ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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タイトル通りの、四人目です。めっちゃ強引にいってしまいました……。

というかこの人って立場的に引き入れるのが難しくて難しくて。
結局割りとフェイトエピソードに沿った形でいきました。


隠者の出会いは唐突に

 ゼオ達と合流しようと思った、のだが。

 

 こんな時でもカードは熱くなる。今までは弱かったのか気づかなかったが、どうやらこの島に賢者がいるらしい。

 

「あ、悪い。ちょっと用事できたから俺寄り道するわ」

「えっ?」

「隠し事はダメだからね?」

「賢者がいるっぽいから会いに行くだけだ。別に危険なことするわけじゃねぇよ」

「そっか。じゃあ後でね」

「ああ」

 

 というわけで、二人と分かれてカードの熱を頼りにその辺をうろちょろしてみる。フラウの時のように様子を窺うようなことはしていないのか、俺が歩けば距離が縮まっていた。

 そうして手に持ったカードの熱を頼りに彷徨っていると、

 

「あん?」

 

 思わず目を細めて怪訝な声を上げてしまう。

 それは人が宙に浮いていたから、ではなく。

 

「ん~むにゃむにゃ……」

 

 その浮いている爺さんが眠っていたからである。

 

 今まで見てきた賢者達同様、赤いケープをつけた紺色のローブを纏っている。白く長い鬚と眉毛が特徴的で、頭の天辺から一房だけ伸びた白髪もそれなりに長い。一目でわかるようにハーヴィンの男性だ。賢者と対面したからかワールドのカードから熱が去っていった。

 

「……いやこんな寝てるヤツとどう会話しろってんだよ」

 

 どうしたらいいモノか、と頭の後ろを掻く。試しに叩き起こしてみるかと思ったのだが。

 

「心配はいらんぞ、ワールドの契約者」

 

 なんと爺さんが喋った。しかも寝言という感じはなくはっきりと応えた形だ。

 

「……寝ながら喋っただと?」

「むにゃむにゃ……ワシは大魔導士エスタリオラと申す者。早速じゃがワールドの契約者よ。ついてくるのじゃ」

 

 俺が驚く間もなく、エスタリオラと名乗った老人はまた別の絵柄が描かれたカードを取り出した。光が放たれたかと思うと、確かロベリアにやられた時と同じく場所が移り変わる。覇空戦争時代を模した、とかあいつは言ってやがったか。変わり果てた景色を眺めるのもそこそこに、俺はエスタリオラへと鋭い視線を向ける。

 

「どういうつもりだ、爺」

「……すまんが、ワシに協力しなければここからは出られんよ。ここを出たくばワシの言う通りに、ヤツらの企みを阻むのじゃ」

 

 眠っているのは変わらないが、神妙な声音だった。

 

「なに?」

「お主がどこまでワールドから計画を聞かされているのかは知らん。じゃがお主がカードを集めワールドの力を得ていくことが、ワールドが全能を発揮し新世界を創造するその目的に通ずる。ワシは、ワシの契約主含め『アーカルムシリーズ』の星晶獣の企みを良しとはせん」

「だからワールドの契約者である俺を、阻む側に協力させようってか。とんだ爺だな」

 

 要は、こいつには俺にカードを渡すつもりがないということでもある。好きに生きているヤツらとばかり出会っていたが、こいつはまた厄介だ。なまじ頭がいいだけに、騙されているということもなく企みを知った上で阻もうとしている。

 

「だがそれならなぜ俺を殺さない。協力させるより、ワールドが力を得られないように契約者を端から抹殺した方が確実だろ」

「それはそうじゃが……ワールドは兎も角、お主に恨みはないでの」

「そうかい」

 

 つまりカードを獲得するにはこいつから信頼を得る必要があるのだが、こいつはワールドの企みを阻止するため俺にカードを渡す気がない、と。

 

「……しょうがねぇ。依頼を、聞こうか。悪いがさっさと出たいんでな」

「それでこそワールドの契約者。では頼もうかの」

 

 一応、ロベリアの時に入ってわかったがここでは時間の経過がない。それか遅い。後者だった場合何日もかけてしまうと何時間もいないことになってしまうので、手早く片づける必要があった。

 

 

 それから俺は一日中駆け回ってエスタリオラの依頼をこなしていくことになる。……時折肩叩きが混じっていたのは老人故か。

 

 そして二日経った昼。一度作ったらその後は毎回作れと言ってきた俺の飯を食べた後に、エスタリオラは言った。

 

「お主、なぜそこまで早く元の世界に戻ろうとしておる」

「あん?」

「ワシに協力するしか道はないとしても、ワールドの目的である新世界創造が叶った時、今の世界は消滅する。そんなワールドに協力する契約者は、少なくとも世界の有無に興味のない者だと思っておったのだが」

 

 彼の言うことは、ほぼ正しい。俺は世界に未練なんてない。世界を守ろうとは思わない。

 

「そんなのは簡単だ。俺は別に、世界に興味はねぇからな。だが……俺の周りにいるヤツは別だ。あいつらだけは、俺が、例え世界を敵に回したって守り抜く。そう思ってるだけの話だ」

「……」

「だからワールドがこの世界を滅ぼしたって別にいいんだよ。もちろん、俺の障害になるなら話は別だがな」

 

 ワールドがもし新世界とやらに俺達を連れていかず、ただあいつのためだけの世界を創るならそれを許すわけにはいかない。世界の全てを守るなんて豪語はできないが、少なくとも自分の周りにいるヤツくらいは守りたい。

 

「……そうか」

 

 エスタリオラはなにを思ったのか、神妙な面持ちで頷いた。

 

「……他の賢者とは、どんな様子じゃ?」

 

 世間話の体で尋ねてくる。やはり誰も関わりはないらしい。

 

「一人目は快楽殺人鬼。二人目は生まれ持ったチカラに悩む女性。三人目は重度の戦闘狂。四人目は眠りながら話す爺さん」

「ワシで四人か……しかし妙な連中ばかりのようじゃな。ワシも大概じゃが」

「賢者ってのはどうも変なヤツが多いみたいだからな。こうして話が通じるというか、まともな感性を持ってるだけでも珍しいんじゃねぇか?」

 

 ワールドの目的を阻止してやろう、ってヤツはいなかった。同調、言いなり、反発。なんにせよな。

 それからも他愛のない雑談を続け、午後の依頼のために少し遠出することになった。二日目だが元の場所ではどれだけの時間が経過しているのか見当もつかない。もし星晶獣によって変わるのであればできる限り早くここから出るべきだ。

 

 と焦りつつも落ち着いてこなしていたのだが。

 

「――――」

 

 爺さんの使っている小屋の方から轟音が聞こえて、なにが起こったのかと遠くから眺める。ここからだとよく見えないが、巨大な影があるように見えた。

 

「……チッ」

 

 舌打ちして、なにか予想外のことが起きているのだと思い駆け出した。爺さんになにかあったのなら、俺がここから出られなくなる可能性がある。すると走っている最中突然頭に痛みがやってきた。

 

「っ……!」

 

 思わず立ち止まる。

 

『ワシは愚かじゃった……。全ては驕り、顧みなかったワシの失態じゃ』

 

 エスタリオラの悲痛な声が耳に聞こえてくる。……クソッ、なんだこれ。

 

「……頭痛ぇ。幻聴まで聞こえてきやがる。あの爺さん、なにやってやがんだ」

 

 言って歩を進める。すると少しずつではあるが頭痛が酷くなっているのがわかった。これ以上進むなってか?

 

「上等だ」

 

 だが俺はニヤリと笑うと再び駆け出した。当然エスタリオラの方へと向かう。頭痛は増すばかりだが、俺はカードを集めて賢者と関わりを持つと決めている。そのためには、あいつのカードも必要だ。

 

 進めば進むほど頭痛は酷くなり、幻聴が頻繁に聞こえてくるようになった。脳裏に一瞬、おそらくエスタリオラの記憶と思われる場面が映し出されていく。

 

 とある国の宮廷魔導士として研究を重ねていたが、その研究成果は全て国の者の権謀術数のために使われていたこと。

 それらの研究によって反国王派の首謀者に祀り上げられ、妻を人質に取られたこと。

 そしてその妻が殺されたこと。

 結果エスタリオラの中にドス黒い感情が湧き出てしまい、全てを費やしてでも国を滅ぼしたい衝動に駆られたこと。

 その自分では制御できない激情に駆られて『アーカルムシリーズ』の星晶獣であるテンペランスに縋ったこと。

 そうしてエスタリオラは感情をテンペランスに節制され、妻の死にも波風立たぬ精神を手に入れたこと。

 節制によって生命活動を極限まで減らし、常時睡眠することによって長生きさせられていること。

 

 それから。

 

「憎い! 憎い! 意のままに国を操ろうとする国王も! ワシの研究成果を掠め取り悪用する者共も! ……愚かで救いようのない己も……! 全てが憎いいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 テンペランスに先程、取り上げた感情を返してくれと頼んだことも。

 

「……」

 

 憤怒の表情で魔法を撒き散らし自分が使っていた小屋を消し飛ばした彼は、身を焦がす激情に支配され全てに憎悪を向けていた。その傍らには、脳裏で見えた『アーカルムシリーズ』の星晶獣テンペランスが佇んでいる。女性の姿をした星晶獣だ。両手に水瓶を持っている。

 

「……まぁ、偶には感情を吐き出さなきゃいけねぇ時もあるか」

 

 俺は言って、革袋を下ろし腰のパラゾニウムを手に取った。

 

「あんたの怒り、俺が受け止めてやる。あとついでにそこの星晶獣もムカつくから倒すな。痛いだろうが、加減はしねぇぞ」

 

 俺は言って、【ウォーロック】を発動する。魔導士に対抗するための魔法と、近接戦もこなせることから適任だと考えたのだ。

 

「ワシの魔法で、滅びるがいい!」

「聞けない相談だな!」

 

 エスタリオラが杖を振るうと特大の竜巻が頭上に現れ俺へと向かってくる。竜巻の下から短剣を振り上げ魔力の刃を飛ばすことで両断した。だがエスタリオラの怒りはそんなモノではない。次々と魔法を使ってくる。俺はそれに対処しながら隙を窺った。テンペランスは見守る気なのか動かない。だが油断はしない。この状況を作り出したことがこいつを信用しない理由になる。

 だがエスタリオラの猛攻に対処しながら星晶獣と戦うのはキツい。攻撃が苛烈な彼から倒してしまおう。

 

「死んでしまえ!!」

 

 地面を抉る竜巻が四つ。俺は短剣を持っていない右手を翳して無風の光景を想像し、力を行使する。一気に無効化して素早く距離を詰めるがエスタリオラは自身の周りに風の球体を張った。エーテルブラストを放つが球体に辺り中に入った傍から切り刻まれていった。近寄る者を拒絶するような防壁だ。

 魔法では相手の方が上。だとしたら近接でぶん殴るのが一番。それを彼は俺より早く理解したのだろう。だが誤算だったな。

 

「【レスラー】」

 

 俺はパラゾニウムを軽く放り投げると『ジョブ』を変更して左拳を握り込む。そして風の防壁に突っ込む形で拳を放ち、切り刻まれるのも構わずエスタリオラの顔面に叩き込んだ。

 

「がっ!?」

 

 流石に予想外だったのか彼は吹き飛び、受け身も取れず地面に激突してしばらく転がった。すぐに【レスラー】を解除してパラゾニウムを掴む。

 

「【トーメンター】」

 

 俺は【アサシン】の上位『ジョブ』、EXⅡの【トーメンター】を発動する。

 グランやジータでも変わらぬ漆黒の衣装。漆黒のマントの内側には様々な拷問器具が吊り下げられている。首には枷のようなモノが嵌められており、左手に持った短剣とは別に右手に鎖のついた取っ手がある。鎖の先には重いアイアンメイデンの頭部が繋がれていた。

 

「素直に謝罪なさいな。そうすれば苦痛を受けることはありません」

 

 俺はテンペランスへとそう告げる。だが大人しくするはずもない。

 

「ワールドの契約者。何故邪魔をする」

「私は別にあなた方星晶獣のことなどどうでもいいのです。ただ、守りたい人達が無事でいれば」

「……ワールドの契約者であっても愚昧さは変わらぬか。ここで露と消えるがいい」

「抵抗はオススメしませんが、仕方ないでしょう。存分に甚振ってあげますね?」

 

 俺はテンペランスへとにっこり微笑んだ。制御できない場合はただの拷問厨で誰彼構わず拷問し悲鳴を聞きたがる。……ロベリアに似た気配を感じるので遠慮願いたい状態だ。

 とはいえ拷問官の性分は変わらないのか、Sな性分が顔を出す。イジメるなんて俺の性質じゃないってのに。

 

 テンペランスは臨戦態勢に入り風と水を操って俺に攻撃を仕かけてくる。星晶獣だけはあって強いが、果たしてエスタリオラとどっちが強いかは悩みどころだ。大魔導士を名乗るだけはあって凄まじい威力だった。俺はまともにやり合わなかったが。

 

 投げナイフを使って逸らそうとするがなかなか強力なのか意味を成さない。

 【トーメンター】は【アサシン】の暗器と同じく秘器というアイテムを駆使して戦う『ジョブ』だ。使えるアイテムの効力が上がっている。『ジョブ』全体で見ても一つの『ジョブ』でできる幅が広いのは間違いなかった。

 

「リフレイン」

 

 秘器の一つを使用する。【クリュサオル】のデュアルアーツと同じように奥義を一度撃った後もう一度発動できるようになる。

 

「アポクリファ+」

 

 敵の攻撃を避け、隙を窺いながらも着々と準備を進めていく。奥義の火力を高める効果だ。

 

「オーバーパワー」

 

 普段以上の力を発揮することができる効果。【アサシン】は素早く動けていたのだが、【トーメンター】になるとアイアンメイデンの頭部が重いので動きが鈍る。まぁ身体能力の高まりが増すので引けを取らないぐらいにはなるのだが。

 

「ミゼラブルミスト、アーマーブレイク」

 

 【トーメンター】の力だけでなく、敵の防御力も下げておく。

 

「キリングダガー・B」

 

 【義賊】などが持つブレイクアサシンと同様の効果を付与し、全身に赤雷が迸る。これで準備は完了だ。

 

「麻痺針」

 

 トドメの基点となる針を投擲してテンペランスの動きを止める。星晶獣さえ麻痺して動けなくなる強力な効果を持っている。

 

「睡眠針」

 

 任意の弱体効果の重ねがけ。これが【アサシン】や【トーメンター】の強いところだ。麻痺はかかっている間行動を阻害し、睡眠は攻撃を与えるまで動きを封じその上無防備になるためダメージが上がる。

 

「石化針」

 

 石化は動きを封じる上攻撃すると砕け散りダメージが上昇する。

 ここでテンペランスは無防備にも動きを封じられた状態で硬直した。短い間の効果になるので一気に叩きかけよう。

 

「リゾブル・ソウルッ!」

 

 強化を重ねた上での奥義。闇の斬撃が襲うとテンペランスの身体が脆くも崩れ去る。だがそれで終わりではない。

 最初に使ったリフレインの効果より、

 

「リゾブル・ソウル」

 

 もう一度奥義を叩き込む。威力は下がってしまうが弱体効果を重ねた今の状態には効くだろう。

 そのまま攻撃し続けていると、弱体が終わる前にテンペランスの身体が粉砕され切った。

 

「……ふぅ」

 

 一息吐いて『ジョブ』を解除する。テンペランスは倒したので、エスタリオラの方へと歩く……ヤバいな。血塗れで倒れている。加減する余裕がなかったとはいえ、やりすぎたか。

 

「悪いな、爺さん。強く殴りすぎちまったみたいだ」

「……むにゃむにゃ」

「寝てんじゃねぇよ!」

「すまんのぅ。だがこれでワシはまた眠りに着いてしまった。ワシとテンペランスは運命共同体、一蓮托生。お主の技、痛かったぞ」

「そりゃすまん」

「じゃが死にかけの老体でもできることはある」

 

 回復しようかと思ったのだが、妙に真面目なエスタリオラの声を怪訝に思った直後彼の身体から絶大な魔力が迸る。

 

「お、おい。なにしてんだ?」

「ワシの残り全てを費やして、ここに蓄えた情報を全て消失させる」

「なに?」

「……付き合わせて悪かったの。老人からの最期の願いじゃ。ワールドの新世界創造を、阻んでくれんか」

 

 覚悟を決めたらしいエスタリオラの様子に、しかし俺は首を振った。

 

「ワールドが世界をどうしようがどうでもいい。だが、そんなことよりも大事なことがある」

「なんじゃと?」

 

 目を見張るエスタリオラに対して屈み、手を伸ばす。

 

「言っただろ。俺は世界なんてどうでもいい、人を助けたいだけだって。だからまぁ、なんだ。お前は世界のために死ぬことはねぇよ」

「……」

「カードを渡してくれ。お前の危惧するところはわかるが、俺は俺のために力を使う。俺がワールドの力を使って、ここを消失させる」

「……」

 

 エスタリオラは眠っているままだが、驚いているようだった。

 

「ワールドが俺の仲間に手ぇ出すってんならあいつは俺の敵だ。そん時は――俺と世界(ワールド)を滅ぼそうぜ」

 

 俺は笑って、手を取ってくれるように差し伸べる。エスタリオラは驚いた様子のままだったが、やがて魔力を収めて懐からカードを差し出してきた。

 

「……敵わんの。もしこれでお主がワシを騙していたら、お手上げじゃ」

「はっ。俺がワールドに操られてあいつの思う通りに動いてるかどうかくらい、研究に歳月注ぎ込みまくった偏屈爺だってわかんだろ」

「お主口に容赦がないのぅ」

 

 俺は差し出されたカードを掴む。するとワールドの力がまた一つ解放されたのがわかった。

 

「……これならいけるか。――無に帰せ」

 

 分析の把握範囲が格段に広がっているのがわかった。七枚とか集めたら空域全てを把握できてしまえそうだ。

 この記憶世界の構造など全てを把握し、分析する。今の俺なら問題なく消失させられることがわかり、実行する。

 世界は端から金の粒子へと形を換えていく。丸々一つが消失し、元のライヒェ島に戻ってきた。

 

 爺さんが血塗れのままだとわかり、【セージ】になって回復させる。だがぴくりとも動かない。

 

「……むにゃむにゃ、すぴー」

「寝てんじゃねぇこら」

 

 俺はエスタリオラの身体を踏みつけようとするが、

 

「ひょい~ん」

 

 と浮遊して避けられてしまう。……意識あるんじゃねぇか。

 

「……てめえこら、寝たフリとはいい度胸だな」

「ワシの特技じゃよ」

「いつも寝てんだろうが」

 

 クソ、記憶に触れて色々わかったとはいえ、やっぱり変な爺だ。

 

「愚昧なる我が契約者、及びワールドの契約者よ」

 

 声がして思わず飛び退くと、傍にテンペランスが佇んでいた。無傷の状態だ。確か倒したはず、だが。確かエスタリオラは運命共同体とか言っていたな。彼が完治したから、復活したとでも言うのか。

 

「ワールドの呪縛から、これより解き放たれた。ワールドの契約者によるモノとは思わず」

「ワールドの呪縛? そういや他のヤツから『アーカルムシリーズ』はワールドが創った星晶獣だとか聞いた気がするな」

「肯定する。我らはワールドに創られたが故、ワールドには逆らえぬ」

「それを俺が解き放ってしまった、と。まぁいいだろ、不可抗力だ」

「テンペランス。ワシとお主は一蓮托生、死なば諸共。ワールドの呪縛から逃れ得たと言うのなら、ワシと共に来い。ワールドの野望、阻止してくれようぞ」

「契約者が目の前にいるんだがな。まぁそれなら丁度いい、俺の騎空団に入らねぇか? 監視にもなるしな」

「自分で言うかの。……良いぞ。この大魔導士エスタリオラ、お主の力となろう。共に、世界を倒す日を待っておるぞ」

「ああ、よろしくな」

 

 こうして俺は、四人目の賢者と遭遇し三人目の賢者の仲間を手に入れた。カードも四枚目と、折り返しが近い。なんだかんだ俺も運がいいのかと思い始めている。

 

 エスタリオラに確認したところカードの中に入っていた時間は僅かにも満たない時間だけとのことだったので、すぐに仲間達と合流した。そして自己紹介を済ませてそれぞれにあったことを確認し合うのだった。


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