ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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トキリ君のキャラ紹介でも良かったんですが、キリが悪かったので次にします。
トキリの続き、プラス次のオリキャラになりますのでご注意を。

そしてそのオリキャラの話が終わるので、明日明後日とキャラ紹介が続きます。


蜘蛛の子

「ほら、土下座しろよ土下座」

 

 騎空挺の甲板の上、共に行動している者達が全員集まった中で俺はトキリにそう告げた。

 

「……完全にダナン君が悪役に見えるんだけど」

「……普段ならそれでいいのですが、今回は向こうが人斬りですからね」

 

 比較的常識人枠であるレオナが苦笑し、アリアも同意していた。……おいこら、「普段ならそれでいい」ってなんだよ。

 

「……なんで僕が」

「悪いことをしたなら謝るのが筋だ。お前は人を殺して回った。なら最大級の謝罪を要求するのは当然だろ?」

「だとしてもなんでこの人達に……」

「これから一緒に旅する間柄だしな。蟠りは極力なくしたい。なにより直接謝らせに行った場合、お前は殺されるだろうしな」

「……」

 

 想像はできたのか黙り込むトキリ。俺はそんな彼に、にっこりと声をかける。

 

「なぁ、トキリ。お前自分の立場わかってるのか? ……死にたくないなら、ちゃんと言うこと聞いておけよ?」

「っ!」

 

 声のトーンを下げてつけ加えるとびくっと身体を震わせていた。アリアは俺に呆れた目を向けてはきたが、相手が相手だからか口出ししてこない。

 

「……わかったよ。やればいいんでしょ」

 

 渋々といった感じを出しながら、トキリは甲板の上で正座をして両手を突くと腰を折って頭を深々と下げた。

 

「これでいい?」

「ああ、土下座はな。だが謝罪の言葉が足りないよなぁ。『剣士の剣術を真似して殺人なんてもうしません。相手を甚振って屈辱に歪む顔を見て愉悦に浸ることもしません。どうかこの船に置いてください』だ」

「…………剣士の剣術を真似して殺人なんてもうしません。相手を甚振って屈辱に歪む顔を見て愉悦に浸ることもしません。どうかこの船に置いてください」

 

 とんでもない棒読みだった。悪いと思っていないと取られてしまう声音だ。

 だから俺は下げられた頭を踏みつけた。

 

「痛っ!」

「当然だ。お前には反省の色が見えない。もっと心を込めろよ、死にたいのか? わかってねぇな、やったことには責任が伴うんだよ。お前はその点、こんな真似をされても文句が言えない立場だ」

「っ……! ……剣士の剣術を真似して殺人なんてもうしません。相手を甚振って屈辱に歪む顔を見て愉悦に浸ることもしません。どうかこの船に置いてください」

 

 今度のは心が込められていた。まぁ本当に反省しているかどうかは怪しいところだけどな。

 

「よし。じゃあこいつを踏みつけるも唾吐きかけるも好きにしていいぞ」

 

 俺は足を退けて他の面子に顔を向けて言う。……あれ、なんでちょっと引いてるの?

 とはいえ俺の行いで充分だと見たのか、誰もなにもしない。かと思っていたら一人だけ歩み出た者がいた。

 

「無様だね、自称天才剣士クン」

 

 カイムだ。

 彼には心がないのでトキリの頭を躊躇なく踏みつけた。屈辱に彼が震えているのを冷めた目で見下ろしている。

 

 カイムが足を下ろしてから、

 

「顔を上げていいぞ、トキリ。これを機に心を改めるように」

「……」

 

 俺に言われて顔を上げたトキリが全員睨みつけるような形相だった。まぁそう簡単には折れないよな。

 

「さて。この船に同乗する中で、一つだけお前に許可してやろう。――四六時中、全員お前の挑戦は受けて立つ。どんな時でもかかってこい。ここにお前程度に負けるヤツは存在しないからな」

 

 俺は不敵に笑って告げた。

 

「あ、ただ最初はさっきお前の頭を踏みつけたカイムにしてくれ。いいだろ、カイム?」

「うん、いいよ」

「ってことでこれからよろしくな。最弱からのスタートの、自称天才剣士クン?」

「……っ。いいよ、やってやる。一人残らず、殺してあげるよ……!」

 

 トキリは俺の言葉に笑って返してきた。……だから無理だって。『ジョブ』なしの俺にすら勝てないのに。

 カイムを最初にした理由は簡単だ。トキリより年下で、真の天才だから。完膚なきまでにプライドをべきべきにへし折ってくれるだろう。

 

「やる気満々だね。じゃあ早速僕と戦ってみる? 勝てないだろうけど」

「いいよ、その余裕ぶった顔を歪ませてあげる!」

 

 ということで二人の勝負が始まったのだが。

 

「もう終わりにする? 降参するならやめてあげるよ」

 

 数分後には、無傷のカイムとボロボロになったトキリがいた。まぁ天才としての格が違うのだろう。というかうちに天才が多すぎてトキリ程度では相手にならないと思っている。

 

 俺は『ジョブ』持ち故にある程度才能があるし。ナルメアは感覚派の天才だし。アネンサは生まれながらの強者だし。レラクルは若くして忍者の頭領になれるほどだし。フラウもアネンサと同じく生まれながらの強者だし。レオナも思っていたより強いみたいだし。アリアは七曜の騎士だし。

 

「……参った」

 

 悔しそうではあったが、勝ち目がないとわかってか降参を口にした。カイムにそのつもりはなかっただろうが、負けを自ら口にさせるというプライドに効果的なことをさせている。

 

「うん、いい判断だね。勝てないとわかったら僕に挑まないでね。無駄な時間は過ごしたくないから」

 

 カイムはあっさりと言って臨戦態勢を解いた。

 

「お前が挑んでついた傷は治さないから、存分に敗北を噛み締めろ」

 

 トキリに告げて、身体を休ませようかと自室に戻る。

 それからというもの、トキリは最初一巡するよう全員に挑み全員に漏れなくボコボコにされた。結果一番勝てそうだと思ったのか俺によく突っかかってくることになった。……手加減しすぎたのかな。

 一回フラウとの行為中に来た時はどうしようかと思った。まぁその時はフラウが記憶がなくなるまで頭を蹴り続けたので心が磨り減ったらしく、ちょっと大人しくなったのだが。あと夜には決して挑んでこなくなった。少年には刺激が強すぎたらしい。それかフラウが怖かったのかもしれん。いやそっちの方が可能性として高いか。

 

 ともあれトキリも負け続けた結果自信が磨り減っていって徐々に落ち着きを持つようになっていったので、良かったと思う。いや、天才が多すぎて凡人は心折れるぞ普通。それでもいつか見返してやるとばかりに鍛錬に励むようになったので、とりあえずはいいだろう。

 【剣豪】を習得する過程でわかったのだが、剣とは己との戦いだ。つまりトキリが他者を弄ぶために剣を学ぶ以上、真の意味で剣士になることはない。

 

 さて、そんな日は来るんだろうかね。

 

 まぁそんな生意気最弱剣士クンを加えて島を巡っている中で、次に動きがあったのは十七個目の島だった。

 

 その島では特に賢者の反応もなく、他の島と同じく助力は願えないかと思っていたのだが。

 

「ああ、それなら村の兵士じゃないんだが、強い子がおるので声をかけてみたらどうだね」

 

 と立ち寄った村のおじさんが言ったのだ。

 いるのはアネンサとアリアだけ。トキリは負け続けて不貞寝中だ。レオナはここまでの操舵を担当したので、アリアがこれからの操舵をする予定であり島にいる人々に助力を請うところまでやるのだ。

 レラクルはもうすぐベスティエ島で働き詰めになるからとサボり中。カイムはこういう交渉に向いてないし、フラウは直前まで俺に付き合っていたので睡眠中だ。ナルメアはもし寝ている連中をトキリが襲った場合に阻止する要員として置いてきている。

 

「強い子?」

「ああ。山の主に育てられておる子だよ。白髪に赤い瞳の子だ。私達と同じハーヴィンだから、あっちの山に行ってみたらすぐわかると思うよ」

 

 俺が聞き返すとその子とやらの特徴まで教えてくれた。白髪に赤目のハーヴィンか。覚えておこう。

 

「ありがとう。ここまでは流石にそう来てないんだな、被害は少ないみたいだが」

「そうだね。黒い化け物の集団はここに来る数が少ないから、なんとか他の村やなんかと協力して撃退できてるんだよ」

 

 田舎の平和な村といった風で、特に異様な雰囲気も感じない。こんな事態でもなければ平和に暮らせただろうな。

 

 ただまぁそんな村だからか強い人もいないし戦力も少ないので、助力は得られなかったが。ダメ元で山の主に育てられたというそいつを当たってみることにする。

 

「そんなに薄着で虫に刺されるかもしれないな、アリアお嬢様?」

「バカにしないでください。これでもあの極寒の地で活動していたこともありますから。虫程度平気です」

 

 おぉ、いいとこ育ちにしては立派な。

 

「じゃあそのままでいいか。行くぞ、二人共」

 

 言って、アリアとアネンサを連れ村の人が指した山へと歩いていった。

 

 山の森を歩くこと数分。

 

 山に入っても特に神聖さや邪悪さを感じない。なんの変哲もない山のように思える。

 

「なにもないね~」

「ありませんね。もう少し奥に行ってみましょうか」

 

 アネンサとアリアもなにも感じないようだ。

 俺も特に違和感はなかったのでもう三十分ほど登ってみる。

 

「山の主どころか、魔物一匹いねぇな」

 

 俺にはそれが違和感だった。

 

「ええ。村に来るまでは魔物に遭遇しましたので、この島が特別というわけではないと思いますが」

「ん~」

 

 二人も不思議には思っているようだ。だが結論は出ない。魔物が見当たらないことによる嫌な予感がないのも理由の一つだろうか。駆逐されているなら、その山の子がやった可能性だってある。

 

「……ただ一つ、どうも蜘蛛が多いんだよなぁ」

 

 俺は魔物がいないこと以外にもう一つ気づいたことがあった。それが、山の中に蜘蛛が多いという点だ。山なら蜘蛛くらいいるだろうと思うかもしれないが、そこかしこに蜘蛛を見つける。他の虫は見かけないぐらいなので異常と言えるのかもしれない。

 

「そういえば、こうして見回してみても蜘蛛の巣が多いですね」

 

 アリアの言う通り、蜘蛛の巣をあちこちに見かける。これはちょっと不穏になってきたか? と考えたのだが。

 

「……帰れ~」

 

 どこからか声が響いてきた。妙に低くされた声だ。だが複数方向から聞こえてきてどこにいるのかを諭させない頭があるらしい。

 

「い、今の声は?」

「どこだろうね~」

 

 警戒するアリアと変わらずのんびりとした口調のアネンサ。

 

「立ち去れ~、立ち去れ~。この山から立ち去れ~」

 

 声は続いて響く。……ふむ。詳しくはわからないが、この声が村の人が言っていた子というヤツだろうか。

 

「お前は山の主に育てられたってヤツか? なら丁度いい。姿を見せてくれ。お前に用があるんだ」

「……帰れ~。立ち去れ~」

 

 大きな声で提案してみるが、無視された。

 

「出てこい、さもないとこの森燃やすぞ」

「っ!! そんなことさせるわけないでしょ!」

 

 それっぽく右手に炎を灯してみたところ、効果覿面で素の声が出ていた。女性らしい。

 

 やがてドドドという音が聞こえ始め、一方から白い影が走ってくるのが見えた。

 

「この森は燃やさせない! ()()()()、いくよ!」

 

 走ってくるのは巨大な白い蜘蛛だった。蜘蛛が苦手なヤツだったら怖気が走るだろう容貌をしている。長い脚と身体には長めの白い毛が生えており、頭部分には八つの赤い瞳が爛々と輝いていた。

 その上に、耳の尖った白髪に赤い瞳の少女が乗っている。いや、少女という表現が正しいのかはわからない。ハーヴィンの女性の年齢はなかなか見分けづらいのだ。白い無地のシャツを着込んでいる。下半身は蜘蛛の毛に覆われていてよく見えないが、彼女の背中には刀が背負われていた。……まさか刀使いとはな。

 

「脅して悪かった、争う気はないんだ、話し合おう」

 

 俺は右手の炎を強くさせて微笑む。

 

「そんなに火を灯して信じられるかぁ!」

「尤もな意見ですね」

 

 蜘蛛の子のツッコミにアリアがうんうんと頷いていた。いや俺もどうかとは思うんだが、あんなデカい蜘蛛に突撃されるよりはマシだろう。

 

「斬る? お兄ちゃん」

「いや、いい。丁度良さそうだし、交渉しよう」

「……敵の弱点をチラつかせた交渉なんて脅迫と変わりないですが」

 

 物騒なアネンサと、ジト目のアリア。

 

「ほらよ」

 

 俺は言いながら右手を突き出し炎の奔流を蜘蛛に向けて放った。

 

「お、お母さん避けてっ!」

 

 母親らしき白蜘蛛は素早い動きで炎を避けて回り込んでくる。ほう、なかなか反応速度が高いな。

 

「お母さんは下がってて、私がやるから!」

 

 そう言うと炎に弱い蜘蛛を守るためかハーヴィンの彼女が飛び出してきた。下にも真っ白いズボンを履いている。背の刀を抜き放と刀身が露わになり、刀身に丸い穴が空いた特徴的な刀だとわかる。刀身は純白となっていた。刀を握る右手とは別に左手をなにやら動かすと、空中で着地した。……いや、陽光が微妙に反射してるな。細い糸の上に立ってるのか?

 

「この森に手を出すなら許さないから。ただじゃ済まさないからね」

 

 彼女は俺達、特に俺を睨みつけて宣言してくる。蜘蛛の巨体が突進してくる危険がなくなったので炎を消した。

 

「いや、悪かった。流石に俺もあの巨体に突っ込まれたらヤバいんでな。威嚇させてもらった」

「今更そんなこと言っても見逃してあげないんだから」

 

 俺は謝るが刀を下ろす気はないようだ。よく見ると裸足なので糸が食い込んでいる様子がよく見える。……注視してみれば、あちこちに糸が張り巡らされているのがわかった。

 

「今更気づいたの?」

 

 俺が視線を走らせているのがわかったのか、彼女は得意気な顔でふふんと胸を張っている。

 

「もう私の糸でここら辺は囲んであるから。もう逃げ場はないってわけ。わかったら大人しく観念しなさい」

 

 余程自信があるのか彼女は踏ん反り返った。……そんな不安定な足場で踏ん反り返ったら――あ、ほら。

 

「あ」

 

 彼女はバランスを崩して後ろ向きに倒れ込む。蜘蛛は遠いし糸を出して自ら助かるかどうかの保証はない。なにより真下に糸が張られていた。あの勢いで落ちたら大怪我程度で済むかどうか。最悪真っ二つだろう。

 そう考えたら身体が動いていた。戦力として加えようと思っていたところもあるので、助けるのは当然だろう。

 

 俺は落下する彼女の真下に移動して、張り巡らされた糸に当たらない位置で受け止める。軽い。ハーヴィンとあまり関わりがないせいか、とても軽く感じる。

 

「ふぇ!?」

 

 腕の中の彼女が間の抜けた声を上げる。見ると顔が赤い。

 

「気をつけろよ、危ないだろ」

「ご、ごめんなさい……」

 

 注意すると先程までの様子はどこへやら、縮こまっている様子だった。

 

「で、でもこんな、お姫様抱っこで……」

 

 どうやれそれで照れていたらしい。

 

「いや、お前の身長じゃお姫様抱っこじゃなくて赤ちゃん抱っこじゃ」

 

 とはいえお姫様抱っこというような形にはならない身長差なのでそう指摘したのだが、彼女の額に青筋が浮いた。あ、嫌な予感と思った次の瞬間には小さな拳が顎にクリーンヒットしていた。……痛ってぇ。

 思わず腕を緩めてしまい、その隙に彼女は抜け出してみせる。

 

「私は立派な大人なの! 二十四歳よ、二十四歳!」

「……ハーヴィンは若く見えるんだよ」

「だからって赤ん坊扱いはないでしょ、もう!」

 

 彼女はびしっと俺を指差してぷんすか怒っている。二十四歳って言うとナルメアと同い年か。それは確かに失礼だった。しかし感情表現が豊かだからかちょっと幼く見える。

 

「悪かったよ。で、少しは話を聞いてくれる気になったか?」

 

 殴られた顎を擦りつつ尋ねた。

 

「ま、まぁ話くらいなら」

 

 とはいえ激怒はしていないのか、敵ではないとわかってくれたのか聞いてくれるようだ。

 

「実は、空からやってくる異形の群れが湧き出している島を攻略しようと戦力を集めてる最中なんだ。そこで麓の村に立ち寄ったら、山の主に育てられた子に声をかけたらと言われたもんでな」

「それでこの山に来たんだ。なにを隠そう、この私がその子よ。あ、こっちのお母さんが山の主ね」

 

 俺が事情を説明すると張った胸に手を当てて自白し、続いて敵意がないとわかったのか近寄ってきた大蜘蛛を紹介する。

 

「なるほど、この蜘蛛に育てられたのか。で、ここを離れて俺達に力を貸してくれる気はあるか?」

 

 肝心なことを尋ねる。それが本題だ。

 

「嫌よ。ここを離れる気はないもの」

 

 しかし簡潔に拒否されてしまった。……そうか。まぁ悪いヤツじゃないみたいだし、できれば仲間に入れたかったが仕方がない。無理にとは言えないしな、トキリはあれだが。

 と俺は諦めていたのだが、彼女の傍に立っていた蜘蛛が器用につんつんと突いていた。

 

「なに? お母さん」

 

 きょとんとして振り返る彼女に、蜘蛛がなにやらキチキチと音を発している。鳴き声なのだろうか。俺には全く理解できないのだが、

 

「えっ!? この人達についていけって!?」

 

 彼女には伝わっているようだ。

 

「な、なに言ってるのお母さん」

 

 戸惑う娘にキチキチとなにかを告げる母蜘蛛。はっと目を見開き、涙を滲ませて目元を拭う。

 

「……うん。ありがとう、お母さん。私頑張るね」

 

 どうやら説得は終わったらしい。彼女と蜘蛛は揃ってこちらを向き、

 

「ということでついてくことにしたから。よろしくお願いします」

 

 頭を下げた。おっ、これはわかるな。多分「娘をよろしくお願いします」だ。

 

「おう、こちらこそ」

 

 というわけで、二人の間に感動するようなやり取りがあったのだろうと勝手に納得して受け入れることにした。

 

「私はクモルクメル。見ての通りハーヴィンよ。改めてよろしくね」

 

 にっこりと笑ってクモルクメルは名を名乗る。

 

「ダナンだ。よろしくな」

「アリアです。よろしくお願いします」

「アネンサだよ〜。よろしくね〜」

 

 簡単にこちらも自己紹介して、彼女を連れて騎空挺の方に戻っていく。

 

「新しい子、見つかったんだ」

 

 甲板を掃除していたらしいレオナを筆頭に、全員が見覚えのないクモルクメルに注目する。

 

「私はクモルクメルよ。この船でお世話になるわ」

 

 彼女は自分から名乗った。この中では常識人の部類になるかもしれない。山で蜘蛛に育てられたのに。

 

「剣士なんだ。じゃあ、とりあえず勝負だよね」

「なにそれ。いいけど、まず名乗り返すのが礼儀じゃない?」

「……トキリ」

 

 そしてその野生児らしき彼女に礼儀を教えられるトキリとは一体。

 

「そう。じゃあ始めましょうか。いつでもかかってきなさい」

「その余裕を覆してやる!」

 

 両者は刀を構え、トキリから突っ込んでいく。クモルクメルは刀を持っていない左手を振るうと糸に足を引っかけさせた。

 

「くっ!」

「もう勝負あったわね」

 

 体勢を崩した彼の身体を糸が雁字搦めにする。結果トキリは縛られた状態で倒れ込んだ。

 

「はい、これで私の勝ち」

「このっ……! 全然振り解けない!」

「当たり前でしょ。私の糸は鋼鉄よりも硬いの」

 

 足掻くトキリにふふんと胸を張って得意気にするクモルクメル。褒められると弱いのかもしれない。

 

「そいつは元人斬りのヤバいヤツだから、死なない程度に痛めつけていいぞ。あと暇さえあれば襲ってくるから」

「なにその危ない人」

 

 俺の言葉にまともなツッコミが入る。常識ある人物だとわかったからかレオナが少し嬉しそうだ。アリアも満足そうにしている。……確かにまともなヤツは少ないよな。で、そのまともなヤツの中に俺は入ってるんだよな?

 

「っ……!?」

 

 と、俺の方を向いたクモルクメルがぎょっとして顔を真っ赤にした。フラウがしな垂れかかっているからだろうか。

 

「は、破廉恥! 不潔! 変態!」

 

 と思っていたら罵倒された。……そんな不名誉な三拍子をつけられるような状態か?

 どうやら彼女は異性に免疫がなさすぎるらしい。




というわけで白髪赤眼な蜘蛛の糸使いハーヴィンの登場です。
蜘蛛に育てられたので異性への免疫はゼロです。

……割りと個人的趣味剥き出しな気がしますね。
最近だと鬼滅の刃が挙げられますが、こういう見た目の子好きです。
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