ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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イベントのネタバレとは別に、シュラのフェイトエピソードのネタバレも含みます。ご注意ください。


EX:『窮寇迫ること勿れ』エピローグ

 ロウファとセキトバが融合し通常の星晶獣よりも高い戦力を持つ飛将軍。

 

 星晶獣の体躯、速度で戦場を駆け回り焔を放ち巨大な戦斧を振るう。今や【十天を統べし者】を使っても手に余る強さとなっていた。

 ユラントスク軍はロウファの指示により距離を置いていたため巻き込まれなかったが、エルデニ軍は違う。

 

 焔に焼かれ、大地を割る戦斧に両断され、蹄に潰される。

 

 一切容赦のない蹂躙具合であった。

 

「はあぁぁ!!」

「ふんッ!!」

 

 なんとか動きについていけるグランが追い縋ってはいたが、使いこなせている【十天を統べし者】であっても攻撃が受け止められてしまう。それどころか、二人がぶつかり合った余波で兵士達が吹き飛ばされてしまう。

 それをグランが気にしないわけがなく、隙を見せたところで飛将軍に吹き飛ばされていた。

 

「距離を取ってください!」

 

 アルタイルはなんとかグランが全力で戦える状況を作ろうとするのだが、飛将軍が速すぎる。距離を取ろうにも人の移動速度とは桁違いの速さで接近されてしまう。

 このまま平原の亀裂に誘導して足を嵌めるかとも考えたのだが、

 

「ぬぅんッ!!!」

 

 一人だけ、距離を取っていない者がいた。エルデニの戦の要にして、最強の将。渾身の一撃を以って飛将軍の左前脚を打ち上げる。走っている最中であったため自らも吹き飛ばされ無事では済まなかったが、それでも足を止めることはできていた。

 

「ザウラ殿……!」

 

 アルタイルは嬉しい誤算と言うべきか、頼もしい味方に内心で惜しみない賞賛を送る。

 

 そして少しでも足が止められれば、グランが間に合う。

 

「おおぉぉ………!!」

 

 両手で握った黒の長剣を大きく振り被った状態で、彼は飛将軍の眼前に躍り出た。迎撃が間に合わないタイミング、斧を翳して受ける他なく。

 

「はあぁぁ!!!」

 

 全力を込めた一撃が、飛将軍の巨体を後退させた。図らずも主力が飛将軍と対峙し、兵士達が遠目に援護する陣形に変えることができた。

 

「陣形を整えてください! 前には出ず、彼らを援護します!!」

 

 すかさず指示を飛ばし、兵士達に体勢を立て直させる。怪我を負ったザウラは一旦ポラリスが引っ張って退かせ、応急処置を受けている。

 よって今、グランと飛将軍の周りには誰もいない――全力を惜しみなく発揮できる。

 

「レギンレイヴレシディーヴ・天聖ッ!!!」

 

 グランが腕を振るうと、天星器十本の形をしたエネルギーが無数に飛将軍へ飛来した。ザンクティンゼルに帰郷した時、ビィの力を解放した祠の近くで突如出現したプロトバハムート。そのプロトバハムートが使ってきた技を模倣したのだ。

 

「ぐうぅ……!!」

 

 炎で全身を覆い防御していたが、それでも攻撃を受けて更に後退する。

 

 ようやく戦う準備が整った、という具合ではあったが。

 

「無駄な足掻きを……」

 

 飛将軍は依然としてそこに佇んでいる。全力であっても強敵と言わざるを得ない相手に気を引き締めて、戦闘を継続していた。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 一方、ダナンは場所を変えてジータと戦っていた。

 

「この、バカッ!! 簡単に洗脳されて……もうっ!!」

 

 毒づきながら常人なら即死する攻撃を次々と放つジータに対し、ダナンは無表情で対抗していた。飛んできた天星器型のエネルギーを当たる直前で消滅させ、拳と炎や氷など様々なモノで攻撃している。

 

「絶対、目を醒まさせるから。――力を貸して」

 

 決意を滲ませて、手にしている剣に呼びかけた。

 

 【十天を統べし者】を使いこなすことで使えるようになるこの剣が持つ能力はたった二つ。

 

 一つが、武器性能が全ての天星器を足した以上であること。

 もう一つが、武器の能力を引き出すことによって()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()

 

 ただでさえ強力な武器である天星器を、十本束ねた性能。それだけでも充分強力だが更に使用者の身体能力を向上させる能力まで持っている。

 

「いくよ。ちょっと痛いけど、許してね」

 

 加減できる相手でないことはわかっている。だからこそ、全力で倒す。そう宣言したジータがダナンの懐に潜り込んだ――ダナンの今の身体能力では追い切れないほどの速度で拳を放ち、直撃させる。受けることもできずに高速で地面を跳ねて吹き飛んでいくが、勢いが弱まったところで身体を捻り地面を削りながら着地……したところに剣を振り被ったジータが迫っていた。

 

「はああぁぁぁ!!!」

 

 渾身の力で振り下ろし、最悪両断してもいいように頭だけは避ける。……だが、そんな杞憂は不要だった。

 

「ッ!!?」

 

 ダナンが右手で剣を掴み、受け止めていたからだ。追いつけていないことはさっきの攻撃でわかったはずだが、なぜ力を込めても動かないほどになっているのか。

 違いと言えば、首に提げた飾りが赤い光を放っているくらいだが――。

 

「『なるほど。これが今のお前達の全力か』」

 

 洗脳されているはずのダナンが、誰かと声を重ねて喋った。そのことに驚愕して距離を取ろうとして、直前で重なっている男らしき声に聞き覚えがあることを思い出す。

 

「そ、その声……! まさかアマルティアの――」

「『そう。あえて形容するならば、オレは胎動する世界そのモノ。若しくはザ・ワールドと名乗っておこうか』」

 

 かつてアマルティア島に運び込まれた十枚の絵画。エルステ帝国の研究所にあったというそれに関連した騒動。

 その時に戦ったのが、このワールドという星晶獣であった。

 

「……なんで、ダナン君に」

「『この者がオレの契約者だからだ。オレが与えた試練を越え、真の契約者となった。それ故の、この『ジョブ』というわけだ』」

「じ、じゃあダナン君はこのままだと砂に……!?」

 

 戦う気は満々だったが、求める結果は助けるというモノである。あの時ワールドが顕現じた時点で怪しいローブの男は砂になって死んでしまった。もしダナンがそうなるのであればどうしよう、とジータは青褪めてしまっていた。

 

「『問題ない。使い捨てのあれと真の契約者となったこの者では、扱いが違う』」

 

 あの時死んだ男は、ワールドにとって都合のいい者だったからこそ契約を結んでいたに過ぎない。大して能力もないため顕現する度に身体が耐え切れず死亡するくらいだ。他のアーカルムの星晶獣同様、契約者を生き返らせることなど造作もないのだが。より良い契約者を発見し乗り換えたというだけの話である。

 

 ジータはダナンが死なないと聞いてほっとしつつ、果たして彼はどの程度までワールドの目論見を知っているのかと懸念する。もし騙されているのなら契約を切るように迫るが、もし全てを知った上で契約したなら後で()()()()が必要になる。

 

「……洗脳されてるのに、自由に喋れるんだ?」

「『いつでも解除は可能だが、契約者の意識が沈んでいる内にお前達の全力を計っておくべきだと判断したまでのこと』」

「じゃあ、倒してダナン君の意識を戻せばいいだけってことだね」

「『そう受け取ってもらって構わん』」

 

 やる気を出したジータが剣にエネルギーを纏わせると、手を放して距離を取る。そしてダナンの背後に現れる形で、ワールドそのモノの姿を顕現させた。

 

「貴様は武器、オレは星晶獣。形は違えど行き着く先は同じか。どうやら現時点での全力を出しても問題なさそうだ」

 

 ワールドの身体が出現したからか、そちらのみが喋っている。

 

「以前のオレと同じと思うな、特異点の少女」

「そっちこそ!」

 

 警戒を強めてワールドに向かって突っ込むジータの眼前に、ダナンが割り込んでくる。どうやら実際の戦闘はダナン主体のままのようだ。先程とは打って変わって、武器の力を借りたジータの動きについてこれている。

 

「太陽の焔に焼かれるがいい――」

「リメイク=サン」

 

 ワールドの言葉に、ダナンの声が続く。

 ダナン一人で編み出したアーカルムの星晶獣達の力を再現した技。それをワールドが顕現した状態で使うことで、より威力と規模を本物に近づける――否、本物以上にすることができていた。

 

 出来上がった太陽のように白熱した球体をジータへ向けて放つ。常人であれば近づいただけで炭化してしまうほどの高熱が発生しているが、生憎とこちらも常人ではなかった。

 

「水の一伐槍!!」

 

 水の魔力で形成された一伐槍を呼び出す。あらゆる武器、あらゆる属性が使えるという利点を最大限に活かした形だ。当然であるが、双子もただ資金集めだけをしていたわけではない。

 常に上を目指していた。

 

 呼び出した水の槍を疑似太陽に向けて投擲する。超高熱の球体に水の魔力が凝縮された槍が衝突し、互いに互いを打ち消し合いながら水蒸気を発生させて霧散した。

 

「星の数だけ受けるがいい――」

「リメイク=スター」

「シエン・ミル・エスパーダッ!!!」

 

 互いに視界が潰された中でも、ワールドはジータの位置を正確に把握できる。故に拳大の光の球体を無数に出現させ、ジータに向けて一斉に放った。

 それらが視認できた直後、剣だけで受け切れないと見て十天衆シエテの奥義を模倣する。数多の剣拓の代わりに六属性それぞれを凝縮した七星剣を無数に呼び出した。長剣の一振りで一斉に放射し光の球を迎撃する。

 

 球体と剣が飛び交い、相殺しなかったモノが飛んでくるが互いに直撃はない。

 

「月よ、我が身を照らせ――」

「リメイク=ムーン」

 

 相殺された次は、実力が同等とわかったために自己強化を行う。彼らの頭上に疑似的な月が創られた。最初は黒かったが、徐々に白い部分が増えていく。

 存在する限り、月の満ち欠けに応じて自己強化できる効果を持っている。

 

 その状態でジータに戦いを挑めば、必然ダナンが優勢になる。月が完全に満ちた直後、対応し切れなくなったジータの腹部にダナンの拳が直撃した。吹き飛ばされながらも空中で身体を捻って体勢を立て直しつつ、

 

「レギンレイヴ・天星!!!」

 

 頭上の月に向けて奥義を放った。迫るダナンに対しての攻撃でなかったのは、月が身体能力を強化していると察したからだろう。月が消し飛んだ途端、ダナンの身体能力が戻る。自分と同じ土俵に引き摺り下ろした形だ。

 

「感づいたか。だが全力でもここまで渡り合えるとは計算外だった。やはり契約者の言う通り、お前達を低く見積もるのはやめた方がいいようだ。常に想像を上回ると考えるべき、とはよく言ったモノだな」

「……」

 

 ダナンが言っていたなら、どの口がと言い返すところだが。実際ダナンはワールドを顕現させれば今と同じぐらいの強さにはなるだろう。あれだけ頑張って使いこなせるようになった【十天を統べし者】にこうして追いついていると考えればそう言いたいのはこちらの方だ、とも思った。

 

「ならば仕方がない。――ワールド・リクリエイト」

 

 ワールドから膨大な力が放たれ、広がっていく。広がった端から景色が青白く変わっていった――否、別空間が創造されている。

 辺り一帯が別空間に切り替わると、ジータを取り囲むように十体の青白い星晶獣が姿を現した。ジータには見覚えがなかったが、それらは全てアーカルムシリーズの姿形をしている。当然、能力も全く同じモノである。

 

「ここはオレが創り出した空間。改変も自由自在……果たして貴様は破れるか?」

「破らないといけないんだから、可能か不可能かなんて関係ないんだよ」

 

 自分と同等の強さを持つ相手一人に加え、十体の星晶獣と相対してもジータは一切退かなかった。

 

 そうして始まった戦いはどんどん苛烈になっていく。大地を揺るがし、空を裂き、辺り一帯を平地に変えるほどの熾烈極まりない戦いが終わりを迎えたのは、もう一方の戦いが終わってからのことだった。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

「善戦したようだがこの程度か」

 

 グランとエルデニ軍が相手をしていた飛将軍は、無傷とはいかないまでも軽傷で済んでいる。

 対してエルデニ軍は満身創痍、数を大きく減らし他より強いために前へ出ているグラン、ザウラ、ポラリスはそれ以上に追い込まれていた。

 

 兵を動かしているアルタイルでさえ負傷している始末である。

 

「あれです!」

「これは一体どういうことだ!?」

 

 そこへ、ルリアを伴ったレオニスが到着する。

 

「ルリア! 王様まで、どうしてここにいるんだ!?」

「星晶獣の気配がしたので、無理を言って連れてきてもらったんです」

「本来、前線に出てきたことを責めるべきだとは思っていますが……今の陛下の判断に感謝します」

 

 アルタイルは冷静に振舞ってルリアに一縷の望みをかけ尋ねる。

 

「あれは飛将軍。ロウファと星晶獣セキトバが一体となった姿です。ルリア、ロウファからセキトバを引き剥がすことはできますか?」

「や、やってみます!」

 

 ルリアがセキトバに干渉しようとするも、

 

「ダメです。今は、星晶獣の意識がロウファさんに呑まれてしまっていて……! せめて、一瞬でも隙ができれば」

「可能性があるなら試してみるしかありませんね」

 

 アルタイルは平静に答えつつ、これまででも隙ができそうなタイミングはあまりなかったことを考えると厳しそうだと思っていた。そこに、

 

「全軍、発射ッ!!」

 

 凛々しい号令の後、飛将軍を砲弾の雨が襲う。ランファを下してから合流した、シュラの部隊による砲撃である。

 

「どうです? これなら多少は……」

 

 土煙の奥に消えた飛将軍だったが、

 

「やはり、ランファは及ばなかったか……」

 

 少し悲しげな声音で、斧を振るいほぼ無傷の状態で姿を現した。

 

「なっ!? あれらを受けて無傷ですか……!」

「いや、当たっていないだけだ。よく見るがいい、全て地面に炸裂しているだろう。この飛将軍の目にかかれば、見切ることは可能だ」

 

 砲弾の雨を見て回避するなど常人の業ではない。星晶獣と一体化したことで更に能力が引き上げられているようだ。

 

「ならば、当たるまで撃ち続けましょう――」

「いや、そろそろ決着としよう」

 

 シュラが再度号令を出す前に、飛将軍は援護部隊に肉薄した。グランでも速さでは及ばない故に、援護部隊を蹂躙されてしまうかと思ったが。

 

「ひっ! ……クソッ、これでも食らえッ!!」

 

 一人の兵士が自棄気味に閃光弾を投げて、眩い光を放つ。

 

「ぐ、うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ……!!!」

 

 すると飛将軍が異様なまでの苦しみ具合を見せた。それを見たアルタイルが、頭の中でこの戦いにおける活路を見出す。

 

「飛将軍の弱点が判明しました。皆さん、指示通りに準備を! この戦いの勝利は我々の手にあります!」

 

 アルタイルは敗北直前の兵士達を鼓舞しつつ、素早く指示を飛ばして準備を整えさせる。しかしその間に視力が回復したのか、飛将軍が動き始めていた。

 

「させると思うか!?」

 

 準備を整える前に兵士を蹴散らそうとする飛将軍の一撃を、割って入ったレオニスが受け流すことで対処する。

 

「レオニスッ!!」

 

 宿敵を前に飛将軍がそちらへ刃を向けたところを、

 

「シュラ、合わせて!」

「はい!」

 

 ポラリスとシュラがそれぞれ前脚を同時に攻撃して、後ろ脚だけで立つ恰好へ仕向ける。そして後ろ脚近くにいるのが、エルデニで最も頼りになる戦力。

 

「ぬうううぅぅぅぅぅんっ……!!!」

 

 ザウラが渾身の力で掬い上げるように武器を振るった。

 

「ッ……!!?」

 

 見事、飛将軍の巨体が一回転する。空中に身を放り出された形の飛将軍が目にしたのは、激戦の最中で穴の空いた白いマントを羽織り黒い鎧を纏ったグランである。

 

「おおおおぉぉぉぉぉぉ……ッ!!!」

 

 グランは飛将軍の真上に跳び上がり、勢いをつけて真下へと蹴り落とした。地面が大きく陥没するほどの勢いで叩きつけられた飛将軍は苦悶の声を上げるが、それでも素早く起き上がった。

 

 しかし、その間にアルタイルが指示していた準備は終わっていたのだ。

 

「全弾発射ッ!!」

 

 号令を受けて、飛将軍へと殺到する弾丸達。だがただの砲弾などではない。それら全てが閃光弾、音響弾の類いである。直接的威力はないが、

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 飛将軍は絶叫を上げて動きを停止した。

 

 飛将軍は星晶獣セキトバと一体化することによって人とは桁違いの身体能力を手に入れた。それは五感も、である。その結果が砲弾を回避する動体視力であり、閃光弾がより強く効く理由でもあった。音響弾も常人では捉えられないほど小さな音を聞き取れるほどになっていれば、効果は覿面だ。

 

「ルリア、今です」

「は、はいっ!」

 

 アルタイルが合図し、ルリアがセキトバに干渉する。動きを止めた飛将軍相手であれば干渉可能だったようで、ロウファからセキトバを引き剥がすことに成功した。

 

 ロウファの巨体が消えたのを少し離れた位置で確認したジータとダナンは。

 

「この世界に終焉を齎そう――」

「エンド・オブ・ワールド」

「レギンレイヴ・天星ッ!!!」

 

 最後の一撃を放っていた。

 

 ダナンという真の契約者を得て、ワールドの力を上乗せしたエンド・オブ・ワールドは空間そのモノを歪ませ、凝縮して世界が元に戻ろうとする反発力に方向性を持たせてジータへ向けて発射していた。

 ジータも全身全霊を込めた奥義で迎え撃つ。

 

 その二つが衝突した中心点では、音、光、時、全てが消失して黒い空間が出来上がるほどだった。世界に傷ができるほどの強力なぶつかり合いも、相殺されたことによって終わりを迎える。

 

「……はぁ……はぁ……っ」

 

 ジータは肩で息をして、今にも『ジョブ』が解除されそうな状態だった。向こうの戦いは終わったようだが、まだこっちの目的を果たせていない。諦めるわけにはいかないんだと自らを奮い立たせているところへ。

 

「……そろそろいいか」

 

 気のない声が聞こえてきた。

 

「そうだな。情報は充分に収集できただろう。流石に今のオレでは、二人共を相手して勝てる保証がない」

「だな。加勢される前に終わっておくか」

 

 そんなやり取りがあって、ワールドは姿を消しダナンのローブも普段着ている黒いモノに切り替わる。

 

「……ふぅ。いやぁ、おかげで洗脳解けたわ。助かった」

 

 フードを取って素顔を晒し、にっこりと笑ってジータへ告げるダナン。だが、ジータは全く以って納得していなかった。

 

「こ、これでめでたしになるわけないでしょ!? というか、さっきダナン君自分から口開いてたよね!?」

「気のせいだろ? だって洗脳されてたし」

「絶対嘘だ! も、もしかして最初から洗脳されてなかったんじゃないの!?」

「そんなわけないだろ。ヴィータリーのヤツが言ってたんじゃないか?」

「言ってたけど、結局その人も死んじゃったし……エリクさんの腕が触手になったのだってダナン君の仕業でしょ? ポラリスさんが言ってたけど、いいタイミングだったらしいし」

 

 ジータはジト目でダナンに疑いをかける。ダナンはにっこりと笑ったまま、

 

「いくら油断してても洗脳なんてされるわけないだろ、なに言ってんだよ」

 

 ぬけぬけと白状した。一瞬なにを言われたのか頭に入ってこなかったが、発言を咀嚼して呑み込むとダナンに詰め寄る。

 

「やっぱりされてなかったんじゃん! ……ッ~!!」

「無理すんなよ、怪我してんだから」

「ダナン君だって……ってあれ? 怪我は? 治ってない?」

「ああ。だって自動で回復するようにしてるし」

「狡い! ……そうだ、さっきの星晶獣と契約したってどういう――」

「そんなことより、そろそろ戻った方がいいんじゃないか? 向こうの決着が、この戦争において一番大事なんだし」

「わかってるけど……もうっ! 後で絶対吐かせるからね!」

「はいはい」

 

 怒っている様子のジータに苦笑して、腕を掴まれロウファ達が戦っていた方へ引っ張られていく。

 

 二人が到着する頃には戦いは完全に終結しており、レオニスがロウファの処分を告げる段階であった。

 

「ロウファ。お前を、島流しの刑に処す。拘束したランファも同様である」

「……レオニス」

 

 どんなやり取りが行われたのか、ジータは知らない。実際にはロウファが吐き出した己の願望を受けて、レオニスが恩情を与えたのだ。

 島流しの刑とは、無人で秩序もない島へ罪人を送り込む処刑法である。ここしばらくは使われていなかったので、おそらく本当に無人と化しているだろう。そこへロウファとランファを送るということは、世のしがらみ関係なく二人で静かに暮らせ、という意味でもあった。

 

 それがわかったのだろう。ロウファはレオニスに向かって黙って頭を下げていた。おそらくレオニスにとっては、義兄弟に向けた最後の温情というところだろうか。

 

 ロウファはセキトバと一体化した影響か両足が動かなくなっており、力尽きたこともあって大人しく拘束されていた。

 

「あっ、ダナン! 元に戻ったみたいだね」

 

 ジータに引っ張られてきたダナンに、グランが真っ先に気づく。注目を浴びる二人だが、なぜかジータが怒っている様子だったので、首を傾げている者も多かった。というかそんな素顔だったのかという反応がほとんどである。

 

「ダナン様、と言うのですね。洗脳されていたそうですが身体に異常は――」

 

 一行に先んじてシュラが前に進み出て様子を見ようとしたのを、ジータが手で制す。

 

「シュラさん。心配する必要なんかありませんよ。元から洗脳されてなかったのに、嘘吐いてたんですから」

 

 むすっとした様子で告げるジータに、大半は「えっ?」と驚いていた。ただ一人アルタイルは、

 

「……やはり嘘でしたか。そんなことだろうと思っていました」

 

 呆れを滲ませて口にする。視線が自分に集まったのを理解して説明した。

 

「ロウファがかなりの手練れであることは、戦の状況を聞いた時点で察しがついていました。その人物を足止めできて、且つ素性を隠し通せる者などそうはいません。その時点でおそらくダナン殿だろうと当たりをつけていました。そして洗脳されたという情報ですが……まぁ、そういう手口を使う相手にとって一番やりにくい相手だろうと思い、おそらくそう見せかけているのではないかと思っていましたよ。相手が上手くいったと思っているところを落として種明かしをする――というのが好きなようですからね」

「ははっ。流石は“銀の軍師”様。よくわかってるなぁ……。さぞ、予測不能な連中の面倒を見るのは大変だろうに」

「いえいえ、あなたほどではありませんよ」

 

 視線を合わせて互いに薄い笑みを浮かべて言い合う二人の間には、なぜか火花が散っているようにすら見えた。

 

「……な、なぁ。眼鏡の兄ちゃんとダナンってなんかあったのか?」

「……し、知りませんけど、グランとジータは知ってますか?」

「……さ、さぁ? そもそも喋ってるとこも見たことないけど」

「……私も。顔見知りだなんて知らなかったくらいだし」

 

 二人をよく知っている四人がこそこそと言い合っている。

 実際、彼らの知らないところでダナンとアルタイルがバチバチにやり合っていた、ということはない。ただ互いが互いに、苦手なタイプとしていると認識しているだけの話だった。

 

 ダナンは色々と暗躍したがる傾向があるため、そういうところすら見抜いてくる癖に自分の内側は滅多に晒そうとしないアルタイルを苦手としている。

 

 アルタイルはアルタイルで、一人でなにかしようとするダナンに苦手意識があった。彼は軍を動かすのは得意だったが、全体を動かしたはずなのに勝手に一人で行動するタイプのダナンを苦手としていた。しかもなんだかんだ勝手に動いた結果悪い方向に転がっていかないのが余計に納得しない部分もあるのだが。

 

「な、なぜそのような回りくどいことを?」

 

 しかしシュラには納得できなかったのか、困惑した様子で尋ねた。

 

「前提として言っとくと、別に最初っからユラントスク側につく気はなかったからな? 俺も最初はあんたの指示通りロウファの足止めだけしてればいいかと思ってたんだけど。そしたらユラントスクのヴィータリーってヤツがさ、俺を捕えて洗脳しようとしてるって言うじゃん? そこで俺は閃いたわけだよ」

 

 言いながら、ダナンは見知った者にとっては見慣れた不適な笑みを浮かべる。

 

「こいつらと全力で戦ういい機会になるんじゃね、って」

 

 エルデニ勢とロウファがきょとんとし、よく知った者達はやっぱりかと呆れた。

 

「そ、そんなことのために、ですか?」

「ああ。――俺は、こいつらに負けるわけにはいかないんでな」

 

 未だ困惑の最中にあるシュラへと頷いて、自らが指した双子へと目を向ける。三人の視線が交錯して、三人共が同じ気持ちであることが第三者から見ても理解できた。

 

「……では、なぜ俺を助けた。それも敵対するのに都合がいいからか?」

 

 拘束されたロウファが尋ねる。

 

「それもある」

 

 それに対して頷き、

 

「けど、正直最初あんたの話を聞いた時は、ユラントスクから引き抜こうと思ってたんだよ」

 

 まぁ、自由を求めてるってんなら難しいだろうけどとつけ足しながら。エルデニにとってはぽかんとする内容を平然と口にした。

 

「俺を……?」

「ああ。俺もこいつらも騎空団を率いる身だが、俺の方は少人数なんでな。こいつらのライバルを名乗るにはちょっと人数不足なんだ。だから、強いヤツには目をつけるようにしてるんだよ。兵士を一発で蹴散らせるだけの膂力を持ってるなら、ただ戦争の道具で終わるには惜しいと思ってな」

「……」

「まぁ俺がヴィータリーとどう違うのかって言われたら否定できる要素はないが、少なくとも奴隷だとかなんだとかってのを気にする環境じゃないってのは確かだから脈ありかと思ってたんだが……残念だ」

 

 ダナンは肩を竦めて、全く残念そうに見えない様子で告げた。明け透けな物言いもそうだが、不思議とヴィータリーのような嫌な感じはしない。

 

「あと、あの野郎は俺がどの程度の傷なら自動で再生するのかを確かめるために実験で身体の八割を自爆で消し飛ばさせたからな。……できるだけ無様に死んで欲しかったんだよ」

 

 しかし、その直後見ている者が悪寒を覚えるほどの冷たく薄い笑みを浮かべてつけ足した。

 その雰囲気を変えるためか、シュラが質問をする。

 

「では、私からも一つお聞きしたいのですが……なぜあなたはエルデニの味方をしたのです? ロウファを引き抜くおつもりなら、ユラントスクでも良かったのでは?」

「別に元々助けるつもりはなかったぞ? 味方するつもりなら、わざわざ洗脳されたフリして敵対しないだろ? 絶望感与えるし」

「そ、それもそうですね……というかわかっていてやったのですか」

 

 納得しかけ、やや呆れた様子を見せるシュラ。

 

「それはもう。見るからに敗色濃厚だったし? なんでわざわざ砦まで戦闘音届けたと思ってるんだよ?」

「っ……あれは故意にやっていたのですか?」

「ああ。あんなに離れてて音届く方がおかしいって。いくら俺とロウファでも」

 

 エルデニ勢は唖然としていた。ダナンが、きちんとエルデニの士気のことを考えていたことを知ったからだ。先程までの印象で適当に気のまま行動しているのかと思いきや、のタイミングである。

 双子に対しても思っていたことだが、そのライバルを自称するだけあって底の知れない少年であると驚嘆している者が大半だった。

 

「それはその……色々とありがとうございます」

「礼なんていいって。その後こいつらとアルタイルが来たから多分なんとかなるだろ、って丸投げしたんだしな」

 

 シュラに頭を下げられて、ダナンは苦笑していた。自分が褒められるようなことだけをしていたつもりがないからだろう。

 

「洗脳されてなかったなら、エリクと戦っていた時助けられたことになるわね。感謝するのだわ、ダナン殿」

「気にすんな。ただの気まぐれだ。あんたに貰った菓子が美味かった、ってだけの理由だしな」

「ふふっ、それならあの時渡しておいたのが巡り巡ってきたのね。なによりだわ」

 

 命の恩人に対して握手を求めるポラリスと、腰を屈めて握手を交わす。

 

「エルデニへの助力、感謝します。一時とはいえ兵達の支えになっていただいたのは事実ですからな」

「いいや、最後の支えはあんたの方だ。俺のはただの余計なお世話だよ」

 

 それから、歩み出てきたザウラとも握手を交わした。

 

「この流れなら俺も出るべきか。内情は兎も角、助力感謝する」

「ああ。ここから戦争を終わらせるのはあんたの役目だ。ちゃんとしろよ、王様?」

 

 最後にレオニスとも握手を交わして、エルデニとの挨拶は一通り終えた。あとはシュラだけだが、どうやら逡巡しているらしい。色々と思うところがあるからだろう。

 

「じゃあ、先にザハ市入ってるわ」

 

 ダナンはそう言って本陣からザハ市へと入っていった。言葉は宴の時でもいいかと思い、シュラ達も行動を開始する。

 

 その後、主だった将軍が全て敗れ去り、また国王も死亡したユラントスクはエルデニ国王レオニスの提案した和平協定に合意。エルデニを攻め落とすために引き入れたロウファが捕まったことにより戦が長引くだけと見て撤退していった。

 

 当のロウファはランファと共に島流しの刑に処され、誰もいない島で二人で暮らすこととなる。それを見送る時、シュラはランファとの姉妹の縁を切られてしまったようだが。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 戦争の終結と実質的なエルデニの勝利を祝い、休息を挟んだ翌日盛大な宴が催されることとなった。

 

「ダナン様、こちらにいましたか」

 

 ゆっくりと話す時間を取りたいと思っていたシュラは、ダナンが一人屋根の上で飲み物片手に菓子を摘まんでいるのを発見した。

 

「ああ、シュラか。お前こそこんなところにいていいのか? 酒飲んだポラリスが探してるぞ」

「お酒の入ったポラリス様は……強引ですからね。それに、貴方とゆっくり話がしてみたかったモノですから」

「そっか」

 

 ダナンは応えて菓子を一摘まみ。謙遜や緊張などは見て取れない。そのおかげか多少緊張していた心が解けていくのを感じた。隣に腰かけ、自分も持ってきた菓子を口にする。

 

「改めてになりますが……。この度は援助、加勢いただきありがとうございました」

「気にするな。元々はただ偶然、物資補給に行く船を護衛するだけの予定だったわけだしな」

「ではなぜ船で戻らなかったのです?」

「んー……。強いて言うなら、そうだな。活気がなかったから、飯を作ってやりたかった」

「え?」

 

 思ってみなかった回答に、シュラは思わず横顔を見つめた。

 

「助ける気とかはあんまなかったんだけどな。あまりにも暗い顔してるヤツが多いもんだから、料理を食わせたくなったってのが本音だな」

 

 確かに、思い返してみれば唐突に料理を作らせろと言い出していた。しかも物凄い腕前を振るって少し兵士達の気力が戻った様子もあって驚いたのをよく覚えている。おそらくそれがシュラが初めてダナンを認識した瞬間だったろうか。

 

「ではなぜ困窮している私達に助力すると言い出したのですか? 料理だけでも兵士達の気力はある程度回復していましたし、そもそもメリットがありませんが……」

「それは最初に言わなかったっけ?」

「?」

 

 納得いかない様子のシュラに苦笑して、顔を向け尋ねる。しかし彼女は心当たりがないらしい。

 

「言っただろ? エルデニではおよそ誰でも敵わないロウファ率いるユラントスク相手に結構な期間国を負けさせず戦ったんなら優秀な軍師だと思ったからな。急に出てきた俺をどう使うのか気になった」

「……本当にそれが理由なのですか?」

「ああ。なにせ、余程規格外――この場合はロウファよりももっとヤバい、星晶獣すら簡単に倒せるようなヤツのことだが――そういうヤツが相手じゃなけりゃ死ぬ要素はないからな。ロウファの時も言ったが、優秀なヤツは騎空団に欲しいことだし」

「私を、貴方の騎空団にですか……?」

 

 思いも寄らない言葉に、きょとんとしてしまう。ポラリスが最初一行にも言っていたが、自信がないため自分が勧誘を受けるなど考えもしていなかった様子だ。

 

「それなら私よりもアルタイル様の方がいいのではありませんか?」

「あいつは“蒼穹”所属だからな。まだ入ってないヤツを選ばないといけない。……まぁうちにも軍師っぽいことができるヤツがいないわけでもないんだが、専門家じゃねぇしなぁ」

「それでしたらエルデニを敗北寸前まで追い詰めてしまった私は力不足でしょう。それに、私はまだエルデニに救っていただいた恩を返していません。ここを離れるつもりはありませんから」

 

 恩を返すために軍師として力添えしたが、その結果が奮わなかったからこそアルタイルへと助力を求めたのだから。

 

「そっか。一個目の理由は俺が見所があると思ってるからどうでもいいんだけど、二個目の理由はどうしようもないからな。しょうがねぇ」

 

 ダナンは半ばわかっていたようにあっさりとした反応を見せる。

 

「申し訳ありません、折角お誘いいただいたのに」

「いいんだよ、元々が俺の我が儘だからな」

 

 相変わらず腰の低いシュラの様子に、もう少しなんとかできないかと思いつつも自分も含めて破壊したザハ市を屋根から見渡す。

 

「……しかし、中央とかは酷いな。俺が言うのもなんだけど。ホントにいいのか? 俺なら無償且つ素早く直せるぞ?」

「はい。幸い生活に必要な拠点などは無事でしたから。それに、国外から来た貴方の力ばかり借りてしまうと、少しばかり軍への不信感が募ってしまう可能性が高まりますから。あくまで民を守るのは、手助けするのはエルデニ軍であるというところを見せていかなければなりません」

「軍の信用ってのはそんなモノだよな。まぁなんかできることがあったら言ってくれ、復興指揮官殿」

 

 ダナンの口にした通り、シュラは戦争終結後の都市復興を指揮する立場にあった。本当ならこうして宴をしている間も計画を練っていなければならないほど多忙なのだが、流石に止められてしまった。ポラリスからは当然、首都に戻ったザウラや国王レオニスから言われてしまえばシュラに断ることなどできようもなかったのだ。

 偶にはゆっくり身体を休める日も必要、という判断もある。もちろんシュラも多少睡眠時間を削ってはいるがしっかり休み食べるようにしている。健康状態に問題はなかった。

 

「いえ。貴方には日頃の炊き出しでかなりお世話になっていますから。……と言いますか、本当ならこのような宴をする余裕などないくらいの食糧になるはずだったのですが。私も料理には多少自信があったのですが、貴方には到底及びませんね」

「当たり前だろ。俺はこれでも今年“シェフ”になったんだからな。プロの料理人にだって負ける気はねぇ」

 

 他と同じような謙遜ならダナンも否定しただろうが、ダナンもダナンで誰にも負ける気はないという自負があるからこそ否定はできなかった。

 

「あの“シェフ”に……その若さで凄いですね」

「そこは向き不向きの問題だろうよ。……つっても俺やあいつらは不得意と言えるモノはないみたいなモンだけどな」

 

 ダナンが視線を落とした先には、兵士達に囲まれて和気藹々と宴を楽しんでいるグランとジータの姿があった。

 

「……お三方は特別な関係なのですね。不思議な能力をお持ちのようですし」

「まぁ、因果なモノだよな。……じゃあそろそろ、明日の朝飯の仕込みでもしてくるかな」

「お手伝いします」

「いいって。お前は普段ずっと忙しいんだから、こういう時くらいのんびりしてりゃいいんだよ」

「いえ。こういう時の料理は気晴らしにもなりますから。それに、貴方から学べることも多そうです」

「勤勉なことで。そう言うなら、手伝ってもらおうかね」

 

 苦笑して、ダナンが腰を上げる。シュラもそれに続くと偶々目に入ってしまったらしく、

 

「シュラー! そんなところでなにしてるのよ! ダナン殿と二人きりで楽しんでないでこっちに来ればいいのだわ!!」

 

 酔っ払って赤ら顔となったポラリスが、ぶんぶんと手を振ってきた。大声で叫ばれたので、周囲の者達にも筒抜けである。

 

「茶化さないでください、ポラリス様! あと、あまり兵の皆様を酔い潰さないでくださいね?」

「これでも加減はしてるから大丈夫よ!」

 

 若干頬を赤らめて言い返すシュラに対し、ぐっと親指を立てるポラリスだったが。彼女の周りには既に五人もの兵士達が酔い潰れている。まだ加減している方なのか……と戦慄する一方で、軽く頭を下げて断る意思を示した。

 

「いいのか? ポラリス達の方へ行かなくて」

「はい。……今のポラリス様に巻き込まれると、明日に差し支えそうですから」

 

 尋ねるとシュラは少し茶目っぽくそう答える。確かに、とがんがん付き合わされている兵士達を見て納得するのだった。

 

「じゃあ明日の下準備しに行くか」

「はい」

 

 屋根から降りて二人で翌朝の炊き出しの準備をしに行く。……のをポラリスが傍目に見ていて、

 

「……シュラも大胆になったモノだわ」

 

 と感慨深げに呟いた。……のを周りで聞いてしまった兵士達がまさか!? と勘繰ることになり翌朝からダナンへの視線がキツくなったのは余談である。全くの冤罪であるのだが、ジータからは「日頃の行いじゃない?」とばっさり切り捨てられてしまうのだった。

 

 レオニスとザウラは既に首都へ戻っており、ポラリスも各地警備のための指揮を執らなければならないため、ザハ市を後にした。宴であれほど飲んでいたのにも関わらずけろっとしていたのには、酒に弱いダナンが若干引いていたのだが。

 アルタイルは創世神話の遺物達が無事であったことを喜びその解読、考察に明け暮れている。復興に関しては「私が依頼を受けたのはザハ市奪還までですので。後はレオニス国王に任されたシュラの仕事でしょう」とあっさりしたモノだった。レオニスはエルデニの軍師にと引き抜きたい様子だったがすげなく断っている。そうなれば無理に留めるわけにもいかず、おそらく今も無事であった館で悠々と書物や遺物を漁っていることだろう。

 

 ダナンももう用がないと言えばそうなのだが、炊き出しで料理を大人数に振舞える機会というのと、ザハ市中心部を破壊した理由の一端が自分にあるという多少の負い目から復興を手伝っている。

 

 シュラが多忙に動き回り、軍へ指示を出して復興を進めていく中、彼女の下を一人の男性が訪れた。

 

 その人物はシュラの義父に当たるそうで、戦争で死亡した両親の代わりに引き取ってくれた人物である。

 その人物がシュラの顔を見るついでに手紙を届けてくれたのだが、その手紙には食糧を強奪しようとしている貴族がいるため捕縛して欲しいと書かれていた。

 

 ザハ市の備蓄があったためまだ余裕はあるのだが、なくては困るのが食糧だ。もしもの時のために備える必要もある。

 

「すみません、一つ手伝っていただけませんか?」

「ああ、いいぞ。そいつを捕まえればいいんだろ?」

「はい。捕縛ですので、その辺りはお願いしますね」

「わかってるよ」

 

 シュラは食後の片づけを行っているダナンへと声をかけた。

 

「僕達も手伝おうか?」

「ん? ああ、必要ない。……それに、多分街に残ってた方が良さそうだ」

「「「???」」」

 

 グランの申し出に答えて、シュラと彼女が選抜した兵士達で貴族の屋敷に乗り込むこととなった。

 

「ぐあっ! や、やめろ! 俺は貴族だぞ!? 薄汚い手を離せ!!」

 

 貴族は正面から乗り込んできたダナン達に兵を鎮圧され、ダナンに取り押さえられていた。

 

「離してもいいけど、その前にベランダへ移動するからちょっと待ってくれよ」

「ひぃっ!!」

 

 普段通りの声音で脅されたのが余計に恐怖を煽ったのか、貴族は一旦大人しくなった。その後兵士達が拘束し、護送する運びとなる。

 

 馬車に乗せ、兵士に護衛させて運ぶ、その最中のことだ。

 

 魔物の大群が街に押し寄せてきた。そこかしこで上がる悲鳴、混乱する市民。シュラはすかさず部隊の再編成を命じるが、

 

「シュラ様! 魔物が護送していた馬車を襲い、無事だった貴族が逃亡しました!」

 

 相次ぐ不測の事態。ここで臨機応変に対処してこそであったが、

 

「……っ! 仕方ありません。貴族を逃した全責任は私が負います!! 兵の皆様は魔物の撃退を!!」

「僕達が追う」

 

 民の安全を優先したシュラの判断に対して、傍にいたグランが申し出る。

 

「し、しかしこのような事態にも備えておけるようにしておかなかったのは私の責任であり、皆様に尻拭いをさせるわけには……!」

「かもな。でも、全部を全部備えるってのは、完全には不可能だ。俺はある程度可能だが、ただの人の域じゃ“世界”の全てを見通すなんてことはできないんだよ」

 

 シュラの反論に最初だけ肯定しつつ、しかし否定した。ダナンの言う通り、全てに備えるのは不可能だ。……()()()()()()()()()()

 

「もちろん色々なことに備えておくのはいいことだ。けど全ては無理だ。人の頭には限度があるし、備品だって十全じゃない」

「そ、それはわかっていますが……」

「わかっているだけじゃダメだ。ちゃんと、理解しないとな」

「……?」

 

 二人の会話は続いたが、

 

「なぁ、呑気に話してる場合かよぅ」

 

 ビィの至極真っ当な意見にシュラははっとする。

 

「……とりあえず、申し訳ありませんが貴族の追跡はお任せしてもよろしいですか?」

「ああ、もう終わってる」

「えっ……?」

 

 ダナンが虚空に手を伸ばしたかと思うと、その手で服を掴むようにして逃亡したはずの貴族が出現した。

 

「はぇ?」

 

 一番驚いたのは貴族本人だろう。本来なら森を走っているはずだったのに、突然街の中に戻ってきてしまったのだが。

 

「……クソッ! 離せ!!」

「いいけど、逃げられねぇよ?」

「私は……こんなところで終われないんだよぉ!!」

 

 混乱は置いて逃亡を続けようとする貴族の服をあっさりと手放す。また逃げ去る貴族を止めようとした双子を制止して逃したかと思えば、少しして同じ場所に貴族が現れた。

 

「はあぁ!!?」

「だから無駄だって。大人しくしてろ?」

「く、クソぉ!!」

 

 再び走り出す貴族を尻目に、ダナンは目でシュラに合図する。突然のことについていけていなかったシュラも、我に返って部隊の再編を急いだ。

 

 部隊の指揮を執って魔物を鎮圧したシュラが戻ってきた頃には、汗だくで蹲る貴族の姿があった。

 

「どうした? 逃げ出すんじゃなかったのか? ほら、もしかしたら回数が決まってるかもしれないぞ?」

 

 そう言って煽るダナンの様子に、その貴族がどんな人物か知っていてもより悪なのはダナンの方では? と思ってしまう。

 

「ありがとうございます、皆様」

「僕達はなにもしてないよ」

「いえ。こちらに魔物が何体か行っていたようですので、その討伐はしてくださったのでしょう?」

「お、おう。まぁな……」

 

 ビィは目を逸らして頷くのを不思議に思いながら、四肢を投げ出す貴族・ベルダ卿を再度拘束する。

 

「……クソッ。あと少し、あと少しで俺は今以上にユラントスクで成り上がれたのに……!」

 

 悔しさを滲ませて吐き捨てるベルダに、ダナンは密かに感心した。まだ喋る元気があったようだ。

 

「どういう意味ですか、それ?」

 

 ジータが眉を顰めて尋ねる。ベルダはエルデニの貴族だ。ユラントスクの名前が出てくる時点で不穏さは増す。

 

「その男は、ランファとロウファの首を土産にユラントスクへと亡命しようしていたのですよ」

 

 答えたのはシュラだった。

 

「実力社会のユラントスクに、一級手配犯の首を差し出せば確実に相応の地位を得ることができる。富と地位に固執する貴方らしい浅慮で杜撰な計画ですね、ベルダ卿」

 

 シュラは気持ち普段より冷たく告げた。

 

「横領した補給物資を計画実行に必要な手駒を雇うための代価とし、あまつさえ自分が成り上がるためにランファを、義理の娘を手にかけようとするなど見下げ果てた性根です」

 

 軍師たる者常に冷静でいるべし、とはいえ肉親のこととなると感情が昂ぶって然るべきでもある。

 

「はっ。なぜアレに情など持たねばならぬ?」

 

 だがベルダ卿は嘲笑った。

 

「アレは奴隷だ。奴隷は主のための道具にすぎん。どう使おうが、主である私の勝手だ」

 

 エルデニには、こういった考えの貴族が存在している。シュラに逆風だったことからも余所者に対しても厳しい目を向ける部分はあった。それを変えるために、前王カノプスは自らが率先してロウファを養子にした。戦闘終了後に遅れて合流したためジータは知らないが、レオニスはロウファに対して身分による不平等をなくしていくと宣言していたのだ。ただし、目の前のベルダ卿の発言こそがエルデニの現状でもある。

 

 あまりにふざけた言い分に、ルリアは強く言い返す。

 

「そんな、道具だなんて……酷すぎます!」

「酷いだと? 酷いのはあの女の方だ!」

 

 だがベルダも反論した。

 

「あの女のせいで、私がどれだけの被害を被ったか……それが貴様らにわかるか!?」

 

 唾を飛ばして怒鳴り散らす。

 

「バカで碌に学もなかったが、あの女の見た目だけは極上だった。だから買い取ってやったのに! 自分の立場も弁えず、よりによって敵国の男を誑かし裏切るなど! だから、私はあの女の実の両親を告発し、処刑させたのだ! 全ての責任をあいつらに押しつけてな!」

 

 自分勝手にして救いようのない言葉に誰もが顔を顰める中、シュラの素性を知る者ははっとした。ランファの両親ということは、シュラの両親でもあるのだ。

 

「……処刑? ランファの実の両親は戦争に巻き込まれて死んだのでは……」

 

 それでも取り繕って口にした。

 

「先程私が言った通りだ。責任を取ってもらったんだよ、あの女の両親にな」

 

 その言葉に、シュラは悔しさを顔に出す。

 

「悔やむことばかりです。私が養子に行くことなく、ずっと両親やランファの傍にいれば……。私がランファを守れるだけの、貴方を追い返せるだけの力を持っていれば……」

「あの女を守る? 貴様、なぜあの女の肩を……いや、そういえば幼い頃に養子にいった姉がいるとかあの女が言っていたか。ということは貴様があの女の……」

「私が何者であろうと、最早貴方には関係のないこと」

 

 最後まで言わせず連れていくように合図を出そうとした時、

 

「いやぁ、しまったなこれは」

 

 軽い調子の声が聞こえた。ひくっとベルダの喉が鳴って身体が硬直したのは気のせいではないだろう。

 

「……やっぱあの時、魔物に腕の一本や二本食わせとくべきだったか」

 

 瞳を覗き込むように顔を近づけたせいで、光の見えない黒い瞳と目が合ってしまった。そして追いかけられていた時の恐怖が蘇り冷や汗が止まらなくなる。

 

「……っ、っっ!!」

 

 口をパクパクとさせて、しかしなにも言わず今度こそ兵士達によって連行されていった。

 

「……あの、あの時とは一体?」

 

 しんとしてしまった場で、シュラが恐る恐る尋ねる。

 

「……だ、ダナンがこっちに来た魔物一体を脅してさっきの人を追いかけさせてたんですよね」

「け、怪我だけはさせなかったので安心してください!」

 

 双子が言うも、あれでは身体が無事であっても心に深い傷を負ってしまっただろう。

 

「……もしかして、貴方は悪人なのでは?」

「ん? 言ってなかったっけ? 善人のつもりはねぇよ?」

 

 シュラが呆れて尋ねると、いい笑顔が返ってきた。嘆息すると他四人が理解ある苦笑を浮かべている。それを見てああいつもこうなのだと理解してしまった。

 

「今回は見逃しましょう。……私情を挟むのは良くありませんが、少し胸がすっとしました」

 

 しかし色々と思うところのある相手でもあったため、そう告げることにした。

 

「んんっ。……皆様、今回は私が至らぬばかりにお手を煩わせてしまいました」

 

 シュラは咳払いをして表情を引き締めつつ五人に向き合った。

 

「ありとあらゆる可能性を予測し不測の事態にも即座に対応する。私は今回、咄嗟の判断ができなかった。それは明確に、私の落ち度です。もっともっと努力をしなければ。大切なモノを全て一人で守れるように……」

 

 彼女の独白を聞いて、最初に口を開いたのはダナンだった。

 

「傲慢だな、シュラ。人一人にできることなんて、限りがあるんだよ。ってのはさっきも言った通り」

 

 ばっさりと切り捨てる言い方を止める者も、今はいなかった。

 

「一人で全部できる、言ってるようなモノですよ、それ」

「一人でなんでもできるようになる必要なんてありませんよ!」

「一人でできないことは、皆でやればいいんだよな!」

「逆を言えば、皆で力を合わせればできないことなんてないからね」

 

 口々に告げる四人とは、多少意見が食い違うのだが。

 

「皆で……。それは考えたことがありませんでした」

 

 しかしシュラにとっては目から鱗だったようだ。四人としては、それが当然だったのでわからないということが理解できない。

 

「こいつらほどお気楽にならなくてもいいだろうが、まぁ自分じゃどうにもならないことだってある」

 

 しかし元々独りで生きてきたダナンには、彼女の気持ちが充分理解できた。……一言余計なのは兎も角。

 

「自分にできることを把握して、伸ばしながら他人を頼ること。これをしてねぇと追いつけないヤツがいるんだよ。なんでもできる、なんてない。それはまぁ、不得意のない俺達が保証する。どんなに万能でも、全てにおいて誰も彼も上回るのは不可能だ。たった一つのことに人生を捧げてる連中だっているしな。だからいいんだよ、全部をできなくたって。足りない部分を補い合うのが仲間ってヤツなんだから」

 

 ダナンらしくない真面目な回答に、グランとジータは少しだけじーんとしてしまった。ずっと彼の仲間だった四人が聞いたら涙ぐんでしまうかもしれない。

 

「……なんだよ」

 

 四人の微笑ましい空気を感じ取ったのか、ダナンは拗ねたような顔で聞いた。若干顔が赤い気がするので、これまた珍しく照れているのだろう。

 

「ふふっ。そうですか、そうなんでしょうね……」

 

 ずっとシュラの頭から外れていた言葉だったが、確かに道が開けたような気がした。

 笑う彼女の表情は、憑き物が取れたようでもある。

 

「誰かに頼ってもいい、と考えると少しだけ気が楽になったような気がします」

「いつでも力になりますよ」

「頼られると嬉しいですしね」

 

 グランとジータ、続いてビィとルリアも歓迎する。すぐには考え方を変えることはできないだろうが、それでもいざという時には周りを頼ることができる、という考えが浮かぶようになったのであれば僥倖だ。

 

「さて、じゃあ俺はそろそろこの国を出るとするかな。お前らも、多分シュラのことが気になって残ってた面もあるだろ?」

 

 ダナンが言って歩き出すのに続きながら、シュラは四人を振り返る。苦笑した様子に彼の言葉が本当だとわかり、そして“も”という言葉にダナンも同じ気持ちだったことがわかり少し居心地が悪くなった。

 

「あの、ダナン様もそうなのですね?」

「ああ。俺はまぁ、うだうだ悩んでるのとか見てると手ぇ出したくなるから」

 

 悩み事を抱えやすい、真面目な人物に前もそんなことをしていたような気がする。

 

「あとそうだ。シュラってさ、多分だけど予測できないことに弱いよな」

「うっ……!」

 

 あまりにも直球な言葉に、冷静に振る舞おうとしているシュラが呻いた。

 

「な、なぜそう思うのです……?」

「復興の指揮は、多少忙しすぎるとはいえ問題なかったからな。貴族の屋敷に攻め入るのも問題なかった。わかっていることなら対処できるってことだ。じゃあ逆に、自分のわからないことがあると予測できないから適切な対処ができない、と」

「……」

 

 確かに、と納得してしまい反論の余地すらなかった。

 

「そういうのは多分経験とか知識が物を言う部分もあるし、それを補えてるヤツに聞いてみたらどうだ? どうやれば身につくのか、って」

「……あっ。アルタイル様に、ですか?」

「ああ。明日出るって話をどっかで聞いたし、聞くなら急いだ方がいいかもな」

「そうですね……。では皆様、お先に失礼します。この度はご協力いただきありがとうございました」

 

 シュラは思い至ってなるべく早く向かうために、最後に一度腰を折って頭を下げてから足早に立ち去った。

 

「ねぇ、ダナン君」

 

 ひらひらと手を振っていたダナンに、ジータが声をかける。

 

「ん?」

「もしかしなくても、帰るつもり?」

「よくわかってるな」

 

 質問をあっさり肯定した。

 

「……ダナンってそういうとこあるよね」

「ちゃんと挨拶してから行けばいいのによぅ」

「シュラさんも残念そうにすると思います!」

「いいんだよ、別に今生の別れってわけでもねぇし。いつか会う日もあるだろ」

 

 勧誘に断られた身だが、あまり頓着していないようだった。二人勧誘しようとして失敗したのでどちらかは、と思う部分もあったが。それでも気にしていないのは、シュラが少し吹っ切れた様子だったからだろう。

 

「そっか。じゃあ、私達ともお別れだね」

「そうなるな。また今度、会った時を楽しみにしてろよ? 今度は全力で戦えるといいんだけどな」

「もちろん、次があったとしても負けないから」

「同じく」

 

 三人は互いに視線を交わした。その後、ダナンは空間に溶けるように転移していく。その姿を見送って、ザハ市内へ戻ろうとして、

 

「あっ!!!」

 

 突然ジータが大きな声を上げる。

 

「ど、どうしたんだよぅ。急に大声なんて出して……」

「ご、ごめん」

 

 三人をびっくりさせてしまったこともあり素直に謝って、思い出したことを語り始める。

 

「……ダナン君が胎動する世界っていう星晶獣と契約を交わしてたの」

「っ!? そ、それってアマルティアで戦った……?」

「そんな……!」

「あ、アイツどういうつもりなんだ……?」

「それがわかんなかったから聞こうと思ってたのに忘れたの! ……次会ったら絶対聞いておかないと。騙されてるのか、それともわかった上で契約してるのかはわからないけど。このままにしておくわけにもいかないでしょ?」

 

 ジータの神妙な言葉に残る三人も頷いた。

 

 一行は新たな課題を見つけて決意を固める。しばらくしてシュラに合流し、ダナンがいないことに苦笑した。

 

「私のやることに変わりはありません。まずはエルデニ各地の復興、あとアルタイル様がおっしゃっていた見聞を広めるということをしてみようかと思います」

 

 しかしシュラは微笑んでそう言った。彼女の言う意味がわかった四人は、また強敵が増えると顔を見合わせて笑うのだった。

 

 未だ戦争の爪痕は残っているが、それでもエルデニの未来を明るく照らすために力を尽くす者達がいる。彼がいれば今後もエルデニは安泰、そしてレオニスの方針転換によってもしかしたら良い方向に向かっていくのかもしれない。

 

 国の行く末など不明瞭なモノだが、そう願っている者も多くいるのだった――。




エピローグまで辿り着きましたが、次もあります。

ダナン視点でほぼ全編通します。
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