ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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大変お待たせしました。四ヶ月振りでしょうか。

あと新年明けましておめでとうございます。
年末年始は如何お過ごしでしたか? 私は朝までゲームして夜起きるというボロボロの生活でした。

グラブルのシャトラは無事天井の途中で引けたので良かったです。可愛いんですよねぇ。ナンダクでは一切十二神将出てきてないんですけど。
十天衆の限界超越やら色々とありつつのグラブル生活でしたが、私はようやく賢者を統べました。あとゼウス編成に手を出し、ダマをアークに突っ込みました。
アナダルフォンは引けなかったんですけど、ああいう感じ好きなのでIFとかで出したいですね。

閑話休題。

今回から全九話? の番外編が始まります。毎日更新します。次はまだなにを書こうか迷っているので、また間があくかもしれませんが。
時系列はこれまでと違って本編に沿っているので、若干敵が強くなっているように感じるかもしれません。そこはまぁ、大目に見てください。イベントでグラン君ジータちゃんが弱くなる都合上、時系列を戻すか敵を強くするしかないんです……。

イベント『窮寇迫ること勿れ』はコロナの影響で最初ボイスがなかったイベントです。読み飛ばしてる人もいるかもしれませんが、これを機にボイスありで読み直してみるのもいいかもしれませんね。

2021年もナンダーク・ファンタジーをどうぞよろしくお願いします。


EX:『窮寇迫ること勿れ』プロローグ

 戦争に参加して欲しい。

 

 小国エルデニの遣いがアルタイルの下を訪れたのは、彼がいつものように図書館で黙々と本を読み耽っている時だった。

 

 アルタイルも知っていたが、エルデニという国は数年前からユラントスクという隣国と戦争をしている真っ最中だ。

 そんな重要な時期に使者が訪れる。加えてその使者であるドラフの男こそ、エルデニの王レオニスの側近であるザウラなのだ。国の重鎮、最大戦力とも言える彼を遣いに出すという意味がわからないアルタイルではない。

 

 それだけエルデニは追い詰められ、著名な軍師に頼るしかない状況なのだと。

 

 事実、エルデニは先日流通の最大拠点であるザハ市が陥落してしまった。

 

「ご期待に沿えず申し訳ありませんが……その依頼を受けることはできかねます」

 

 しかし、彼は淡々と申し出を断った。

 

「なぜなら、今の私は騎空団の一員。団の意向を無視して、個人で活動……ましてや戦争に加担するなど。それに、私は部外者です。そんな者が急に出張っていっても軍からは強い反発もあがりましょう。そういうことですので、どうかお引き取りを」

 

 話はこれで終わりだと示すように、手にしていた書物へと視線を落とそうとするアルタイル。だが、ザウラは動じることなく話を続けた。

 

「貴殿は……この空の成り立ち、“創世神話”に深く興味がおありとか」

 

 効果はバツグンだった。アルタイルは書物へ落そうとしていた視線を落とすよりも早い速度でザウラへと戻す。冷静沈着な彼の中ではかなりわかりやすい反応である。

 

 そも、アルタイルがエルデニのことを知っていたのは戦争の最中ということもあるが、エルデニの国土から創世神話に関する遺物が数多く発掘されているからというのが大きい。

 加えてまだ一部の者しか知らないが、創世神話にまつわる記述が遺された新たな石碑が発掘されたのだ。しかもその石碑はザバ市に保管されている。

 ユラントスクは歴史を軽んじる傾向があり、エルデニが敗北すれば遺物の多くは葬られる可能性が高い。

 

 そう後押しすると、先程きっぱり断ったアルタイルが思案するように口を噤んでいた。誠意を見せる意味も含めて頭を下げていたザウラは手応えのほどを感じていたのだが。

 

「申し訳ないですが……やはりお受けすることはできません」

「っ……残念です。どうあっても引き受けてはいただけないのですね」

 

 一回目は動じなかったザウラが、二回目は僅かに動じた。レオニスから託されていた秘策……というと大袈裟だが、それも破れてしまった今交渉材料がないのだ。

 

 しかし。

 

「先程も言った通り、今の私は騎空団の一団員です。ですから、協力を求めるのであれば私個人ではなく、騎空団への依頼、という形を取ってください」

 

 続く言葉を聞いて、ザウラは弾かれるように顔を上げた。

 

「それは、つまり……ご協力いただけると……?」

「それを判断するのは私ではなく、騎空団の団長です」

 

 断言は避けたが、アルタイルの中でこの戦争への参戦は確定事項だった。あくまで自分は団員の一人である、という立ち位置を保ってはいるが“蒼穹”の団長二人はお人好しである。どう言ったとしても、残念ながら受けてしまうだろう。

 それを理解しているからこそ、彼らに会わせると告げた時点で承諾したも同然だった。

 

 とはいえ小国エルデニが求めているのは、“蒼穹”の総力ではない。もし“蒼穹”の騎空団が総力を上げて参戦したのなら、それはもう戦争が呆気なく終結してしまう。そうなったら最早“エルデニの戦争”とは呼べないだろう。ザウラもそこまでは求めていなかった。

 逆にエルデニ求められているのは、当代随一と謳われる若き軍師。白銀の髪に知的な眼鏡をかけた青年だ。背中についた翼のような装飾品が特徴的なヒューマンである。

 

 “銀の軍師”アルタイル。

 

 劣勢を強いられているエルデニの戦況を覆し得る助力としてエルデニの王が挙げた者。

 

 港に停泊している騎空艇へと向かい団長の片割れであるグランの私室へ迎えられたザウラは、改めて事情を説明していた。

 

 あわよくば噂に名高い“蒼穹”の戦力も借りたいと思うところはあったが、エルデニの使者として訪れたザウラも流石に年端もいかない子供達に「戦場に来てくれ」と頼むのは気が引けていた。

 

 騎空団の団長を務めるグラン、ジータに加え更に幼い容姿のルリアと変てこトカゲことビィ。アルタイルはまだしも子供と呼べる彼らに頼み込むのは上に立つ者の一人として良くない気がした。

 当然、“蒼穹”の実力は聞き及んでいる。だが苦肉の策として“銀の軍師”の力を借りるのは兎も角、自分達よりも若い者が率いる集団に国の命運を任せて良いのか。

 

 あるいは、エルデニの者としてのプライドなのかもしれない。

 

 加えて()()()()()()()は我が儘のようにも思えたのだ。

 

 最終的には受けるだろうと睨んでいるのだが、それでも最初は戸惑いを見せていた。

 

「……団長殿」

 

 そんな四人に対して、アルタイルは静かに声をかける。

 

「戦争に加わるとなれば、多くの命を奪い、奪われる瞬間を目の当たりにすることになる。仮に、あなた達がこれを断っても、エルデニがあなた達を責めることはないでしょう。それを踏まえた上で、私は、あなた達に判断を委ねます」

 

 彼の言葉を聞いて、四人は話し合う。

 

 しかし戦争という残酷で救いようのない領域に足を踏み入れるとしても、グランとジータが怯むことはなかった。

 結局は心優しい彼らも参戦することが決定してしまう。

 

 とはいえザウラとしても劣勢中の劣勢なので加勢は有り難いことだ。あまりに多くの加勢をすると相手の過剰な侵攻や他国の介入といった不確定要素を招いてしまう可能性もある。もちろん大勢の援軍を連れてきたぞ! と思わせて相手を撤退させるというのもそれはそれで策になるのだが。

 残念ながら相手の軍師も相当頭がキレるので、それを額面通りに受け取ってくれる保証はない、というのはあった。

 

 結果、この場にいた五人のみがエルデニに加勢することとなる。

 

 少人数とはいえ、グランとジータは十天衆とも渡り合う(本気だったかは兎も角全員に勝利している)実力の持ち主であり、ビィは一旦置いたとしてもルリアも星晶獣を呼び出すことができる。たった一人で戦況を変えられるほどの強さを持った者(“蒼穹”で言うところのジークフリードやガウェインなど)を連れてきては過剰戦力となってしまう。

 

 ……まぁ、もう充分過剰戦力ではあるのだが。

 

 騎空艇でエルデニを目指す一行は、向かう騎空艇の中でザウラから詳しい状勢を聞くことにした。

 

「戦況が頭に入っていれば、現地に向かいながらでも策を立てることはできます」

 

 とはアルタイルの言だ。

 

 ザウラは彼に応じて、エルデニ軍の状況から説明していく。

 

 数日前、首都に次ぐ国の重要拠点である流通都市、ザハ市から撤退したエルデニ軍。ザハ市での戦いは犠牲が少なく済んだのだが、撤退時に追撃を受けて数を減らしてしまっていた。

 

「度重なる追撃の果てに前線は我が国における最後の砦、アヨール山脈近くまで撤退させられました」

「アヨール山脈……エルデニの首都を守る自然の要塞と名高い山ですね」

「はい。その頂上が、現在エルデニ軍の最前線基地となっています。それ以上の進軍を許せば、最早首都を守る砦も戦力もない。つまり、エルデニは終わります。……私が発つ前に反攻作戦を実行していたので、それが成功していれば多少巻き返しているでしょうが」

「流通拠点を抑えられたのはかなりの痛手ですね……。残る資源はどれほどですか?」

「食料も薬品も、民の数を考えればふた月……切り詰めてもふた月半が限界でしょう」

 

 数年前から起きている戦争、と考えるとかなりの佳境を迎えている。残ったエルデニ軍陣地も首都を除けばアヨール山脈のみ。劣勢も劣勢だった。

 

「おいおい……。なんか思ったより大変な状況じゃねぇか」

 

 ビィが率直な感想を零すのも無理ない。

 

兵站(へいたん)を制する者が戦場を制する。やはり、優先すべきはザハ市の奪還ですね。しかし現状、アヨール山脈からではザハ市まで距離がありすぎます。ましてや背後を取られるようなことがあれば、今度こそ全滅は免れない。まずはアヨール山脈の砦から、段階的に拠点を取り返し、ザハ市までのルートを確保しましょう」

 

 しかしアルタイルは至極冷静に方針を定めていく。

 

「なんか……思ったより変わったことはしねぇんだな」

 

 ただしビィはやや残念そうにしていた。

 

「ご期待に沿えず恐縮ですが……奇抜な策を取るのは最後の手段です。戦争は賭博ではありません。順当に定石を固めていくことが、一番の勝利への近道なんですよ」

 

 方針が決まったところで、ザウラの案内により一行はまずアヨール山脈の砦へと向かうことにするのだった。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 王への報告に向かうというザウラと別れた一行は、山脈の頂きにある砦を訪れていた。

 

 出迎えたのは、鎧に身を包み武器たる大鎚を担ぐハーヴィンの女性。

 

「待っていたわ、アルタイル殿。そして、騎空団の皆様。初めまして、私はポラリス。この砦の指揮を執るエルデニの将の一人よ」

 

 恭しく頭を下げた彼女の瞳には、紛れもなく期待が宿っていた。

 

「“銀の軍師”の評判はかねがね……。貴方の力も借りられるなら、これ以上心強いことはないのだわ」

 

 当初援軍として助勢を頼んだアルタイルへと瞳を向ける。そして次はグラン達へ。

 

「そして、貴方達騎空団についても……報告を受けてビックリしちゃったわ。まだ若いのに、何度も死線を潜り抜けてきたそうね?」

 

 戦争で忙しかったために外の最近の情勢には疎い面もあった。“蒼穹”の騎空団と言えば、知っている者は皆最終的にただ一言「ヤバい」と評価する騎空団である。そんな彼らが今までなにをしてきたのか、それについて聞き及んだポラリスの正当な評価だった。

 彼女の言葉に胸を張るのは、大体いつも戦っていないことでお馴染み、ビィであるのだが。

 

 それでも少し誇らしげというか、照れ臭そうな団長二人に微笑みかけて、ポラリスは芝居がかった様子で両手を広げた。

 

「ようこそ、この戦争の最前線へ。私は貴方達を歓迎するわ。うら若き騎空士さん達」

 

 彼女は明るく朗らかに歓迎の意を示したが、反して周囲からの視線はあまり明るくなかった。完全な諦めが宿っているわけではない。だが状況が芳しくないことを誰もが察していた。辛うじてアヨール山脈の戦線を維持しているが、その均衡をいつ崩されるかもわからないのだ。これまでの劣勢が祟って士気は最悪一歩手前というところである。

 

「敗色濃厚と言わんばかりですね。だからこそ、私が呼ばれたのでしょうが……。しかしここにいる者の半数が、もう既に戦いを諦めている。これでは策以前の問題です」

「これでも持ち直した方なのだわ。辛うじて心が折れていない状態。死力を注ぎ、最善を尽くしても、それでも仲間が死んでいく。絶対的な暴力とも呼ぶべき大きな力に翻弄されて、しかし今はそれが起こり得ないとわかっているからこの砦を死守するために戦えている。大きな力に翻弄されて生きるか死ぬかすら選べなかった状況から、生きる選択肢を見出してくれた人がいるから、まだ諦めていない者がいるけれど」

「……」

 

 一行が到着する前の状況では、微かな希望すら危うかった。もし予想外の戦力がなかったらもっと酷い樣であっただろう。

 

「でも、私は彼らのことを誇りに思っているの。あの絶望に支配されそうな戦場で、戦いから逃げ出すような者はいなかった。今だってそうなのだわ。皆、あまり元気はないけれど、軍を脱走した者は一人もいない。だから、彼らの中にある灯火はまだ完全に消えたわけじゃないと、私は信じているの」

 

 そう語るポラリスの瞳には仲間への信頼と強い決意が込められていた。

 

「立ち話が過ぎたわね。詳しいことは奥で説明するわ」

 

 彼女はふっと微笑んで一行を砦の奥へと案内する。一行は奇異の視線を向けられながら砦の中にある一室へと通された。

 

「さて、戦況はザウラから聞いているかしら」

 

 大きな机に地図と地形図を広げながら確認するポラリスに、一行は揃って頷く。

 

「貴方達も知っている通り、エルデニは物資も兵力も不足していて、正直絶望的と言う他ない状況よ。それでもこのアヨール山脈に攻め込まれていないのは、この山の恩恵とあと二つ」

 

 ポラリスがアヨール山脈のある場所を指差す。アヨール山脈は年中霧深く、複雑な森の植生もあり自然の要塞とも称される。他国からの侵略者には踏破しづらい環境だった。

 

「ザウラが出立する直前が決行するタイミングだったから貴方達は聞いていないと思うけれど、エルデニの反攻作戦があったの。それが森に逃げ込んだと見せかけて誘い入れ、霧深い中で奇襲。一部を逃がすことで攻略が難しいという印象をユラントスクに与えたのよ。その結果、ユラントスクはアヨール山脈に立ち入る前で立ち往生しているわ。そこをエルデニの軍師率いる部隊が牽制しているから余計にね」

 

 ポラリスが指差す地図にはいくつもの線と印が書き込まれており、なんらかの作戦を示していた。おそらく森に入られてしまった場合、の想定だろうか。

 それらをじっと見ていたアルタイルはその意図を察したかのように、感心した様子で頷いて見せる。

 

「悪くはない手です。貴国にも、それなりに腕の立つ軍師がいるようですね」

「ええ、彼女は優秀よ。少しだけ自分に自信がないのが玉に瑕なのだけれど。アルタイル殿と同じく、スフィリアにいたこともあるそうよ。もしかすると知り合いかもしれないわ」

 

 スフィリアはかつてアルタイルが軍師として名を馳せた国だった。思いがけない名前が飛び出したことに驚きつつも、アルタイルは静かに尋ねる。

 

「その軍師殿の名前をお聞きしても?」

「シュラ。それが彼女の名前。聞いたことはある?」

「シュラ……? 彼女ならスフィリア軍で私の部下でしたが……」

 

 答えつつ、アルタイルは納得いかない様子であった。

 

(妙ですね。彼女はエルデニに縁はなかったはず……)

 

 エルデニの出身でもなければ、アルタイルのように創世神話の遺物に興味があって足を運んでいたわけでもない。少なくとも彼はそのようなことを聞いた覚えがなかった。

 

「いえ……話を戻しましょう」

 

 考えてもわからないことは頭の片隅に置くだけでいい。残念ながら戦争においては詮無きことである。

 

「それで、前線を維持できている理由でしたか。アヨール山脈の恩寵と、つい先日行われた反攻作戦。まだ理由が一つ残っていますね」

「ええ。時間的に、そろそろ始める頃だと思うわ」

 

 話題を戻すと、ポラリスはそう言って口を噤む。しかしなにも起こらず、訪れた沈黙に耐えられなくなったのかルリアが声を上げようと口を開いて

 

「しっ……! 始まったわ」

 

 口元で人差し指を立てたポラリスに制止される。直後、微かではあったがなにか音が聞こえてきた。ドンッ! という重い音が聞こえ、山脈で反響する。音の発生源に行ったらさぞ大きな音が鳴っているのだろうと思うが、かなり距離があるらしく耳を澄ませていないと聞こえないほど小さな音になっていた。

 

「これは大砲……ではありませんね。なにかの合図でもない。かなり距離があるようですが、この音は?」

 

 アルタイルは少し考え込んだが答えが出なかったので、音の正体を知っているらしいポラリスに尋ねる。

 

「これは、()()()()()()()()()()()()()()()よ」

「「「っ!?」」」

 

 彼女の答えに、普段冷静なアルタイルでさえも僅か目を見開いていた。アルタイルやポラリスは当然アヨール山脈の頂上とザハ市との距離を理解している。グラン達は実際にどれくらいの距離なのかはわからなくても、地図を見て相当に遠いことはわかっていた。

 

「……この距離で戦闘音が届くとなると、相当に熾烈な戦いが繰り広げられているかと思いますが」

「ええ。片方は、ユラントスクの最大戦力。たった一騎で戦況を変え得る私達が絶対的な暴力とまで思っている存在よ」

 

 ドラフと見紛う巨漢の敵将。策を練って最善を尽くしてもそれらを無為へと帰す大いなる力。一薙ぎで部隊を半壊させる存在に、心が折れそうになったことは一度や二度ではない。むしろ数年間戦い続けてよくここまで凌いでいる。

 

「もう片方は……自称・無名の騎空士よ。外から物資を補給できないか試した時に、唯一支援に応じてくれたの」

「自称……?」

「ええ。自分では無名で大したことはない、なんて言っていたのだけれど。敵の最高戦力と渡り合っているのを見れば、そうとは思えないわ」

 

 ポラリスはその誰かを思い浮かべているのか、苦笑していた。偶然が重なった結果、生き永らえている者もいる。その騎空士が遠いザハ市で今も戦っていると伝わってくるからこそ、兵士達の心は辛うじて保ててるのだった。

 

「その騎空士の名前は?」

「聞いていないのよ。どうせ短い付き合いになるだろうから、と言って。シュラなら聞いているかもしれないけれど」

 

 仮にも恩人の名前を知らないとは、と悔やんでいる様子だった。

 流石に“蒼穹”の団長であっても、いくら顔が広いとはいえ特定は難しそうだった。本当は有名だが無名を名乗っている可能性もある。そもそも、“蒼穹”にも強者との熾烈な戦いを演じれそうな団員が多くいる。可能性を考えたらキリがない。

 

「兎に角、これが三つ目の理由。敵の最高戦力がザハ市で足止めを食らっているの。ユラントスクにはアヨール山脈の霧と最高戦力の不在という攻めるに攻め切れない理由がある。おそらくザハ市での決着がついたところで本格的に攻め込むつもり……というのがうちの軍師の予想よ」

「そうですね。攻略が難しい地帯で足止めされている……となれば雑兵を蹴散らすことのできる者を送り込むのが手っ取り早い、というモノでしょう。ならばシュラの部隊と合流して、均衡を崩しましょうか」

 

 眼鏡のブリッジを押し上げて淡々と告げるアルタイルは、既に戦争の未来さえも見通しつつあるのだった。




村正欲しいな。
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