ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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ゼオ君の復讐相手の名前はガンダンザ(本文で出てきます)。

ほらあの、ガンダルヴァとかガンダゴウザとか、“ガンダ”ってついてるじゃないですか(超適当

因みにガンダンザさんは不運にも自分より強いヤツに出会うことがなかったので武術を修めていません。つまりガンダルヴァやガンダゴウザよりも弱いです。
ただ生まれつきの身体能力だけは高いので、途中で挫折していれば変わったかもしれませんね。

あとモニカさんがなんとかしようとしたけど撤退させられた、という一文が出てきますが団員を引き連れていたせいです。彼女一人ならなんとかなったと思います。


背中で

 時は少し遡って。

 

 フラウと揃って宿を出た後、俺はシェロカルテに言われていたゼオの話を思い出していた。

 少し気になって、あいつを追おうと思っている。なにせ戦力の確保ができるかどうかの瀬戸際だからな。

 

「悪い、フラウ。俺ちょっと行ってくるな」

「他の女のところ?」

「いや違ぇよ。男だし、なんつうかあれだ。団員候補みたいなヤツだよ」

「ふぅん。じゃあいってらっしゃい。私は島を見て回っているわ」

「わかった。男に言い寄られたらあしらって、それでもしつこかったら股間蹴り上げとけ。大抵のヤツはそれで大人しくなる」

「ふふ、容赦ないのね」

「お前には言われたくないけどな」

 

 向かってくる者には容赦しない、と決めている彼女はさっくり蹴り倒すはずだ。

 

「じゃあ後でな」

「うん」

 

 俺はフラウと別れ、とりあえず情報を集めているシェロカルテを探しながら街を駆け回る。

 

 修理の手続きやなんかを手伝ってくれていたのか、ザンツと並んで歩いているところを見つけた。

 

「シェロカルテ」

 

 俺は彼女に声をかけ、

 

「今日ゼオのヤツがどこ行ったか知らないか?」

 

 早速本題に入る。

 

「ゼオさんですか~? 今朝方宿を出て、ここから南西の方角に行ったということぐらいでしたら知ってますよ~」

「南西だな、わかった」

 

 方角さえ聞ければ後は足で探し回るだけだ。急ぐ必要があるかもしれないのでさっさと向かおうとしたのだが。

 

「……ゼオさんの相手は強いですよ~」

 

 少しだけ神妙な顔をして告げたシェロカルテに、思わず足を止めてしまう。

 

「お前がそう言うなんて相当だな。十天衆よりもか?」

「いえ、そこまでではないと思いますが。でも十天衆にも匹敵するかもしれませんよ~」

「へぇ、そりゃ強いな」

 

 つまりナルメアくらいってことだろう。流石に俺でも勝てると断言できるようなことはないな。オクトーとは試合だったから良かったが、殺し合いだったらどうなっていたかわからない。

 

「色々と調べていてわかったのですが、あの秩序の騎空団のモニカさんが部隊を引き連れて捕まえようと挑み、あまりの被害に撤退せざるを得ない状況に追い込まれたそうです」

「あのモニカがな……」

「ゼオさんもお強いとは思いますが、勝てないと思います」

「そうか」

 

 リーシャの劣等感を刺激し、アポロの捕縛に一役買ったモニカが撤退させられるような相手と聞けば精々ClassⅢ程度の実力かなと思っていたゼオでは敵わないだろう。せめて話していた鬼になっていれば別なのだが。

 

「男の名前はガンダンザ。よくお店にも来るらしいので、情報が集まるのは早かったんですが、ちょっと予想外の人物でしたね〜」

「へぇ、店にな。なにを買いに来るんだ?」

「食べ物ですよ〜。決まって大量の食べ物を買っていかれるんです〜。随分と大食いの方みたいですね〜」

「ふぅん。まぁ関係ねぇか。じゃ、行ってくる」

「やっぱり行くんですか〜?」

 

 シェロカルテがそんなことを言ってくるので、俺はニヤリと笑った。

 

「なんだ、心配してくれるのか?」

「当然です〜。お得意様は大切にしないといけませんからね〜」

 

 流石にシェロカルテは心得ている。どこかの誰かさんのように取り乱すこともなく、笑顔で流してきた。

 

「なんだ、誰かを助けに行くのか?」

 

 それまで話を聞いていたザンツが口を挟んでくる。助けるかどうかは、見てから決めようと思っているが。

 

「さぁ、どうだろうな。ただ団員候補だからちょっとな」

「ほう? まぁ団員を増やすのはいいことだ、名前聞く限り男か?」

「ああ、男だ」

「そうかそうか。ならそうだな、背中で語れ。男相手にゃ器の大きさってヤツを見せつけてやればいいんだよ。そうすりゃ男はついてくる」

 

 人生の先輩らしい助言だった。背中で語って器の大きさを見せる、か。まぁそんなには意識せずにいこう。

 

「わかった。じゃあとりあえず行ってくるな」

 

 俺は言って、シェロカルテから教えてもらった南西の方角に向かった。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 結果的に言えば、あまり探し回る必要はなかった。

 なにかの轟音と木がめきめき音を立てて倒れる音が聞こえてそちらに向かえば、血塗れになったゼオと男のドラフが対峙している場面が見えた。

 倒れた木々はへし折れているか、切断されているかで所々が焦げている様子があった。

 

 折れた刀が転がっているところを見ると、手元にある二本しか残っていないようだ。しかも右腕は折れているのかおかしな方向に曲がっている。

 

 と、対峙している男が拳を振り被っているのが見えた。ゼオはただその拳をじっと見つめているようだ。

 

「……チッ」

 

 助けたいわけじゃない。だが死を受け入れるような様は少し腹が立つ。きっとどっかの誰かさんのせいだ。そう思った時には既に身体が動いていた。全速力で駆け、【レスラー】を発動し腕組みしたまま胸板で男の拳を受ける。胸骨が折れたかと思ったが、ClassⅣで一番身体能力が高い、というのが伊達じゃないらしい。そのままカウンターを決めてガンダンザを後退させる。

 

 俺は嬉しそうに笑うドラフを無視して、背後にいるゼオへと声をかけた。

 

「死ぬのは勝手だが、せめて俺に断ってからにしろよ。この間お前、目的達成したら俺の騎空団入るって言ってたじゃねぇか。その時点でお前はもう俺の中で戦力の一部なんだよ。死にたいんならそこで失血死してろ。こいつは俺が殺しといてやる」

 

 かつてバラゴナにも言った気がするが、殺そうと思えばどんな相手だって殺せる、と思う。殺しても死なない星晶獣やクソ親父なんかは見当もつかないが、七曜の騎士であっても毒殺ぐらいはできるんじゃないかと思う。それにこいつはどうやら、大食いみたいだ。なら可能性として燃費が悪いということも考えられる。力が強いが、その力を十全に発揮するにはたくさんのエネルギーが必要とか。もしそうなら餓死させるのも簡単かもしれない。

 

 一応俺も団長になろうという身だ。試しにザンツの言っていた背中で語るということをやってみる。

 

「だが、もしお前が自分の手で殺したいって思ってんならお前がやれ。――俺が見届けてやるよ、勝ちも負けもな」

 

 果たしてそれが正しいのかどうか。言葉の正しさはないかもしれないが、その人にとっての正解はあるのかもしれない。

 

「……ハハハハッ!!」

 

 突然、ゼオが笑い始めた。強く殴られた影響でおかしくなったんじゃないかと思ってしまう。

 

「アンタ、凄ェよ! こりゃ敵わねェな!」

 

 俺は完全にゼオの事情を把握しているわけではないが、どうやら今ので彼にはなにか伝わったらしい。

 

「いいぜ、諦めンのはやめだ。オレが殺す! 誰のためとかじゃねェ、オレ自身のために! だから見ててくれよ、大将ッ!!」

 

 やはり諦めようとしていたらしい。それが変わったなら、俺の行動はきっと間違っていなかったはずだ。

 

「ああ、見ててやるよ」

 

 俺はゼオの復讐を見届けるために、道を譲った。

 

「……なんだよ。お前が戦ってくれるんじゃねぇのか?」

 

 ガンダンザは不満そうだ。ゼオが死にかけにしか見えないからだろう。

 

「ああ、別にいいぜ。そいつを倒したらな」

 

 俺は言って【レスラー】を解除し少し離れた位置で木に背中を預ける。腕を組んで俺はもう手出ししませんよとアピールした。

 

「助かンぜ、大将」

 

 ゼオは言って、掲げた刀を自らの身体に当てる。流れていた血が刀に啜られていった。妖刀が生き血を啜ったからか折れていた右腕が再生する。

 

「チッ。まぁいい。さっさと殺させてもらうぜ」

「やってみろ。オレァ今、これまでにないくらい最強だ!」

 

 やる気のなさそうなガンダンザとは反対に、ゼオはテンションが上がったまま笑う。すると彼の言葉に呼応したのか妖刀が赤く輝き出した。

 

「あン?」

 

 ゼオ自身首を傾げているので、余計に俺はわからない。だが妖刀になにかが起こったのは確実だ。

 

「ハハッ! なンだこれ! 力が湧いてきやがる! ――負ける気がしねェ!!」

 

 彼が無事だった二本目を治った右手で握り吼えると、ゼオの額から妖刀が放つのと同じ赤い光が溢れ出す。そして光を発する額に、放たれた光と同色の角が生えてきた。

 

「なんだってんだ……?」

 

 ガンダンザは困惑して眉を寄せている。

 

「見とけよ大将! これがオレの力、“鬼”の力だッ!!」

 

 ゼオが言うと、彼の背後に刀が出現する。切っ先を上に向けた一本が現れ、そこから少しズレて一本が現れる。それを繰り返していき丁度柄が円になるように無数の刀が現れた。それら全てが角と同じ赤い光を放っている。

 

「いくぜェ、覚悟しろよ!」

 

 ゼオは言ってガンダンザへ向かって駆ける、と瞬く間に懐に入った。

 

「なっ!?」

 

 驚く間もなく振るわれた右手の刀が、男の左腕をあっさり切り落とした。

 

「が、あああぁぁぁぁ!?」

 

 まるで生まれて初めて痛みを受けたかのように悲鳴を上げ血が溢れ出す傷口を押さえて膝を突く。……これは、強いな。ClassⅣぐらいと考えていたが、もしかしたら今のClassⅣでも勝てないかもしれない。

 

「ぐっ、クソッ! 急に動きが……!」

 

 ガンダンザは冷や汗を掻き血の気の引いた顔で悪態を吐く。

 

「……てめえは、人を殺しすぎた」

 

 ゼオは悠々と構えて膝を突いたガンダンザを見下ろす。

 

「今がその報いってヤツを受ける時だ。精々後悔しながら、死にやがれ」

「クソッ! 俺は、俺は……!」

「じゃあな」

 

 ゼオは言って、背後の刀全てを操りガンダンザの身体を刺してから左手の刀で首を切り飛ばした。

 噴き出した鮮血を浴びながら、ゼオは少し冷めた目で死体を見下ろしていた。やがて死体から血を啜って干からびさせると、妖刀を消した。鬼の象徴である額の角も消えてしまう。

 

「あ? 角がなくなっちまった」

「……多分本当に鬼になるんじゃなくて、鬼みたいな力を得る妖刀なんじゃねぇか? この先はわからねぇけどな。その証拠にお前のここに跡がある」

 

 俺は勝負が終わってから近づき、ゼオの額に褐色肌からだとわかる薄くなった箇所があるのを、自分の額に指差して教えてやる。

 

「おぉ、じゃあまたなれンだな」

「多分な」

 

 俺は言ってから、魔法で水を生成しゼオを洗い流す。

 

「うえっ!? な、なにすンだよ、びしょびしょじゃねェか」

「血塗れよりはマシだろ」

 

 言いながら熱風で乾かしてやる。

 

「おぉ、大将は魔法もできんだな」

 

 風に目を細めながらゼオが言った。そこでふと気になって尋ねてみる。

 

「で、その大将ってのはなんだ?」

 

 以前はそんな呼び方されてなかったと思うんだが。

 

「ん? あァ、なんつうか、あれだ。アンタの騎空団に入ンだったら団長って呼ばなきゃだろ? 団長ってのは口馴染みねェから、大将って呼ぶことにしたンだ」

 

 にかっと笑って言ってくれるゼオに、ちょっとこそばゆい気持ちにさせられる。ザンツも団長とは呼んでくれるが、彼のはこちらを試す意味もあるのだと思う。かつての団長とお前、どっちが凄ぇかな? みたいな意味合いだと勝手に思っているところだ。

 

「そうか。じゃあ俺の騎空団に入ってくれるってことでいいんだな?」

「おう! ……どうせ、特にやることもねェしな」

 

 俺の言葉にゼオが笑って応え、少し寂しそうにつけ足した。

 

「ならついてこい。折角手に入れた力だ。そんなヤツの復讐だけに費やすのは勿体ねぇよ。生き甲斐なんて、旅してる間に見つけりゃいいんだしな」

「そうだなァ。まァオレァ大将についてくぜ。オレァアンタの器の大きさに惚れたンだ。気持ちの折り合いはいずれつけなきゃなンねェけどな」

「そうかよ。じゃあ行くぜ、ゼオ」

「おうよ」

 

 ということで、俺はゼオの復讐を見届けて団員として確保するのだった。

 

 街に戻ってからゼオを合流していたザンツとフラウに紹介する。

 

「ねぇ、私も団に入っていい?」

 

 そこでフラウがそんなことを言ってきた。……ふむ。まぁ戦力としては問題ないが。人格的に大丈夫かと思うところはちょっとあるな。今のところは大丈夫そうだし、男勢も今のところドランク、ザンツ、ゼオだけか。ドランクは問題ないだろうし、ザンツはもう歳だし嫁さんがいたし、ゼオはまぁ素直な性格っぽい気はするので大丈夫だと思いたい。

 ロベリアは遠慮したいが。

 

「まぁ、いいだろ」

「ありがとっ」

 

 俺が言うとフラウは笑顔を弾けさせて腕を絡ませてきた。

 

「それでこそ団長だ」

「流石だぜ、大将」

 

 男二人はなぜか受け入れる構えだ。

 とりあえず旅を始めてから三人の団員を確保できたわけだ。ここまでは順調かな。

 

 さて次はどこへ向かおうかと考えていたら。

 

「ダナンさ〜ん! 大変です〜!」

 

 珍しく慌てた様子でシェロカルテが走ってきた。

 

「ん? どうした、シェロカルテ」

 

 何事かと視線を向ける。フラウがそっと離れた。

 

「実は、七曜の騎士が一人、紫の騎士が白風の境に停めてあったグランサイファーを持ち去ったという情報が入りまして〜」

「七曜の騎士が?」

 

 告げられたのは衝撃的な情報だった。

 

「はい〜。その前にメフォラシュとアガスティアも襲撃したらしいのですが、詳しい目的はわかってませんね〜」

「……七曜の騎士、か。ってことは真王の指示か? なぁ、オルキスやアダムは無事なのか?」

「はい〜。どちらにも死傷者は出ていません〜。気絶させられただけで済んでいますね〜」

「じゃあなにが目的だったんだ?」

「さぁ〜? ですが、極秘情報ですとオーキスさんの試作パーツがメフォラシュから、リアクターの一部がアガスティアから持っていかれたとのことですね〜」

 

 どこからそんな情報を、と思うのは無駄か。

 

「……ふむ。さっぱりだな。まぁあいつらが無事なら頭の片隅に置いておくだけにしとくが。で、なんで俺にそれを?」

 

 そこが肝心だ。

 

「グランサイファーが持ち去られてしまっては“蒼穹”の方々が島から出られなくなってしまいます〜。ですので、ダナンさんに迎えに行ってもらいたいんです〜」

「いや、あいつらって数百人規模だろ? そんなん無理だろ」

「いえいえ〜。白風の境に行ったのはダナンさんもよく知る方々だけですよ〜。空図の欠片が足りなかったみたいで、それを集めるのを先にやってしまおうというところだったみたいです〜」

「それでなんか色々巻き込まれてそれどころじゃねぇのはあいつららしいが……。でもなんだって俺なんだ? 秩序にでも頼めばいいだろ?」

「いえ〜。それが、秩序の騎空団宛てに蒼の少女と小さな赤き竜を連れた騎空団はファータ・グランデ空域で捕らえるようにという指示があったみたいなんです〜」

「……あいつらなにやらかしたんだよ」

 

 秩序に追われるのはどっちかというと俺達の方だろ。

 

「おそらくこの空域から出そうとしているんだと思いますけど、そんなこんなで依頼できないんです〜」

「ふぅん。じゃあ“蒼穹”の各地に散った団員も?」

「はい〜。とはいえ人数が多く、巷に『俺は今話題の“蒼穹”の騎空団に入ってるんだぜ』と宣う輩が出てきて、確保が難しいということで放置している状況みたいです〜」

 

 シェロカルテが妙に気合いの入った男声を交えつつ説明してくれる。……よくわからんが、その辺はリーシャにでも聞いてみるか。

 

「なるほど。で、俺にあいつらを迎えに行けと? だが結構日にち経ってるし、騎空挺が持ち去られたんなら戦ってるか死んだかしてるんじゃないか?」

 

 ラカムがおいそれとグランサイファーを手放すわけがないと思っている。とはいえあいつらが死ぬような事態になったら俺じゃどうしようもない気もする。

 

「いえ、これは推測なんですが、もしかしたら白風の境で最後の空図の欠片を見つけて空域を越えてしまったのではと思ってるんです〜」

「ほう?」

「それが、ちょ〜っと極秘も極秘の情報なのですが、ドランクさんが捕らえられた場所がどうやら瘴流域の中にあるみたいなんですよね〜。ですので、彼を助けるには瘴流域を越えられないとダメなんです〜。ダメだった場合は戻ってきていると思いますので、そうじゃないということは助けた後になにかトラブルに見舞われてしまったのではないかと〜」

 

 なるほど、いやホントにどうやって情報を仕入れてるんだろうか。

 しかし、ということなら俺もあと白風の境とやらで空図の欠片を手に入れれば瘴流域を越えられるということになる。

 

「そこにはおそらくドランクさんやスツルムさん、オーキスさんも同行していたでしょうし~。ダナンさんも他人事じゃないと思うんですよね~」

「確かにそうだな」

 

 あいつらが関わっているなら、なにか行動を起こしたいところではある。

 

「それにグランサイファーに乗った紫の騎士を見かけたという十天衆のオクトーさんとフュンフさん、それにナルメアさんが交戦したとの情報が」

「それを早く言えよ紫の騎士はどこ行った? ナルメアは無事なんだろうな?」

「は、はい~。見かけて交戦し、瘴流域に逃げ込まれてしまったらしいので」

 

 なんだ、焦らせるなよ。無事ならいいか。

 

「そうか。ならいい。で、結局お前の依頼としてはあいつらを迎えに行くこと……ってかそれじゃあ俺に空域越えろってことじゃねぇかよ」

「はい~。紫の騎士も空域を越えましたので空域を越えて騎空挺と再会する可能性もありますが、確実な方法として正規の手順で空域を越えていただき、“蒼穹”の主力メンバー達を確保してください~」

「面倒なことを……。あいつなら大丈夫だろ。面倒に巻き込まれるのは嫌だし、確保じゃなくて安否確認ぐらいにしねぇか? それなら受けることも考える」

「むむむ~。わかりました、それで手を打ちます~」

 

 よし、これで話は決まったな。

 

「じゃあシェロカルテから聞いてたオロチとかいうヤツのところに行ってから、残ったヤツに声をかけて空域越えるとするか」

「えぇ……できれば早めに行って欲しいんですが~」

「あいつらならなんとかすんだろ。騎空挺はそれまでに直らないだろうし、さっさと行って生存確認すればいい。とはいえうちのヤツらがなにかしてたらそっち手伝うから、しばらく戻ってこない可能性もあるってことだけ覚えといてくれ」

「わかりました~。それじゃあ、頼みましたからね~」

「おう。あとこの、フラウが羽織ってるようなローブを着てる、茶髪の青年以外のヤツの情報があったら集めておいてくれ」

「了解です~。ではでは、私はこれで失礼しますね~」

 

 シェロカルテはそう言って走り去っていった。あいつもなんだかんだ忙しい身なのだろう。その中でこんな依頼をしてきたということは、あいつも相当“蒼穹”の連中を気にかけているということだろう。俺なんかはあいつらなら自力でなんとかするだろうと思ってしまうのだが。

 

「ってことだから」

 

 俺は今確保している団員三人に顔を向ける。

 

「いや、って言われてもな」

「なに言ってンだかさっぱりだったぜ?」

「空域を越えるなんて普通は簡単に言えないことだと思うんだけど」

 

 ゼオは兎も角、残る二人は呆れたような様子だった。

 

「とりあえずは団員をもうちょっと確保したいからシェロカルテの言っていたオロチってヤツのいるカラクト島まで向かう。その後他に確保してる団員を回収しながら空域を越えてあいつらの生存を確認する。で、そいつらに同行していると思われる仲間を連れて戻ってくる。以上」

 

 シェロカルテと話していて決まったことを簡潔にまとめる。

 

「わかったぜ、大将! とりあえず大将についてけばいいンだな?」

 

 ゼオはいい笑顔でそう言った。……もしかしてこいつバカなのでは。

 

「俺は空域越えたこともあるし、七曜の騎士とも関わりがねぇわけじゃねぇから今更ではあるか」

「えぇと、とりあえずやるべきことはわかったわ。色々ツッコミどころがあるのは、気にしないでおく」

 

 ザンツとフラウの二人からも理解が得られたようだ。ってことで、カラクト島へ行こう。それから空域を越える準備を進めておくとしようか。




前話からもそうだけど珍しく団長っぽいダナン君でした。

次はゼオ君のキャラ紹介を挟みます。
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