レオナリミ化したのでその辺と絡めた話書きたいなぁとかようやくストーリー更新があるので次の章の構成とか進められるかなぁとか。
そんなことを思う日々です。
ある日。
俺は“黒闇”の騎空団の全団員を集めていた。
「じゃあ早速だが、俺と戦ってもらう」
用件は既に伝えてあったので、特に驚く様子はない。
「移動するぞー」
俺が言うと首に提げた飾りが赤く輝き、その場にいた全員をワールドの能力で創造した世界へと誘い込んだ。延々と続く大地。剥き出しの地面があって草木のない、暴れるのに相応しい場所だ。
「理由は説明した通り。俺が新しく手に入れた力を試したい。遠慮なく倒せるからってことで死なない星晶獣相手に戦ってみたんだが、正直星晶獣一体じゃ相手にならなかった」
たった一体ならClassⅣでも相手にしてきたからな。その更に上である【十の願いに応えし者】を使って苦戦するはずもなかった。
「というわけで、参加したいヤツだけ参加して俺と戦って欲しいんだよ」
事前に七曜の騎士は全員参加必須と告げてあるので、四人は臨戦態勢だ。ちゃんと甲冑に身を包んでくれている。アリアやアポロなんかは素顔に見慣れてしまったので久し振りな気がした。
「最近強敵との戦いもないし、とはいえお前達に鈍ってもらうのも困るし。いい機会だからここらで一丁戦ってみようかと思ってな」
「彼らと同等の力を手にしたのであれば、楽しみですね」
バラゴナは俺の方が弱いからとこっちについた身だ。まぁ向こうは双子だから俺達はどうしても半分ほどになってしまうというのは仕方がないとしても、同等の力を手に入れておくことは悪いことじゃない。“蒼穹”にだけ戦力を集中させすぎるのは良くない、という真王の意見も少しわからないでもないからな。
「最初は参加したくなくても、参加したくなったらいつでも参戦してくれていいからな。……ってことで、始めるとするか」
事前に説明していることをいつまでもお浚いしていても仕方がない。そろそろ始めよう。
「――【十の願いに応えし者】」
俺が普段着込んでいる黒いローブの代わりに、紺色のローブと赤いケープを纏うことになる。
「さぁいこうか、ワールド。全力全開だ。遠慮なくかかってこいよ、お前ら!」
ただ日々を過ごしていたわけではないのは知っているが、実際にどれだけ仲間達が成長しているのかはわからない。死力を尽くして戦う相手にも遭遇していないからな、仕方がないと言えば仕方がないんだが。
それでも力試しをしたくなる時だってある。仲間達の今の実力を知りたい時もな。
ワールドを顕現させて一緒に戦うという手もあるが、今回は補助に徹してもらうよう頼んでいる。
「ははっ! いいじゃねェか、大将ッ! 凄ェピリピリしてンぜ!」
武者修行をしていたゼオが楽しそうに笑う。
「この人数相手に一人でとか、頭おかしいでしょ。まぁ、僕が今度こそ斬るんだけどね」
トキリは相変わらずな様子だ。いい加減学んで欲しいんだけどな。人に教えるのって難しい。
「ならかかってこいよ。結構時間経ったんだし、多少は強くなったんだろ?」
「結構強くなったんだよ、それを思い知らせてやる!」
「オレも修行の成果ってヤツを見せてやンぜ!」
トキリは捻じ曲がって、ゼオは無邪気に臨戦態勢に入る。……お前はホント、悲惨な過去があったわけでもねぇのにどうしてこうも捻じ曲がっちまったのかね。ゼオを見習えよ。家族虐殺されて尚純粋なとこ残してるんだぞ。
呆れつつ、警戒はきちんとしておく。トキリは抜刀せずに駆けてきた。居合いを使う予定のようだ。ゼオは上半身をはだけさせると腰の太刀二本を抜き放って額に赤く光る角を現した。序盤から本気も本気のようだ。
普通の人間と鬼化した人では身体能力に差が出る。トキリが五メートルほど離れた位置で強く踏み込んで急停止した瞬間に、遅れて駆け出したゼオは追い越して俺へと迫ってきた。
「居合い・旋風ッ!!」
「焔獄斬ッ!!」
トキリは強い踏み込みからの高速移動で一気に俺へと迫り、そのまま刀を抜き放っていく。鞘走りを利用して加速する刀には風が渦巻いており、抜刀と同時に風によっても切り刻まれることだろう。
ゼオは両手の太刀に赤々と燃える炎を纏って上段から力いっぱい振り下ろし、炎の斬撃を放ってきた。
「おぉ、強くなってるな、二人共」
以前と比べても格段に実力を上げてきている。遊び惚けていたわけではなさそうでなにより。
俺は二人の攻撃の間を擦り抜けるように身体を動かして回避した。連携しているわけではないのでどうしても間はある。
「なっ!?」
「技直後の油断が治ってねぇな」
俺は驚くトキリの脇腹を軽く蹴飛ばした。俺達と出会うまで苦戦したことすらなかったらしく、「自分が技を使えば相手は受けられない」という認識があるようだ。そのせいか技の直後に緊張が弛緩する瞬間がある。……前々から言ってるんだけどなぁ。
「これならどうだ!!」
ゼオは斬撃が防がれたと見てか背後に円になるように浮遊した何本もの刀を俺に向けて放ってきた。その上で自分も突っ込んできている。……ゼオはちゃんと成長してるな。刀の操作と身体の動きを両立できるようになっている。こいつは頭が弱い方だから身体で覚えられるように何度も何度も練習しろよと言った気がする。きっとそれを素直に、愚直にやったんだろうなぁ。それと比べてトキリと来たら。
呆れつつもゼオへの対処はしっかりやらなければならない。戦闘センスはあるので戦いで相手がどう対処するかを誘導できるような戦略を練られればまた更に成長するだろう。性格上素直だからな。
俺は刀の軌道上に空気で道を創る。刀の刃に沿うような形で棒状に創り、俺に届くまでの間に外側へ曲げる。すると刀は真っ直ぐ進めようとしても自然に逸れてしまうのだ。
「っ!?」
刀が誘導されたことがわかったのだろう、ゼオは目を丸くしていた。だがすぐに好戦的な笑顔を浮かべると勢いを増して突っ込んでくる。刀を飛ばす技量を上げる特訓はしても、そちらが主力ではなく自ら刀を振るう。当然その腕も上がっているので伸びしろはかなりあると言っていいだろう。
まぁ当然のことながらトキリにも同じことが言えるのだが。そこは意識の違いというヤツだ。
あれだけ散々痛めつけてやったというのに、まだプライドを保っているらしい。なにかあいつの傲りを真っ向から打ち砕くようなことがあればいいんだが、そう簡単に起こらないよな。
「歯ぁ食い縛れよ!」
俺はゼオの刀を掻い潜って懐に入ると強く腹部を蹴り飛ばした。攻撃を受ける側なのに素直に俺の忠告に従って歯を食い縛る辺りゼオである。
とはいえClassⅣとも比較にならないほどの身体能力だ。踏ん張ることはできず元の位置以上に吹っ飛んでいった。
「疾風怒涛ッ!!!」
蹴りを放った直後の俺に向かってトキリが突っ込んでくる。技の精度、規模、威力。どれを取っても以前とは比較にならないほどに成長している。だがそれだけで強くなれた、と断言するのはまだ早い。
「剣が軽いな、相変わらず」
俺は風を伴った無数の斬撃を全て見切ると、軽やかに回避してトキリの真横にまで接近した。屈辱で顔を歪めているのがよく見える。隙を突いて攻撃することもしないでいたら、やや自棄の混じった一太刀が飛んできた。そんな攻撃が当たるはずがないだろうに。
半ばおちょくるように、攻撃をすれすれで避けて実力の格差を如実にわかるようにしてやった。そうすると更に躍起になって攻撃してくるのだが、雑念が増すばかりで刀の振りが甘くなっていく。本人は追い詰めようとしているのかもしれないが、逆にどんどんとかわしやすくなっていくばかりだ。
いい加減飽きも入ってくるので、軽い回し蹴りを脇腹に叩き込んでやる。
「ぐっ!」
「確かに強くなってはいるが、まだまだだな」
「煩いっ!」
「そうやって周りのことを跳ね除けてるから、心が成長しないんだよ」
「煩いって言ってるだろ!?」
「もしかして、お前まだ自分が強いと思ってるのか?」
「っ!!」
図星だったのか一瞬動きが止まり、それを誤魔化すような隙の大きい大振りをしてきたので容赦なく鳩尾を小突いてやった。咳き込んで手を止めるトキリ。
「もう一回自分の弱さと向き合えよ。でなきゃ、一生弱いままだ」
「うるさ――っ!?」
口答えは鉄拳制裁で封じ込める。普段なら兎も角トキリ相手なら仕方がない。顔面を強打させて腕を掴むと叩きつけるようにぶん投げた。
「大人しくそこで見てろ。手を出させると思ったら向かってきてもいいけどな」
「くっ……!」
挑発してみたが、悔しそうに顔を歪めるだけで向かってはこない。ようやく敵わない相手と認識してくれたようだ。
「悪いな、お前ら。待たせちまった」
ゼオとトキリに手傷を負わせて一段落したので、改めて残りの者達に向き合う。
「いいんじゃないの。おじさん、そういうの嫌いじゃないよ」
紫の騎士ことリューゲルはくるくると持ち前の槍を遊ばせると、軽い調子で言ってから槍を構えてみせる。
「どこまで強くなっているか、楽しみですね」
緋色の騎士ことバラゴナも剣を抜き放ってプレッシャーを放つ。
俺としても強くなっていることはわかっているのだが全空でも屈指の実力と思われる七曜の騎士四人相手にどこまで戦えるかは正直気になっているところだった。
「よし、来い!」
ワクワクして告げると、まずリューゲルが瞬時に眼前へと躍り出てくる。流石に速い。七曜の騎士の中でも速度で言えば一番かもしれない。まぁ当然のことながら同じ七曜の騎士であってもドラフであるバラゴナに力で敵うわけがない。それを速度と技量で補っているのだろうとは思うが。
鋭い槍捌きに、先程とは打って変わってかなりギリギリ回避していく。この速さに真っ向から対応できる者は数少ないだろう。それこそ俺やあいつらレベル、同等の七曜の騎士、十天衆でも一部の者しかついてこれないかもしれない。
「やるね。おじさん、もうちょっと本気出しちゃおうかな。――レインッ!!」
リューゲルが高く跳び上がる。そこから無数の突きを繰り出しながら急降下してきた。槍の雨が降り注ぐかのような攻撃だ。常人では一溜まりもないが、今の俺なら回避が間に合う。
全力で後方に跳躍して範囲外に逃れた。
「五月雨斬り!!」
だが直後に幾重もの斬撃が飛んでくる。リューゲルが先鋒を切っている間に接近してきていた。特に七曜の騎士なんかはまともに戦える相手が少なくて暇しているとすぐに鈍ってしまいそうだ。まぁ、暇なら暇で鍛錬をして調整する面子だとは思っているが。偶には全力でぶつかり合うくらいはしておいた方がいいだろう。
「はぁっ!」
俺は斬撃に向けて拳を振るった。拳の衝撃波で斬撃を掻き消すことができている。衝撃波を大きく創り変える必要もないことから身体能力の向上も著しいことが目に見えてわかったのだろう、バラゴナが兜の奥で笑みを深めた気配がした。
そうこうしている内に技直後のリューゲルが体勢を立て直し、バラゴナも真っ直ぐ俺に向かってくる。
「グレイトホライゾン!!」
だが二人が迫ってくる後ろから黄金の甲冑を纏ったアリアが水平線目がけて横一文字に斬撃を放ってきた。作戦を立てていたわけではないだろうが、リューゲルはハーヴィン故に当たらずバラゴナも屈んで回避している。
俺は手の前に見えない壁を創って受け止める、が流石に消去させないと七曜の騎士の攻撃を完璧に受け止めることはできないか。無傷では済んだが少し
その間にリューゲルが最高速で俺の左へ回り込み、速く鋭い突きを連発してくる。透明な壁を隔てて防御している間に反撃しようとするも、壁が出来たことを理解したのか蹴って離脱してみせる。直後迫ってきていたバラゴナの強烈な斬撃に、同じくらいの壁で対処したら呆気なく破壊された。同じ七曜の騎士とはいえハーヴィンとドラフじゃ膂力に差が出るか。豪快な一振りの衝撃を受けながら軽く後ろに跳んでやり過ごす。
「やりますね」
「そりゃ、これくらいやらなきゃあいつらと並ぶなんて無理だろっ!」
バラゴナの言葉に蹴りの衝撃を増幅させて吹っ飛ばしながら応える。蹴り直後の体勢を嫌らしく狙うリューゲルと、バラゴナと入れ替わりで近づいてきたアリアが迫っている。総合的に一番強い七曜の騎士は白騎士だろうが、速さ柔軟さで言えば断然この二人だ。
強さという点では意見が分かれるところだが、手数の面でこの二人は高い位置にいる。そんな二人に左右から攻め立てられれば、流石の【十の願いに応えし者】であっても捌き切るのは不可能か。
一応推定ではあるが、【十の願いに応えし者】は双子の持つ【十天を統べし者】と同等。そして【十天を統べし者】はその名の通り十天衆全員の実力を併せたぐらいの強さ。つまりは十天衆十人分の強さである。更に七曜の騎士は十天衆三、五人分ぐらいの強さと思われる。個々で差はあるだろうが、大体それくらいだろう。
つまり二人相手なら俺一人でも戦える。
というのはまぁ、理論上の話であって。
正直なところ手数が多すぎて対処し切れないというのが本音だった。
かなり強くなったと思っていたのだが、やはり強者にも色々あって、戦い方によってはただ強いだけじゃ勝てないこともあるのだ。まぁ、理不尽な攻撃はしないように心がけているのもあるのだろうが。
反撃の時間を作ろうと先程よりも分厚い壁を形成してみたはいいが、二人共一撃目で壁が創られたことを察すると溜めを作って威力の高い攻撃で突破してきた。
判断が早い。
しかもこの上もう一人、
「はあっ!!」
凛々しい気合いの声と共に、特大の斬撃が放たれた。当たる直前で二人が離れたから良かったものの、巻き込まれそうな大雑把な一撃だった。手の前に壁を創って受け止め、数メートル後退したが耐え切ることには成功する。
「……」
斬撃が舞い上がった砂煙の中を、悠々と歩いてくる黒い影。剣を横に払って砂埃を掻き消すと、漆黒の甲冑が姿を現した。……カッコいい演出しやがる。
「……大雑把ではありませんか? 味方側を巻き込むような攻撃は賢いとは思えませんね」
それにツッコんだのはアリアだ。
「ほう? 私はお前達なら問題なく避けられると思ったのだが、どうやら荷が重かったらしいな」
アポロも気分を害されたのか突っかかるような物言いで返す。兜の奥でアリアがぴくりと眉を顰めたのが容易に想像できた。
「そういう意味ではありません。共闘するという点で配慮に欠ける行動だと言っているのですが、伝わりませんか?」
「頭のお堅いアリアちゃんがよく言うようになったモノだな」
「ええ。貴女こそ、随分と丸くなったようで」
なぜか一触即発の空気を醸し出している。しかし互いに相手のことをよく見ているようで、「仲直りしたんじゃないのかよ……」とツッコめばいいのか「さては仲いいだろお前ら……」とツッコめばいいのかよくわからない。
とはいえこのままだと「前に戦った続きでもするか?」という流れになってしまい、折角七曜の騎士四人と戦う機会を作ったのが無駄になってしまう。
「……おいおい、相手を目の前にして余裕だな。じゃあ、もうちょい遠慮なくいくかぁ」
既に身体能力で対処できる範囲を超えている。ここからは容赦なくワールドの能力を駆使していこう。周囲の空間を噛み砕くように、虚空から黒いドラゴンの頭部を創造する。警戒する四人に対して一つずつ、そのまま首を伸ばして迫った。真正面から受ける者、回避を選択する者とそれぞれ対応してくるが、中でも厄介なのが回避してドラゴンの頭部に乗り、首を伝って接近してくるリューゲルだ。
あいつはホント、こっちの攻撃を利用するのが巧いと言うか。
「キューブ・レイ」
そんなリューゲルは、ちゃんと考えて嵌めるしかあるまい。
俺は左掌から彼を囲む立方体が形成されるように光線を放つ。囲って通り道を塞いでから、立方体の出来た範囲の内側に幾重もの光線が放たれて焼き払う――とはいえそう簡単にはいかない。
「っとと、おじさん相手に容赦ないね」
内側が光線で埋め尽くされる前に全速力で範囲から逃れられていた。深く地面を抉った踏ん張り跡がそれをよく表している。
「ん、あれ?」
そこから動こうとするも、彼の足は足首まで地面が不自然に盛り上がる形で埋まっていた。上手くいった、と俺は笑みを深める。
「悪いな。あんたの速度は厄介だから、嵌めさせてもらった。あの位置から光線が遅い部分を一部作っておけば、あんたならそこに移動すると思ってたんだよ」
「……してやられたってわけね。ホント、容赦ないよね」
「加減して七曜の騎士と戦えると思ってないんでね」
俺は多少手傷を負ってくれることを願って、彼の足元から特大の光の柱を立ち昇らせた。常人が喰らえば死すらあり得る威力だが。
光の柱が収まると、紫の騎士の鎧がバラバラになって地面に落ちる。中身が蒸発したということはあり得ない。
「危ない危ない、危うくいいの貰っちゃうところだったよ」
槍を携え軽装になったハーヴィンの男性が少し離れたところに立っている。危ないとか言いつつ傷一つどころか汗一つ掻いていないのはどういう了見だろうか。
判断の早さは流石だった。鎧を脱いで抜け出すとは。というか早脱ぎが過ぎるんだが。
「こちらも忘れてもらっては困りますよ」
当然忘れてはいない。突っ込んできたバラゴナの一撃をしっかりと受け止める。バラゴナの剣を避けていくが、戦闘経験の違いによって見切っても次の一手で更に詰められる。それを繰り返されればいくら相手の動きを読めていたとしてもいつかは攻撃を当てられてしまう、ということだろう。いくら鍛錬しても戦闘経験の差はそう簡単に埋められるモノではない。
相手が年上なら尚更仕方のないことだ。
俺はそれを能力で補うしかない。
一人相手ならなんとかなる気もするが、それは相手も同じ考えだろう。
「合わせてください!」
「わかっている!」
少し離れた位置からアリアとアポロがタイミングを合わせて斬撃を地に這わせる。黄金の細かな斬撃と黒の大きな斬撃が合わさるように迫ってくる。威力を合わせなければ実現できないので、やっぱりお前ら仲いいだろ。
「はぁ!!」
拳を放ってその威力を増幅させ、斬撃を相殺した。その間にもリューゲルとバラゴナは俺を倒すべく攻撃に転じている。
この四人が連携の練習をしたとは思えないが、即興にしては上手く立ち回られている。それぞれが戦闘慣れしているのもあるのだろうが。
特に厄介なのがリューゲルだ。おそらくこの中では最年長と思われるが、速い上に巧い。今の俺でも回避し切ることはできないので防御に徹するしかなかった。そこで頭と手を持っていかれるから他の三人はもっと厳しくなる。全方位感知できるからと言って、全方位からの攻撃を対処できるかどうかはまた別問題ということだ。慣れないと身体と頭が追いついてくれない。
リューゲルの素早い攻めは突きの動作を感知した直後に狭い範囲に強固な障壁を創って対処。
バラゴナの堅実な剣は正面で受けつつ調子に乗らせないように所々で能力を使い妨害する。
アリアの精密且つ柔軟な攻撃はまだ対処可能な速さなので回避を優先しながら他の対処に支障が出るなら防御。
アポロの大胆且つ大雑把な戦闘スタイルは動作がわかりやすい代わりに対処がしづらい。時折入れてくる魔法はなんだかんだ味方側を巻き込まないようには考えられているのが厄介なところだ。
だがこうして四人の対処ををするために極限まで集中すると、段々と頭が冴えてきて手いっぱいだった時には見えなかったモノが見えてくる。頭が冴えて余裕が生まれるとワールドの能力を行使しやすくなる。
そうなってからが反撃の機会だ。
とはいえ、そう簡単に事が進むわけもなく。
「私も加勢します!」
「アリアが頑張っておるのじゃ、妾達も行こうかの、ハクタク」
「……アポロ、加勢する」
レオナ、ハクタクに乗ったフォリア、ロイドを連れたオーキスから始まり次々と参戦を表明してくる。
「よし来い、遠慮しねぇからな」
七曜の騎士四人でもかなりキツかったので、そこから更に追加となると勝ち目はゼロに近いだろう。だがそれでいい。今回は自分の全力を試すための企画なのだから。
乱戦も乱戦、混戦になってきた戦いの中でようやくあの男が動き出した。
「ぬぐおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
雄叫びを上げて突っ込んでくる一人の男。俺としてはゼオやトキリと一緒で最初に向かってくるモノと思っていたのだが。
というかあいつ、真っ直ぐすぎて味方側の邪魔になってるんだが。
脇目も振らず俺に向かって一直線に突進してきた。あれは止まる気一切ないなと察したのか誰もが通り道を開けていく。実際、ガイゼンボーガなら蹴散らしてでも突き進んだだろう。
「ぬわぁ!!」
「おらぁ!!」
俺も迎え討つべく拳を振り被り、ガイゼンボーガと拳をぶつけ合う。ゴウッ! と激突の衝撃波が舞った。……へぇ? 前は【レスラー】よりちょっと強いくらいだったってのに、まさか今の状態でほぼ互角とはな。
「極星よ!」
「リメイク=スター!」
彼の呼び声に応じて出現したスターの連打に合わせて、俺も隕石の如く虚空から拳の雨をぶつける。流石に威力はそう変わらない。相殺した形だ。
「……くくっ! 鍛えに鍛えたと思ったが、まだ上があるとはな!」
「それはこっちのセリフだ。まさかこんな短期間でここまで強くなってるとは思わなかった」
鍛えた成果が相殺されても楽しげに笑っている。戦場の高揚感を味わえているからだろうか。
「ふん。粋がるのはいいが、単独で戦えると思うなよ」
「吾輩は“戦車”なるぞ! 加勢などいらぬ!」
「勘違いするなよ、私はただダナンと戦うだけだ。貴様を手伝う気はない」
「吾輩の敵を横取りすると? この“戦車”を前に上手くいくと思うな」
「ふん、勝手にしろ。……おい、久々だが鈍ってはいないだろうな?」
かつて一人で突っ走っていたからかアポロがガイゼンボーガに突っかかっていた。そして彼女は傍に控えた二人に声をかける。
「もっちろ〜ん。まぁ僕は見てるだけで良かったんだけどねぇ」
「嘘吐け。お前、ダナンの戦いを見て自分だったらどう攻めるか考えて楽しんでただろ」
「えっ! す、スツルム殿〜。いくら僕ら長い付き合いだからって心を読むのは狡いんじゃない?」
「お前は顔に出やすいんだ」
「そんなことないと思うけどなぁ……」
戦いそっちのけで話す二人の傍で、アポロが苛立ったようにザクッと剣を地面に突き立てた。
「……お前達。いい加減にしておけよ」
「うっわ。ボスの怒ったとこ久し振りに見たかも。最近丸くなってたからね〜」
「ああ、懐かしいな」
「貴様ら……!」
怒られても反省した様子のない二人に対して、アポロがゴゴゴ……とオーラが出そうなほど怒りを露わにした。
「おぉっと! ボスに叱られちゃったしそろそろ始めよっか」
「ああ」
ドランクは大袈裟に驚いてみせてから俺に向き直り指の間に複数の宝珠を挟み構える。スツルムも腰のショートソードを抜き放った。
そんな三人の様子を見て、アリアが少しだけ寂しそうに、羨ましそうにしているような気がした。……そういやこいつにも、部下がいたんだったな。真王のところに追い返しちまったから酷い目に遭ってなきゃいいんだが。
後でアリアのフォローだけはしておくか。
「……喋ってないで、手を動かす」
オーキスに叱られては、流石の二人も茶化せないようだ。少しだけ困ったような顔で参戦する。
そこにゼオが復帰してアネンサも加わり、ナルメア やリーシャ、モニカにシヴァ、グリームニルとブローディア、フラウとロベリアまで参戦してくる。流石に人数と強さが増してすぎて手と頭が追いつかなくなっていく。
だが楽しい。いっぱいいっぱいなはずなのに、怪我もしないわけではないのに、楽しくて堪らない。
「退いていろッ!」
乱戦の最中、剣を大きく振り被ったアポロが大声で合図する。
「そう来るなら……」
俺は笑みを深めて虚空からブルドガングを取り出した。
「「黒鳳刃・月影ッ!!!」」
剣を振るって空間を割り砕き、漆黒の奔流を放つ。全く同じ動作、全く同じ規模。二つはぶつかり合って空間を軋ませ、相殺される。
最初は【ナイト】のファランクスで受けて気絶した。
いつだったかは加減した威力を短剣一本で切り裂いた。
そして今、相殺に成功した。
身体の奥底からなにかが湧き上がって自分の身体が一回り大きくなったように感じる。
「……ふん。あの頃から随分と成長したモノだな」
アポロが兜の奥で笑っているのが容易に想像できた。おそらく彼女も俺と同じ場面を思い返していたのだろう。
「ああ、だろ?」
なんだか嬉しくなって不敵でない少し無邪気な笑顔になってしまったかもしれない。
だが空気を読めないガイゼンボーガ、ロベリア、ゼオの三人とオーキスが襲いかかってきてしまう。
「……むぅ。なんか通じ合ってる」
なんともわかりやすい理由だった。苦笑しつつ、対処のために真面目に戦っていく。
観戦だけのヤツもいるが、この人数の強者相手に充分戦えていた。自分の中の確かな成長を感じ取り、少し自信にも繋がっていく。
……次、あいつらと戦う時が楽しみだな。
次回はトキリの話です。
そろそろあいつもなんとかしてやらないといけませんからね。