丁度『000』が復刻する当日に思い立って書き始めたので割りと見切り発車になります。
当然の如くゲーム内イベントを改変しておりますのでご注意ください。
この番外編は明確に時系列が決まっています。
音楽イベントと黄金の空編序盤のアウギュステでロベリアと遭遇するまでの間です。色々あってそんな時期になりました。
近況は、Twitterでは言いましたが今日フラウを取得しました。六人目の賢者で、六属性を一巡した形になりますね。なのでアラナンは取得してません。
次の賢者はアストラ的にロベリアになりそうです。まぁ古戦場も次の火古戦場で玉髄取るとしたらその次は土有利かなと思うので丁度いいでしょう。
という感じです。
ではどうぞ。
アウギュステ列島の区役所にて。名だたる商会の長が集まり腹の探り合いをしつつ談笑していた。
「ふむ……主だった商会は揃ったようだね。では緊急会議を始めよう」
この場を取り持つ区長が音頭を取る。
「集まってもらったのは他でもない。既に察している者も多いだろうが、本日の議題は噂の『災厄』について。僭越ながら利権に中立的立場の私が、連絡系統に優れる皆さんの協力を仰ぎ、情報を集め対策を検討させていただきたい」
区長の殊勝な言葉に、武器屋の男は不満げに口を開いた。
「手短に頼むよ。こちとら大事な取引の最中だったんだ」
「呑気なことを……。世界が滅びたら取引もなにもないだろう」
「世界が滅びる? 災厄とかってのを本気で信じてんのか?」
道具屋が苦言を呈するが、気にした様子はない。しかし同席している雑貨屋の女性がくすりと笑った。
「あら、白々しい。あなたほどの商会なら真偽を把握済みでは?」
互いに牽制し合うような中、間延びした声がやってくる。
「まぁまぁ、皆さん。美味しい珈琲を淹れてきました、とりあえず今は団結しませんか~?」
万屋シェロカルテである。彼女が仲裁したタイミングを見計らって区長も口を開いた。
「その通りだ。今は腹を探り合っている時ではない」
言って、本題に入るために自分から語り出す。
「では私から……まず島々の落下現象は、事実だ」
今全空で噂となり、人々の不安を煽っている現象。それが、区長の口にした『災厄』である。
これまで、島の落下は数百年に一度しか起きていないほどで、問題にすることもなかった。しかし、最近頻発していた。
「瘴流域付近の調査員の報告では、隣の空域でも同様の状況らしい」
「なるほど、とすると全空域の……」
区長の報告に道具屋は呟き、自分が持つ情報を口にする。
「僕の商会の情報網では、気流も気象も異常はなかったようです。やはり原因は浮力の消失が有力ですね」
「『四大元素』よ。信頼できる筋の学者によると、その異変が災厄の発端みたい」
原因について雑貨屋から補足が入る。
「それで? 次はあなたの番よ?」
女性は武器屋に話を振った。
「ふん……わかったよ、しょうがないな」
武器屋は鼻を鳴らしつつ、やはり情報を持っていたようだ。
「島は面積の小さい順に落下してる。まだ人的被害は確認されてないが、その規模は徐々に拡大してるってよ」
「そうか、ありがとう。皆さんの協力に感謝する」
武器屋の情報までを聞いて、区長が改めて礼を言う。
「それでは急いで各勢力に連絡を。今は利害に関わらず連携を図らねば」
「わかりました。僕は各国の首脳陣に話をしてみます」
「私は末端の商会に。市井の人々にも注意を呼びかけるわ」
「じゃあ俺は帝国か? 確かにパイプはあるが面倒だなぁ……」
「でしたら私は、騎空士さん達に情報提供してきますね~」
「ああ、任せるよ。万が一に備えて信頼できる騎空団に、空の避難経路の確保も頼みたいところだ」
「わかりました、ではグランサイファーの皆さんに――」
区長と合わせて各商会が情報連携について決めていく中、シェロカルテが“蒼穹”の騎空団に依頼しようかと口にした、その時だった。
「その者達こそ、災厄の元凶だとしたら?」
聞き覚えのない、どの商会の代表者でもない男の声が聞こえた。見れば、黒いフードに黒い鎧を纏った人物が立っている。男は剣を握っていた。
「むっ……? なんだ、会議中だぞ? 警備兵はなにをしている?」
区長は関係者ではない侵入者に顔を顰める。
「ここにはもう誰もいない。俺と君等を除いて、誰も」
男の言葉に動揺が走った。
「な、なんだって? いきなり現れてなにを言っているんだ?」
「警備兵、警備兵! ……嘘でしょ、本当に誰もいないわ!」
「馬鹿な……! 俺の護衛もやられたってのか!?」
呼びかけても誰も来ない、返事をしないという状況に焦りが募る。たった一人の乱入者に、警備兵も連れてきた護衛も倒されてしまったようだ。
「なぁ、俺にも珈琲を貰えるかい? こう見えても商談に来た身でね」
そんな中、男は穏やかとも取れる口調で告げる。
「商談……? あなたは一体……?」
唯一冷静さを失わなかったシェロカルテは慎重に尋ねた。
「俺は『天司』さ。空と星の狭間の者という意味だそうだ。フ、ナンセンスだろう? 星の研究者の感性はどうも理解できん」
「天司……? 星の研究者……?」
男の言葉をオウム返しにするシェロカルテの頭にはいくつかの仮説が上がってはいたが、確かなことは言えなかった。
「さて、商談を始めよう。なに、シンプルな話さ」
男はそんな反応を意に介さず、早速話を進めていく。
「俺はこの空の世界に審判を下す。できる限りスピーディにね? だが君等の連絡系統が微妙に邪魔だ。そこで成り行きを静観していただきたい。対価は新世界の民に選んでやること……。どうだろうか?」
どうだろうかと言われても、という感じである。
詳細は置いておくにしても、男の言っていることを要約するとこうだ。
「俺はこれから空の世界を滅ぼすから、それを静観していてくれ。静観してくれればお前達だけは助けてやろう」
実に身勝手な、商談と呼ぶこともできない一方的な要求であった。
「君はなにを……意味がわからん、なにが目的だ!?」
区長は男の話が理解できずに動揺のまま返す。
「そうか、話せて良かった。ではヴァーチャーズ、後始末を」
商談に乗らないのであれば、目的の邪魔になる彼らを生かしておく必要はない。それを示すかのように、ヴァーチャーズと呼ばれたモノが姿を現した。
それは中心に黄緑色の球体を据えた謎の物体だった。球体を囲むように赤い結晶が浮いており、その外側を輪が囲っている。その輪から翼を生やし、上部の小さな結晶から輪のようなモノを形成している。
「……――」
「ま、魔物……!? だが、この奇妙な物体は……」
「――――!」
「うわあぁぁぁ……!」
それが光線を放ち、道具屋の身体を貫いた。続けて雑貨屋にも同じように光線を放つ。
「おいおいおい……! なんなんだよ、こりゃあ……!?」
「二人共息はあります! ひとまず背負って脱出しましょう!」
動揺する武器屋に引き替え、シェロカルテは比較的冷静だった。
「う、うむ。そこに裏口がある! 傭兵の詰め所に行って迎撃要請を……」
動揺していたのは区長も同じだった。だがシェロカルテの対応によって少し冷静さを取り戻し、次の行動を指示しようとするが、途中で言葉を止める。
「いかん、シェロ君!?」
それは、今にも光線を放とうとしているヴァーチャーズの姿を見たからだった。
「――――!」
戦闘力のないシェロカルテに、それを防ぐ術はない。流石の彼女でもただ待つことしかできなかった。
「珈琲、ご馳走様。勝手に飲んだけど美味しかったよ」
男はそんな危機的状況に追いやっておきながら、全くの平常心だった。
そして、ヴァーチャーズがシェロカルテに光線を放ち――一筋の剣閃がその物体を両断する。
ばさり、と黒いローブがはためいた。フードを目深に被った第二の乱入者は、シェロカルテを守るように割って入っている。
「悪い、遅くなったな。まぁ許してくれ。最悪の事態には間に合ったことだしな」
その人物は、シェロカルテが雇った護衛だった。
遠距離から区役所を見ており、瞬く間に警備兵が倒されたことで急遽駆けつけたという次第だ。
「ダナンさん……!」
「特異点の一人か」
シェロカルテの嬉しそうな声と、男の警戒した声が重なる。
「ほら、ポーションやるから応急処置して連れて行け」
ダナンは手早くポーションを後ろ手に二つ渡した。目の前の男から目を逸らすわけにはいかない。彼の直感がそう告げていた。
「予想外の乱入だが、やることは変わらない。だがヴァーチャーズでは相手にならないか」
男が持っていた剣を構える。かと思ったら眼前まで迫っていた。
「っ!」
手に握ったパラゾニウムで剣を受けるが、完全には間に合わず頬に浅く切り傷がつく。
「だ、ダナンさん!」
「いいから行け、守りながらの余裕がない! 【カオスルーダー】!」
シェロカルテの心配そうな声に応えて、『ジョブ』なしでは太刀打ちできないと判断。短剣得意のClassⅣを発動して剣を押し返した。
「やるね」
「そっちこそ」
仕切り直し、男はダナンに襲いかかる。刃を交わす金属音が立て続けに鳴り、彼が襲撃者を受け持っているため会議に出ていた者達は裏口から次々と脱出していった。
ダナンが防御に徹しているためか押し切れないと悟った男は一旦退いて剣を下げる。
「襲撃は失敗か。……ところで、君は俺に構っていていいのかな?」
「どういう意味だ、って聞くのが筋なんだろうが言わせてもらう。問題ねぇよ。予め、襲撃があった際の退路確保を頼んである。信頼できる二人組にな」
「それは残念だ。君等がいなければ、今頃彼等を静観に押し込めていたろうに」
男は肩を竦めた。まるでもう潮時だとでも言うかのような仕草の直後、再度斬りかかる。間一髪防いでダナンだが、力強い一撃に半歩後退させられた。
「……へぇ、よくわかったね」
「なにかを狙ってるヤツは目にそれが出るんだよ」
「そうか、覚えておこう」
男は言うと今度こそ下がり、剣を納める。
「……名を聞いておこうか」
ダナンは撤退すると見て尋ねた。
「俺は……サンダルフォン。空の世界に審判を下す者だ」
そう告げて、男――サンダルフォンは背を向ける。
「また会おう、特異点の一人。君等がそれまで生きていれば、の話だけどね」
「……」
サンダルフォンが完全に姿を消すまで警戒を解かず、シェロカルテ達の方にも向かっていないとわかって肩から力を抜き『ジョブ』を解除する。
「……ったく。面倒なことになってきやがった。厄介事なんて、あいつらだけで充分だろうが」
頭を掻き、自分も裏口から区役所を出た。彼を待ち構えるように二人の人影が立っている。
「シェロさん達は無事に傭兵の詰め所まで送り届けたよ~」
「途中妙なヤツは出てきたが問題はない。……お前の方も無事みたいだな」
青髪のエルーンと赤髪のドラフ。シェロカルテに雇われたのではなく、ダナンが協力を頼んだ傭兵コンビ。“疾風怒濤”の傭兵コンビ、スツルムとドランクと言えばその界隈では有名である。
「ああ、悪いな二人共」
ダナンはフードを取って頬の傷を指でなぞった。既に血は乾いていたが、それでヤツの鋭い剣筋を思い返すことができる。
「……とりあえず、シェロカルテ達と合流して野郎が他になんか言ってなかったか聞かないとな」
「はいは〜い。じゃあ案内するね」
「おう。悪いがもうちょっとだけ付き合ってくれ」
「ここまで来たら最後まで付き合うよ〜。ね、スツルム殿?」
「ああ。お前は未来の団長なんだ。もっとどっしり構えたらどうだ?」
今回だけの協力でも良かったのだが、どうやら二人は手伝ってくれるらしい。
「……ありがとな、二人共」
素直に礼を言って、
「よし。じゃあ三人でどうやって世界の危機を“蒼穹”だけに押しつけるか考えるか」
「いいねぇ、それ」
「おい、真面目に話し合え!」
「「痛ってぇ!?」」
ダナンとドランクが楽しげに笑うのを、スツルムがプスッと刺してツッコんだ。二人して跳び上がる。
「いい加減にしないと刺されるぞ」
「今スツルム殿に刺されたばっかりだよ〜」
「安心しろ、ちゃんとバレないようにやるからさ」
「反省してないなお前達」
はぁ、とスツルムは嘆息した。どちらも真面目にやれば優秀すぎるくらいなのだが、ふざけるのが玉に瑕である意味特に相棒の方。
ともあれ、三人は語らいつつ傭兵の詰所まで行ってシェロカルテから情報を聞くのだった。
というわけでゲーム内でもプロローグだった箇所ですね。
今回は三人称で進めます。
明日は更新できるので、また夜に。