ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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まだ回収してないオリキャラの話を含みます。
古戦場が始まったので周回中、またはインターバルなんかに読んでください。現役の騎空士の方々、お互い頑張りましょう。……程々に。

最近更新が遅いのはアレです。
お絵描きが楽しいのと筆が乗ってる鬼滅二次創作が楽しくって……無限列車編描き終わったんですけど楽しくってもう……。
一区切りしてそろそろナンダクの執筆再開するのでご安心ください。
お絵描きはサイト読んで基礎学んだりトレースして遊んだりしてます。まだ楽しいです。

ともあれ、次は今回よりは早い更新できるかなと思います。


土属性の集い

 なぜこうなったのかはよくわからなかったが、レオナとアリアと一緒に公園のベンチで座って新作のパイを食べていた。

 

「あ、美味しい」

「はい、とても。ミカンパイとはまた、聞いたことのないパイでしたが」

 

 二人には新作のパイの味見をしてもらっていたのだ。偶々パイ屋の近くにいたから呼び止めたというだけなのだが。

 どうやら二人でのんびり公園を散歩していたらしい。「そういうことするんだな」と驚いたら不満そうな顔をしていたが。

 

 レオナは以前まで、カインを死んだ婚約者のアベルに重ねて私が守らなきゃ、と視野が狭まっていた。

 アリアは以前まで、真王に認められるべく努力し続けていた。

 

 そこから変わった、若しくは変わろうとしているからこそ、こうしてのんびりしているのだろうなとは思うのだが。

 

「他の店にはない味を考えないと、なかなか客ってのはつかないモノだからな。まぁ元々の美味さってのも大事だが。季節やなんかを取り入れた新作を定期的に出していかないと、売り上げが落ち込むんだと」

 

 シェロカルテの手腕で新規の客を取り入れ、屋台の数を増やし、順調に売り上げを伸ばしてはいる。「誰が作ってもレシピ通りに作れば美味しくなるパイ」の販売はなかなかに上々だ。俺がこの間加入したオリヴィエにぽんと合計百万ルピを渡せたのも、そのおかげだ。……その後に入ったアラナンはアラナンで金がないらしく、あいつにも百万渡す羽目になったんだけどな。あいつは人なんだからちゃんと仕事して稼げよ、と思わないでもなかったが。自分は節約しつつ自分のいた街のレナトゥス教の教会生活費に仕送りしたらしい。

 

「ああ、だからミカンなんだ。夏が近いから、そのための新作?」

「そういうこと」

「まだ夏には早い気もしますが、季節限定モノというのは確かに早めに出しているような気がしますね」

「ああ。その辺の調整は本業のシェロカルテに丸投げしてるんだけどな。俺はあいつの要望に応えて新作を考えるだけ」

 

 今回考えたのは夏に発売する用のパイだ。とりあえず冷たくて爽やかな風味のパイを作ろうと思い、ミカンにしてみている。ひんやりしたパイが真夏には美味しいだろう、と思って試作しているところなのだ。冷蔵で保存するのはなかなか難しいところもあり、今はまだ作り置きで冷蔵しても美味しさが損なわれないかの実験にまで至っていない。だがまぁ、なんとかなるだろう。シェロカルテにも相談しているし、日々研究しているからな。

 

「私はいいと思うな。でもちょっとミカンだと甘さ控えめな感じがする、かな? この間食べた、普通に売ってるパイと比較してになるけど」

「味については文句ありません。ただ冷たいとパイ生地が少し硬いような気がしますね」

 

 二人の意見は参考になる。うちの団では比較的常識人に分類されるからというのもあるが、なんでも美味しい美味しいと言ってくれる勢とも違うのがいい。ある程度美味しいモノを食べ慣れている立場だったというのも大きいだろう。その点で言えばハーゼやカッツェもいいのだが、今回はタイミングの関係だな。

 

「なるほど。まぁそうだなぁ、色々考えてはいるが、久し振りに籠ってパイ作りに精を出したいところだ」

「あなたは本当に、料理している時だけは無害ですからね」

「俺が普段有害みたいに言うんじゃねぇよ」

「とっかえひっかえ女性を口説いて回っているあなたを無害と思えと?」

 

 それについてはなんというか、誤解が激しいだけだ。きっと。

 

「そう言うアリアさんだってよくダナン君の話をしてる癖に」

「なっ!? ち、違いますよ、私はただもう少し人目を憚らないモノかと……」

 

 からかうようなレオナの発言に、アリアが動揺していた。慌てて否定するものだから言い訳がましくなってしまっている。そんな彼女を見てレオナはくすくすと笑っていた。……仲いいなお前ら。

 

「……そう言うレオナだってダナンの話をするでしょう?」

「えっ!? い、いやそんなことはないと思いますよ?」

「敬語が出てますよ、わかりやすく動揺してますね。もし自覚がないなら重症です。いつの日かレオナまで“あの”中に加わることになるんですね」

「あ、アリアさん! 変なこと言わないでくださいっ!」

 

 今度はレオナが茶化される番だった。ホント仲いいなお前ら。まぁそういう話ができるのも平和でいる証拠だろう。……この間放置している真王がなにか企むかどうかは別として。

 

「……そ、そんな……!」

 

 と、そこで平穏な場面にそぐわぬ愕然とした声が聞こえてきた。三人でそちらを向くと、“黒闇”の騎空団の一員であるクモルクメルが立っている。わなわなと震えている様子だ。

 そういや話したいと思っていたんだった、と徐に思い出した。

 

「ふ、不潔! へんたい! バカッ!!」

 

 いきなり出てきたかと思えば罵倒されてしまった。一体何事だ? と首を傾げるも心当たりが……いや、もしかしてあれか?

 

「まさかレオナさんとアリアさんまで毒牙にかけるなんて……!」

 

 クモルクメルは少しだけ頬を染めてきっと俺を睨み上げてくる。

 

「えっと……毒牙って?」

「……どうやら誤解を招いてしまったようですね」

 

 レオナは苦笑し、アリアは額を押さえていた。要は逢引していると勘違いされてしまっているらしい。そもそも、クモルクメルは複数人と、というのがあまり好ましくないらしく。

 もしかしたらそれで俺のことを避けていたんだろうか、とようやく当たりをつけることができた。

 

「成敗ーっ!!」

 

 ハーヴィン故の身軽さで軽やかに跳び上がると、背に負っていた刀を抜き放つ。糸を操り空中に糸を張ってその上を器用に駆けていた。公共の場でそんなことをすれば注目を浴びるのは当然だ。というか彼女を真下から見上げていたヤツがいる。……マズいなぁ、と思ってちょっとだけ手を加えてやった。それでも鼻血を噴いて倒れていたが。

 

「蜘蛛糸白夜!!!」

 

 刀に空いた穴に蜘蛛の糸を通し、一度に蜘蛛の巣のような複数の斬撃を放つ奥義を使ってくる。動機は勘違いだとしても、割りと本気で始末しにかかってきていた。

 

「まぁ落ち着けよ、クモルクメル」

 

 俺は言って、俺が感知できる範囲の蜘蛛の糸を全て無へと変換させ、白刃取りして刀を止める。

 

「えっ!?」

「こんな場所じゃ騒ぎになる。話すなら他のヤツがいない方がいいだろ?」

「あ、うん……」

 

 彼女はあっさり奥義を受けられたからか、勢いに押されて頷いてくれた。注目されてしまっているのでとりあえず逃げるべく、ワールドの能力で騎空艇アルトランテの団長室、俺の私室へと繋がる門を創り四人を転移させた。

 

「ど、どうなってるの? さっきまでと違う場所にいる……」

「転移したんだよ。一応ワールドと契約したって話はしただろ?」

「う、うん。でもこんなことまでできるんだ」

 

 クモルクメルは落ち着かない様子できょろきょろしている。

 

「私達まで連れてこなくても良かったのではありませんか?」

「あのまま残されても困るし、誤解も解かないといけないからいいんじゃないかな」

 

 呆れたようなアリアと、苦笑するレオナ。こういう二人の表情を最近よく見かける気がする。アリアを呆れさせているのは主に俺のような気はするが。

 

「とりあえず、まず言っておく。レオナとアリアについては誤解だ。別に、そういうんじゃない」

「……そうなの?」

「うん。私はその……ちょっと複雑なんだけど。前の人が忘れられないっていうのがあるから、全然」

「私は絶対にあり得ませんね」

 

 少しは冷静になったのか、話を聞く気にはなってくれたようだ。

 レオナは変わらず苦笑して、アリアは腕組みをし憮然とした様子で答えた。どこからか「この世に絶対はないのじゃ……」という声が聞こえてきた気がしたが無視する。アリアの眉がぴくりと跳ねたので彼女にも幻聴が聞こえたのだろう。

 

 ともあれ、クモルクメルはあからさまにほっとした様子で胸を撫で下ろしていた。

 

「なんだ、良かったぁ……。まぁそうよね、二人が不潔な真似するわけないものね」

 

 邪気のない笑顔を見せてくれるが。

 

「いや、不潔って。まぁ俺としては否定しづらい面の方が多いんだが」

「ふんっ。あんただけはダメよ。不潔の権化だもの」

 

 彼女は腕組みをしてそっぽを向いてしまった。酷い言い草だな。まぁ否定はしない。と言うかできないんだけど。

 

「まぁ、俺にはいいけど他のヤツとは仲良くしてやってくれよ? 悪気があるわけじゃないんだから」

「……別に、わかってるわよ。でも毎日毎日べたべたしちゃって。兎じゃないんだから、もう」

「……なんで兎だ?」

「あの動物は年中発情期らしいですからね、あなたにぴったりというわけです」

「俺は違うだろうが誹謗中傷だぞそれ」

 

 別に俺が盛っているわけではない、と思いたい。

 

「あはは……あ、そういえば。クモルさん、前にも注意したと思うけどその……下着ぐらい履くべきだと思いますよ?」

 

 レオナが苦笑して話題を転換する。あ、それは俺も言おうと思っていた。

 

「あぁ、あれ? でも下着って窮屈じゃない。別にこの糸の服さえあればいいでしょ?」

 

 クモルクメルはこてんと首を傾げた。……そうなんだよなぁ。こいつ、意外にも常識的で異性との接触は嫌がる癖に下着をつける文化がねぇんだよなぁ。今日も靴とかすら履いてなかったし。だからあんな公の場で糸の上に立ったら、まぁ見える。真下にいるヤツには丸見えになってしまう。だからちょっと俺がワールドの能力で謎の光を創って隠してはいたのだが。『オレの能力をそんなことに使うな』というワールドの声が聞こえてきそうである。

 

「だ、ダメですよ。クモルさんは山で育ったからわからないかもしれないですけど、服を着るだけでは常識的な服装とは言いません。下着もちゃんと履いてください。……公園で跳び上がった時、下の人から見えてましたよ?」

 

 レオナはなんとか彼女を説得しようとしている。裸体ではなくとも大事な部分が人前に晒される事態を避けたいのだろう。頑張れ。

 

「別にいいでしょ。動物は服なんて着ないんだから。それともなに? ハーヴィンってヒューマンの子供ぐらいの身体だっていう話だけど、子供の裸見て欲情するの? ……うわぁ」

 

 なんで俺の方を見て引いてるんだよ。別にハーヴィンだからという理由で欲情することも、欲情しないこともないぞ俺は。

 

「そういう人は一定数存在すると思いますよ。ダナンはおそらく、ただ見境がないだけですね」

「もっと酷いわ! この変態っ!」

「酷い言われ様だな……」

 

 罵倒されてしまった。俺には罵倒されて喜ぶ性癖はないのだが。

 

「……まぁ、俺は別にハーヴィンの裸ならそこまで意識することもないんだが、実際さっきお前の真下にいたヤツは鼻血噴いてたぞ。趣味は人それぞれと言うか、まぁ気をつけるに越したことはない」

「ただの変態では?」

「……オブラートに包んでるんだから剥ぐんじゃねぇよ」

 

 俺のそこはかとないやんわりとした気遣いが台無しだ。

 

「……ふぅん? まぁそこまで言うなら、着てもいいけど」

 

 おぉ、説得されかけている。

 

「お願いします。あとクモルさんのその糸の服は柔らかいからいいんですけど、衣服って結構硬いから。大事なところを守る意味もあるんですよ。そうだ、今度一緒に買い物行きません? これを機に色々な服を着てみるといいかもしれませんし」

「そうですね。色々な服を着て色々な恰好をする、というのも人の文化の一つです」

 

 ファッションに興味とかなさそうなアリアが……と思っていたらなぜか睨まれた。なんでこういう時に鋭いんだろうな。

 服装に拘るヤツがあんまりいないからな、うち。色々な服を着るのが楽しいオーキスやアネンサと、意外にも拘るらしいドランクとかがころころと私服の変わる面子だが。俺も大抵黒い服しか着ないしな。センスなんてあってないようなモノだ。

 

 どこからか「アリアも服装に興味を持つようになったのじゃな……」と感激したような声が聞こえてきた気がしたが多分気のせいだろう。

 

「兎に角、人と暮らすなら人の暮らしに合わせるのもまた楽しみの一つってことで。あんまり毛嫌いせずに色んなことをやってけよ」

 

 ぽんぽん、とクモルクメルの頭を撫でた。

 

「わかってるわよ……っは! こ、こうやって手籠めにするのね、このスケベ!」

 

 素直に頷いてくれるかと思ったが、はっとしたように手を振り払われてしまった。……いや別にそこまで考えちゃいねぇよ。

 

「ふふ、クモルさんって凄く髪が綺麗だから、服選ぶのとか楽しそうですね」

「そう? ふふんっ、この髪は両親からお母さんに近い神聖な髪なのよ?」

 

 レオナに褒められて得意げに胸を張っている。

 

「そういえば、あなたはあの蜘蛛に育てられたのですね。血の繋がった両親はいないのですか? あぁ、答えにくいことなら構いません」

 

 そういや、クモルクメルについては素性を詳しく聞いてなかった気がするな。いい機会だから俺も聞くか。

 

「いるわよ? 私は普通にハーヴィンの両親から生まれたもの。今も私がいたところの麓の村で平和に暮らしてるんじゃないかしら」

 

 彼女はあっけらかんと言った。その口振りからすると、会おうとはしていない上に未練も愛情もなさそうである。

 

「じゃあなんで蜘蛛に育てられることになったんですか?」

「それは、この髪と瞳が理由よ。糸みたいに細くて綺麗な白髪に、赤い瞳。見たことあるならわかると思うけど、お母さんと一緒でしょ? お母さんはあの村の人達にとって……なんて言うんでしょうね、守り神みたいな存在なのよ。だから生まれてきた子供を守り神の娘だーって連れていって預けたってわけ。それが、私があそこで暮らしていた理由」

「……なんと言いますか、随分と特殊な家庭事情ですね」

 

 お前ほどじゃないと思うけどな。真王の娘さんや。

 

「えっと、寂しくはなかったんですか?」

「全然。お母さんは優しかったし、動物達もいたから。私にとって血の繋がりのある両親と、多分弟がいるんだけど、その人達は家族じゃないから。私の家族は最初から、あの山にいる全て。だから寂しくなかったわ。まぁ途中から山を下りて人の言葉を学びなさい、ってお母さんに言われたんだけど」

 

 それで人語(?)が達者なのか。

 

「それまでは蜘蛛の言葉を使ってたのか?」

「ん~と、そんな感じだと思う。けど私とお母さんは波長が合ったみたいで、最初からなぜか声が聞こえてたのよね。それこそ本当にお母さんの娘として生まれてきたみたいに」

 

 クモルクメルは嬉しそうにはにかんだ。見方を変えれば両親に捨てられた可哀想な子なのかもしれないが、あの母蜘蛛の娘として育ってきて良かったと思っている顔だ。

 “六刃羅”の中では最も生まれがいいのかもしれない。

 

 両親と妹を殺された。両親や臣下を殺された。兄を殺された。道徳を教えてくれる相手がいなかった。神の子だと祀り上げられた。

 一応人の下で育ってきたと思われるヤツはいるが、人に育てられても尚人でなしに育つヤツもいる。トキリとクラウスはそのケースに近い。

 逆に人でないモノに育てられたクモルクメルが最も良心のある子に育つのは、なんと皮肉なことか。

 

「そういやお前の話って聞いたことなかったし、聞けて良かった。ありがとな」

「礼を言わせるようなことじゃないわ。それより、レオナとアリア、買い物に行きましょ。早い方がいいでしょ?」

「予定がないなら、喜んで」

「私も構いませんよ。……ただ、行く前に一つだけ」

 

 このまま解散の流れになるかと思っていたら、アリアが言って腰に提げた剣に手をかける。

 

「そこです!」

 

 そのまま部屋の壁に向かって剣を投擲した。ざくりと壁に突き刺さってびぃ……んと震える剣の真横に、突如としてフォリアが現れる。レオナとクモルクメルもぽかんとしていたが、フォリアも呆然としていた。

 

「……あ、危ないのじゃ!? あともう少しズレていたら死ぬところだったのじゃ!?」

 

 我に返って青褪めた顔で反論するが、アリアは謝るどころかわざと聞こえるように舌打ちする。

 

「……外しましたか。いえ、牽制でしたので当てるつもりはありませんでしたよ、ええ」

 

 しれっと取り繕い、アリアは近づいて剣を抜く。……ああ、俺の部屋の壁に穴が。

 

「ところで、なぜ姉さんがここに?」

 

 そしてそのまま刃を実の姉の首筋に突きつけた。フォリアが冷や汗を掻いているのが見える。

 

「じ、実はかくれんぼをしていたのじゃ。子供に紛れて遊ぶのも偶にはいいじゃろうと思っての」

「星晶獣ハクタクの認知操作の力まで使って、ですか? 年甲斐もなくかくれんぼをしていただけでは飽き足らず、大人気なく星晶獣の力まで持ち出すなんて。軽蔑しますね」

 

 アリアの瞳から光が完全に消えていた。流石に妹からそんな目を向けられては敵わないらしい。

 

「うっ、じ、実は……偶にアリアのことをつけておったのじゃ♪」

「そんなことを考える首はこの首ですか? この首ですね?」

「首は考えたりしないのじゃ!? と、というか少し食い込んで、食い込んでいるのじゃ!? ま、待つのじゃアリア! 早まるでない!」

「では、洗い浚い吐いてくれますよね、姉さん?」

「……はい」

 

 アリアは本気でキレているらしい。フォリアを床に正座させた。そのまま度々ぺちぺちと剣の平らな刃で肩を叩きながら尋問していく。叩かれる度にフォリアはびくぅと肩を跳ねさせていた。

 

 それからフォリアは、今までも偶に認知を操作して認識されない状態になったままアリアを尾行したり寝ているアリアの耳元であれこれ言って睡眠学習させようとしたりしていたことを告白した。

 アリアの苛立ちが上昇すると()()()()刃を縦にしかねない、というかした。刺さりかけた。流石に止めたけど。

 

 

「……うぅ。許して欲しいのじゃ。姉として妹の動向を観察するのは当然のことなのじゃ。とはいえ行き過ぎたのは事実。この通り反省している。だから許して欲しいのじゃ!」

 

 フォリアは正座した状態から額を床につけるほど平伏した。土下座である。

 

「許すわけないでしょう。……姉さん、まだもう二度としません、って言ってないですよね?」

「ぎくっ」

 

 この期に及んでまだ反省していなかったらしい。はぁ~っと深く、それはもう深くため息を吐いたアリアは剣先で土下座するフォリアの背中をぷすぷすと刺し始める。

 

「い、痛い!? 痛いのじゃ!? 刺さってるのじゃ!?」

「大丈夫ですよ、こんなこともあろうかとスツルムさんに傷をつけない刺し方を教わっておきましたので」

「こんなこともあろうかと!?」

 

 俺もここまでは考えてなかったわ。フォリアがどこにいるんだろうなぁ、と思ってもワールドの能力なら認識できるからな。尾行してるだけだと思ってた。あと頻度も俺が思っているより多かったみたいだし。

 

「ま、まぁまぁ。姉が妹のことを気にするのは当然だし、仕方ない部分もあるよ? やりすぎはダメだけど、もういいんじゃないかな」

「レオナは姉側だからわかりませんよ。……仕方ありません、これから外出する時に姉さんを見かけたら甲板に吊るし上げてから行くことにしましょう」

「酷いのじゃ!? ……いや、その前から準備すれば……」

 

 まだ諦める気がないのか。

 

「その辺りはきちんと考えていますよ、姉さん。それと……」

 

 薄く笑ったかと思うと、少しだけはじらうように頬を染める。

 

「姉さんに言われなくても、私は私で考えていることがありますから」

「アリア……」

 

 その表情を見て、はっとしたように顔を上げる。そしてなぜか俺の方をちら見してきた。……俺はなにもしてないぞ。

 

「……ではクモルさん、姉さんを縛り上げて甲板に。レオナさんはハクタクに頼んで姉さんを助けないように伝えてもらえますか?」

「「は、はいっ」」

 

 アリアは普段通りの表情に戻って二人に指示を出す。すっかり圧されていたのか二人共敬語だった。

 

 その後、フォリアはクモルクメルによって甲板の柱に括りつけられた。レオナはハクタクによく言って聞かせたという。まぁ「我が王がご迷惑をおかけしました」と頭を下げていたので多分すぐに助けるようなことはしないだろう。というかお前は止められる立場なんだから止めろよハクタク。と思ったのだがハクタクにとって王の願いは断りづらいらしい。つまりフォリアが悪い。

 

 まぁ、仲良く過ごしてくれる分にはいいんだけどさ。




鬼滅の二次創作描いてるせいかモンクに「こいつ岩の呼吸使えそうだな」とか思いました。

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