ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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……ま、無理ですよねー。

今現在7000字を超えてまだ書き終わってません。想定より長くなっちゃいましてね。
ってことでレラクル君のお話がここで終わり、明日キャラ紹介で区切りが良くなるのでその次でクリスマスの話を更新しますね、はい。

あと書いている内に書きたいことが増えていって二話に渡りそうだったのでもう無理だと思いまして。

一話はダナン、オーキス、アポロ、スツルム、ドランク、オルキス、アダムが登場します。
二話目はダナン、シェロカルテ、ジータとその他、ナルメア、リーシャが登場予定です(まだ書いてない)。


レラクルの過去

 忍者レラクルの頼みもありツキカゲ城へと挑んだ俺達は、迫り来る雑魚共を薙ぎ払ってオロチがいるとされている最上階を目指し突き進んでいた。

 面子が強すぎたせいか特に疲労も怪我もなく最上階まで辿り着く。

 

「ヒャハハハッ!」

 

 耳障りな笑い声が聞こえてくる。

 最上階では、まだ夕方になろうという頃だというのに酒盛りに興じた連中がいた。

 

 流石の俺達も面食らってしまう。

 

「おっ? なんだなんだぁ? 姉ちゃん酌してくれんのかい? いや酌じゃなくてもっとイイコトしてやってもいいぜぇ?」

 

 赤ら顔で酔っ払った男達はフラウを見つけると下品な声で笑い始める。……とりあえず始末するか。

 

「【ベルセルク】」

 

 俺は狂戦士と化すと、腰を上げて近づいてきた男の腕を掴み、男を武器に見立てて酒を煽る男へとぶつけた。【ベルセルク】の腕力によってどちらも潰れて死に至る。

 

「ひ、ぃっ!」

 

 血をぶち撒けて死んだ仲間に怯えた声を出す男にも、潰れた男を振り回して叩き潰す。残った一人は全く酒に酔っていない様子だったが、血飛沫を避けようともせず飲食を続けていた。男の血がかかっても構わず、だ。

 

「邪魔だ、雑魚が。おい、てめえがオロチか?」

 

 俺は武器として使用した男を投げ捨てると、座り込んだひょろ長い体型の青白い肌をした男に声をかける。

 

「……あぁ、俺様がオロチだ。挑戦者が来てるとは聞いてたが、まさかこんなガキとはな」

 

 オロチと名乗った男はゆっくりと立ち上がり、玉座のような豪華な座る場所に歩いていき、そこにあった長い刀を手に取った。鞘には納められておらず、刃はなぜか一定間隔で途切れている。また途切れた一つにつき一つのトゲが刃についていた。

 薄い水色の長髪を揺らし、男がこちらを向く。和服で右肩を出した恰好。背には蛇の模様が彫られていた。

 

「まぁ、強ぇならなんでもいい。かかってこい。まとめてか? 一人ずつか? どっちでも結果は変わらねぇがな」

 

 耳に嫌な風に残る声質だ。

 

「いや、一人だけだ」

「なに?」

 

 俺が言って正面を開けると、レラクルが前に進み出た。

 

「お、お前は……!」

 

 するとオロチが細い目を見開いて驚いた。

 

「……覚えているか、この顔を。虫けらの如く殺したから覚えていないかと思ったのだが」

 

 レラクルはその反応の意味がわかるのか、忍者刀を抜き放ち構えた。

 

「いや、そんなはずはねぇ。てめえは確かに殺して、家臣共にも確認させた。生首にして飾ってやったのに生きてるわけがねぇんだ。なぁ、()()()()()!」

 

 オロチは目の前にある現実を否定するかのように告げた。ゼオは驚いているようだが、他三人に驚きはない。ある程度予測ができていたからだろう。

 

「……黙っていてすまない」

「いや、気にしなくていい。大体予想はしてたからな」

 

 俺は謝るレラクルにそう言った。

 

「領主一族は皆殺しにされた。その中に十代半ばの息子がいたっていう情報は港町の連中ですら知っていた。で、お前は自分だけが生き延びたと言った。もし俺が領主なら、直前で替え玉を用意して誰か一人でも一族を生き残らせることを考える。それも、まだ大人になっていない子供だったら生かすことを考えるはずだ。となれば同年代の忍者が生き残ってるのはおかしいだろ? お前が実は領主の息子だったっていう方が納得がいく」

 

 と、俺は考察していた。レラクルが自分の事情を話し始めた段階でな。それは経験豊富なザンツも、フラウも同じだったのだろう。ただしゼオは全くそう考えていなかったのか、「流石だぜ大将」と尊敬の眼差しを向けてきた。……やっぱりこいつバカなのでは。

 

「そうか、そこまでお見通しだったか。……そう、僕は本当の領主の息子。殺されたのは影武者だ。元々僕はそっくりな子供と立場を入れ替えた状態で育ってきた。だから家臣達も僅かな特徴の違いに気づかない。なぜなら、ずっと領主の息子だと思っていた人物が影武者だったのだから」

 

 レラクルはそう種明かしをする。

 

「……はん。なるほどなぁ。で、親族の仇討ちをしようってか? 言っておくが俺様にはてめえの父親も、今のてめえと同じ恰好をしたような連中も敵わなかったんだぜ?」

「わかっている。だから三年の月日を必要とした。とはいえ当時僕がいれば勝てた可能性はある。後悔ばかりだが。――僕はその当時から、月影衆の頭領だ」

 

 レラクルは堂々と言い放ち、本気の速度でオロチに肉薄する。俺達と戦っていた時が本当に小手調べだったのだとわかる速度だ。小回りの利かなさそうなオロチの刀であれば懐に入るのが一番有効だろう。

 オロチは驚愕しつつも、ニヤリと嗤う。飛び退きながら刀を振るった。レラクルは問題なく屈んで避けたのだが、問題なのは振った刀が()()()ことだ。おかげで俺達の方にも届いてしまい、避けざるを得なくなってしまう。

 

「……貴様の相手は僕だ」

「はん。俺様の刀は伸びるんだ。不可抗力だろうがよぉ」

 

 伸びる刀。面白いコンセプトだ。振ると遠心力に合わせて途切れた刃の間に仕込まれているゴム状のモノが伸びる。振り終えるとゴムが縮まって元に戻る。そういう風に作られた刀のようだ。……ちょっと欲しいな。

 

「レラクルー。その刀欲しいから、できれば武器自体は壊さずに頼むわ」

 

 俺はオロチに接近してなんとか攻撃を当てようと必死な彼に声をかける。

 

「なにを呑気な……。善処はする」

 

 呆れられてしまったが、とりあえずやってみてはくれるようだ。あんな武器なかなか見ないからな。こういう機会でもないと手に入らない。

 

「影分身の術」

 

 白い煙と共に現れた分身の数は四つ。しかも戦った時の感覚からして一人一人がレラクルと同等の戦力を持っているようだ。俺達と戦っていた時は同じタイミングで技を放っていたが、それぞれが別々の思考で動いているらしくオロチを押し始めた。

 

「おォ、強ェなあいつ」

「おっさんに縄跳びさせないで欲しいんだが?」

「どっちも強いみたい。いい人に目をつけたね」

 

 ゼオとフラウはレラクルの実力に感心しているようだったが、おじさんはオロチの振るう刀を避けるので精いっぱいなようだ。

 わざとなのかそういう刀だからなのか、度々俺達の方にも刃が飛んできていた。レラクルの戦いを眺めながら伸びる刀をかわすのは面倒だ。しかもオロチの操る刀はそれこそ大蛇のようにうねりレラクルの数を減らそうとのたうち回っている。

 

 レラクルは五人で翻弄しながら多方面からオロチを狙う。

 オロチは四方八方から攻めてくるレラクルをやり過ごしながら伸ばした刀を自在に操って数を減らそうと狙う。

 

 敵はレラクルの強さを身を持って感じているのか裂けそうなほど笑っている。強いヤツと戦うのが楽しくて楽しくて堪らないというような表情だ。

 

「そこんとこどうなんですか、戦い好きなフラウさんや」

 

 実力は拮抗しているのか切迫した戦いを繰り広げているので、事態が動くまでは雑談をしていてもいいと思う。

 

「……話の振り方が雑なんだけど。でもそうね、気持ちはわからなくもない、かな」

 

 フラウも俺と戦っている時楽しくて仕方がないというような表情だった。

 

「でも強い人と戦うことに全てを賭けていたわけじゃないの。例えるなら生き甲斐と趣味の差ね」

 

 彼女の言い分になるほど、と納得する。どこまで本気なのか、ということの差だろう。彼女が戦いを好きなのは、可能性として力が強いことによる抑圧を解放できるからなのかもしれないが。

 

 戦況がそろそろ動きそうだ。オロチは数を減らそうとしているが、それを軽やかに回避していくのがレラクルだ。とはいえレラクルの表情に余裕はない。五人でかかっているというのにオロチに致命傷を与えられていないからだろう。

 

 しばらく眺めていると、ぼんと音を立てて四人のレラクルが煙を化してしまう。

 

「どうやら時間制限があるみたいだなぁ」

 

 オロチはニタリと嗤い今までとは比べ物にならない速度で刀を振るい、レラクルの全方位に刃があるような状態にした。そこから柄を引くとレラクルを囲むように伸びていた刃が縮まり全身を漏れなく傷つける。

 大量の血を噴き出し膝を突く彼に、勝機はないように見えた。傷だらけで床に血のシミを作っているので分身ということはないだろう。

 

「これで終わりだな。いいのかよ、お仲間が死んじまうぜ?」

 

 オロチは刀を振り上げ、俺達の方を向いてくる。こいつも本気で戦いたいという欲求は持っているのだろう。だからこそレラクルの全力に対処できるだけの速度で戦っていた。俺達も加われば自分が本気で戦えると思っているのだろう。

 

「……まぁ、死んだら死んだらだろ。別にまだ仲間ってわけじゃないしな。仲間になるのはこれからだ。その条件に、そいつが一人でお前と戦うのをフォローするってのがあってな。つまり手出しはしない」

「チッ。そうかよ。じゃあこいつを殺して、さっさと二回戦だ!」

 

 オロチは言って刀を満身創痍なレラクルへと振り下ろす。

 

「後ろががら空きだ」

 

 と静かな声が当たる直前で聞こえたかと思うと、

 

「忍刀・鎌鼬」

 

 すかさず奥義を放ちオロチの身体を切り刻む。そのおかげで攻撃が逸れてレラクル本体は死ななかった。とはいえ当たらなかったわけではないので傷が増える。

 奥義を放ったレラクルは煙となって消える。そう、分身だ。

 

「ぐっ、てめえ……!」

 

 忌々しげに睨むオロチに、なんとか立ち上がったレラクルが視線を合わせる。

 

「……生憎、僕の影分身は最大四人ではない。だから、時間切れに見せかけて消し貴様が隙を作るのを待っていた」

「俺様を、嵌めやがったのか!」

「ああ。僕は当時から月影衆の中で最も強く、頭領になっていた。だがあの時他の全員がかりで貴様を殺せなかったことを甘く考えてはいない。相当強いのだろうと思っていた」

「だから分身を潜ませてたってのか。クソッ、俺様としたことが」

「だが奥義を放つには他の分身の動きを止める必要があり、一体ずつしかできない。こうして一発目が入った今、あと何回耐えられるか」

 

 レラクルがそう告げた時、天井に姿を現した分身が奥義を放った。

 

「がぁ!! クソがっ! 最初の一撃で腕の腱をやりやがったな!?」

「当然だ。抵抗されては敵わない」

 

 オロチはだらりと下がった腕に悪態を吐き、身体を曲げ口で柄を咥える。そのまま身体を捻って刀を振り回し始めた。

 

「これでてめえの分身を八つ裂きにしてやるよぉ!」

 

 柄を咥えながら器用に喋るな。縦横無尽に振るうせいで俺達も避けないといけなくなってしまう。あと他人が咥えたモノを使いたくないなぁ。

 

「すまん、レラクル。その刀いらねぇわ。咥えてるし」

 

 俺は率直な気持ちを口にする。がっくりとレラクルが肩を落とした気がした。

 

「……わかった」

 

 まずオロチへと左から分身が迫る。だがヤツも刀を振り回しながらその遠心力を活かして分身を捉えてみせた。手で振るよりも遅いが分身には追いつき斬ってしまう。しかし消された分身とほぼ同時に逆側からも迫ってきており、奥義を使う。

 

「がっ……!」

 

 呻き声を上げたところで咥えていた刀を落としてしまう。そうなればもう、地べたを舐めるように咥え直す他ないだろう。それをヤツのプライドが許すかどうかは置いておいて。

 

「お、俺様は、まだ……」

「いや、終わりだ」

 

 オロチの執念をレラクルは静かな声音で切り捨てる。

 ヤツの背後に現れた分身が狙い、本体も駆け出した。そして同時に奥義を叩き込む。

 

「悔いて詫びろ。――忍刀・鎌鼬」

 

 前後から奥義を同時に受けたオロチは深々と切り裂かれ、力なく倒れ伏す。確実な致命傷だろう。

 

「……ふぅ」

 

 無事目的を達成できたからか、レラクルは肩の力を抜いてよろけると数歩進んだところで座り込んだ。

 

「……疲れた」

 

 仇討ちをやり遂げた直後の一言がそれかよ、と思わないでもないが。彼の中である程度折り合いをつけた上での討伐だったのだろう。そこがゼオと違うところなのかもしれない。

 

「……これ、惜しい武器だったなぁ。コンセプトは面白かったんだが」

 

 俺は死体の傍にある刀を、オロチが咥えていない部分を考えて持ち上げた。

 

「持ち帰ってシェロカルテに渡して、同じような武器を作ってもらうか」

 

 そうだな、そうしよう。まぁあいつじゃなくても、あいつの伝手で作ってもらえればそれでいい。

 

「……ァ」

 

 ふと、声が聞こえた気がした。あり得ないはずのことだったが、まさかと思って死体を見下ろす。……いや、もう脈はねぇぞ?

 

「……アァ、ガアァ!!」

 

 なにがそこまでヤツを駆り立てるのか、死んだはずの身体を動かして座り込んだレラクルに迫った。血塗れの身体で肘までを突いて進むオロチの姿はホラーだ。……チッ。余計なことをしてんじゃねぇよ。

 既に勝負は着いているというのに、往生際が悪い。俺は手に持っている刀を振るい、ヤツの真似をして刃を巻きつけるようにオロチの身体を止める。

 

「ガ、ァ……」

 

 ギリギリ、レラクルの眼前で止まってくれた。

 

「大人しく死んどけ」

 

 内心安堵しながら、俺は思い切り刃を引く。刃の当たっている箇所から切り裂き、完全にバラバラ死体と化した。そのせいでレラクルに大量の血がかかってしまうが、これくらいは大目に見て欲しい。

 

「危ねぇな。勝負着いたんなら、潔く死んでろ」

 

 俺は咄嗟に上手く刀が扱えたことにほっとしながら言って、レラクルに近づいていく。

 

「悪いな、結局手出ししちまった。まぁ死んだ後だからノーカウントにしといてくれ」

「あ、ああ。いや、助けられた」

「いいって。あいつを一人で倒した以上、お前は団員だからな。団長なら助けねぇと」

「そう、か。その話もあったな」

 

 彼は俺の言葉にそう言って、口元を覆う黒いマスクの下で微かに笑った、気がした。

 その後レラクルを回復し、オロチは倒したが領主はやらないのでレラクルの昔の知り合いに頼み込んで島を治めてもらうようにした。前領主になにかあった場合の領主として確保していた人物らしく、レラクルの生存を知って喜んでいた。

 とまぁほとんど前領主が慎重だったおかげで無事団員の確保と島の後始末を両立できた俺達は、今後のことを任せてさっさと退散することにした。

 

「言っておくが、僕は仕事の時以外戦わないからな」

 

 とは小型騎空挺に入って早々端の床に寝転んだレラクルの言葉である。

 

「僕は元来怠け者なんだ。のんびりさせてもらう」

 

 忍者の衣装を脱いで黒いジャージに着替えたレラクルは、これでもかというほどだらんとし始める。その様子を見て呆気に取られている者が多かった。今まではもっときびきび動く印象だったからな。

 

「別に構わねぇよ。どうせ空域越えたら忙殺できるくらい仕事やるから」

「……笑顔で恐ろしいこと言わないで欲しい。まぁ、それなら今の内にのんびりしている」

 

 そう言うと、彼はどこからか持ってきたなにかの動物を模したらしい抱き枕を抱えて眠り始めてしまう。

 

「……また、変なヤツ仲間にしたもんだな団長」

「大丈夫だ、そこにお前も含まれてる」

「おいそりゃどういう意味だ坊主」

 

 軽口を叩きながら出発の準備を進める。とりあえず新たな団員を確保できたので、シェロカルテの要望通り空域を越えて“蒼穹"の主力面子を探してやるとしよう。

 既に団員になる予定のヤツらの情報はシェロカルテから聞いている。ナルメアは俺がこれからリーシャのいるアマルティア島に行くと言ったらシェロカルテの方からアマルティアへ向かうように伝えてくれると言っていたので問題ない。

 

 アポロはどこにいるとも知れず、オーキス、ドランク、スツルムは“蒼穹”に同行しているはずだ。他の面子は今いるだけなので、仕方ないがアポロさんには留守番してもらおう。回収して戻ってこれたら、修理した騎空挺で一緒に旅する感じで。

 

「次の行き先はアマルティアだ。そこで二人の団員を回収する。それから白風の境に行って、“蒼穹”の連中を探す」

「了解だ、団長」

 

 小型騎空挺を操縦するザンツに告げて、次の目的地へと向かう。鍛える時間がないが以前のように強敵との連戦をするような事態にはならないだろう、多分。

 

 ……いや、あいつらと関わるってことを考えるとむしろ強敵連戦祭になるんじゃねぇかっていう懸念はあるんだが。あぁもう、嫌な予感しかしねぇなぁ。

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