つ目を破壊。回転をやめず前に向き直ったところで右足の蹴りで四つ目の軌道を逸らした。右足を突いて走りを再開するまでの動作に淀みはない。舞うように、流れる水のような淀みのない動きで敵を圧倒する戦い方を得意とする『ジョブ』なのだ。

 

「そぉれ」

 

 槍に魔力を込めてリヴァイアサンへと落雷を食らわせる。かなり効いているらしく大きく怯んだが、それでも水を生み出し俺の身長を悠に超える津波を引き起こした。

 

「ちょっと気合い入れて、っと」

 

 今度は流れるような動きではなく、どっしりと両足で地面を踏み締め槍を構える。バリバリと雷を槍の穂先に集中させていき、真っ直ぐに突き出した。突きが斬撃のように飛び雷を纏って突進、津波を呆気なく穿った。そのままリヴァイアサン本体にもダメージを与えると大きく悲鳴を上げて怯んでいた。津波は中断されなかったが俺は空けた穴を通って難なく回避する。

 

「手向けの花よ咲き誇れ。――曼珠沙華」

 

 全体に効果を持つ強化効果を使用する。と言っても今は俺だけなので単純に威力を高めるためのモノだ。

 【アプサラス】が特徴的なのは、使用する技の共通の効果と、それぞれの武器を装備している時に発動する効果が存在していることだ。今使った曼珠沙華は弱体効果にかかりづらくしつつ、槍か斧を装備することでもう一つ効果が発揮する。今は槍を持っているので受けている傷が少ないほど攻撃力が上がる効果だ。斧の場合はその逆、傷が多いほど攻撃力が上がる効果となっている。という風に技毎装備している武器によって違う効果が発動するという特異性があるのだ。

 

「さぁて、舞ってもらおうかな。マイムール・パニッシャー」

 

 虚空から雷をいくつも放ちリヴァイアサンを襲う。流石に奥義は威力が高いので大きく怯ませることができた。ただそれで倒せなかったので、もう少し削ってから使うべきだったなと反省する。奥義直後は特殊な『ジョブ』でもなければ動けないようになっているので、もし相手が怯んでくれなかったら窮地になっていた可能性もある。今回はなんとかリヴァイアサンが体勢を立て直す頃には俺も動けるようになっていたのでそのまま距離を取らせずに戦い、程なくして倒すことができた。

 前回ティアマトと戦った時はゼオと一緒だったが、一人でもこのくらいなら戦えそうだ。そういやあの時はあいつら全員で戦っているのを遠くから見てたんだったなぁ。そんなに時間は経っていないはずなのにやけに懐かしく感じる。あれから色々ありすぎたせいだろう。

 

 無事空図の欠片を貰えたので、これで四つ目だ。

 空図の欠片とは一体なんなのか、ファータ・グランデ空域に一体いくつあって全てとなるのか。そういったことは知らないが、とりあえずファータ・グランデ空域に関してはあいつらが辿った道をなぞれば自然と集まるので楽だ。とりあえず俺が知っているところはあと二つ。他は見当もつかないが、一つはエルステ王国の可能性が高いとは思っている。星晶獣は覇空戦争のために星の民が創った兵器だ。そしてエルステ王国の星晶獣デウス・エクス・マキナはその覇空戦争の時に星の民に降伏して貰った星晶獣らしい。空図の欠片を持っている星晶獣、持っていない星晶獣の違いはよくわかっていないが、可能性としては高いと見ている。

 

 機会があったらまたエルステ王国を訪ねて、オルキス女王に聞いてみよう。

 

 次はシュヴァリエのいる城塞都市アルビオンか、今はなにもない霧に包まれた島か。

 どちらに行くとしても少し依頼をこなしてからでいいだろう。アルビオンへの定期船は明日発だし、霧に包まれた島に至っては定期船が出ていない。……適当な小型騎空艇を借りて飛ばすしかねぇかな。まぁ後で考えよう。先にアルビオンへ行ってみようか。シュヴァリエはアルビオンと表立って関係のある星晶獣なのですんなり会えるかどうかはわからない。城主となっている人にアポを取る必要は出てくるだろうが、まぁそこも行ってから考えよう。わからないことを考えても仕方がない。とはいえ準備を怠るのは俺らしくもない。

 とりあえず、あれだな。シェロカルテの商会にアルビオンの城主とアポ取りたいからできそうなら連絡しておいて、と告げておこうか。

 

 ということで街に戻りシェロカルテの商会関係者に頼んでおいた。……とそこで「シェロカルテさんから伝言です。『先にアルビオンの城主様に連絡しておきましたので、用意しておいた依頼を騎空士として受けてくださいね~』とのことです」と言われてしまったが。相変わらずあいつは勘がいい。というか俺のとりあえずの旅の目的は知っているだろうから当然なのか。あいつには借りを作りっ放しだな。あと絶対敵に回したくない。

 

 で、シェロカルテに受けろと言われた依頼の内容を聞く。

 依頼主は別にいるそうで、その人から巷を騒がせている盗賊達の退治依頼を受けて欲しいとのことだ。なんでも商人仲間らしく、近くを通ろうとすると積荷を奪われるためほとほと困っているという。並みの騎空士では対応できない強さではあるらしく、五人の騎空士が退治に向かって首だけ帰ってきたとか、そういう連中のようだ。アウギュステの自警団も相手の人数が多くなかなか手を出せていない状況だとか。そこで俺の出番、ということらしい。

 まぁたかが盗賊に苦戦することはない、はずだ。星晶獣に一対一で勝ったばかりだし。あと人間相手なら容赦なく準備ができるし。殺りやすいったらありゃしない。

 

 とりあえず依頼主がいるという住所を教えてもらったので、そちらへ向かうことにした。

 商人ではあるが住んでいる家は質素らしく、街外れの方らしい。あまり人気のないところだ。まだ昼過ぎなのでほとんどが働きに出ているのだろう。

 

 教えてもらった住所から家を見つけ、扉をノックしようかと思ったのだが。家の中に人に気配が一つしかない。奥さんと二人で暮らしだと聞いたし、シェロカルテに頼まれた人も今の時間帯なら二人共家にいるはずと言っていた。まぁ出かけてるんだろうと思いノックしようと拳を掲げたところで、

 

「トレッビアァン!!」

 

 若い男の歓喜に満ちた声が家の中から響いてきた。……なんだ?

 怪訝に思っていると俺の前の扉が開き、俺は咄嗟に大きく後方に跳んだ。

 

「うん? ……これは幸か不幸か」

 

 家から出てきたのはローブを纏った癖のある短めの茶髪をした青年だった。俺を見て微笑んでいる。……こいつが出てきた瞬間から濃い血の匂いがしやがった。商人はおっさんらしいが息子がいるとは聞いてねぇし、こいつが殺ったのか?

 突然の事態に身構え注意深く青年を警戒する。

 

 彼はそんな俺の様子を気にも留めず、爽やかに嗤った。

 

「さぁ、キミはどんな『音』を聴かせてくれるのかな?」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。