ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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現役騎空士の皆様、古戦場お疲れ様です。

ファーさんの天破が追加されたりレリックバスターが追加されたりしたせいか、かなり個ランが厳しい状況になってますね。
あとは十天衆限界超越の素材が勲章で手に入るからですかね。古戦場毎に取っていくんだとしたら他の勲章報酬手に入りづらくなりますし。

流石に限界超越はそろそろキャラを絞った方が良さそうですねぇ。今回もカトルを限界超越しましたけどしんどいですし。まだ五分の一なのに……。

古戦場三日目四日目も、引き続き頑張っていきましょう。


EX:『失楽園』絆

 天司長ルシフェルのいるカナンへと向かうためには天国の門を通る必要がある。

 

 ただし天国の門を行くのは今のグランサイファーでは不可能だと、ラカムとオイゲンは考えていた。

 

 だからと言ってはい諦めますとはならない、いや今の状況だとなれないというのが正しいか。

 事態は一刻を争う。

 

 今のグランサイファーは天国の門へ行く航路を突破できない。

 

 なら突破できるグランサイファーにすればいい。

 

 というのが今ラカムが取り組んでいることの概要だ。だがどこをどう改造してグランサイファーを適応、進化させるのかが問題なのである。

 

 ミカエルの獅子奮迅の活躍によって束の間の平穏が訪れ、邪魔されずに考えることはできていた。

 ラカムは夜を徹して艇の強化の設定図案を描き続けているが、その進捗は芳しくない。

 

「クソ、駄目だ……。どうしたって推進力がもたねぇ。速度で振り切るには無理がある……。だが鈍行じゃ浮力がついてこねぇ……。あぁ、畜生! 時間も資材もアイディアも足んねぇよ!」

 

 二進も三進も行かず、毒づいて乱暴に頭を掻く。

 

「調子はどうだ、ラカム? ルリアが握ったおにぎりを持ってきたぜ」

 

 そこにビィとグランが訪れる。グランが盆でおにぎりを持っていた。

 

「グラン、ビィ。あぁ、ありがとよ」

 

 ラカムは一旦手を止めて二人を迎える。

 

「やっぱり大変なのか? 天国の門とやらの航路の突破ってのは」

 

 ビィが描き捨てられた設定図案を見てラカムに尋ねた。彼は二人が持ってきたおにぎりを口にしながら、

 

「……まぁな。昨日ざっと説明した通り、カナンは所謂『到達不能区域』だ。そこに至る天国の門は、浮力が及ぶギリギリの低層にあって、理屈の通用しねぇ乱気流の中を通る。身を切る風と雨みてぇに降る岩石、僅かな舵捌きで空の底に落ち、ついでに時空が歪んでるんだとよ?」

 

 呆れを含んだ苦笑が漏れている。どこから手をつけていいかすらわからず、加えてそれら全ての対処を両立しなければならないのだ。

 

「じ、時空が歪んでる……? その話を聞く限りだと瘴流域よりヤバそうだな」

「まぁどこまでが本当か眉唾だけどな。何度も有名な騎空団が挑戦したが、誰一人として帰ってきてねぇんだよ」

「うわぁ……それで天国の門、なのかよ」

 

 ラカムの言葉にビィは顔を顰める。グランの表情も似たようなモノである。

 

「あぁ、皮肉か哀悼か。いつの間にか呼ばれてた通り名さ。自由を求めて空に漕ぎ出した人間達に、不自由を突きつける象徴ってとこだ」

「「……」」

 

 天国の門へ挑む行為の重さを改めて突きつけられ、二人は思わず押し黙ってしまう。

 

「さて、ご馳走さんっと! なんだ、ビビっちまったのか?」

 

 重い空気を払うように、必要以上に明るく言って二人を煽る。

 

「安心しろ、なんとかするさ。設計図も一応半分は出来てんだぜ?」

「ビ、ビビってなんかねぇ! なんか手伝えることとか考えてたんだよ!」

 

 ムキになって言い返すビィに、ラカムは笑顔を返した。

 

「ははは、本当かよ? まぁ他の連中のおにぎりも頼んだぜ!」

「なんだよ……まぁいいけどよ」

 

 ビィは少し不満そうにしている。だが本人がなんとかすると言っているのだから、深くは突っ込まず出て行こうとする。

 

「じゃあ行こうぜ、グラン」

「うん。ラカムさん、頑張って」

「おう」

 

 手伝いたいからと言ってアイディアが出せるわけでもない。彼らにできるのはラカムを信じることだけである。

 

「わかってねぇなぁ……。既に手伝ってんだよ。お前さん達の応援が原動力なのさ」

 

 二人が完全に部屋を出てから独りごちる。

 

「それを直接言やいいのにな」

「ラカムさんも素直じゃないよね」

 

 気を取り直して再開するかというところで、窓の方からちゃかすような声が聞こえてきて内心飛び上がった。慌てて振り返ると、そこにはにやにやしたダナンとジータがいる。資材かなにかを運んでいる途中のようだ。

 

「お、お前ら……!」

 

 独り言を聞かれていた羞恥心で顔が真っ赤になっている。

 

「『お前さん達の応援が原動力なのさ』、ねぇ。なんつうかすっかりおっさんだな」

「もう、酷いなぁ。……後でグランとビィに言っとこ」

「それが一番酷ぇよ」

「そうかなぁ? 応援が力になってるって知ったら喜ぶよきっと」

 

 好き勝手話す二人を見て、ラカムはわなわなと震えていた。

 

「……て、てめえらはさっさと仕事しろ!!」

 

 ばん、と乱暴に窓を閉め、肩で息をする。

 

「あっ……」

 

 しかしなにかを思いついたのか再び窓を開けると、

 

「さっきの、誰にも言うんじゃねぇぞ」

 

 まだ赤い顔で二人に告げ、今度こそ窓を閉めるのだった。

 

 やがて窓の外の気配がなくなってからため息を吐き、心が落ち着いてからまた作業を始める。

 

「……おっし、やるか!」

 

 気合いを入れ直したラカムは、引き続きグランサイファーを強化する方法を考えるのだった。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 港ではラカムの設計図を基に、オイゲンが作業員達に指示を出していた。

 

 資材も船大工も足りない中、被害を拡大させるものかと、各々懸命に取り組んでいるが、

 

「あぁ、その木材は船首の強化だ! 動力機関まわりは耐久力優先で頼むぜ! ……あ、おい、ちょっと待った! 羽の張り具合がマズい、設計図を見ろ!」

 

 手元の設計図を見ながら指示を出しているが、上手く事が運んでいない。

 

「って、そうか。最新版は俺の手元にしかねぇのか……」

 

 今現在、進行形でラカムが設計図を更新している最中だ。完成してから手をつけたのでは遅いため途中の設計図でも作業を始めているが、全作業員の持つ設計図を最新版に更新し続けることは難しく、時折設計図にそぐわない作業が発生してしまう。

 

「あ〜……羽は後でいい! 1班は休憩、2班は甲板を頼む!」

 

 設計図の関係と人手不足。それらをなんとかしながら回していかなければならないオイゲンの悩みは尽きない。

 

「オイゲンさ〜ん! 新しい資材が届きましたぁ!」

「おぅ、助かるぜ! どんどん運び込んで――」

「ウ、ウィッス……! ガンガン行っちゃいますよ〜……!」

 

 朗報にオイゲンが振り向いた先では、改心した元悪党のコンビが資材を運んでいた。ただ疲労が明らかに目に見えるほどで、片方は既に青い顔になりかけている。

 

「待ちな、お前は休め。顔色が真っ青だぜ」

「そうだよ、相棒。俺も言ったろ、足だってフラフラだぜ」

 

 オイゲンは無理をさせすぎないために制止する。顔色がマシな方も同意するのだが、

 

「バカヤロウ、この人手不足の時に、他の有志のパンピーに負けてられるか! 根性でフツーのヤツに劣ったら、俺達クズに残るもんはねぇんだ!」

「お、お前ってヤツは……! その心意気、ゴリゴリに感動したぜ!」

「フッ、よせよ……。じゃあ行こうぜ、限界の向こう側に――」

 

 なんだかいい感じで締めようとしていた。それを止めるのがオイゲンの役目。言っても聞かないようなら拳骨でも。

 

「痛ッ!?」

「船体の向こう側で休んでろ。休憩も仕事の内だって言ったろ」

 

 呆れた様子で告げると、拳骨を食らった元悪党は殴られた箇所を手で撫でながら他方を見やる。

 

「で、でもあの嬢ちゃんは休まず働いてますぜ……?」

 

 視線の先にいたのは、猫のぬいぐるみを脇に抱えたオーキスであった。資材運びを手伝う彼女だったが、その運搬方法はとても真似できるモノではない。ゴーレムのロイドにドラフの大男数人がかりで運ぶような資材を、軽々と持ち運ばせているからだ。

 

「ありゃあ……例外ってヤツだよ」

 

 オイゲンも若干困惑した様子である。幼い少女(実際にオーキスが運搬しているわけではないが)が休まず働いているのを見ると、休むのは気が引けるというモノだろう。まぁ、ロイドがなくても彼女はゴーレムなので肉体的疲労は大幅に軽減されているのだが。

 

「じ、じゃああそこの姉さんは……」

 

 続いてもう片方が向いた先には、ドラフの大男数人がかりで持つような資材を意気揚々を運搬するレオナの姿があった。本人は人の役に立てることが嬉しいようだが、傍から見ていると驚くばかりである。なんならオーキスの時よりも驚きが大きいかもしれない。

 レオナはナル・グランデ空域での一連の騒動の中で、星晶獣であるハクタクの力を借りた、七曜の騎士アリアが羨ましいと感じるほど膨大な魔力を持つフォリアと互角の戦いを繰り広げたのだそうだ。それはまぁ、当然ながら並み大抵の身体能力ではないだろう。

 

「あ、あれも例外ってヤツだな……」

 

 一際目立つので仕方がないとはいえ、二人の挙げた者は真の意味で一般人とは異なる存在である。オーキスは兎も角レオナはただのヒューマンなのだが、フォリア・ハクタクコンビと素で渡り合える者を“ただの”で済ませられるわけがなかった。

 

「兎に角! てめぇらはさっさと休んどけ。今倒れられちゃ、それこそ困るってもんだ」

 

 締まらなかったのでやや強めの口調で、二人に休むよう改めて告げる。

 

「「ウ、ウィッス……」」

 

 元悪党コンビはその勢いに押され、ややほっとしたように休憩へ向かうのだった。その様子を見送り本人達が無理しそうなので目の前では言わなかったが、心意気を嬉しく思い笑みを浮かべる。

 

「だがまぁ確かに、人手不足は深刻だな」

 

 表情を引き締めて今グランサイファー強化作業に加わっている全体の人数を見渡す――明らかに人数が足りない。資材運搬はある程度マシだが、なにより船大工が足りなかった。

 

「あの空の明滅が厄介だぜ。ガロンゾに救援も飛ばせねぇ……」

 

 オイゲンは未だに明滅を繰り返す空を睨むように見上げる。歴戦の操舵士なら今の空すら突破できるだろうが、星晶獣の暴れ回る現状でそんな無謀な航行をやってのける者はそう多くはない。

 

「――なんだ、オイゲン? シケた面しやがって」

 

 背後からの声を聞いた途端、高揚で鳥肌が立った。振り返れば馴染みある顔が見える。そう、彼であれば今の不可解な空であっても航行可能だ。

 

「ザンツ! この島にいたのか! ……いや、お前ほどの操舵士ならこの空でも――」

「ま、そういうこった。で、ラカムの小僧はどこだ? 騎空艇の強化で困ってるらしいじゃねぇか」

 

 歴戦、凄腕。そういった言葉がこれほど似合う男はそういない。助力を願うならこれ以上にない、強力な助っ人だ。

 

「操舵士経験だけは長ぇ、この老いぼれが知恵を貸してやるよ」

 

 にっ、と歯を見せて笑うザンツに、頼もしさを覚えて仕方がなかった。

 

「ははっ! こりゃいいぜ! っつうかよ、なんで俺達がここにいることがわかったんだ?」

 

 思いがけない光明に笑いながらザンツの肩を叩き、気になっていたことを尋ねる。

 

「そりゃあ、彼の有名な“蒼穹”の騎空団ともなれば居場所が知れ渡ってるもんよ。ってのは冗談で、あれだ。()()()()ってヤツだよ」

 

 そう言って早速ラカムの下へ行くザンツを見送りながら。

 

「……チッ。認めるのは癪だが、粋な真似しやがるぜ」

 

 娘のこともあるので心中は複雑だったが、限りなく最適に近い人選である。舌打ちしながらも、オイゲンの口元には笑みが浮かんでいた。

 

「オイゲン殿! スフィリア警備隊、全員集合しました!」

 

 そこへ、金属の擦れる音を響かせながら更なる援軍が到着する。

 

「あ? 警備隊、全員集合って……。国の許可はいいのかよ?」

 

 鎧を身に纏った物々しい集団に尋ねるが、

 

「当然でしょう! あの災厄を繰り返さぬためにも、我々にも指示を頼みます!」

 

 返ってきたのは迷いない返答だった。

 

「は、はは……はははははッ! おっしゃあ! 光明が見えてきたじゃねぇか、おい!」

 

 設計図の進捗と人手不足、二つの解消糸口が見えてきたことでオイゲンのやる気も急上昇していく。

 

 スフィリアの警備隊に指示を飛ばし、急ピッチで作業を進めていくのだった。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 街の一角ではイオとロゼッタが、『第二動力機関』に魔力を込めていた。それはラカムの発案による装置で、一般的な動力機関と違って魔法で動き、補助的な推進力を得るためのモノだった。

 

「むうぅ……! むうぅぅぅ……! たあぁぁぁッ!」

 

 イオが難しい顔で魔力を装置へ込めていくのだが、

 

「あ〜!? 魔力が逃げてっちゃった……!」

 

 上手くいっていなかった。

 

「焦っちゃダメよ、イオちゃん。この装置は繊細に扱わないと」

 

 対するロゼッタは安定して魔力を込めている。

 

「わかってるけど……どうしても力んじゃうのよね。あの災厄を思い出すと」

「そうね……次は半分、楽しいことを考えましょう? その強い感情自体は魔力に必要だもの」

「半分、楽しいこと? う〜ん、なんだろ……」

 

 ロゼッタの助言を聞いて首を捻るイオは、思いついた端から実践しようと試みる。

 

「えっと、じゃあ……サンダルフォンめ〜! 次のバーゲンセールはいつなのよ〜!?」

 

 半分半分で思い浮かべたモノをそのまま魔力に込めると、今度は上手く装置へ込めることができた。

 

「あ、スゴイ、ホントにできたぁ! ロゼッタって教えるのも上手なのね!」

 

 イオは上手くできたことが嬉しいのとで、笑顔を見せる。

 

「あら……そ、そうね、良かったわ」

 

  ロゼッタは言いつつも脈絡のない「バーゲンセール」という単語について疑問符が浮かび上がっていた。

 

「こんにちは〜。ごめんなさい、ちょっといいかしら?」

「うん? ……あ、バーゲンの!」

「あら、どうしたのかしら?」

 

 そこへ遠慮がちにドラフとエルーンの女性魔導士がやってくる。

 

「噂を聞いたの。艇の強化に魔力が必要なんだって」

「それで私達にも手伝えることがないかなぁって」

 

 二人の申し出にイオは顔を輝かせた。

 

「本当!? ありがとう、すっごく助かる!」

「うふふ、じゃあ早速お願いさせてもらうわね」

 

 人員が加わり、より効率良く魔力を込められるようになった。二人は引き続き第二動力機関へ魔力を込めるのだった。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

「よいしょ、よいしょ……!」

「ここだ、ルリア」

 

 ルリアとカタリナも準備を手伝っていた。

 

「ありがとう、次は備品の補充だが……」

「うん、任せて! 倉庫に行って必要なモノを確認してくる!」

 

 カタリナがどうしろと言う前に、ルリアが行動を始める。

 

「あっはは……空の旅にもすっかり慣れたものだな」

 

 そんな様子を見て嬉しいような、少しだけ寂しいような気持ちに駆られるカタリナの心境は、親心に近しいモノだった。

 

「あぁそれで、シェロカルテ殿。先程言っていた提案というのは?」

 

 続けて傍らのシェロカルテへ顔を向ける。

 

「はい、実はですね〜。万が一の時に備えてなんですが〜……」

 

 シェロカルテはカタリナに対し、ある提案を行うのだった。

 

 そして。

 双子の天司が依頼をしてから数日が経過したところで、一行は街の人々の協力により、グランサイファーの強化を完了させた。

 突貫工事ではあったが、各々最善の努力をした結晶が港に鎮座している。強化前とは一風変わった姿をしていた。

 

「大したモノだ。傍目には変わらないように見えるけど、磨き上げられてるね」

 

 出発準備が整ったことで双子の天司も甲板に来ていた。ハールートが興味深そうにグランサイファーを見回しながら感心する。

 

「お、わかるか? 色々と仕込んで特別仕様にしてんだ。我ながら無茶だと思ったが……本当に設計通り仕上げられるとはな」

 

 そこにはグランサイファーの強化に不可欠だったラカムの姿もあった。

 

(ノア……。俺とグランサイファーの成長、見ててくれよな)

 

 ラカムが感慨を覚えていると、すっとマールートが近寄ってくる。

 

「ウフフ♪ ラカムさん、とても嬉しそうね。少年みたいにキラキラしてるわ」

「そ、そうか? まぁ操舵士だったら誰だって嬉しいさ。理想の艇が目の前にあるんだからな」

 

 その言葉にマールートが更にずいっと近づいた。

 

「うんうん♪ 理想を語る男性って素敵だなぁ……」

「はぁ? お、おい、なんだよ? 顔が近ぇよ、ちょっと離れろ」

「ゴホン! ま~ちゃん、なにやってるの。そんなに近づいてどうする気だい?」

 

 女性慣れしていないラカムが言いながら自分から遠ざかり、ハールートが咎めるように強い咳払いをする。

 

「ん~……? あはは、ごめんなさい♪ 興味が湧いちゃうと、つい」

 

 軽く謝りながらすっとラカムから離れるマールート。

 

「別に謝ることじゃねぇが、昔っからその調子なのかよ?」

 

 言いつつもラカムは若干呆れた様子だ。ハールートが同じような顔をしているのも見るに、昔からそうなのだろう。

 

「あぁ、それより誘導灯の件だ」

 

 歓談はそれくらいにして、本題を思い出す。

 

「お前さん達が務めるってのは本気か?」

「あぁ。天国の門は僕達が先行して飛行する。天司長様の気配を探りながらね」

「任せて! 空図も羅針盤も意味がないところだし……ちょっとは役に立ちたいもの」

 

 いくら天司とはいえ天国の門で飛翔するのは困難だろうと思っての言葉だったが、二人の返答を聞いて任せることにする。

 

「わかった。かなり厳しい旅路になるが、頼んだぜ」

 

 双子の天司への確認が終わったことで、天国の門を突破する全ての準備が整った。

 ラカムは今一度準備してきたモノを思い返し、なにも抜けがないことを確認する。操舵士という騎空艇に乗る全員の命を預かる役目を担うからには当然のことだ。

 

「……グラン、ジータ。今の確認で準備は整った。後の判断は任せるぜ」

 

 ただし出航は彼が決めるモノではない。甲板に来ていた二人の団長を見つめ、黙って反応を窺う。

 

「「いこう」」

 

 二人は同時に頷いて、出航の合図を出した。

 

 団長の合図が出てから出航間近になって、見送りに出てきた者がいる。

 

「おう、もう出航か? うちの団長もいるんだ、落ちるんじゃねぇぞラカム」

「……あんたが言うと冗談に聞こえねぇんだよ」

 

 ラカムの設計図完成に貢献したザンツだ。親指を立てる彼に苦笑しつつ、「おう」と応えて親指を立て返した。

 

「ダナン君も手くらい振ったら?」

「いらないだろ、死にに行くわけでもあるまいし」

 

 甲板の縁に寄りかかる団長本人はいつもの調子であったが。

 

「よし、じゃあ出発だ! 行こう、カナンへ!!」

 

 グランが意気揚々と宣言して、一行とその他は強化されたグランサイファーに乗って天国の門へと出発するのだった。




番外編でもオリキャラ出したいなぁとは思っていたんですが、なかなか難しかったので。
今回は折角の機会ということでザンツを登場させてみました。

ゲーム本編よりも出発までの時間が若干短縮されていますが、大筋にはあまり関係ありませんね。

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