ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

170 / 245
今日、バレンタインじゃねぇかっっっ!!!

作者にとっては全く以ってなにもない日ですが、世間はバレンタインですもんね。……また番外編描いてねぇよorz。
というわけで明日バレンタインの番外編を更新する予定です。丁度区切りがいいので、明日です。

……クリスマスと言い、なぜ当日に更新できないんでしょう。


翌朝

 朝を迎える。

 

 両親に愛してもらうため、認めてもらうために魔術の努力を重ねてきたというニーア。

 ではその相手が恋人などの場合どうなるかという想像を働かせてみよう。

 より愛してもらうため、より喜んでもらうために精いっぱい努力をすることだろう。

 

 その結果、相手に合わせて可能なプレイの幅が広がっていくということが考えられるわけだ。

 

 なにが言いたいかというと、欲望の捌け口にされていたフラウよりも巧みだった。

 

 そんな話である。

 

 ……別に一々感想みたいなのを挟まなくてもいいんだけどな。個人的主観である。

 

 ともあれ、今は朝になって休憩しているところだ。

 互いに全裸で、仰向けに寝転がる俺の上にニーアが乗っている状態である。

 

「……フラウちゃんの言ってた通り、いっぱい愛してくれるんだ」

 

 そう呟くニーアの声色は嬉しそうではある。満足してもらえたならそれでいいんだが。

 

「フラウちゃんが言ってたけど、いっぱい愛してくれた方が気持ち良くなれるんだよね? それってホントなんだ」

 

 ハードルを上げてんじゃねぇよあいつは。

 

「反応が薄いって言われて愛してくれなくなっちゃうこともあったから、フリをするようにしてたんだけど、それも必要なくって」

 

 意外とやり手なんだなと他人事のように思いつつ。ポジティブな捉え方をすれば頑張り屋さんではあるはずなのだ。ただ、それ以外が必要だと思われない環境で育っただけで。

 

「ダナン君に愛してもらえて良かった」

 

 ふふ、とニーアは嬉しそうに微笑んでいる。……こうなったらもう引き返せないぞ、俺。ニーアと関係を持つなら、墓場まで共にする覚悟でないと。

 

「喜んでもらえたなら良かった」

「……うん、嬉しい。そろそろ続きシよ? もっと、愛して欲しいな……」

 

 ……まぁ、ニーアの体力がなくなるまではそうなりますよね。わかってたけど。

 

 というわけで結局、その後二日に渡り相手をすることになってしまった。……これ、もしニーアより先にバテてたら殺されてたんじゃないか? 「……なんでもう出ないの? 私を愛してくれないの? じゃああなたはもういらない」みたいな感じで。いや怖っ。

 なにが引き鉄になるかまだわかり切っていないところがあるので、その辺を探りながらなんとかやっていこうと思う。最大限気をつけつつな。

 

 戻ったら他のヤツらが不満たらたらだったので、その埋め合わせをしてやる必要が出てきた。ニーアも混ざることになるのだが、混ざっても問題を起こすことはなさそうだ。まぁ、凄く揉めはするのだが。男冥利に尽きる状況ではあったが、ニーアがいつ爆発するかわからないという不安が募るせいで胃がキリキリしました。

 

「もう街で噂になっていますよ、この“不潔サイテー男”」

 

 そんな中で遭遇したアリアから軽蔑した目を向けられてしまった。俺はそんな目を向けられても興奮しないのでただ嫌なだけだ。

 彼女はレオナと一緒にいた。レオナは俺達を見て苦笑しきりだったが。まぁ彼女からしてみれば想い人がいるので対面の火事といったところなのだろう。別に俺は誰彼構わず手を出しているわけではないため、レオナに手を出す気はない。俺がもし惚れ込むようなことがあれば違ってくる可能性もあるが、まぁそれはないだろう。俺は今いる面子だけで手がいっぱいである。だから誰が手を繋ぐかで揉めないで。

 

「二人はこっちの空域には慣れたか?」

 

 偶々会えたので世間話をしてみる。

 

「……はい、慣れましたよ。七曜の騎士でもなければ滅多に空域を越えることはないからでしょうが、私が素顔でいても溶け込めるのはとても新鮮です。こうしてのんびり過ごすのもいいですね」

「うん。立場に縛られず好きなことをしていいっていうのも珍しくって。今までは誰かのことばっかり考えてたから」

 

 アリアは嘆息してから真面目に回答してくれる。レオナも馴染んでいるようだ。二人で外出という形なのか、武器も携帯せず私服である。レオナの私服って珍しいなとか思ってしまったがあまりじろじろ見ると横で脇腹を抓ってくる手が追加されるので良くない。

 

「そうか。まぁ真王が攻め込んでくる可能性もあるから、気を抜きすぎず適度に休んでくれ。他のヤツもだが、これまで頑張りすぎてたんだよお前らは。折角だしのんびりしてろよ」

「はい。……そういう心遣いはできるのですね」

「うん、ありがとう」

 

 俺の言葉にアリアが呆れた顔に、レオナが笑顔になる。

 

「……レラクルは騎空艇でずっと休み。ゼオはオクトーと一緒だろうけど行方知れず。ザンツはまぁ必要物資やらを買い込んで、足りない金を補うためにシェロカルテの手伝い中と」

 

 ロベリアは人を壊す音でない音を楽しみにどこかへ行っているし、ガイゼンボーガは戦場を求めている。カイムは特にやることがないなら暇になったのか、図書館で本を読み漁っていると言っていた。人の感情がどういう時どう動くのかを学ぶつもりではあるのだろう。まぁ、俺にその点で勝つにはまだまだだと思うけどな。エスタリオラは……どこかで眠っている。節制を受けている状態なので、休んでいていいとなればどこかで眠りこけているだろう。トキリは“蒼穹”のヤツと意気投合して、強くなるために色々やっているらしい。プライドはべきべきなので多少療養は必要だろうが、また自尊心が肥大化しても仕方がない。戻ってきたら容赦なく叩きのめしてやることにしよう。

 星晶獣四体はそれぞれ好きに街を回っている――と思ったのだが。

 

「……お前なにやってんだ?」

 

 俺達が街を歩いていると、シヴァに遭遇した。屋台で。しかも買う側ではなく売る側の方。

 

「人の子よ、うぇーいである。人の営みに触れるため、仕事というモノを行おうと思っていたのだ」

 

 しっかりローアイン達の影響受けてんじゃねぇよ。

 ともあれ、シヴァは四本の腕で串焼きをしていた。いや確かに適任というか、一人で実質二人分だから給料半分で雇ってるようなモノだし。

 鎧ではなく白いタンクトップだ。鉢巻を巻いて串焼きを作る様は確かに様にはなっている。

 

「……まぁ、本人がいいならいいか」

 

 金が欲しいのではなく、仕事をしてみたいのなら給料をもっと上げてもらった方がいいとは言わなくていい。誰も損をしないのだから。

 

「君! 我が劇団で劇に出てみないか!?」

 

 今度はグリームニルを見かけた。しかも劇団にスカウトされているようだ。確かに芝居がかった喋り方をするし適任かもしれない。こいつら俗世に染まりすぎでは。

 

「構わないが、当然主役なんだろうな?」

 

 ふっと髪を掻き上げて応える。

 

「主役ではないんだけど、メインの役所には違いないよ。勇者と魔王の物語で、魔王の役だからね!」

 

 ぴったりじゃねぇか。

 グリームニルの耳がぴくりと動いていた。どうやらお気に召したようだ。

 

「魔王か……くくっ。勇者に終焉を齎し、世界を我が物にしてみせよう」

 

 早速乗り気になっている。

 

「いいよその感じその感じ! いやぁ、実は魔王役の人が急遽来れなくなちゃって困ってたんだよ。なぜか容姿も魔王にそっくりだし、是非お願いしたい!」

「いいだろう、受けてやる」

「助かる! で、魔王だからやっぱり最後には倒されちゃうんだけど、その辺でこう、みっともない演技をして欲しいんだよね。できる?」

「み、みっとみない?」

 

 カッコつけ続けるだけじゃないのか、とグリームニルが素に戻っていた。

 

「そう! 『もうやめてぇ! 殺さないでぇ!』って感じの」

「……ま、まぁいいだろう。そこまではカッコ良く決めればいいのだろう?」

「そうそう。偉ぶってる魔王が命乞い、このギャップだよ! 今回のテーマは悪を倒せば必ずしも正義ってわけじゃない、だからね。命乞いをする魔王を容赦なく叩き潰す勇者達を見て、そこに疑問を呈するんだ。すっごく大事なところだから!」

「そ、そうですか……」

 

 熱弁する相手に若干引き気味のグリームニルであった。ま、頑張れよ。ヘマするようなら笑い者にしてやるつもりだが、成功したらちゃんと褒めるからな。

 その後、虐めたくなる役者第一位に輝いた星晶獣がいたらしいのは、盛大に笑ってやったのだが。

 

 次は、残る二人だ。

 水着という季節ではなかったので、ただ海岸を散歩するというデートの最中だった。

 

 ざぱぁと水面から上がってきたのは透明な球体だった。その中にいたのが、星晶獣の残る二人。エウロペとブローディアだった。……なんで海から上がってくるんだよお前ら。

 

「ダナン様方ではありませんか。海になんのご用でしょう?」

「それはこっちのセリフだ。なんで海から上がってきたんだ?」

「私達はこの街にある美しいモノを探していたのですが、その中で水族館という施設に行きました。まるで海の中を歩いているかのような水槽に圧倒されたのです」

 

 エウロペはうっとりと手を合わせる。ああ、あれか。でかい水槽の中を通っているかのようなヤツ。確かにあれは綺麗だった。銀の小魚が群れで通ると光が反射してキラキラして見えるんだよな。

 

「そこで、エウロペの提案で実際に海に入ってみたのだ」

 

 ブローディアの言葉を聞き、そういう理由だったのかと納得する。凄い行動力だな。普通は考えつかないというか、考えついても実行に移すのは難しいかもしれないが。

 

「しかし海の中は残念ながら美しいとは言えませんでした。ここに棲むリヴァイアサンとも話したのですが、以前海は汚染されてしまい、まだ綺麗にはなっていないのだと」

「ああ、そうか……。エルステのヤツらが廃棄物を流してたんだったな」

 

 ちらり、と傍のアポロへ視線を向ける。確かその時、リヴァイアサンを怒らせようとしていたのはこいつだったな。わかっていて止めなかったところだ。俺やオーキスの視線に気づいたのか、アポロは気まずそうに目を逸らしていたが。

 

「美しい海を穢すなど……人にはそのような者もいるのですね」

 

 ご立腹らしくエウロペはむっとした表情をしている。

 

「全くだ。そのえるすてとやらがいれば、我が神剣で斬り捨てるのだがな」

 

 今目の前にそのエルステ最高顧問だった人がいますよ。

 

「……まぁ、水族館はちゃんと見た人が楽しめるように工夫されて作ってあるからな。実際の海とは違う点も多い。創られた美しさってヤツだ。その代表は確かプラネタリウムとかいうヤツがあるんだっけかな」

「ぷらねたりうむ……わかりました、行ってみましょう」

「ああ」

 

 二人は、というかエウロペの趣味にブローディアが付き合っているようだが、色々と見て回っているようだ。あの二人はナンパされそうだが、まぁ星晶獣だし大丈夫だとは思う。襲われそうになったら反撃するだろう。

 

 バラゴナとリューゲルはどこに行っているかはわからないが、まぁ子供じゃないので大丈夫だと思っている。真王の手の者に居場所を悟られなければ、それだけでいい。リューゲルは立場と家族の身が危ういので多少真王に連絡を取るくらいなら目を瞑ってもいいだろうしな。

 

 アウギュステには大所帯な“蒼穹”の騎空団がいるのである程度カモフラージュにはなると思うが、そこは確かなことが言えない部分だ。

 

 俺はその後も仲間達と過ごしながら、“蒼穹”にいて滅多に顔を合わせない顔見知りとも話しておく。

 当然のことながら鍛錬も忘れない。全員強いので誰が相手でも不足はないし、問題なかった。アリアとレオナは二人で鍛錬するのが日課となっているらしいので、そこに顔を出して二人とも手合わせをした。

 

 それから俺達は、シェロカルテから新たな賢者の情報が貰えるまで束の間の平穏を謳歌していたのだった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。