ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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やっべ、更新するの忘れた。というわけでギリギリの更新です。書き上がりたてではないので明日も更新できます。


EX:『どうして空は蒼いのか』羽

 シェロカルテの用意した艇で、グラン、ジータ、ビィ、そしてダナン、スツルム、ドランク、加えてミカエルとガブリエルがルーマシーへと降り立った。

 

 するとサンダルフォンもまた、ルリアを連れて姿を現す。

 

「うぅ……。み、皆さん」

「ルリア! 大丈夫か、ちょっと待ってろよ!」

「御機嫌よう。特異点、赤き竜。少し観客が多い気もするが、ミカエルとガブリエルも来たのか」

「……余計な真似はせぬ。尤も、その力も残っておらぬがな」

「私達の役割は進化の観察に集約される。見せてもらいましょう、世界の行く末を」

「フ……この期に及んで仕事熱心なことだ」

 

 言ってから、サンダルフォンは赤い瞳をグランとジータへと向けた。

 

「ここに来たということは、身柄の交換に応じると?」

「違うよ」

「僕達はお前を倒しに来た」

 

 しかし二人は交換に応じる気はなかった。彼らにどちらかは選べない。どちらも助ける方法を選ぶ。

 

「……ほう? どうやって成すつもりだ? まさかとは思うが、実力で奪い返せるとでも?」

 

 サンダルフォンは言いながら、二人の蛮勇を鼻で笑う。

 

「聞いていなかったのか? 俺を阻める可能性があるとすれば、ルシフェルを置いて他にはいない」

「思い上がるな。所詮は奪った羽の仮初の力に過ぎぬ」

 

 ミカエルが告げても効果はない。

 

「もう完全に馴染んだ。少々持て余すほどにね。既にルシフェルは愚か、俺を害える者は俺のみかもしれんな」

「そう……。では赤き竜の羽は必要ないのでは?」

 

 ルシフェルを超えるという目的なのであれば、既に達している可能性すらあるというのに、まだ戦うのか。言外にそう告げてみるも、

 

「必要はない、だが奪う。ルシフェルの遥か頭上……神を超えた境地を見たい」

 

 サンダルフォンの言葉に、ビィがムカついた様子で声を発する。

 

「フン、なんなんだよ! ルシフェル、ルシフェルってよ! お前は結局ソイツのことばっかだぜ!」

「む……」

 

 時折出る核心を突く一言に、サンダルフォンは口を噤む。それをきっかけに、ルリアが夢で見たことや感じ取っているモノを口にした。

 

「役に、立ちたい……? ルシフェルさんの……」

「なに……? 貴様、なにを視た? 俺のなにを視ている……!?」

 

 ずっと余裕を崩さなかったサンダルフォンが、初めて動揺した。

 

「なんだ? 急にヤツが動揺したぞ?」

「ルリアちゃん、続けて!」

 

 ミカエルが訝しみ、ガブリエルはそこにつけ入る隙がないかと促す。

 

 

「は、はい! えっと……」

 

 ルリアは星晶獣の力を感じ取る時と同じポージングでより深くサンダルフォンの内情を読み解いていく。

 

「この感覚は……。尊敬する人に認めて欲しい? 愛してる人に慰めて欲しい? あるいは、えっと……自分を許して欲しい――」

 

 だが言っている途中でサンダルフォンがルリアに掴みかかった。

 

「きゃぁ!」

「……もういい、気が変わった」

 

 サンダルフォンの表情が変わる。これまでどこか対等な相手を見ていないかのような、同じ場所に立っていないような雰囲気すらあったが、今では明確な敵意を向けていた。

 

「赤き竜は生きたまま解体する。その臓物は一片一片、君等に喰わせる。この終末に、最後の晩餐を楽しむといい」

「ゥヒッ……!」

 

 その様を想像してしまったのか、サンダルフォンの敵意に充てられたのか、ビィが悲鳴を上げる。だがすぐに気を取り直し戦闘開始を促そうとしていると、ルリアが突然飛び出してきたロゼッタによってサンダルフォンの手から救出される。

 

「今よ、ルリアちゃん!」

「ロゼッタさん! わ、わかりました!」

 

 ロゼッタによって助けられたルリアが双子の下に戻ってくる。

 

「ろ、ロゼッタ!? そんなとこに隠れてたのか!」

「知っていたよ。だがなにをするかと思えば……。話せて良かった、蒼の少女よ!」

 

 サンダルフォンは上空へと飛び上がり、ルシフェルさえ超えていると豪語するその力を振るわんとする。

 

「来た! ウリエル、ユグドラシル! あの攻撃を弾き返して頂戴!」

 

 ルーマシーに住まうユグドラシルが、ウリエルの力を借りてその力を増幅させ障壁を張った。

 サンダルフォンが放った一撃は障壁に当たり、威力と軌道を保ったまま彼へと弾き返す。

 

「なんだと……! この障壁、ウリエルか!?」

 

 サンダルフォンは自身が放った攻撃を自分自身で受けてしまった。

 その隙にルリアは合流を果たしてグランとジータとそれぞれ手を取り合う。

 

「はぁ……はぁ……。あの、私……!」

「はは、無茶しやがってよぅ! でも無事に戻ってきて良かったぜ!」

 

 再会を喜び合う四人。

 

「四人共、油断は禁物よ。まだサンダルフォンは生きているわ」

 

 そんな彼らをロゼッタが窘める。

 

「ロゼッタさん。あ、さっきのユグドラシルの力は?」

「ウリエルの力を借りたの。土の力を源とする者同士の成せる技ね」

「ぜぇ……はぁ……。チャンスは一度きりだったが、なんとか嵌ったみてぇだな?」

 

 ウリエルという筋肉の盛り上がりが半端ない男が息を切らして言った。

 

「――――……!」

 

 ユグドラシルも心なし誇らしげである。

 

「フフフ……! 褒めて遣わすぞ、ウリエル。貴様にしては巧みな奇襲だ」

「自分を害えるのは自分のみ。彼、その言葉を証明したみたいね?」

 

 ミカエルとガブリエルも二体の健闘を称える。

 

「チィッ……! 無様な戦法だな、ウリエル。この程度で一矢を報いたつもりか?」

 

 舌打ちしつつも、そこまでダメージがなかったために余裕が戻ってきていた。

 

「うるせぇ、バ~カ! テメェの鼻を明かせりゃあいいんだよ!」

「はぁ……下らん。下らん上に始末が悪い。君等は本当に手を焼かせる」

 

 ため息を吐いたサンダルフォンの全身から強大な力が発せられる。

 

「天の世界を形成するために、無益な損害は避けていたが……君等が悪いんだぞ?」

 

 上空にいるサンダルフォンの身体が巨大化していき、その背中に羽が複数枚生えていく。焦げ茶色のサンダルフォンが元々持っている羽を一対。その上にミカエル、ウリエル、ラファエルから奪った羽を三枚。ガブリエルの羽は奪えていないため対の部分を自分の羽で代用している。背に白く輝く幾何学模様のなにかを描いており、周囲に紫の刃を持つ巨大な剣を従えていた。

 大きさは騎空艇とも変わらないほどで、正に神話の時代の存在を思わせる。

 

「さあ、続けよう。審判の鐘を鳴り響かせるんだ……!」

 

 翼は空を支配する威容。強大な気配は抗う気力を削っていく。

 

「なんだ、ヤツの纏う気配は!? 既に天司とも魔物ともつかぬ!」

「数種の羽が混在して、未知の怪物にまったみたいね」

「ど、どうしましょう!? このままだと島ごとやられちゃいます!」

 

 天司すら超えたサンダルフォンには、いとも簡単に島一つを吹き飛ばすだけの力が備わっているだろう。

 

「くそぅ! せめて手が届きさえすりゃあ! おい、降りてこい卑怯者ぉ!」

 

 例え銃や弓であっても今のサンダルフォンには届かず、ただの魔法でも効果はないだろう。

 

「――――……?」

「ユグドラシル? どうしたの、なにか気になることが……」

 

 ユグドラシルが真っ先に()()に気づく。遅れてロゼッタも気づき、笑みを浮かべた。

 

「あぁ、なるほど、そういうことね。往生際の悪い子達が到着したみたい」

「往生際の悪い子だぁ? お前達、なにを笑っていやがる――」

 

 彼らを知らないウリエルは怪訝そうにするが。

 

「ルリアァァ!!」

 

 どこからか女性の叫び声が聞こえてきた。

 

「カタリナ……? あ、見て! 空にグランサイファーが見えます!」

「ホントだぜ! おぉい、ここだここだぁ!」

 

 駆けつけたのは、これまで旅を共にしてきた仲間、グランサイファーである。ビィ達はグランサイファーさえあれば空のサンダルフォンにも届く、と喜ぶのだが。

 

「……って、ちょっと待てよ? ちっとも止まる気がねぇぞ? むしろ加速してる気がするぜ?」

 

 ビィの言う通り、グランサイファーはどこかへまっしぐらに突き進んでいた。

 

「艇の進路はえっと……サンダルフォンさんに向かって……!?」

「んなっ!? ななな、なにやってんだよ! まさか正面衝突する気だってのか!」

 

 驚く一行を置いて、場所はその今にも突撃しそうなグランサイファーの甲板。

 

「貴様がサンダルフォン……! ルリアを傷つける者は許さんッ!」

「神だか天司だか知らねぇが、俺はルリアと約束したんだよ! どんな時でも駆けつけるってな!」

「そうよ! あのワッカ達は皆で退治したわ! 追い詰められてるのはあんたの方よ!」

「そういうこった! この落とし前はつけさせてもらうぜ!」

 

 各島で奮闘していた仲間達が乗っているらしいグランサイファーは更に速度を上げていく。

 

「カタリナ、皆さん! ほ、本当に衝突するつもり!?」

「む、無茶苦茶だぜ! そんなことしたらタダじゃ済まねぇぞ!?」

「……そうでもない」

 

 ルリアとビィが心配した様子を見せる中、最後の四大天司が姿を現した。

 

「ラファエル! 貴様、今までなにを……」

 

 ミカエルの言葉には応えず、彼はグランサイファーを見つめている。

 

「天司の間隙を縫える者は、天司のみ。空よ! 今こそ風を!」

 

 ラファエルが力を発動し、グランサイファーを追い風が加速させる。

 

「この追い風は……! はは、凄まじい力が集まってきたぜ!」

「ラファエル殿の援護だ! このままサンダルフォンに突っ込むぞ!」

 

 物凄い勢いで迫ってくるグランサイファーに、ようやくサンダルフォンは警戒を持つ。

 

「む……! 今度はラファエルか!?」

「ふっふーん! やっぱり油断してたわね! 今更気づいたって遅いんだから!」

「はははっ! 最高だぜ、ラファエルの兄ちゃんはよぉ! 全て片づいたら、一杯奢ってやるぜ!」

「進路は制御不能! 速度は針が振り切れてて不明! 頼むぜ、グランサイファー! お前さんに俺達の全てを賭けるッ!」

 

 グランサイファーはラファエルの追い風を受けたまま、巨大化したサンダルフォンへと突っ込んだ。

 

「ぐおおぉ……!!」

 

 同じくらいの大きさのモノに突撃されて、サンダルフォンは体勢を崩される。

 

「やったわ! サンダルフォンが崩れたわよ!」

「す、凄ぇ……! でもグランサイファーは大丈夫なのか?」

「は、はい、大丈夫みたいです! ちょっぴりフラフラしてますけど」

 

 地上の者達が喜びを露わにする。そんな彼らにラファエルが提言した。

 

「では、最後の攻勢に出るぞ」

 

 その言葉に全員の視線が集中する。

 

「今より汝等を艇まで移動させる。ヤツに()()()を与えて終止符を打て」

「ラファエル、貴様……。反撃に足る好機を待ち、策を練り力を溜めていたのか?」

「ウフフ……医癒の異名を誇る貴方なら、確かに回復が早いはずよね」

 

 ラファエルの策が嵌って事態が好転していく中、

 

「ま、待ってください! えっと、ユグドラシルとウリエルさんの反撃が一撃目で、グランサイファーの突撃が二撃目ですよね? それで私達が四撃目ってことは……」

「三撃目がまだある?」

 

 ジータが言ってグランが追随し、そういえばとなる。

 

「なんだお前ら。気づいてないのか?」

 

 それを知っているのはラファエルだけかと思われたが、ダナンが割って入った。彼には見えていたのだ。

 

「グランサイファーに乗ってるの、オイゲンやカタリナだけじゃねぇだろ?」

 

 ちらりとはためく、()()()()()が。

 

 それを確かめるためにも、一行はグランサイファーの上へと移動することにした。

 

「おい人間共。あのクソヤロウをブッ飛ばしてこい! ギッタギタのメッタメタにな!」

「言われるまでもねぇ! オイラ達がとっちめてやるぜ!」

「そうです! この世界と、ここに生きる皆さんは……私達が絶対守ります!」

 

 ウリエルの激励にビィとルリアが応え、

 

「その意気だ」

「行ってこい、空に生きる人間達よ……!」

 

 ミカエルに背中を押される。

 

「「行ってきます」」

 

 最後は双子が声を揃えて言い、一行とダナン達は緑色の光に包まれてグランサイファーの方へと飛び去った。

 

 羽が奪われていないガブリエルも加勢のために向かい。

 

 そして、最後の決戦が行われる――。

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