ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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タイトル通り。
前話で合流したオーキスとフラウ達が合流するだけのなんの変哲もない話ですね。


自己紹介、つまり修羅場

 思わぬところでオーキス達と再会した俺は、三人と一緒に停泊させた小型騎空挺へと向かったのだが。

 

 当然のことながらオーキスを抱えての登場なのでジト目を向けられてしまったのだが。

 話が進まなさそうなのでオーキスを下ろし咳払いをする。

 

「情報交換、と行きたいが先に紹介からだな」

 

 四方八方から視線が突き刺さっているので流石に無視はできない。

 

「こっちの三人は俺が団を起ち上げる前に一緒に旅をしていたヤツらで、まぁもう一人いるんだが今はこの三人だけだな」

 

 まずオーキス、スツルム、ドランクを手で示す。

 

「……オーキス。こっちはゴーレムのロイド。ダナンの一番。よろしく」

 

 オーキスから名乗った。傍らに立つロイドを紹介するのはまだいいのだが、勝手に一番を名乗るのはやめて欲しい。ほら、三人がピリついてる。

 

「僕はドランクだよ〜。いやぁ、少し見ない間に随分と団員が増えたねぇ。伝説の傭兵までいるなんて、流石に予想してなかったかな〜」

 

 ドランクはいつもの軽い調子で名乗った。ちらりとガイゼンボーガを見ていたが、どうやら彼は有名人らしい。同じ傭兵だからかドランクだからか知っているようだ。

 

「あたしはスツルムだ」

 

 口数少なく端的に自己紹介をしたのは相変わらず無表情で素っ気ないスツルムだ。あ、そうだ。後で折を見てドランクがいなくて焦ってたってのを茶化してやろう。

 

「で、こっちが俺が旅の最中に出会ったり元々団員になる予定だったりした連中だ」

 

 集まった六人を手で示す。

 

「リーシャです、と言っても改めて名乗る必要もないと思いますが。秩序の騎空団との兼任にはなりますが、こちらの団を中心に考えてもらって構いません。……私の目が黒い内はふしだらなことは許しませんので、そのつもりで」

 

 三人とも面識があるリーシャが初めに名乗った。なぜかオーキスに対抗するようだったが。

 

「私はナルメア。ダナンちゃんとは半年ぐらい一緒に暮らした仲なの。一回会ってると思うけど、よろしくね」

 

 ナルメアは一応顔合わせたことくらいはあったかな。宴の時にだが。直接関わったのはオーキスだけか。しかしなぜ対抗するようなことを……。

 

「俺も面識あるんだが、ザンツだ。騎空挺の操縦なら任せとけ」

 

 オーキスは知らないかもしれないが、傭兵コンビは知っているザンツが軽く挨拶をした。

 

「オレはゼオってンだ。大将についてく者同士、仲良くしようぜ」

 

 ゼオは無邪気に笑う。この中ではオーキスの次に若いんだと思うと不思議な気分だ。

 

「僕はレラクル。忍者。諜報活動なら任せて」

 

 仕事モードのレラクルが冷静な声音で告げる。諜報活動と聞いてドランクの耳がぴくりと動いた。お前の悪巧みに使えそうなヤツだろ?

 

「吾輩はガイゼンボーガ。訳あってこの団に席を置くこととなった」

 

 ガイゼンボーガが名乗ったので、最後はフラウになってしまう。いや、言い争うことで話が逸れるだろうから先に名乗りたかったのか。

 

「私はフラウ。ダナンとは何度も夜を共にするような、親密な仲よ」

 

 直球だった。妖しく微笑んでオーキスを見据えている。リーシャはなにを想像したのか顔を赤くしており、ナルメアの目からは光が消えかけていた。オーキスも動揺はったようだが、

 

「……それなら私は、負けてない」

「へぇ? じゃあ私みたいに何日もずっと可愛がってもらったことある?」

「……む。ダナンは優しくしてくれる」

 

 妙な暴露大会と化し始めていた。リーシャだけがどんどん顔を赤くしていっている。ドランクはニヤニヤしているし、スツルムからは「お前なにやってるんだ」と責めるような視線を向けられていた。

 

「……自己紹介終わったんなら次いっていいか? 情報交換が本題なんだぞ」

「……じゃあ、どっちが多い?」

 

 話を変えるために言うが、オーキスからそれだけ答えてと言わんばかりに尋ねてきた。

 

「それは私も気になるわね」

 

 フラウは勝ちを確信しているのか余裕の表情だ。……なんだこれ。いやこれも俺がやってきたことの報いか。

 

「……日数ならオーキス。回数ならフラウだな。はいこの話題おしまいさっさと本題入るぞ」

 

 どっちが勝ちとも言わず、誤魔化して矢継ぎ早に言い話題転換を図る。

 

「え〜? 僕はこのまま続けてもらってもいいんだけど?」

「ドランク。ふざけたこと言ってると耳引っこ抜くぞ」

「酷っ! エルーンにそれは酷すぎない!?」

「わかったら早くしろ。じゃあまず、お前達からここに至るまでの経緯を説明しろ」

 

 軽口を叩き合って調子を戻しながら、ドランクに経緯を尋ねる。

 

「僕達はねぇ、海を越え山を越え、島を渡っては問題をすばばっと解決して……いってぇ! ちょっとスツルム殿?」

「時間がないんだ、ちゃんと説明しろ」

「……ドランクが白風の境に捕まったから“蒼穹”と助けに行って、その後山頂で瘴流域に呑まれて離れ離れになった。私達は白風の境にいた黄金の騎士に拾われて、協力してる」

 

 黄金の騎士ときたか。

 

「あ、因みに僕を捕まえたのが黄金の騎士の部下だったんだけどぉ。そこから逃げる時に取引してたんだよねぇ。協力するから今は見逃して! って」

「そうか」

「あれ〜? 責めないの〜?」

「お前がそうしたってことはそれだけ余裕がない状況だった、そうしなけりゃ全滅もあり得たってことだろ。だったら責めることはしねぇよ」

「……」

 

 俺の言葉にドランクは少し目を丸くした。

 

「まぁお前らが世話になったんなら俺も黄金の騎士に協力しねぇとな」

「そう言ってくれると助かるよ〜」

「で、それからは黄金の騎士に協力して色々やってたってわけか」

「そゆこと〜」

 

 黄金の騎士は確かアポロと因縁のあるヤツだったか。まぁとはいえ不義理を働くわけにもいかん。

 

「でね〜? 僕達はそれから色々協力してたんだけどぉ。それは置いといて“蒼穹”の軌跡でも語っちゃおっかな〜。あ、時間ないから小型騎空挺乗るよ?」

「わかったよ。で、行き先は?」

「レム王国の主島、ライヒェ島。黄金の騎士ちゃんは訳あってギルベルトに協力してるんだよねぇ。だから僕達もそこにお世話になってるってわけ」

「了解だ。全員小型騎空挺に乗れ。道すがら話を聞くぞ」

 

 俺は言ってドランクの言う通りに動く。さっきそうだが、俺とこいつの仲だからな。信用はしてる。

 

「すっかり団長っぽくなってるな」

「そうか?」

「……ん。皆に指示出してるとことか」

「そうかねぇ」

 

 あんまり意識してない、と言えば嘘になるかもしれない。多少は団員を引っ張っていけるようにとは考えている。とはいえそれっぽいだけで団長としてちゃんと振る舞えてるかはまた別なところだ。

 とりあえず時間がないらしいので全員小型騎空挺に乗り込む……いや狭ぇな。

 

「……場所がないから仕方がない」

 

 オーキスは先手を取るが如く胡座を掻いた俺の上に座った。他がむっとするがとりあえず「真面目な話だから後にしてくれ」と言い争いの火種を後回しにする。オーキスはご満悦な様子だ。ロイドもいるからホントに狭いし、そうせざるを得ないところもなくはないのだが。

 

「で、あいつらがなんだって?」

 

 小型騎空艇が発信したところでドランクに話を促す。

 

「“蒼穹”は瘴流域でバラバラになっちゃったんだけどぉ、まず団長二人とルリアちゃんにビィ君にカタリナさん。この五人はメルクマール島に流れ着いた。で、そこを占拠していた盗賊を偶然にも一緒にいたイデルバ王国将軍のカインと共闘して制圧、盗賊の頭のラインハルザを捕らえてイデルバ王国の首都がある、さっきまでいたグロース島に行ったと」

「そこからはイデルバ国王フォリアの命に従い、イデルバ王国の使者として中立の立場にある場所へ赴き交渉した。教えを広めるクルーガー島、星晶獣の楽園ベスティエ島。この二つだな」

「……クルーガー島で一番偉い賢者と呼ばれるゼエンとそこにいたイオをギルベルトが拉致。レム王国にいたラカムはグランサイファーを人質に取られて交戦。ラカムから話を聞いた後二人を助けるためにレム王国軍と戦闘して、グランサイファーを取り返した」

「その後一旦グロース島に戻ってからベスティエ島に向かったって順番だね〜。ベスティエ島にはいっぱい星晶獣がいるんだけどぉ、そこで騎空士として普通に活動してたオイゲンさんと再会。けどそこに黄金の騎士と緋色の騎士を従えたギルベルトとイスタバイオン軍がっ! ギルベルトはここだけの話真王の代行者として力を持っててねぇ。星晶獣を無理矢理従わせることができるみたいなんだ〜。その力でベスティエ島に混乱を巻き起こして、その隙にベスティエ島で一番の星晶獣エキドナが封印してるっていう幽世の門を開かせ、幽世の力を手に入れるのが目的だったんだよね。で、まんまと幽世の力を手に入れちゃいました〜っと。もちろん“蒼穹”も抵抗はしたみたいだけど、まぁ七曜の騎士が二人もいたら勝てないよね〜」

「それからクルーガー島のゼエンに教えを請い、クルーガー島の修行者が目的にしてる教えの最奥に至って七曜の騎士に対抗する力を得ようとしたんだ。それがあそこにいなかったラカム、オイゲン、イオ、ロゼッタだな」

「……それからはさっき見た通り。戦争に巻き込まれて、レム王国まで移動中」

 

 おそらく大分端折ってはいるのだろうが、長い話を三人が示し合わせたように語ってくれる。

 

「ゼエンってヤツは賢者なのか」

 

 だとしたら俺も会っておいた方がいいよな?

 

「そうだよ? クルーガー島で一番偉い、教えを広めてる人が代々賢者って呼ばれてるんだってぇ」

「そうか」

 

 どうやら違うらしい。アーカルムシリーズと契約した賢者ってわけじゃなさそうだ。だが七曜の騎士に対抗するための力として教えの最奥ってヤツに至るんならいい戦力アップになりそうだ。話を聞いてみるのもいいか。まぁ、流石に今すぐは無理だろうが。

 

「“蒼穹”の状況はこんなところかな~。他に聞きたいことある?」

「ああ。ギルベルトってヤツはなにがしたいんだ?」

 

 七曜の騎士と二人も従え、真王の代行者で、幽世とやらの力も手に入れた。レム王国を導くためってんならもっと他にやりようがあるだろう。

 

「さぁ? それも僕達の調べてる内容ってとこかな~。少なくともレム王国のためじゃなくて、自分の目的で動いてるのは確かだよねぇ。だって今頃レム王国は、イスタバイオン軍に制圧されてる頃だしね」

「イスタバイオン……別空域の国か」

「そそ。アウライ・グランデ空域にある国の一つで、黄金の騎士がいるところ。あと真王もいるって話だねぇ。なんにせよギルベルトは真王の手駒の一つではあるみたいだよ~」

「ふぅん」

 

 真王ってヤツも大変だな。わざわざ他空域にまで手を出すなんて。

 

「なるほど。で、これからはどうするように言われてる?」

「ん~。集めてきた情報を渡して、それから指示を仰ぐって感じだね。集めろって言われてた情報は大抵集まったしね」

「そうか」

 

 大体、ナル・グランデ状態と“蒼穹”の軌跡はわかった。

 

「レラクル。グロース島で得た目ぼしい情報は?」

「ほとんどない。今その人達が言った情報の他だと。ただ情報によるとレム王国との戦争が始まる直前に、イデルバ王国の将軍副官であるレオナがフォリアに勝負を挑んだらしい」

「ああ、なるほど」

 

 ってことは多分あいつがレオナってヤツだな。

 

「とはいえ決着はつかず、国王フォリアはギルベルトに身柄を渡し、レオナは今のところ姿を現してなかった、かな」

「ああ。それは知ってる。倒れてたのを見かけたからな」

「そう。じゃあ他には情報ないかな。フォリアが現れず、噂が流れ始めてから彼女の下にいた将軍達は意見が合わず対立している。助けるか助けないか、なんかで今も議論しているみたいだ」

「今も? ってことは近くに影分身を残してきてるのか」

「うん。影分身とはどんな遠距離でも意思疎通が取れる。まぁその分一時間程度で消えちゃうけど。それでも直近の監視ができるから楽でいいでしょ?」

「ああ」

 

 流石に情報量としてはドランク達に及ばなかったが、彼なりの得手を見せてくれた。思っていた以上に有用かもしれない。

 

「他に情報がなけりゃ、これで情報交換は終わりってことでいいか?」

 

 俺は全員の顔を見渡して尋ねる。しかしドランクが手を挙げた。

 

「はいはーい。ちょぉっと聞きたいんだけどぉ。フラウちゃんとガイゼンボーガさんって同じような服着てるよねぇ。どういう関係なのかな~って」

 

 まぁ、それは気になるか。

 

「……私も気になる」

 

 続いてオーキスもじっと見上げてくる。……まぁ、言っていいところまでは言うかぁ。

 

「フラウとガイゼンボーガは、特別な星晶獣の契約者だ。特別な星晶獣は十体いて、それぞれの契約者を賢者って呼ぶらしい。丁度十人いるらしいし、“蒼穹”の十天衆に対抗するにはいいヤツらかなぁと思って集めてるんだ」

 

 一人を除いてな。

 

 とりあえず俺が今の世界をぶっ壊して新世界を創ろうとしている星晶獣と契約しようとしてるってことは言わなくていいだろう。

 

「……星晶獣。全然気配がしない」

「そうなのか。まぁ特殊な星晶獣みたいだし、契約形態が普通じゃないのかもしれないな」

「……そう」

 

 思わぬ情報が引き出せた。つまり俺がワールドと真の契約を結んだところで、オーキスにバレる心配はないということだ。いやまぁ、バレたらバレたらで正直に打ち明ければいいだけの話なんだが。

 

「素でも強いが、星晶獣の力を使うことでもっと強い。十天衆の全力全開ってヤツを知らないからなんとも言えないが、それと比肩するくらいには強いと思うぜ。俺もClassⅣでギリって感じだったしな」

 

 つってもフラウとしか全力で戦っていないが。

 

「へぇ? それは僕達も負けてられないね、スツルム殿?」

「ああ。だがあたし達もこっちに来て色々経験してきた。そう突き放されはしない」

 

 しばらく振りなので、その辺りも気になるところだ。

 

「俺だって色々あったからまた強くなってると思うぜ」

「そうなんだ? じゃあダナンの話も聞かせてよ~。ここに来るまで、なにしてたのかとかねぇ」

 

 ドランクは面白がって聞いてくる。こっちも聞かせてもらったから、俺も話すとするか。

 

「俺の方は簡単だ。空域を渡るために空図の欠片を集めてた。各島々を回ってな。その道中でアマルティアから逃がしたゼオと再会したりここにいない賢者と遭遇したりしたな。残る空図の欠片を探すために“蒼穹”が通った軌跡を辿るのが効率いいから、あいつらがどこへ行ったかを元にメフォラシュに行った。丁度お前らが白風の境に向かった直後だったみたいだけどな。それから後を追わずにダイダロイドベルトに向かうためにザンツと協力して、騎空挺を確保しに行った先でフラウと出会い、騎空挺を直しに行ったガロンゾでゼオを引き入れ、そこでグランサイファーが数日前に盗まれたって話をシェロカルテから聞いた。あいつから“蒼穹”の連中が白風の境にいるようなら迎えに行って、空域を越えたなら安否確認をしてくれって依頼を受けてな。まぁお前らもいるしあいつらがそう簡単に死ぬとは思わなかったから、強いヤツの噂聞いてたそっち先行ったんだけどな。そこでレラクルと出会った、と」

「ひっど~い。もうちょっと僕達の心配してくれても良かったんじゃないの~?」

「こうして生きてるんだから俺の予想は間違ってなかったってことだろ?」

「それはそうだけどねぇ」

 

 それに、グランとジータ達がいて死んだんなら俺がいたとしても一緒に死ぬだけの話だろうしな。

 

「で、レラクル仲間にしてからナルメアとリーシャに声かけて白風の境へ行き、最後の空図の欠片を手に入れて空域越えたってわけだ。まぁ空域越えて早々戦争に巻き込まれる辺り運がねぇな」

「……でもダナンが空域越えてすぐ再会できたから、運がいい」

 

 俺が言うと、オーキスに否定される。なるほど、そういう見方もあるか。

 

「それもそうだな。……で、戦争にいたガイゼンボーガが賢者だったから引き入れたって感じだ」

「そこはギルベルトも誤算だったろうねぇ。ま、フォリア様の噂だけで充分な効力を発揮したんだけど」

「ふぅん。じゃあ手駒を一つ奪っちまったわけか。しかもイスタバイオン軍と協力してるって考えるとギルベルトとはもう対立しちまってるかもな」

「そうなの~?」

「ああ。だって白風の境でハル様ってヤツを囲ってた連中をイスタバイオン軍倒して解放しちまったし」

「あ~。まぁいいんじゃない? 黄金の騎士様も目的の人物さえ手に入れば、特に用はないでしょ」

「だといいんだがな」

 

 こいつらが世話になった礼はちゃんとしなきゃだが、既に手を出しているのがちょっと不安だ。まぁなるようになるだろ。

 

 ということで、その後も他愛のない話をしながらレム王国へと向かった。

 ……オーキスをいつまでも抱えていることに不満を漏らし始めて言い合いが始まったのは、ちょっと他所でやって欲しいと思ってしまった。一応渦中の人なんだが。




若干“蒼穹”の説明がくどくなりつつあります。
本編暁の空編を知っているのであれば全然読み飛ばせます。ここまでの旅路のおさらいなので。
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