オリルート真っしぐらでいきますよっと。
明日分も書けましたのでもうちょっと更新が続きます。
あとVSのナルメアのカラー変更の一つが清姫っぽいなぁと思ってたり。
先の一件で賢者十人の内、九人と出会い九枚のカードを集めてしまった。ワールドと真の契約を交わすその日も近いかもしれない。
なので一応九体全てをワールドの支配から脱しておいて、いざという時に牙を剥かれないようにしておく必要があった。
倒すことで支配から逃れている星晶獣は、九体中三体。テンペランス、ジャッジメント、サン。
まずは一人ずつ近くにいる賢者達に対処していく。
「フラウ。デビルを一回倒して再契約結ばせてもらっていいか?」
「いいよ、はい」
フラウの時はそれはもうあっさりと進んだ。その後デビルの真意を聞いたフラウだが、「私を利用したことがそれで消えるわけじゃない」と言って素っ気ない態度を取っている。
それから近くにいたニーア、ハーゼ、カイムもスムーズに済ませることができた。
「よぉ、ロベリア」
俺は人気のない場所にロベリアを呼び出していた。こいつの便利なところは本人曰く空域を越えても声を届けることができる魔術。俺は団員で唯一こいつと通信できる巻貝を持っている。それを使えば簡単に呼び出すことができるのだ。
「オレになにか用かな? こんな大所帯で」
ロベリアは飄々と笑って言う。
彼の言う通り、俺は所属団員の六割を連れてきてロベリアを囲んでいた。
「いや、タワーを倒すついでにお前も倒してやろうかと。この間活躍してくれたからな、褒美だよ褒美」
「くはっ! それでこの人数で押しかけてきたというわけか! 嬉しい限りだよ」
「よし、じゃあ遠慮なくこいつをサンドバッグにしてやれ! 生き返るから好きにしていいぞ!」
「くははっ! 言っておくけどオレも加減はしない。もしかしたら二度と聴けないキミ達の『音』が聴ける機会かもしれないからね!」
負けるとは思っていないが、容易に勝てる相手とも思っていない。こいつには一部の団員と違って仲間意識というモノが存在しない。だから容赦なく俺達を攻撃してくるだろう。事前に人を殺すのはちょっと、という団員には遠慮してもらっていた。
というわけで俺達とロベリアの戦いが始まった。タワーを倒すまでにロベリアを十回ほど殺すことになったが、まぁ悦んでいたので良しとしよう。
残るはガイゼンボーガただ一人。
「断固として拒否するッ!!」
やっと連絡が取れたかと思ったらこれだよ。
「いいじゃんかよ別に。星晶獣スターとの契約の都合上、どう足掻いてもお前一人じゃ不可能なんだ」
「決めつけるな、吾輩は“
「そういう問題じゃねぇんだよ。契約ってのはそういうモンだ。わかったらさっさとスター出して倒されやがれ」
「吾輩の邪魔だけはするなと言ったはずだぞ」
「譲れないモノがあるのがぶつかり合うのが男ってもんだろ?」
「いい度胸だ、なら吾輩に勝ってみせろ」
通信で話していたら決闘をすることになってしまった。……なぜだ。いや結局は戦うんだけど。
その後ガイゼンボーガと待ち合わせてある島の荒野で会うことになった。
「……一人で来たか」
ガイゼンボーガが以前と変わらぬ姿でそこに立っている。
「ああ。複数人で戦っても、あんたは認めないだろうと思ってな」
「ふん。わかってはいるようだが、吾輩を一人で倒せるなど思い上がりも甚だしい」
俺とガイゼンボーガは荒野に二人対峙した。
「準備はいいか?」
「ああ、【レスラー】」
頷きClassⅣを発動する。
「この“戦車”と殴り合うか! 面白い!」
「その思い上がりを正してやる!」
俺達がほぼ同時に駆け出し真っ向から拳をぶつけ合う。その衝撃で大地が抉れた。
「ぬぐおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
「おらあああぁぁぁぁぁぁ!!」
足を止めて殴り合う。一発一発がそれこそ人体を壊すほどの拳だ。だが俺の【レスラー】は強靭な肉体となるし、ガイゼンボーガは痛みを感じない。正直言って正面からの殴り合いは分が悪いと言って良かった。グランの【レスラー】なら張り合えるかもしれないが、俺の【レスラー】は少しだけ技巧派というか、折りにいく技をよく使いたくなる。しかも向こうは痛みなどがないから全く怯まない。俺は殴られれば痛いし、殴った箇所が悪ければ拳が痛む。
とはいえガイゼンボーガを認めさせるにはこの手しかないと思っていた。
殴っても殴っても拳が返ってくる。直撃しても怯まないからそのまま殴り返される。しかも鉄腕があるので一発の威力が大きい時がある。正直最も殴り合いに適した【レスラー】であっても押し負けそうだ。
そこは意地でカバーするしかないか。
それからしばらく必殺の拳を互いにぶつけ合っていると、先に俺の攻撃に綻びが生まれた。顔面を殴られて大きく吹っ飛んだのだ。殴り合うのはいいがダメージが足に来てしまって踏ん張り切れなかった。
「ははっ、どうやら吾輩の勝ちのようだな――っ!?」
ガイゼンボーガは凄惨に笑って追撃しようとしてくるが、突如がくりと膝を折った。
「……はっ。なんだよ、あんたもダメージ負ってんじゃねぇか」
いくら疲労を感じないとはいえ、疲労が溜まらないわけではない。俺はその間に体勢を立て直す。
「くっ……!」
「わかったらさっさとぶっ倒れろ!」
立ち上がろうとするガイゼンボーガに接近し、蹴りやすい位置に下がっていた顔面へ膝蹴りを叩き込んでやった。どさりと仰向けに倒れるガイゼンボーガ。
「……いい蹴りだ。どうやら団長殿は吾輩に匹敵する強さらしい」
くくっ、とガイゼンボーガは笑って折れた鼻からダラダラと血を流しながら起き上がる。……どこが匹敵するだよ、俺の姿を見ろ。満身創痍だろうが。と言ってやりたかったが意地でなんとかしていると思われないために勘違いしてもらうくらいで丁度いい。
「……それ故にさぞ、団長殿に勝った時の美酒は格別だろうな」
ガイゼンボーガは言って、首に下げた赤い飾りを掌に載せる。
「極星よ。貴様が吾輩の願いを叶えたというのなら、今こそ応えよ。吾輩に
ガインゼンボーガが星晶獣を頼った、だと……? いや頼ったという表現はおそらく本人に否定されるだろうが。それでも共に戦うことを許すとは思わなかった。
契約者の呼び声に応えて星晶獣が姿を現す。金髪の長髪と鍛え抜かれた肉体を持つ男だった。
「……意外だな。あんたが星晶獣に力を貸せ、だなんて」
「ふん。
「……」
ガイゼンボーガの態度にスターが嘆息しているような気がした。
「そうかよ。だが甘いな、ガイゼンボーガ」
俺は言ってワールドの能力を使い身体を万全な状態へと創り変えて治療する。
「あんたが星晶獣に頼っても俺には勝てないってことを、教えてやるよ!」
「上等、受けて立つ!」
また、俺とガイゼンボーガの殴り合いが始まった。俺は消耗戦に持ち込む気満々で、自分の怪我を端から治して殴り合う。相手も星晶獣の手を借りてるんだ、これくらいはいいだろう。
だがガイゼンボーガに加えてスターまで殴りかかってくるので厄介極まりない。いくら治し続けても怯んだら一巻の終わりだ。怯んだ直後にどちらかの拳が来て殴られ、更にその次もと繰り返されて負けるだろう。……負けるだけなら兎も角死にかねない。
「まだ吾輩と殴り合えるか!」
「受けて立つって言っただろうが!」
真っ向から互いを力いっぱい殴り合う。血が飛び散って互いに傷を与えていくが、それでも倒れず拳を振るう。
「……星の獣よ。吾輩と共に行くことを許す。合わせろ!」
“戦車”としての矜持を捨ててまで勝ちに来るつもりだ。一歩下がって距離を取ると、両の拳に力を込めた。スターも同じように構えている。……チッ。
予想される攻撃に、俺は両腕を交差して防御を固めた。次の瞬間、拳の嵐が降り注ぐ。
防御に全てを注いでいるにも関わらずどんどんダメージが与えられていく。常に一定の速度で回復し続けさせていても追いつかない。踏ん張る足が徐々に後退させられていくのを感じていた。腕が重い。何回かへし折れている。
「ドラァ!」
ラッシュがやんだ直後にスターの強烈な一撃が叩き込まれて俺の腕が弾かれる。その間にガイゼンボーガが肉薄していた。
「ハルマステール・フィストッ!!」
鉄腕が下から迫る。だが俺に打つ手はなかった。直撃を受けるしかない。
顎に拳を食らって意識が飛ぶ。顎も多分砕け散った。踏ん張ることなど無意味であるかのように身体が宙を舞う。
……ああ、クソ。息ぴったりかよ。
これまで拒んでいたのが嘘かと思うような連携である。吹っ飛んだ意識はすぐに戻ってきてくれたが、意識がとんだことで『ジョブ』も解除されてしまっている。
……流石に強ぇ。武器なし【レスラー】縛りじゃこんなもんか。
【レスラー】は俺に適した『ジョブ』じゃない。俺が本来の通りに戦うとしたら色々な武器と『ジョブ』を駆使して戦闘スタイルを変えながら翻弄して戦うってところだ。
だから負けるのは当然、それだけガイゼンボーガが強かったってことだ。
だが。
「……だ、んちょうとして、団員に負けてやるわけにはいかねぇよなぁ!」
俺は自分の身体を万全にして地面に手を突き体勢を立て直す。
「星天撃!」
今俺が思う最強の一撃を再現する。光の剣を手に創り出してスターを即座に両断する。幽世の力で強化されたエキドナを、弱っているとはいえ一発で倒した技だ。無事スターを倒すことができたので、一旦ガイゼンボーガとの契約が解除される。
「ぐ、ううぅぅぅ!?」
つまり彼の全身を痛みが襲うのだ。
「ぐっ、はははっ! これだ、これこそが、吾輩が長年求めていた感覚!」
瞳孔が開いて歓喜に嗤う。こいつもこいつでイカレてんな、と思いながら駆け出して距離を詰める。
「ならそのまま倒れとけ!」
歓喜に震えるガイゼンボーガを殴り飛ばす。相手が体勢を立て直せないように考えて殴り続ける。絶え間なく休ませず。拳を振るおうとはしてくるが、狙いを絞らせないために顔面を執拗に狙う。また鉄腕は大きいので懐に入ってしまえば片腕だけを警戒するだけで良かった。
さて、そろそろ仕留めるとするか。
俺はワールドの能力でスターと全く同じ姿をした黒い人影を出現させる。そのまま足を止めてそいつとラッシュをかます。その後頃合いを見て黒いスターが強烈な一撃を見舞い、身体が流れたところを俺が決めた。
「ハルマステール・フィスト!!」
先ほどやられた仕返しだ。俺の振り上げた拳でガイゼンボーガは高々と打ち上げられる。俺のように回復はできないため、どさりと地面に落ちて大の字になった。
「……吾輩の負け、か」
起き上がってくるかとも思ったが、ガイゼンボーガは意外にも負けを認めてくれた。
「意外だな、負けを認めるなんて」
「……ふん。“戦車”としての矜持を捨て、それでも尚こうして土をつけられている。それで認めないほど吾輩は愚かではない」
いや多分だけど長年戦い続けて頭のネジは飛んでるよ。
「……この先の戦いはもっと厳しくなる。あんた単体でも充分強いが、そこに星晶獣の力が加われば勝てる確率は大幅に上がる」
「貴殿に負けただろう」
「俺はまぁ、一応団長だからな。一団員に負けてちゃ話にならない。俺に負けたってことはあんたより強いヤツが……少なくともあと四人いるな」
“蒼穹”の双子、“蒼穹”の主格メンバー相手を圧倒したというロキ、そして七曜最強の白騎士。この四人は俺より強いと見て間違いないだろう。
「そうか」
「だから、俺の足を引っ張りたくないんならスターと再契約しろよ」
俺は挑発的に笑う。ガイゼンボーガはふっと笑みを零すと怪我をした身体を押して立ち上がる。
「極星よ」
呼びかけるとスターが姿を現す。
「吾輩の邪魔をすることは許さん。吾輩と契約する以上、その力であらゆる困難を乗り越える覚悟を決めろ」
「……痛みも報酬も、勝利も敗北も全ては我が主のモノ。また我が主がその気になったのであれば、この身を捧げて力になろう」
「ふん。……まぁいい」
やはりガイゼンボーガはあまりスターのことを気に入ってないようだ。
「そういやスターはなんでガイゼンボーガに目をつけたんだ? 確かに今までの賢者と違って拳で戦うっていう共通点はあったが」
それだけなら他にもたくさんいる。ガンダゴウザとかでもいい。
「……」
スターは無言で一つの映像を映し出した。そこには薄暗くてよく見えないが星晶獣らしき存在が重傷で座り込んでおり、星を見上げて「勝利の凱旋」を祈っていた。俺にはそれがなにかわからない。だがガイゼンボーガの表情が少しだけ変わった。
「かつて今と異なる星晶獣だった私は、覇空戦争の折戦場にたった一人取り残され、そのまま命尽きようとしていた。その時星に願ったのだ。そこをワールドに創り変えられ、今のザ・スターとなった」
スターはそう説明した。ガイゼンボーガとの共通点と聞いてその話をしたので、おそらく彼にも似たような出来事があったのだろう。
「ふぅん。それがどうガイゼンボーガと関係があるのかは知らないが、大抵の場合賢者とアーカルムの星晶獣は似た者同士だ。仲良くしろよ、ガイゼンボーガ」
「それはまた別の話だ」
彼はまだスターを認められないらしい。だが共闘する気にはなってくれたらしいので、一応良かったのかな。
とりあえずその後は戦場を駆け巡って苦痛を味わってくると怪我も治さずに飛び出したガイゼンボーガと別れて、アウギュステに戻ってきた。
これで賢者九人カード九枚星晶獣九体が揃った。あと一人もきっとヤバいヤツなんだろうが、ロベリアとニーアよりヤバいヤツなんてほとんどいないはずだから大丈夫。
シェロカルテの情報網に引っかかればすぐに向かおう。厄介事はしばらくご免だから数日置いてからがいいが、見つからないのが一番困る。ここまで来たら折角だから十人全員集めてワールドと契約を結んでおきたい。
賢者集めが捗って油断していたのだろうか。それとも全く気配を感じ取れなかったからだろうか。
「――あなたの
背後から女の声がしたかと思うと、ずぶりと俺の背中から腹部までを刃物が貫いていた。
「……あ?」
不意を打たれるという滅多にない事態と刃物を突き刺されたこと、しかし痛みはなく血も出ていないのに意識が遠退いていっていることなどが困惑となって押し寄せてくるが、おそらく刺された時点で抗う術はないのだろう。
俺の意識が抵抗する間もなく暗転していった。
戦闘狂 拳と拳で 語り合い 死力尽くせば 戦友同士(超適当
まぁガイゼンボーガはフェザーほど爽やかではありませんが。
あっ、フェザーで思い出しましたが「サウザンド・バウンド」の番外編はやる予定です。ダナンとフラウが出場予定ですね。