ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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幕間Ⅱの開始です。
二話ぐらいはただパーティしてますが。

そしてストックがそろそろ尽きそう……。
毎日更新が終わる日が近いかもです。


“黒闇”結成記念

 時は少し遡る。

 

「随分と人数が増えたな」

 

 合流したアポロが言葉を発すると、ぴくりとアリアが反応を示した。

 

「……貴女、まさか黒騎士ですか?」

「……その声、そう言う貴様は黄金の騎士か」

 

 アリアはここに来てからエルーン用の軽鎧を購入して着込んでいる。アポロもアポロで新しい鎧を身に着けていた。

 そういえばこの二人は因縁があるんだったな、と視線を交錯させるのを見て考える。

 

「……あの時は失礼しました」

「……なに?」

 

 数秒睨み合っていたような状態だったが、アリアから頭を下げた。予想外だったのかアポロが驚いている。

 

「……少なくとも、いきなり貴女に挑みかかったことは謝罪しましょう」

「……そ、そうか。まさか貴様に頭を下げられるとはな」

 

 アリアの殊勝な態度に、アポロは困惑しているようだ。……しかしこうして見ると、七曜の騎士が合計四人か。それぞれ七曜の騎士としての鎧は身に着けていないが、紛れもない強者ではあるはずだ。

 

「仲直りができたようで良かったですね」

「うんうん。歳を取ると意固地になっちゃうからね、いいことだよ」

 

 他の二人であるバラゴナとリューゲルが二人を見守っている。

 

「……緋色の騎士に、紫の騎士か? 全く、なにをやったら僅かな間で七曜の騎士を三人も引き入れられる」

「そこは運だな。偶々こいつらが困ってたところに俺がいただけだ」

 

 苦笑するアポロに返答する。

 

「……私が謝罪したことを意外に思ったようですが、貴女も随分と雰囲気が柔らかくなりましたね」

「そうだろうな。貴様と同じく、私にも色々あったということだ」

 

 今度はそんなアポロにアリアが驚いていた。

 

「貴様は星の獣なぞに頼らないと戦えないのか? 軟弱者めが!」

 

 親交を深めるような中、ガイゼンボーガの怒鳴り声が聞こえてくる。対面しているのは……ニーアだ。ヤバい。ガイゼンボーガの発言に、顔を手で覆ってぞっとするような目で見返している。

 

「……あなたも私を否定するの?」

「戦場に赴くなら己の力のみで戦え。それができぬと言うなら必要ない」

「……そう」

 

 俺は二人のやり取りを聞いてすぐそちらへ向かい、ニーアを後ろから羽交い絞めにする。

 

「こらニーア。ちょっと落ち着けって」

「退いて、ダナン君。この人殺せない」

「貴様のような軟弱者に殺されるわけがなかろう」

「ガイゼンボーガも煽るなよ。大人げないぞ?」

「ふん」

 

 なんとかガイゼンボーガが離れていってくれた。俺はなんとかニーアを撫で回して機嫌を取り、落ち着かせる。

 

「……なんだ、その、大変そうだな」

 

 アポロがたった一言そう言ってきたことが、現状の全てだった。……いや、こいつらホント協調性ないんだよ。十天衆の方がまだ良かったに違いない。

 

「……全くだ。団員を確保したはいいんだが、その分管理が大変でな。ホントあいつらはよくやってるわ」

 

 “蒼穹”はもっと団員が多いってのに。あいつらのところにはガイゼンボーガとかニーアとかロベリアみたいなヤツはいないんだろうか。いないんだろうなぁ。

 

「どうやら私が最後みたいですね」

 

 とそこに、最後の仲間であるリーシャが合流する。

 

「……あれ、なんか凄く多いような」

 

 そして見たことのない人達に戸惑っていた。だが気を取り直すと、

 

「初対面の方もいると思いますので、念のため。私はリーシャと言います。秩序の騎空団と一応兼任ですが、こちらに常駐しますのでよろしくお願いします」

 

 礼儀正しく自己紹介をしてみせた。……なぜだろう、普通のことのはずなのにリーシャが輝いて見える。

 

「……よしよし。リーシャはちゃんと仲良くする気があって偉いなぁ」

「な、なんですかいきなり!」

 

 思わず頭を撫でてしまった。困惑していても振り解かない辺りリーシャと言うべきか。

 

「いや、ついな。まぁ自己紹介はそれぞれやってくれ。で、オーキス。ロイドはいるか?」

「……ん。アーカーシャのコアはもうないから、動かない」

 

 オーキスは糸を操りロイドを動かす。だが目に光はなく、操られていると言うより糸で引っ張られているというような状態だ。

 

「じゃあそのままにしておいてくれ」

 

 俺は言って右手でロイドに触れる。分析してみれば大体の構造がわかり、なんとかコアを補えそうだということがわかった。

 ワールドの能力の内、あまり使うことがなくなってしまった創造の力。俺の魔力を全て注ぎ込んで星晶獣のコアのようなモノを形成する。アーカーシャより強力かつ厳密にはどの星晶獣のコアでもないエネルギーの塊みたいなモノだ。

 

 俺が作業を終えると、ロイドの目に赤い光が灯った。

 

「……ロイド」

「とりあえず、これで“黒闇”の騎空団は全員だな」

 

 ロイドまで復活させたから抜けはないはずだ。オーキスが喜んでいるようだったので、魔力が足りなくてふらふらするのは後に見送ろう。

 俺は周囲を見渡す。七曜の騎士に賢者に、刀使いが複数、などなど。

 

「多少増えるかもしれないが、この面子でこれから旅をしていく。まとまりはねぇし協調性もないが、まぁ“蒼穹”より先にイスタルシアに到達しよう」

 

 団長としての抱負みたいなモノだ。

 

「簡単に言ってくれるぜ、うちの団長はよ」

「お前らがいてできねぇとは思ってねぇよ。まぁ親睦を深めるのは後で、“蒼穹”と一緒に宴した時にでも」

 

 というやり取りがあって、翌日の朝騎空団への物資の運び込みをやっていたのだ。きちんとグランサイファーの横にアルトランテを停泊させてな。

 

 そして現在。

 

「よし、じゃあ今日は“黒闇”正式結成記念パーティってことで!」

「「「かんぱーい!!!」」」

 

 “蒼穹”と“黒闇”の合同パーティが催されていた。

 

「……あんなやり取りした後なのに、よく合同パーティなんて言えるよね」

「あそこのおっさん二人が言い出したことだろ」

 

 左隣に座るジータに苦笑を向けられて、料理を摘みつつオイゲンとザンツを指す。

 二人は乾杯早々に酒をがぶ飲みし、再会を祝して肩を組みはしゃいでいる。

 

「はは、まぁオイゲンが嬉しそうで良かったよ」

「そりゃそうだろ。ザンツは操舵士だったが、事故で片腕を失った。……操舵士なら怖気が走ることだぜ、舵が握れなくなるなんてよ」

 

 俺の向かいに座るグランが苦笑し、ラカムは同じ操舵士としてしんみりと酒を煽る。

 

「おいラカム! お前まさかもう飲めないってんじゃねぇだろうな!」

「はははっ! ミルク頼んでたガキの頃と変わらねぇじゃねぇか!」

「ん? って、酒臭っ! なんでもうそんな飲んでんだよ!」

「いいからお前もこっちに来て飲め!」

「俺らの酒が飲めないとは言わせねぇぞ!」

「あ、ちょ、おい! この酔っ払い共!」

 

 そのラカムは酔っ払い二人に連れ去られてしまったが。

 

「まぁでも、楽しそうだからいいかな」

「そうだね」

 

 ジータとグランは団員達を見回して微笑んでいる。

 

「そうだ、折角だからこれまでダナン君達がなにしてたか聞きたいな」

 

 にっこりと笑って手を合わせるジータには、妙な迫力が伴っている気がした。……俺の隣を陣取った時と言い、昨日のことをかなり怒っている様子だ。

 

「……まぁ、隠すことでもねぇか。俺は一人旅を始めてたんだが、色々と回って仲間集めをしてる内にグランサイファーが白風の境から紫の騎士に持ってかれたって話を聞いてな。それでシェロカルテから、空域を越えられる他の騎空団ってことでお前らの安否を確認するために行けって依頼されたんだよ」

「へぇ、そうだったんだ。それで、結局ナル・グランデに来たのはどれくらいの時だったの?」

「俺達が来てすぐに、レム王国軍がイデルバに攻め込んでたな」

 

 その時のことを思い返す。まぁ俺達はドランクからある程度事情を聞いているためタイミングはわかっているのだが。

 

「あ、じゃあ丁度ラカムさんとオイゲンさん、イオちゃんとロゼッタさんが教えの最奥に挑んでた時くらいだね」

「ああ。お前達がイデルバに来る直前だな。俺達はオーキス達三人が事情を知ってたからある程度知ってるんだよ」

「そうなんだ」

「お前らが到着する前に来て、ちょっとイデルバに加勢して、お前らが来る前に退散したんだ」

「……なんで、私達が来る前に退散する必要があるの?」

 

 にっこり笑顔に迫力がある。

 

「なに言ってんだよ。今日みたいに驚かすために決まってんだろ?」

 

 だから俺も爽やかな笑顔で返したのだが、ジータの額に青筋が浮かんだ。その様子にグランが呆れて苦笑し、ビィがため息をついている。

 

「で、退散した後は隠れてフォリアがギルベルトに捕まるのを見てて、それから来てたオーキス達と合流してレム王国に行ってアリアと会ったんだ」

「その辺で私達もレム王国に行ってガネーシャのフォリアちゃんと助けようとしてたんだね」

 

 そう、その辺りだったな。

 

「その後はうちの団員が、お前らが取り逃がしたギルベルトと交戦したり、俺は俺でハル攫った真王と白騎士に会って白騎士と戦ったりしたんだがな。あのクソ強い白騎士には手も足も出なかった」

「……うん。私達も、会ったのはグレートウォールだけど相当強いのはわかったよ。七曜の騎士に対抗できる教えの最奥があっても、勝てるかわからないくらい」

「だな。で、お前達に遅れてシュテルケ島に行ってな。グレートウォールまで向かったんだ」

「あれくらいの時かぁ。ギルベルトと戦ってる間ぐらいなのかな?」

「多分な。俺が到着した時にはバラゴナが戦い終わりそうで、フォリア、アリア、レオナが休んでたし」

「そっか。その頃に真王と会って、それからバラゴナさんが来てグレートウォールと一体化して、バラゴナさんを助けようとしたところにアリアちゃんが来たんだよね、確か」

「そうそう。白騎士とアリアちゃんが戦ってる間にバラゴナさんと戦ってグレートウォールを破壊したんだ」

 

 当時を懐かしむように双子が言い合う。その辺はバラゴナから少し聞いた程度だったな。

 

「お前らがバラゴナと戦ってる間に、俺はアリアと共闘して白騎士と戦ってたんだな。その段階でバレる可能性もあったんだが、お前らが割ったグレートウォールの中で戦ってた時もあったからな」

「そっか。肝心なのはその後なんだけど、グレートウォールを消したのってダナン君なの?」

「ああ、そうだ」

 

 俺はジータの問いにあっさりと頷いた。ここまで来て隠す必要はないだろう。もちろん、ワールドのことやなんかは隠し通させてもらうが。

 

「お前らが到達したって言う【十天を統べし者】だっけか? あれの攻撃を消したのもその力だな。ま、強くなってるのはお前らだけじゃないってことだ」

「ふぅん……どうやってやってるのか、是非知りたいんだけどなぁ」

「じゃあ【十天を統べし者】になる条件を教えて、獲得の手伝いをしてくれればいいんだけど?」

「むぅ……」

 

 俺は、無理だとわかっていて条件を提示する。おそらく、その名前の通り十天、つまりは十天衆を全員仲間にしていないと獲得できない『ジョブ』なのだろう。だから俺がそれを獲得するには十天衆を移籍させる必要があるのだ。そこまではしないだろう。

 しかもワールドの契約者は一人だけだと思うので、俺が使った力は二人には手に入れられないということになる。

 

「まぁその力を使ってグレートウォールを消滅させ、あわよくば真王と白騎士を落下させて始末しようと思ったんだけどな。結局追い詰められるわお前らのグランサイファーごと白騎士にぶった斬られそうになるわで大変だったんだぞ。ギルベルトを戻したのも俺なんだが、あいつはいらなかったな」

「いらなかったって……。もう、人の命を救うことに上下なんてないんだからね」

「はいはい」

 

 ずっと敵対していたヤツが落っこちるのを助けるようなバカだよ、お前らはホント。

 

「で、その後はお前らがファータ・グランデの方に戻ってきて、神聖エルステ帝国だっけ? そいつらとなんやかんやしてたことくらいしか知らねぇな」

 

 その辺はオーキスやドランクから聞いた話ぐらいだ。そこで紫の騎士にロイドを奪われて追っかけてきたところからはなんとなく知っているが。

 

「どうやって空の底から短期間で戻ってきたんだ?」

「正確には空の底に落ちたわけじゃないんだけど、どこに行ってたかは秘密」

 

 俺の質問に、ジータは意趣返しのようにべっと舌を出して答えた。

 

「そうかよ。まぁ相変わらず運がいいというか、色々ツイてるんだな、お前らは。その後はフュリアス率いる神聖エルステ帝国と争って、オーキスと同じ姿の、ツヴァイって言うんだったな。そいつと戦ったり紫の騎士にロイド奪われたりしてたってのは聞いた」

「うん、そうだね。フュリアスも、元々のフュリアスとは違うみたいだし、ツヴァイちゃんは本物のオーキスになるんだって言いながらロイド奪おうとしてきたし、それを仕組んだ真王がなにを考えてるのか全然わからなかったんだよね」

「そうだなぁ。僕もロイドが目的ならちょっと回りくどいというか、ツヴァイちゃんを送り込む意味がわからなかったな」

 

 やはり人のいいこいつらも、真王のやり方には疑念を抱いているらしい。こいつらに否定されたら真王は目論見を打破されること請け合いだろう。その時は俺もこっそり手を貸すかもしれない。

 

「ふぅん。ってか、お前らがいてロイド奪われるとかなにやってんの?」

 

 そこまで聞いて、俺はずっと言いたかったことを口にする。

 

「いくら紫の騎士がいたからとは言っても、お前らなら勝てるだろ? しかもこっちには十天衆だとか“蒼穹”の団員が大勢いるわけだしよ。それでロイド奪われるとか、ホントお前ら油断しすぎじゃねぇの?」

 

 その場にいなかった俺が言うのもなんだが、弛んでいたとしか思えない。

 

「うぅ、それを言われるとちょっと申し訳ない」

「ははは……確かに、見事に出し抜かれたところがあるからね」

 

 二人もそれはわかっているようだった。まぁ確かに、紫の騎士リューゲルがその辺りの見極めに聡いというか、巧みなのはなんとなくわかっているが。

 

「スツルムとドランクにもお前らなにやってんだとは言ったが、お前らがいて奪われたことの方がおかしいわ」

 

 反論してこないことをいいことに、好き勝手言わせてもらう。まぁロイドが欲しかったんなら、送り込んだ俺の判断も間違っていたってことになるんだが。それは棚に上げさせてもらおう。

 

「……ダナン。大丈夫、ロイドは戻ってきたから」

「それはそれ、これはこれだ」

 

 右隣に座るオーキスに咎められるが、責めるところはきっちり責めておかなければならない。いつか後悔するのは俺じゃなく、こいつらだ。

 

「今回は人じゃなかったからいいけどな。もし真王がビィを狙ってきて、それで出し抜かれましたで殺されたら今そうやってられねぇだろ。肝に命じとけよ」

「……うん。一つ上だけのはずなのに説教臭いよね、ダナン君って」

「説教臭いとか言うな。親切だよ親切。お前らが不甲斐ないからな」

「うぐっ……でも確かに否定できない」

 

 宴の席ではあるが、きちんと反省しておいた方がいい。

 

「……その頃、ダナンはなにしてた?」

 

 二人がダメージを受けているからか、オーキスからそう聞いてくる。

 

「私も気になるな。どうしたら七曜の騎士を三人も集められるのか」

 

 オーキスのもう片方の隣に座ったアポロも聞いてくる。

 

「オーキス達を行かせた後はイデルバの内乱に手を貸してたんだが、結局大してまとめられずにイスタバイオンが来てな。フォリアとアリアとバラゴナを渡せって要求してきたんだ。アリアは一時的にイデルバにいたし、バラゴナは意識不明で療養中だったな」

「そうなんだ……」

「そこで俺は、どうせ真王に喧嘩売ってるし今更だろってことで真王の思惑通りに行かせたくないし俺らと戦争でもするか? って」

「……うわ、ダナンっぽい」

 

 それはどういう意味だグラン?

 

「まぁとはいえイデルバとしてはイスタバイオンと戦争はできないからな。フォリアは国外追放、バラゴナは引き渡す気だったが目覚めて反抗した、アリアは客人なので真王自らが来ないと無理っていう体にカインがしたんだ。もちろん、俺が全員回収したんだけどな。アリアは誘拐ってことで」

「その強引っぷりはダナン君らしいというか、だね」

「バラゴナにはハルを白風の境へ連れていくように頼んで、フォリアとハクタク、アリアとは一緒に旅することになったわけだ。それからはクルーガー島行って、ゼエンから空域の危機がとか言われてベスティエ島行ったな」

「あ、じゃあもしかしてエキドナを襲った人とも?」

「ああ、会った。とはいえ出し抜かれたんだけどな。倒すより先にエキドナを幽世に落とされちまってな。そいつ追うより湧いてきた幽世のヤツらを押し留める方を重視したんだ」

「どんな人だったの?」

「さぁな。さっぱり見当がつかねぇ」

 

 暗殺者の男の様子を見る限り、組織としての行動と言うより単独行動の可能性が高いからな。星晶獣に対して恨み持ってるような感じもしたし。

 “蒼穹”には組織の一員もいる。そいつらが関わっているか関わっていないかはさておき、迂闊に情報を漏らすのは良くないだろう。

 

「で、そこからフォリアとハクタクにナル・グランデ中を回って敵がやってくるってことを伝えてもらって、残った全員で幽世の軍勢と一週間戦ってたんだよ。初動でエキドナ倒せる戦力がなかったのは痛かったがな」

「幽世と一週間って……それでも充分凄いんだけど」

「一週間なんとか押し留めてから戦力を集めるために各島を回ることにしたんだ。それからはもう移動し続けてな。イデルバでレオナに加わってもらったり、他のヤツらとも大半はその時に会ったかな。それから戻ってきたところで、お前らの内ルリア、カタリナ、ラカムが幽世に落ちたってのを聞いたんだよ」

「そうなんだ。じゃあ私達が来たのはそのちょっと前で、イデルバにいたカインさんに頼まれてベスティエ島に行ったのかな。ルリアちゃんが幽世に行っちゃったせいでグランは役に立たないし、それでもなんとかガネーシャの暴走を鎮めてよしベスティエ島に行こう、ってなったら結局どっかの誰かさんが解決しちゃうんだもん」

 

 いやぁ、あれは良かった。いい気分だったわ。

 

「後でゼオから聞いたんだが、ミカボシって星の民、グレートウォールに封印されてたと思うんだが、そいつと落ちた幽世で出会った星晶獣のアレスも一緒にいたんだよな。で、確かアレスの持ってる空図の欠片を使って、空図の欠片同士が引き合うのを利用して幽世を脱出しようって感じだったんだっけか」

「ああ、そうだな。幽世に落ちてから君の仲間であるゼオ君に加勢してもらって、私はアレス殿と教えの最奥に至った」

 

 アポロの向かいに座るカタリナがそう補足する。

 

「教えの最奥に挑んでる最中に俺達はベスティエ島に到着して、まだ戦えそうだった四体の星晶獣に力を貸してもらいつつ、バラゴナやフォリアも合流してエキドナを倒したんだよ。俺の力でエキドナから幽世の力を消して、島を離れてから空図の欠片を四つ全部集めて空を戻すってヤツを代わりにやってやろうと思って戻したんだ」

「簡単に言うけど、凄いことだよね。あと金色のヤツは綺麗だったなぁ」

「そりゃどうも」

 

 まぁおかげでエキドナを倒して空を戻したのが、グレートウォールを消したヤツと同一人物だということがバレたわけだが。

 

「一旦イデルバに戻ったんだが、そこでカインから紫の騎士がロイド奪ってこっち来てて、お前らがそれを追ってるって言うからベスティエ島に戻ったんだよ。まぁ、戻った頃には紫の騎士は逃げようとしてて、お前らはなんかアーカーシャ出現させてるしでよくわからなかったんだけどな」

「ああ、あの辺か。ロイドを取り戻すために紫の騎士と戦って、その後アーカーシャを星に還そうと思って戦ったんだ。ロイドには申し訳ないけど、アーカーシャは危険だからね」

「ま、それも一理あるな。真王に渡すよりかマシな選択だろ」

 

 グランの説明に賛同を示す。

 

「それから僕達はイデルバでカインとラインハルザを連れて戻ってきたけど、ダナンの方は?」

「俺達は紫の騎士を追って、ばったり倒れて腹空かせてらぁめん食べたかったって言ってたから始末するのはやめて引き入れるか、って」

「始末って……もう」

「いやだって敵じゃん。しかもロイド奪ったってことは俺達の敵だし。真王の下に返すくらいなら削れる内に削っといた方がいいだろ?」

「いや、合理的な考え方ではあるのだが、それにしても情がないというか」

「だから俺はお前らと一緒にいるのが嫌なんだよ。でまぁ結局取引というか、死にたくないなら俺のために働けってことで引き入れてな。その後レム王国に行って紫の騎士経由で空図の欠片貰って、レオナがうち入るって言うからそのまま連れて帰ってきたってところだな」

「そうなんだ。あ、じゃあもしかして空図の欠片全部持ってるの?」

「ああ。ファータ・グランデも、ナル・グランデもな」

「……そっか。もう追いつかれちゃったんだ」

 

 そう呟くジータの口元は少しだけ嬉しそうだった。ライバルが張り合いないとつまらないからな、気持ちはわかる。

 

「あと聞きたいことは……あれだ。ミカボシってヤツが別の騎空団だってのは聞いたんだが、どこのどいつだ?」

 

 そう、それだ。あとロキがいたのも気になるし。

 

「あ、それくらいは言ってもいいかなぁ」

「うん。ミカさんはロキの騎空団に入ったんだよ」

「ロキだぁ? ……あいつもいたことは知ってるんだが、マジかよ」

「うん。どういうつもりかはまだよくわかってないけど、ロキにフェンリル、ミカボシさんにツヴァイちゃんにガンダルヴァ。あとネセサリアさんっていうエルーンの綺麗な男の人が団員かな」

 

 ロキとフェンリルはわかる。ガンダルヴァは確か、リーシャより強いんだったか。ミカボシは星の民としかわからないが。ツヴァイはオーキスと同じゴーレムだよな。どういう経緯で入ったのかは知らないが。ネセサリアって名前には聞いた覚えがないんだが、綺麗なエルーンの男って言われるとあいつを思い浮かべるよな。

 

「相当強い面子ではあるんだな。ネセサリアってヤツだけ全然知らないな」

「私達も全然知らなかったよ。女性口調の綺麗な人なんだ。白髪の」

「ふぅん」

 

 あ、あいつだわ。紫の騎士を殺そうとしてた諜報員。なにが目的でロキの騎空団に入ったのかは知らないが、まぁ約束だし言わないでおいてやろう。

 

「ロキも強かったよね。フェンリルと教えの最奥に至ってるみたいだったんだけど、私達が束になっても敵わなかったんだ。【十天を統べし者】を使ってなかったとはいえね」

「へぇ、そりゃ凄いな。強敵になる」

 

 “蒼穹”と関わりがあるってことは、俺達とも関わりが出てくる可能性があるということだ。

 

「因みになんか名前はあるのか?」

「えっと……確か“紅星(あかほし)”だったかな? 『君達が“空”と名乗るなら、僕達は“星”を名乗ろうかな』とか言ってたよ」

「ふぅん。じゃあお前らの“蒼穹”に対比するような感じでつけてるんだな」

 

 あいつらもあいつらで、こいつらに注視しているらしい。俺も名づける時参考にしたし。

 

「うん、みたいだね。ダナン君の“黒闇”はどういう由来なの? ダナン君っぽいなぁとは思ってるけど」

「俺もどんな感じがいいかわからなかったからお前らを参考にしたぞ。グラン、ルリア、カタリナ。俺、オーキス、アポロって感じで」

「? ああ、色か」

 

 丁度今は席が対面になっているのでわかりやすい。

 

「闇の方は適当だな。黒に合いそうななにかってことで思いついただけだし」

「そういう由来だったんだね」

 

 とまぁそんな他愛ないことを雑談しながら宴を過ごしていった。ある程度話し終わってからは各団員達の様子、特にロベリアやニーア、ガイゼンボーガの様子を見るために席を回ることにする。


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