あいつとかこいつとかそいつとか色々なヤツが大集合する回。グラブルやってない人は置いてけぼり食らう予感。……既に食らってるか。
明日発売のVSはRPGモードをまったり進める予定です。
ナル・グランデ空域、ベスティエ島。
別名“星晶獣の楽園”とも呼ばれ、珍しく星晶獣がコミュニティを形成している島だ。コミュニティが成り立つのはベスティエ島を統べる、母を司る星晶獣の存在があるからに他ならない。
そんな彼の島は今、黒い群れに覆い尽くされていた。
島のあちこちにある黒い穴のようなモノから続々と姿を現す黒い群れ、幽世の存在。
飛翔できるモノは軍勢を成して空を飛び、現世を我らのモノに変えようと人々を襲う。
幽世との門が開いたことによって蒼い空はくすんだ異様の空へと変わり、異形の群れが人々を襲撃する。
それがナル・グランデ空域の現状である。
「……以前いた時より酷くなってんな」
遠目から見るとベスティエ島から黒い巨大な竜巻が出来ているような状態だ。俺達がいた頃はあそこまで酷くなかった。おそらく幽世との出入り口が増えているのだろう。
流石にあの状態ではエスタリオラの大魔術も見えるわけないか。というか生きてるんだろうな、あいつら。
「……まぁいい。騎空挺を島につけてくれ! 上陸して、島に残してきた三人と合流する。それから作戦通りに幽世の軍勢を殲滅しながらエキドナを倒すぞ!」
俺は団長らしく仲間達に言って、甲板で上陸を待つ。無論向かえば幽世の存在が襲いかかってくるが、俺達の敵ではない。適当に蹴散らしながら突き進んだ。……グランサイファーは上陸してねぇな。“蒼穹”は撤退してから戻ってきてないと思うべきか。
騎空挺を置いてベスティエ島の中心部を目指す。騎空挺は俺がウーノの障壁を真似した頑丈な障壁を、カイムと一緒に模倣しながら全体を覆うように形を変えさせて覆っておいた。これでしばらくは持つだろう。
「遅れるなよ、お前ら」
俺は言って先陣を切って歩く。
――ベスティエ島の全体を把握。穴を減らすくらいならできるが、カイムの作戦であるアレをやるために少し温存しておいた方がいいだろう。無闇に使うべきではない。カードが二枚も増えたことで把握と分析の速度も上がっている。だが一人見つけられない。ゼオがいなかった。……なんでだ? 死んでる可能性もあるっちゃあるが、死体すらないのはどういう了見だよ。
少しだけ心に不安が募る。ガイゼンボーガが戦い続けてハイになりすぎている可能性があるので、エスタリオラに聞いてみるとしよう。
飛べない軍勢も加わったことで敵の数はどんどん増えていくが、この時のために力を温存しておいたので容易く蹴散らしていった。
俺達が突き進んでいると、眼前の軍勢が竜巻によって消し飛んだ――エスタリオラの仕業だ。
「ん~むにゃむにゃ……ひょい~ん」
相変わらず眠っているハーヴィンの爺さんが空中から現れた。
「待ちくたびれたぞい。随分遅かったようじゃが、賢者も増えておるようじゃな」
「そりゃ悪かった。で、ゼオはどこだ?」
「それなんじゃが……」
彼は俺の質問に、ゼオがいなくなった経緯を語って返してくれる。
一週間ほど前に、このベスティエ島に“蒼穹”の一行がやってきたらしい。だが幽世の存在に襲われエキドナの下に辿り着く前に、各所で空いた穴に蒼髪の少女――ルリアと女騎士――カタリナと銃を持ち煙草を吹かす男――多分ラカム、そして別騎空団の団員と思われる金髪の幼女(こっちは俺も知らない)が吸い込まれていったそうな。そこでゼオはこう言ったらしい。
「あっちって幽世に繋がってンだよな? だったら、あっちでもなンか起こる気がすンだよ。ってことでちょっと行ってくる」
……あのバカ。
兎も角、ゼオは自ら穴に飛び込んでいったらしい。それからなにも音沙汰がないようだ。
そして“蒼穹”の連中は幽世に行ってしまった四人を助けるために色々と行うらしい。とりあえず空を取り戻すにはナル・グランデ空域の空図の欠片が全て、つまり四つ必要なのだとか。
まぁあいつらが仲間を見捨てるとは思わない。色々回って情報を得ているのだろう。因みにエスタリオラの見る限りでは、ドランク達はいなかったらしい。
あと俺も心当たりがなかった金髪の幼女は、黒髪の少年と青髪の狼みたいな少女達と一緒にいたらしい。……となるとロキか? あいつが関わってるとなるときな臭いんだが、さてどうなんだか。
「……ゼオのことは一旦置いておくか。エキドナを取り戻すと幽世の門は閉じるだろうからそれまでにはなんとかしたいんだが」
ワールドとしても幽世の分析は有意義なはずだ。……俺が直接行って道創って戻ってくるか。力が増したおかげで幽世の存在が出てきている穴の分析は完了している。いけなくはないはずだ。
「よし、まぁいい。エスタリオラ、決着をつける。このまま合流していてくれ」
「了解じゃ」
とりあえず彼は少ない時間でも休んでもらって、まぁいつも寝てはいるんだが。
「まだまだまだまだぁ!!」
咆哮し拳一発で一体を弾き飛ばすのは孤高なる“
「精が出るな、ガイゼンボーガ」
「団長殿か! くくっ! 吾輩はこれほど長い間戦い続けたことはなかったぞ! 蹂躙しても蹂躙しても湧き続ける敵の軍勢!! これはこれで良いが、やはり戦場とはいつか終わり、凱旋と勝利の美酒がなければならぬ!!」
「だろうと思って、準備してきたんだ。回復薬はやる。だから、もうちょっとだけ戦い続けてくれるか?」
「無論だ! 戦いを投げ出すなど、吾輩は絶対に行わぬ!」
「そうか。なら、頼んだ。頼りにしてるぜ、“戦車”」
「くくっ、話のわかる男だ!!」
ガイゼンボーガにはポーションをいくつか渡して、そのままにしておいた。合流して俺達と一緒に戦おうぜ、とか言ったら俺が殴られそうだし。あいつはこれでいいんだ。
彼の気迫に引いている者が何人かいたが、ただの戦い大好きなおじさんだから気にするなと言っておく。もちろん、本人には聞こえないところで。
「さて、と。そろそろ始めるとするかぁ」
俺はガイゼンボーガの邪魔だけはしないように移動して、立てた作戦の流れを頭の中で復習した。
「……全員、俺の周囲で構えろ。全方位の敵を迎撃し続けるんだ」
俺は指示を出して屈み地面に右手を突く。
「力の波を起こしたら、幽世のヤツらが一斉に向かってくる可能性がある。全力で迎え討て。その間に俺は、事前に話した通り意識がありそうな星晶獣に力を与えて幽世の影響を跳ね返させ、加勢してもらう」
俺は説明してあったことを簡潔に述べる。そして一息吸って、
「頼んだ」
仲間達を信頼し、全てを任せることにする。
右手を中心に島全体を把握する。今までのようなただそこにあるモノを把握するモノではなく、星の力を使って星晶獣達の反応を見るのだ。
結果、幽世ではない力の中心地となり幽世の軍勢が一斉に向きを変えてこちらに来た。……最悪の場合の予想通りかよ。
だが集めてきたここにいるヤツらは、全員凄腕だ。一般人なんか一人もいない。
「いくよ、デビル。全力も全力で!」
フラウは契約している星晶獣を呼び出し火焔を纏って鮮烈に笑う。
「舞え、胡蝶……」
刀を構えたナルメアの周囲に紫の蝶がひらひらと舞う。普段と打って変わって冷静な声音は戦闘モードの証だ。
「月影衆頭領レラクル、いざ参る」
レラクルは忍者刀を構えて影分身を生み出し十人となった。
「僕は最強になるんだ……!」
ニーアにも負けて自尊心ボロボロのトキリは少しだけ発言にそれが出ていた。一応間違いなく天才ではあるので、活躍を期待したい。
「お兄ちゃんの敵は、斬る」
本気になって冷たく告げたアネンサは身体に似合わぬ大太刀を構えている。
「むにゃむにゃ……少しは休ませて欲しいのじゃが、我が大魔術で蹴散らしてやろうかのぅ」
エスタリオラは戦い続けて尚尽きることない魔力を滾らせた。
「数が多いし、効率的に狩ろう。ね、ハングドマン?」
『もちろんだとも。我が契約主の仰せのままに』
カイムはハングドマンを呼び出す。頭の中では既に無数の戦法が巡っていることだろう。
「話には聞いてたけど多すぎじゃない? まぁいいわ、私の糸でバラバラにしてあげる」
クモルクメルは呆れつつ余裕の笑みを浮かべた。……あんまり調子に乗りすぎないようにな。
「……お願い、デス」
闇の深い瞳を覆った手の指の間から覗かせたニーアがデスを出現させる。
「私もイデルバの代表として負けてられないね」
レオナが愛用の薙刀を構える。彼女も伊達に将軍の副官をやっていない。カインの補佐をこなしつつも武人としての面も持ち合わせている彼女が、紛れもなく強者であることはこれまでの旅でわかっていた。
「……七曜の座を与えられたことの意味を示しましょう」
アリアも静かに燃えているらしく、左手を前に突き出し剣を持った右腕を上げて切っ先を前に向ける。彼女の独特の構えで幽世の存在を待ち構えていた。
頼りになるヤツらだ。俺はその内にベスティエ島で幽世の力にやられている星晶獣達を存分に探ることができた。……数多くいる星晶獣の中でも、まだ意識を保っている、幽世の力に対抗できているのはたった四体か。
今幽世の存在が全てこちらに迫ってきているため、全員が全力全開で戦っている。一切余裕なんてない様子で死力を尽くしていると思う。だが、それでもギリギリそうだ。この軍勢を相手にし続けながらエキドナを倒すとなると不安が残る。
果たして、この戦力で足りるのだろうかと。
俺の頭にそんな疑念がよぎる中、島を揺るがすような轟音が響いた。と同時に、
「くはっ!」
――声がした。
「あはははははっ!!」
――楽しそうな、それはもう楽しそうな嗤い声がした。
「ああ、ああ……! 壊しても壊しても敵が現れ続けるなんて……!」
――見れば見覚えのある
「トレッビアン!! ブリリアントッ!!」
――以前見た時と些かも変わらぬ紺色のローブに赤いケープの姿。
「パパ、ママ、オレの幸福はここにあるよ! オレは今、最っ高に幸せだッ!!」
――恍惚とした表情で、無作為に周囲へと破壊の魔術を撒き散らしながら、彼は嗤う。
「さぁ、タワー! 今度はキミの番だ。キミの奏でる最高のアルモニーをオレに、聴かせてくれ!!」
――彼の声に呼応して青い光を所々から放つ巨人が現れる。巨人ははゆっくりと拳を振り被り、幽世の存在が襲いかかってくるのを羽虫が集る程度にしか思っていないのか、微動だにしない。そして拳を振り下ろし、島に激突する直前で止めた。島を割ってしまわないためだろう。しかしそれでも拳の威力は、当たっていない範囲の敵まで粉々に砕け散らせたことが物語っている。破壊の嵐は留まることを知らず、幽世の軍勢を周辺一帯全て肉片と化すほどだった。
「んんーっ! セボンッ!! やっぱりキミは最高だ、タワー!! くっははははははっ!!!」
……相変わらずの清々しさだな。
完全に予想外ではあったが、見ての通り戦力にはなる。そう考えた後の行動は早かった。
「……バニッシュ」
俺はアビリティを使ってそいつの眼前に現れ、
「うん?」
反応ができていないヤツの鼻っ面を靴裏で蹴り飛ばした。
「ああっ!」
蹴られておいてちょっと嬉しそうな声が漏れるところも気持ち悪い。
「……チッ。二度と会いたくなかったぜ、ロベリア。だが丁度いい。手を貸せ」
事態を解決するためには手段を選ばない。背に腹は代えられない。だから、こいつも利用する。
「くっ、ははっ。オレはまた会えると思ってたよ」
鼻から血を流しながら、蹴り飛ばされたロベリアが起き上がって嗤う。
「オレもキミに会いたかったんだ。オレの魔術はキミのモノだ、好きに使ってくれ、ってね」
俺は会いたくなかったんだって言っただろうが人の話を聞け変態クソ野郎。……じゃなかった。
「……事情は後で聞いてやる。存分に暴れろ。それくらいしかお前の魔術なんて使い道ねぇだろ」
「心外だな。けどオレは今上機嫌だ。だから大人しく、キミの指示に従ってあげよう」
なんでここにいるのかとかは後で聞けばいいことだ。今は一刻も早く、事態を解決に導くのが先決だ。
俺はバニッシュで元の場所に戻ってくる。
「さっきの、私達と同じ賢者でしょ? 知り合い?」
「ああ、残念なことにな。あいつが俺が最初に出会った賢者だ」
フラウの声に応じつつまた屈んで右手を地面に突く。もう把握は終わっているので、後は星の力を流し込んで四体の星晶獣を復活させ、加勢してもらおう。
「……エキドナは母を司る星晶獣らしいな。ってことはお前らの母親でもあるわけだ」
俺は声を拡散させて語りかける。
「今まで世話になってきてんだろ? なら寝てないで苦しんでるエキドナを助けてやれよ。そのための力はくれてやる」
俺の身体から掌を通して地面に繋がりを持たせ、そこから更に倒れ伏す星晶獣達に力を与えていく。
「だから俺達に力を貸せ、星晶獣ッ!!」
彼らを苦しめる幽世の力を押し退け、星の力で満たしてやる。
元々ほとんど侵食された状態であっても意識を保っていたほどの星晶獣達だ。押し退けて自由にしてやればすぐに立ち上がる。
「……人の子よ、礼を言う」
厳かで低く響くような男の声が聞こえた。見ればどこからか黒い長髪に紫色の肌と四本の腕を持つ男性が降り立ってきている。身体には真っ白な蛇が巻きついており、右の上の腕に金色の三叉槍を携えていた。
「おかげでエキドナを助けるために戦えます」
聞いた限りでは可憐な少女であり、また見た目もそうだった。白いミニワンピースを着て濃い青のマントを羽織った金髪青目の美女だ。花飾りとブーケのついたティアラをしていて、姫のような印象を受けた。
「本来であれば、彼女の守護するのは我々の役目。喜んで力になろう」
凛とした声に目を向ければ、白地に赤を基調としたワンピースを着込む赤毛の美女が立っている。刃の部分が縦に赤と白で分かれた色の巨大な剣を携えていた。彼女の周囲にはガラスの破片のようなモノが浮遊している。
「この軍神グルリィィィィィィムニルが来たからにはもう安心していい。我と共にエキドナを救い、この空を晴らすのだ!」
やけにテンションの高いヤツが出てきた。藤色の髪に左右で目の色が違う青年だ。軽装の鎧とマントを纏い、右手に柄が長く先端が円錐の形になっているタイプの槍を持っている。……他と同じように一瞥してから目を逸らしただけなのだが、「あ、あれ? 今のカッコ良かったよね?」とかボソボソと言っている声が聞こえた。
それがなければもうちょっとカッコ良かったんだろうな、とは思う。
「妾もいるのじゃ!」
「遅れて申し訳ありません」
俺の周囲に現れた四人、もとい四体の星晶獣に加えて空を駆けて近づいてきたフォリアとハクタクが俺の眼前に降り立った。
「……これでとりあえず全員集合か」
俺が呟いた声に異論を示すように、斬撃が迫ってきていた軍勢を粉砕する。
「私を忘れては困りますね」
穏やかな口調に、強大な一撃。見れば新調したらしい鎧を身に着けたドラフの男性が立っている。
「バラゴナ……!」
アリアがその顔を見て驚き声を上げた。……ハルヴァーダは無事届けたみたいだな。まさか来るとは思ってなかったが、いいタイミングだ。
思わず笑みが浮かんでしまう。
「やるぞ、お前ら。エキドナを助けて幽世に落ちた連中を引っ張り上げる。んで、ついでにこの空域救うぞ」
俺は立ち上がって言い放つ。
さぁ、この騒動を終わりにしてやろう。
Q.ロベリアはどうやって空域越えてきたの?
A.普通に小型騎空挺に乗って。
Q.じゃあなんで瘴流域越えられてんの?
A.小型騎空挺ごとぐちゃぐちゃにされながら漂着して、運良く空域越えられたんですよ。まぁ当然、普通の人なら死んでますねぇ。