・自分の身に起きたことをカッツェには言っていない
・けど皇帝からカードを受け取っているため賢者になっていることは話している
みたいな感じだと思っています。
間違っていたらごめんなさい。
古戦場、頑張ってください。
準備期間が短い中なので大変かと思いますが。
カッツェとハーゼの二人からカードを貰うために、二人がガルゲニア皇国を取り戻すのを手伝うことになった。
裏社交界という名のグループが、ガルゲニア皇国に蔓延っているらしい。
噂では前皇帝が病死したのも、第三皇子が病死していたのも、第二皇子が殺害されて第四皇子が捕まったのも、カッツェの楽団への差し入れに毒を盛ったのも、全てはそいつらだという可能性があるようだ。裏社交界は今の皇国を裏から牛耳っているらしく、現皇帝はそいつらに利用されている可能性が高いという。そしてその裏社交界のボスとして君臨しているのが、彼らの叔父だそうだ。皇位継承権が皇子達に次ぐ形なので皇子を全員陥れて自分が皇帝になる、というのがカッツェの予想だ。
なんでも現皇帝、元第一皇子のヤツはプライドが高く乗せやすいらしい。利用しやすい駒としての価値は高いようだ。
「ん? ハーゼも皇子なんだったらなにか仕かけられてるんじゃないのか?」
話を聞いていて疑問に思ったことを尋ねてみる。
「いえ。ハーゼはなにもされておりませんわ。所詮は最も皇位継承権の低い、お飾りの皇子でしたから。お兄様の執事に連れ出され、国の現状を憂い、お兄様についてきました」
「お飾りだなんてことはないよ、私の可愛いハーゼ。ハーゼがいてくれるからこそ、私はこうして希望を捨てずにいられる」
「まぁお兄様ったら」
カッツェがハーゼに向ける感情は愛情だ。妹への家族愛ではあるだろうが。聞いたところによると、現皇帝達とは異母兄弟らしい。カッツェとハーゼは同じ母から生まれた子供なので、結束は固いのだろう。
「国を裏社交界から取り戻すためには、まず現皇帝を駒とするヤツらの所業を暴き、民に認知させなければならない。……現皇帝は傍若無人な政治を行っているそうだから、不信感は高まっているだろうが。とはいえ民に武力はないと言っていい。革命を起こそうにも国の軍には立ち向かえないのだ」
カッツェは傍にない祖国の民を憂うように悲しげな表情をした。……ハーゼは兎も角、こいつからは嘘の気配がしないな。心からそう思っているのだろうか。
「なるほど。つまりあんたは民意を味方につけ、現皇帝を断罪し裏社交界を退けて皇帝の座につこうってわけだ」
「そうだ」
現皇帝は第二皇子殺害の疑いを片っ端からかけて処刑していく、などの所業を行うような人物らしい。影で操られていたとしても到底見過ごせることではない。
「ですが、裏社交界が実際にどれだけの規模で動いているかは存じませんわ。誰か一人でも逃してしまえば無辜の民に報復されてしまうかもしれません。ですので、構成員の全てを洗い出す必要があります」
ハーゼは真剣な顔でそう告げてくる。……感情を隠すのが上手いんだが、やっぱり根幹に関わるモノだと少し揺れるな。言葉を選んではいるが、要は「あいつら皆殺しにしてやるわ!」という気持ちなのだろうと思う。
先程尋ねたが、ハーゼにもなにかしらの策謀があったはずなのだ。つまりそこで裏社交界に大きな怒りを抱いた可能性が高い。
「なるほどな。で、潜入して情報を集める役が必要なんだな?」
「その通りだ。だが君を送り込むかどうかとは別だ。なぜなら、裏社交界に私達の居場所を漏らさないとも限らないからだ」
まぁ、だろうな。俺がぱっと思いつく手としては、二人の居場所を突き止める代わりに裏社交界での確かな地位をやろう、みたいな。そしてカッツェとハーゼを始末した後で殺される、と。まぁ普通の考え方だな。
「だが、それだけが目的なのだとしたらこうして話している時点で既に達していることになるな」
カッツェが俺に試すような目を向けてくる。
「ああ。だからここで俺を見逃せばあんたら二人と貧民街の住人は殲滅されることになるな」
俺は肩を竦めておどけてみせる。話に聞いただけだが、裏社交界なら貧民街ごと焼き払うだろう。
「それは困る。君を見逃す手はなくなるな」
ふっ、とカッツェは口元に笑みを浮かべた。
「……送り込むことも、ここで逃がすこともできなくなってしまったな。さて、ハーゼ。彼の扱いをどうすれば良いか案はあるかな?」
彼はどうやら俺が裏社交界の送り込んだスパイではないとわかってくれたようだ。そして妹の方は、どう出てくるかな。
「いえ、お兄様。ダナンさんを送り込みましょう」
しかしハーゼはそう提案した。
「ほう、なぜだ? 彼は信用できない可能性が残っているが」
「簡単ですわ、お兄様。私達が契約しているアーカルムの星晶獣は、ワールドの目的のために契約者を必要としています。契約者がいなければカードを手にすることはできず、手にした後に殺してしまっては意味を為さなくなってしまいます。次の契約者がどれくらいの時間で見つかるかは不明ですが、ワールドと契約を結びたい彼がそのような不確定要素に委ねるとは思えませんわ」
「それだとカード奪って幽閉するだけにさせるって手もあるんじゃないか?」
「星晶獣で打ち破れない牢獄は、ガルゲニア皇国にはありませんわ。万全を期すなら処刑を選ぶでしょうね」
ハーゼは彼女の考えを語った。……なるほど、確かにな。まぁ元々ガルゲニア皇国についていないんだから、俺がいくら疑わせようとしたってボロが出るだけだろうが。
「流石は私の可愛いハーゼ。聡明だな」
「ふふ、光栄ですわお兄様」
カッツェは自分のことのように誇らしげで、ハーゼはにこにこと笑顔で彼の言葉を受け止めている。
「では、君にガルゲニア皇国での情報収集を依頼しよう。手段は問わない。……できれば民の現状も集めて欲しい。如何に民が苦しんでいるか、それによって現皇帝の崩御が決まると言っても過言ではないからな」
カッツェも俺が刺客ではないと思っているからか、案外あっさり俺を送り込む方向で話をつけてきた。
「手段を問わないなら俺の領分だ。……もし現行犯で民を苦しめているようなら、事故に見せかけて始末しても?」
「……やむを得ない場合は、それも考慮してくれて構わない。私は良き王であれと思っているが、非道な輩の命を考慮して善良な民が傷つくようではならない」
よし、言質は取った。まぁ殺りすぎると警戒されて姿を潜めることも考えられるからな。一人二人殺って警戒を起こす前くらいに大半は把握しておくべきだろう。誰かが裏で動いていると悟られないようにするのが第一だ。こういう隠密での情報収集なら頼りになる人材がうちの騎空団には存在する。
「わかった。じゃあ受けよう。裏社交界で今わかっているメンバーとか、裏社交界に繋がっていそうな情報はあるか?」
「ああ。ハーゼ」
「はい、お兄様」
俺はあっさりと頷いて取っかかりがあるかを尋ねる。カッツェが指示をして、ハーゼが懐から折り畳んだ紙を取り出す。彼女はそれを開くと内容を読み上げた。
「明言できるのはただ一人、私達の叔父様ですわ。表向きはボランティアや資金援助などを行う善人とされていますが、その実裏社交界でも中心と思われる地位に就いております。裏社交界には貴族も多く参加していますが、城へ自由に出入りできる立場ですので立て続けに起きた皇族の不慮も、彼が糸を引いている可能性が高いと思われます」
「なるほど、大物だな」
二人の叔父ってのがキーパーソンというわけだ。その人物を追っていけば裏社交界の全容を把握できるかもしれない。
「……お兄様、少し場所を変えて二人で話してもよろしいでしょうか。あまりお耳に入れたくないお話ですので……」
「気遣いは無用だよ、ハーゼ。私は皇帝となるべく、どんな時も平静を心がけている。どんな話であれ、きちんと受け止めよう」
「はい。ただこれは宮殿で少し噂になっていた程度のお話だということを、念頭に置いてくださいまし」
ハーゼはそう前置きしてから神妙な面持ちで語り始めた。
「……叔父様が目をかけている孤児院の子供を引き取って人体実験を行い、裏社交界の見世物にしていると」
彼女は語る最中兄に見えないよう拳を握り締めている。まるで湧き上がる怒りを抑え込んでいるかのようだ。
「そんな噂があったのか……。罪のない子供達に人体実験を行い見世物にするなど人の所業ではないな。もし本当なら、一刻も早く止めなければならない」
「ええ、そうですわねお兄様」
あくまで彼女はカッツェにはなにも言わないつもりのようだ。カッツェは政治に興味がなく楽団の指揮者として過ごしていたという話だが、ハーゼはお飾りだったとしても式典などに顔を出していたという。だからこそ彼女しか知らない情報もあると考えられるのだが。
ハーゼは間違いなく裏社交界に個人的な怒りを抱いている。様子の端々にそれが感じ取れる。
「あんたの内情はわかった。本当にやりたいことが見えたなら協力するのは吝かでもない」
俺はニヤリと笑ってハーゼへ告げる。彼女の表情は一切変わらない。だが心の中ではこう思っているはずだ。
(かかった……!)
と。そうほくそ笑んでいるに違いない。
カッツェには見えないように、ということは俺だけに見えるように、ということでもある。つまり彼女は自分の本心を俺にちら見せしてきたのだ。理由は単純、信用させるため。
向こうは俺が表面上の様子を疑っていることに気づいたのだろう。流石にこいつの仮面の向こうは見通せなかった。俺の観察眼もまだまだだな。
ともあれ自分の中の感情を見せることで俺を信用させようとしてきたわけだ。
「……と言うだけなら簡単だけどな」
俺がつけ足すと僅かにハーゼの片眉がぴくりと反応した。
「まぁ、わざわざ見せてくれたんならそれに乗っかってやるよ。真意についてはどうだろうな?」
その程度で俺を操れると思うなよ、と告げるように笑う。
「あら、なんのことでしょう」
ハーゼはにっこりと微笑んで小首を傾げた。
「さぁ、なんのことだろうな?」
俺も明言はしないが不敵に笑う。
「うふふ……」
「くくく……」
「ふふふふふっ……」
「はははははっ……」
ハーゼと俺の笑い声が部屋に響いた。ただし二人共目が笑っていない。
「は、ハーゼ? 一体どうしたというんだ?」
一人だけついていけていないカッツェは戸惑っているようだが。
「いえ、なんでもありませんわお兄様。どうやらダナンさんは私が思っていた以上に優秀な方のようです」
「そ、そうか。ならいい。ではそのハーゼが見込んだ手腕を振るってもらうとしようか」
ハーゼが微笑んで告げるとあっさりカッツェは納得してしまった。それでいいのか次期皇帝。
「さて、いくつか詳細な情報を得たいところだし、もう少し聞いてもいいか?」
「私達に答えられることなら答えよう」
街で聞き回れば民衆の状況、気持ちやなんかは調査できるだろう。しかし貴族や皇族の今を調べるとなると少し難易度が上がる。宮殿に忍び込んで調査するのは適した人材に頼めるとしても、人から話を聞き出すには潜入の必要があるかもしれない。潜入の手立てはいくつか聞き出しておくべきだろう。
「俺は“シェフ”なんだが、宮廷料理人として通用すると思うか?」
俺が思いつく最良のカードはそれだ。
「“シェフ”とはあの、WWCで優勝したという……?」
「ああ。ほら、“シェフ”だけが持つバッジだ」
説得力を持たせるためにバッグからバッジを取り出してテーブルに置く。ハーゼはまず手に取り、繁々と眺めた。
「……ハーゼは目利きに通じているわけではありませんが、どうやら本物のようですわ」
これには流石のハーゼも驚きを露わにしていた。まぁ驚かない方が不自然だろうし。
「……ガルゲニア皇国に“シェフ”はいない。充分通用すると思うが」
「とはいえ実際に食べてみませんと判断しかねますね」
ということなので、調理をすることになった。まぁ“シェフ”じゃないからと言って宮廷料理人の腕前が劣るわけではないからな。既に宮廷料理人になっているようならわざわざ“シェフ”の称号を取りに行くまでもないだろう。
貴族が食べるような上品な品々をイメージして何品か作ってみる。
「これは確かに美味しそうだな」
「ええ。ではまずは私が」
見た目にも拘っているので二人して目を輝かせている。だが毒見役も兼ねているのかハーゼは一品ずつ口にしていき――
「……ハーゼよ。毒見にしては多くなかったか?」
カッツェはそう口にするまで、料理の半分ほどをそれぞれ食べてしまった。思わずはっとするハーゼに俺は薄ら笑いを浮かべてしまうが、彼女はこちらよりも兄に言い訳をするようだ。少し頬を染めてしゅんと肩を窄めると、
「……申し訳ありません、お兄様。あまりの美味しさにたくさん食べてしまいました。はしたないところをお見せしてしまい申し訳ありませんでした。ハーゼは毒見役失格です」
悲しげにそう言ってみせた。当然、カッツェは柔らかく微笑むと彼女を慰めるように口を開く。
「いいんだよ、ハーゼ。ハーゼが食べたいならもっと食べても構わない。二人で食卓を囲めばもっと美味しくなるだろう? ほら、一緒に食べようか」
「お兄様……」
ハーゼは感極まった様子でカッツェに抱き着く。それを当然のように受け入れ頭を撫でるカッツェ。……しかし俺からはハーゼがちろりと舌を出したのが見えた。
うわぁ、手玉に取られてるよお兄様。
それくらいは俺に見せてもいい、と彼女は判断してくれたのだろう。ある程度の信頼は勝ち取れたらしい。
他にも貴族に取り入るために必要そうなことを聞いておく。連絡手段もちゃんと確保しておかなければならないが、それはまた次の機会にしよう。
「よし。俺が聞きたいのはそれくらいだが、情報収集に適した仲間がいる。そいつらを呼ぶから、それからまた打ち合わせをしよう。連絡手段の確保やなんかも、そいつらがいると捗るはずだからな」
二人にはそう告げておく。
……さて、あの二人と呼ぶとしようかね。
ダナンとハーゼの心理戦みたいなのが描きたかった……難しい。