ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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独自路線の三撃目から始まる最終決戦。二話分かかります。


EX:『どうして空は蒼いのか』獣

 ラファエルの力でグランサイファーの甲板へと移動してきた彼らが見たのは、風にはためく白いマントだった。

 

「三撃目を頼んだぜ、お前さん達!」

「頼りにしてるぜ、()()()!!」

 

 白いマントに黒い鎧。お揃いの衣装に身を包んだ彼らは、全空最強の騎空団。今は全員“蒼穹”の一員であり、グランサイファーで各島を回る中で掻き集めてきた者達である。

 これから最終決戦で、相手が世界を滅ぼそうとしている強大な敵であれば、彼らの力が必要になる。

 

 そう睨んだラカムの英断である。

 

「任せて~。俺達は今回、全力全開全身全霊で攻撃して、後は団長ちゃん達に任せていいって話だから。遠慮なくやっちゃおう!」

 

 軽く答えるのは頭目のシエテだ。

 

「さあ、皆いくよ! 打ち合わせ通りにね!」

 

 シエテが剣を抜き放って構え、他の九人もそれぞれ武器を構えている。

 

「じゃあいくよ? せーの……っ!」

 

 シエテの号令に合わせて、各々が全力の一撃を放った。

 

「天逆鉾ッ!!!」

「アストラルハウザー!!!」

「メテオスラストッ!!!」

「メメント・モリ!!!」

「スーパーミラクルエクストラハイパーアタック!!!」

「天地虚空夜叉閃刃ッ!!!」

「捨狂神武器!!!」

「ネビリューサ・フリューデ!!!」

「ダンス・マカブル!!!」

「ノヴァストリーム十天――って、あれ!?」

 

 各自の奥義が炸裂し、サンダルフォンに多大なダメージを与える。だが、シエテにとってそれはどうでもいいことらしい。

 

「ねぇ! 俺事前に言ったよね!? 皆で声を揃えて『ノヴァストリーム十天スカイフィニッシュ』にしようって!」

「そんなダサい名前、誰が唱えるんですか?」

「ダサっ……!?」

 

 シエテの必死の訴えは、カトルの辛辣な言葉に返される。ショックを受けるシエテを放ってすたすたと歩き、グランとジータの方へと近づいてきた。

 

「後のことは任せます。精々、ここでヤツを倒してください」

 

 そう言って船内へ向かっていった。少し足元が覚束ない様子なので、本当に全ての力を出し切って攻撃してくれたのだろう。

 

「あたしがそんな長いの覚えられるわけないだろー。団長達、頑張れよ! 終わったらまた勝負しようなっ」

 

 サラーサもシエテに言ってから、双子ににかっと笑って宣言する。

 

「……趣味じゃない」

「シスはこう、雰囲気の違う名前をよく使うものね。オクトーと同じ感じの」

 

 素気ないシスと、シスの補足をするソーン。

 

「……俺達がここまでやって、倒せないとは言わせんぞ」

「頑張ってね、楽しみにしてるわ」

 

 続けて他の二人と同じようにグランとジータを激励して去っていく。

 

「む、忘れていたな」

「もう、じっちゃはいっつもそうやって物忘れするんだから! あ、あちしはあちしのがいっちばーんカッコいいと思ってるからね!」

 

 オクトーと、その彼に捕まってぶら下がるフュンフ。そして二人も双子に目を向ける。

 

「この世は万華よ。しかし、時には視野の狭まった者もおる。目を覚まさせてやるのも一興よ」

「悪いヤツなんてぎったんぎったんにしちゃえ!」

 

 続けてエッセルがシエテに顔を向ける。

 

「団長や弟達、妹達を守るために来ただけで、シエテのダサい名前を叫ぶために来たわけじゃないから」

 

 辛辣にする気はないのだが、充分に辛辣である。

 

「あと、お願いね」

 

 二人に激励する時は簡素だったが、気持ちは充分伝わってきた。

 

「他がそうするなら、僕も言う必要はないと思ったんだ。ごめんよ、シエテ。……君達に、空の世界の平和を託すのも変だけど、任せるよ」

 

 ウーノはシエテに言ってすぐに双子へも言葉をかける。空の危機を救う一助になれば、というスタンス

のようだ。

 

「センスがないから、皆ついてこない」

 

 ぐさり、と最後に残ったニオの言葉がシエテの心を貫いた。泣いているような旋律が聞こえてきたが、それも仕方がないことである。余計なことを言わず「皆で力を合わせて団長ちゃん達を助けよう!」だけだったならこうはならなかっただろう。こっそり嘆息した。

 

「頑張って、応援してる」

 

 簡潔に述べて、そのまま船内へと。

 

「……んんっ!」

 

 最後に残されたシエテは、視線が集まっているのを感じてか咳払いをして気を取り直すと真剣な表情をしてみせる。わざとらしいので白い目がいくつかあった。

 

「空の秩序を守るのは、本当は俺達の役目なんだけどね。今回は団長ちゃん達が戦いたいだろうし、ちょっとだけ手助けするだけにしておくよ。じゃあ、後のことはお願いね。お兄さんは中で一休みしてるからさ」

 

 ぽん、と二人の肩を叩いて立ち去っていく。一番威力を高く攻撃していたはずだが、最も余力を残しているように思えるのだから不思議だ。頭目の名は伊達ではないなと思いながらもサンダルフォンに目を向けた。

 

「クソッ……!」

 

 軽い調子だったが、彼らは紛れもない強者だ。それも指折りの。そんな彼らが後先を考えずにただただ最強の一撃を叩き込んだのだから、いくらサンダルフォンと言えど無傷で済むわけがない。

 

「ナンセンスだ、ふざけているのか!」

「ううん、ふざけてないよ」

「だね。全力で君の力を削って、私達に後を託してくれたんだ」

「一部もしもの時のために力残してるヤツもいたけどな。まぁ、お膳立てにしちゃ充分だろ」

 

 睨みつけてくるサンダルフォンに、グラン、ジータ、ダナンが告げる。

 

「ここが正念場だ! 皆、決着をつけよう!」

「私達が皆を、空の世界を守るんだ!」

「「「おう!!!」」」

 

 “蒼穹”の面々が団長二人に応じた。

 

「やるぞ、お前ら。まぁ、いけるだろ」

「だねぇ。ここまでされてできないなんて言えないよ。ね、スツルム殿?」

「ああ。問答無用で叩きのめす」

「ふふ、皆やる気ね。私も力を貸すわ」

 

 未来の団員、足すガブリエルがダナンに応える。

 

「……いいだろう、どれだけ足掻いても今の俺には勝てないということを、教えてやる……ッ!」

 

 構える一行を見下ろして、サンダルフォンが周囲に浮遊させていた巨大な剣をグランサイファーへと向かせる。

 

「来るぞ!」

 

 ビィの声に警戒を強める中、サンダルフォンはまずまとめて薙ぎ払うために足場であるグランサイファーに目をつけた。巨大な剣がグランサイファーに迫り突き刺さる――前に水が内側から刃を叩くように発射されて軌道を逸らす。

 

「今の貴方が相手でも、攻撃を逸らすくらいはできそうね」

「チッ!」

 

 ガブリエルに目論見を打破されたサンダルンフォンは舌打ちして、仕方なく直接攻撃するように切り替えた。

 

「まぁいい。君等に倒されることはないのだから」

「そいつぁどうだろうなぁ!」

 

 言い返す声の直後、サンダルフォンの身体にオイゲンとラカムが銃弾を撃ち込む。

 

「この程度、痛くも痒くも――」

「じゃあこれならどぉ?」

 

 防御することすらしないサンダルフォンの顔にドランクの魔法が炸裂した。

 

「小賢しいだけだな――」

 

 鬱陶しそうに手を払う彼の前に、三寅斧を構えた【ベルセルク】のグランが飛び込んできている。

 

「うおおぉぉぉぉぉ!!」

 

 叩き落そうとした手を、魔法や銃弾が阻害した。そのせいで頭に直接攻撃を受けてしまう。

 

「ぐぅ……!」

「いけるぜ! やっちまえっ!」

 

 ダメージはある様子にビィが拳を突き上げて鼓舞していた。

 

「無駄な足掻きを」

 

 しかしやはりサンダルフォンは強大であり、一撃で致命傷を与えられるほどではない。手で甲板へと叩き落とされていた。

 

「無駄じゃないよ!」

 

 【アプサラス】と化したジータが槍を持って躍りかかっていた。

 

「愚かな」

 

 サンダルフォンは巨大な剣で真っ二つに引き裂こうとするのだが、ジータは槍の柄を上手く使って剣の刃を飛び越えてみせる。しかしその眼前にサンダルフォンの手が差し出されており、光を収束させていた。

 

「湧水の羽衣!」

 

 直前で唱えた言葉に呼応して、ジータの幻影が二つ出来上がる。ふわり、と舞い上がった本体は手の前から更に上へと移動しており、幻影二つは光線によって消し飛ばされていた。

 

「霹靂閃電ッ!」

 

 サンダルフォンの眼前まで到達したジータは槍を雷の如き速さで三回振るいサンダルフォンの頭に直撃させた。

 

「チィ! 滅びよ!」

 

 ぐるん、と勢いよく巨大剣の一つが回転してジータに迫る。だがそれと打ち合わせるように槍をぶつけその勢いで甲板まで戻ってきた。

 

「っとと」

 

 バランスを崩しかけるが、結果的に無傷で打撃を与えることに成功している。

 

「……流石にやるね」

「あなたは行かないの?」

 

 【ウォーロック】となったダナンは、ブルースフィアを指の上でくるくると回し弄ぶばかりで、近寄って攻撃することはなかった。その傍に佇むガブリエルが艇を襲おうとした巨剣を水で弾き飛ばしながら尋ねる。

 

「当たり前だよ。ここから最悪の事態に陥る条件は二つ」

 

 ダナンは左手でブルースフィアを回し、右手で二本指を立てながら説明していく。サンダルフォンの眼前の細かな氷の塊を出現させて動きを阻害しつつである。

 

「一に、当初の目的だったガブリエルの羽を奪われて力を増幅させられること。羽を獲得したから回復、なんてことになったら流石に勝ち目がない」

「じゃあもう一つは赤き竜の羽を奪われること、ね?」

「そういうこと」

 

 ガブリエルが左二つの巨剣を、ダナンが右二つの巨剣を水で弾き飛ばす。

 水の元素の流れを感じ取ることのできるガブリエルがダナンと合わせた形になるが、ダナンもダナンでガブリエルが合わせられるように水を選んだところがある。互いに勝手を知っているが故の連携であった。

 

 更にはガブリエルが後方支援をしている者達に自身の力を分け与えて援護しているのに対して、ダナンはサンダルフォンの動きを邪魔することで前衛の支援を行っていた。

 

 助け方は違うが結果は同じ。アウギュステで奔走した数日が彼らの連携を強めていた。

 

 加えて、もっと言ってしまえばガブリエルよりもダナンと連携している者が二人。

 お互いに動きを見ているわけではないが、こいつならこうするだろうという信頼を持っているために息を合わせる必要すらなく連携していた。

 

「ドランク!」

「もうやってるよ~」

 

 スツルムに迫った巨大な剣の迎撃をドランクが担当する。彼の操る宝珠が刃の横っ腹に風を纏って直撃して軌道を逸らしていた。

 しかしその間にドランクへと別の剣が迫る。スツルムにもそれは見えていたが、忠告はせず自分の仕事に専念した。ドランクならなんとかするだろうという信頼もあったし、彼女が信頼しているのはドランクだけではない。

 

「うわぁ、怖い~」

 

 迫ってくる剣を見上げて緊張感なく呟くドランクは、全く以って避ける素振りを見せなかった。

 

 別方向から飛んできている魔法が見えていたからだ。氷塊を左右から少しズラして挟み込むように飛来させる。その結果ぐるんと剣が回転して切っ先がドランクでない方を向いた。

 

(あれ? これって……)

 

 その剣が向いている先には、ドランクが浮遊させている宝珠がある。もしかしなくても近づけるように弾いたのだろう。

 

「さっすが〜」

 

 それをやった意図を汲み取り、手早く宝珠を魔法で加速させ刃にぶつけて回す。するとサンダルフォンの羽の一枚に剣が叩きつけられた。操っているわけではないため切りつけるとまではいかないが、充分な威力を持っている。

 

「小癪な」

 

 自分の力を利用されることほど苛立ちを覚えるモノはない。サンダルフォンが標的をドランクへと向けた。

 

「ロウ・プリズン!!」

 

 サンダルフォンの放った光の牢獄がドランクを捕らえる。

 

「あ、これちょっとマズいかも」

 

 心なしか引き攣った笑みを浮かべたまま、牢獄ごとが爆発した。

 

「ドランクッ!」

 

 スツルムの呼び声に応える声はなく、彼は甲板に倒れ伏してぴくりとも動かない。

 

「まず一人。これが新世界創造のカウントダウンと知れ」

 

 サンダルフォンはそのままドランクと息を合わせていたスツルムに狙いをつける。怒りに任せて突っ込む……フリをして虚を突き一撃与えたスツルムだっったが、サンダルフォンの迎撃によって倒れ伏すことになった。

 

「二人目」

「くそぅ! あの二人がやられちまうなんて!」

 

 スツルムとドランクがやられた穴は大きく、より一行に意識を避けるようになったサンダルフォンは一人ずつ確実に仕留めていくように戦法を変えた。仲間の回復や支援をしている者から順に一人ずつ。

 

「残るは君等だけか」

 

 甲板の上で立っているのはグラン、ジータ、ビィ、ルリア、ダナン、ガブリエルとなってしまった。

 

「ここまでの健闘を称え、その騎空艇ごと墜としてあげよう」

 

 サンダルフォンはそう言うと六枚の羽をばさりと広げる。

 

「ダメ、大きいのが来るわ!」

「君等では防げないだけの威力を込めて撃つ。抵抗は無意味だ」

 

 サンダルフォンが纏う力を増幅させていく。否、一行を殲滅するだけの力を練り上げているのだ。

 

「さあ、審判の鐘を鳴らす刻だ。――アイン・ソフ・オウルッ!!!」

 

 四本の剣と強大な光が合わさってグランサイファー全体を襲う。多くの仲間が倒れている今、打つ手は一つしかなかった。

 

「【スパルタ】、ファランクスッ!!」

 

 ジータが【スパルタ】へと姿を変えて強固な障壁を張る。

 

「その程度で防げるわけがない……と言うつもりだったがよく耐える」

 

 ジータは絶えず力を注ぎ込んで障壁を支えていた。意地ではあったが、技が終わるまでの間ジータ一人で耐え抜くことができていた。

 

「流石は特異点の一人、と言うべきかな。では、()()()()()()()()()()

 

 直後【スパルタ】が解けてがっくりと膝を突くジータ。そこに絶望を促すような声が降ってくる。

 

「アイン・ソフ・オウル」

「【スパルタ】、ファランクス!!」

 

 連発できるのか、と驚く暇もなく十秒ほどの間隔で次が放たれた。咄嗟にグランがジータがやったのと同じように受ける。

 

(ジータはこれを一人で受けたのか……!)

 

 グランはその強すぎる衝撃に歯を食い縛って耐えながら、疲労困憊で膝を突くジータの頑張りを理解した。

 

「ほう、二回目も耐えるか。ならあと一回、いや二回撃てば全てが終わるか。――アイン・ソフ・オウル」

 

 力を使い果たして膝を突くグラン。その様子を見て、一人一回だとカウントすれば残り一回耐えられるだろうが、もう二回撃てば防ぐ手立てがなくなるかと冷静に判断していた。

 

「【スパルタ】、ファランクス」

 

 今度はダナンが受ける番である。なにか打開する手は……とグランとジータが考える中で彼は笑みを絶やさなかった。

 

「……?」

 

 絶望しない彼の表情を見て怪訝に思うサンダルフォンだったが、次の攻撃を防ぐことは四大天司の一角であるガブリエルでも不可能だと判断する。

 技が撃ち終わった後、ダナンも同じように膝を突いた。力を隠していて力尽きたフリをしているわけでもない、と元素を感知可能なサンダルフォンは判断する。

 

「これで終わりだ。――アイン」

「任せた!」

 

 サンダルフォンが手を掲げて最後の一撃を放とうとすると、ダナンが声を上げた。なにを言って、と思い他を探ってようやく察する。

 

「はいは~い。お任せあれ、ってね」

「人遣いの荒い」

 

 最初に倒れたドランクとスツルムが起き上がったのだ。ドランクは兎も角、スツルムは完全に気絶していた。だが時間さえ稼げれば目覚めてこの時に間に合うだろうという目測を立てていたのだ。

 

「たかが二人起きたところでなにができる」

 

 サンダルフォンは動作を中断することなくアイン・ソフ・オウルを発動させる。

 

「これを防げるとでも?」

「防ぐ必要はない。()()()()()()()()()

「ひゅ~っ。スツルム殿カッコいい~」

「ふざけてないで援護しろ!」

「了解~っと」

 

 放たれたアイン・ソフ・オウルがグランサイファーに迫る。だがダナンは、二人合わされば自分達にだって負けていないと知っていた。だから気負いなく全てを任せられる。

 

「容赦はしない」

「“疾風怒涛”は伊達じゃないんだよねぇ」

 

 二本のショートソードを構えるスツルムと、その周囲に宝珠を浮かばせるドランク。

 

 まず、スツルムが右の剣を振るって攻撃を切り裂き左右に弾く。だが放たれ続ける一撃は振り終わったスツルムに迫っている。そこをドランクが宝珠から魔法を放って僅かな間押し留めていた。ドランクが作った僅かな間にスツルムは左の剣を振っており、丁度ドランクの魔法が撃ち終わって攻撃が間合いに入った直後切り裂いて逸らす。振り終わった後にはまたドランクの魔法が時間を稼ぐ。

 それを、アイン・ソフ・オウルが撃ち終わる瞬間まで延々と繰り返していた。

 

 スツルムはただただ剣を振り続けるだけ。ドランクなら次の剣閃が間に合うまでの時間を作ってくれると信じるだけでいい。

 ドランクは剣を振り続けるスツルムの動きを完璧に把握し、次の剣が間に合うまでの時間を作り出すだけでいい。そうすれば攻撃はスツルムが弾いてくれる。

 

 最後、両手の剣を交差した状態から開くように振るったスツルムが、グランサイファーの左右に攻撃を散らせた。

 

「はぁ……はぁ……」

「さっすがスツルム殿~。やるねぇ」

「煩い」

 

 肩で息をするスツルムも流石に限界を迎え、剣を持つ腕が上がらなくなっていた。ドランクもまた、余裕そうではあるがあと何発魔法が使えるか、という状態である。

 それでも一度、サンダルフォンの攻撃を凌いでみせた。

 

「お見事。特異点以外の人間に防がれるとは思ってもみなかったよ。では、もう一回撃ってみようか」

 

 称賛するようでありながら、小バカにするような口調。一撃で一人以上が脱落していくような大技を、彼は容赦なく連発することができるのだ。

 

「うわぁ、容赦ないねぇ。でも、残念だけどもう撃てないよ、それ」

「……? どういう意味だ? いや、気にするほどのことでもないか。このまま、終わらせてやる」

 

 光を収束させるサンダルフォンだったが、ドランクの意味深な言葉が引っかかる。それでももう防ぐ術はないだろうとアイン・ソフ・オウルを放とうとしたのだが。

 

「ッ!?」

 

 感知が鋭いサンダルフォンが最初に気づき、空の彼方を見据える。

 やがて小型騎空艇がサンダルフォンの頭上を超高速で通過する。丁度真上に来たタイミングで飛び降りてきた大きな人影があった。

 

「実は、ワッカの襲撃には間に合わなかったけど助っ人を呼んでたんだよねぇ」

「意外と頼りになる援軍だ。覚悟しろ」

 

 ドランクとスツルムが言って、大きな黒い人影に抱えられた少女は静かに呟く。

 

「……()()()

 

 無機質な声に呼応して、黒い人型が動く。手の長い爪でサンダルフォンに一撃を入れ、身体を踏み台にして軽やかにグランサイファーの甲板へと着地した。

 

「ぐぁっ!?」

 

 力の強い星晶獣のコアを動力としたロイドの一撃は、流石にダメージが大きいようだ。放とうとしていたアイン・ソフ・オウルも中断せざるを得ない。

 

「……確かに、強力な助っ人だな」

 

 二人が誰に応援を頼んだか知らなかったダナンは驚きつつも、不敵な笑みを浮かべていた。

 ロイドがそっと下した少女は猫のぬいぐるみを抱えていない右腕を横に伸ばし、ぐっと親指を立てる。

 

 頼りになる援軍の到着だ。




ノヴァストリーム十天グランフィニッシュ→ノヴァストリーム十天スカイフィニッシュ
るっのサンダルフォンとの決戦から持ってきたヤツ。相変わらずゲーム内の世界の危機には参戦してくれないので、この作品では出してみます。立場的にストーリーに組み込みにくいのですが、この世界ではちゃんといるよ! というアピールですね。
名前変更の理由は「“グラン”フィニッシュ? じゃあ“ジータ”フィニッシュもあるの? なんでそっち選んだの?」とシエテさんが正座で叱られそうだからです。

個人的には最速の小型騎空艇(例のあの人操縦)から飛び降りて参戦したオーキスがダナンに背を向けたまま親指を立てるのが超カッコいい。と思ってます。
本来フリーシアとの話でオーキスと会うのですが、そこを書いてないのでここでロイドを見ていたとしても初見の反応がないので矛盾が起こらないという。
あとそういえばオーキスとロイドの戦闘シーン書いたことあったっけ? と今更ながらに思ったのもありますね。

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