ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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『こくう、しんしん』終わるまでに番外編完結ってことは、明日までにあと二話投稿しなきゃいけないってことですよね。

まぁ一応書き終わってはいるので、更新は可能です。
ただ一日一話にしようと思っているので結局過ぎちゃいますね。

久し振りに三日連続更新になります。


EX:『失楽園』首

 カナンの神殿では、三人が発見したワッカのついた卵のようなモノ――繭が再び光り輝き、編まれた糸が解けるように消失した。

 繭が消え去った後には、サンダルフォン、ジータ、ルリア、ビィが倒れている。

 

「……む……ぅ」

 

 サンダルフォンは真っ先に気がつき、身体を起こした。

 

「ここは……カナンの神殿なのか?」

 

 辺りを見回して今いる場所を予測する。

 

「俺の身体が肉を得て戻っている……無意識に顕現を成したということか――?」

 

 なぜ先程までいた空間から出てしまっていたのか考えるも、確信は得られない。

 

「……ッ! こ、この微弱な力は……?」

 

 混乱しつつも現状の把握に努めようとしていると、カナン内に今すぐ消えてしまいそうなほど弱々しい力を感じ取った。

 

「嘘だろ、まさか……本当にアンタなのか、ルシフェル!? おい、特異点……!」

 

 ルシフェルの身になにか起きたというのは聞いていた。だが実際に力を感じ取ってその事実を体感すると動揺が胸の内に湧き上がる。床に横たわるジータ達に外傷はなかったが、声をかけても返事がない。完全に気を失っている様子だ。これではしばらくの間目を覚ますことはないだろう。

 

「……」

 

 しばらくどうするか考え込むが、

 

「反応は北か。だがどうせ戦略か計算なんだろう? 俺など行っても無意味――」

 

 自分に対する言い訳を並べ立てている最中で、自分に対して怒っていた二人の少女に目を落とした。その主張は到底今の自分が受け入れられるモノではなかったが……。

 

「フン……いいさ、今度こそ真に認めさせてやる。いつまでも、アンタの掌の上だと思うなよ……!」

 

 サンダルフォンは行動する決意をして立ち上がり、その場からルシフェルの反応がある北へと歩き出すのだった。

 

 だが意図せぬ顕現をした身体はまるで鉛のように重い。平衡感覚も定まらず、足は泥沼に浸かっているようで半ば引き摺って歩いている状態だった。

 それでもサンダルフォンは、ルシフェルの痕跡を辿って、神殿の長い回廊を進んでいた。

 

「はぁ……はぁ……。この先の扉か? もう気配を読み取る力もないな……。なんのつもりかは知らんが、随分と胡乱な真似を――ウッ!?」

 

 自分の体たらくに自嘲気味の笑みを浮かべて歩いていると、小石に足を取られ、柱に(もた)れかかってしまう。

 

「フ、フフフ……ただの小石で転がり回るとは……」

 

 姿勢を戻そうとすると、支えにしていた柱が崩れ砕けた石片に押し潰されてしまった。

 

「ぬ、うぅ……」

 

 苦悶の声を上げるが、ふと客観的に見た自分の姿が脳裏に浮かぶ。

 

「ハハ、ハ……無様だ、あまりにも……。アンタが見たかったのは、この光景か? ……クソッ!!」

 

 しかし苛立ちがやってきて、なんとか石片を押し退けた。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 ただルシフェルの痕跡を追って歩き回るだけでサンダルフォンの身体は傷つき、這う這うの体と化している。

 

「来たぞ、ルシフェル。この騒動の目的を教えてもらおうか」

 

 それでも彼は意地でルシフェルのいるであろう場所まで辿り着いた。しかし、この場所に人影は見えない。

 

「うん……? 誰もいない……? ここではなかったのか、あるいは既に移動したか……」

 

 痕跡を読み取る力もまともに機能していなかったくらいだ。サンダルフォンの感覚が間違っていた可能性もある。

 

「フン……バカバカしい。やはり関わるんじゃなかったな」

 

 必死に足を運んだのに無駄足になったとわかり鼻を鳴らす。踵を返そうとしたが、

 

『誰か……』

「……?」

 

 微かに声が聞こえたような気がして、神経を研ぎ澄ます。

 

『誰か……そこにいるのか……』

 

 聞こえた。だが耳からではなく頭の中に響いている。

 

「この微かな思念……まさかアンタなのか……?」

 

 信じられない、と思いながら頭の中に響き渡る思念の弱々しい筋道を辿っていく。

 そこにルシフェルがあった。

 

 ――ルシフェルの残骸(・・)があった。

 

「ルシフェル――」

 

 胴体から切り離された首。サンダルフォンの目にはそれが映っていた。

 

 今までに考えていたことが全て消え去り頭が真っ白になる。意地だけで動かしていた身体から力が抜け、足元が定まっていないかのような浮遊感が襲った。自分の中のなにかが根底から覆されてしまったかのようだ。

 

 彼は無意識の内に歩み寄り、震える膝を抑えて床に突き、なにか考えるより先に残骸を胸に抱いた。

 

「なぜだ……なにがあったというんだ!?」

『誰か……いるのか……?』

 

 呼びかけるが、まともな反応は返ってこない。

 

「ルシフェル! 俺だ、サンダルフォンだ!」

『私は五感を失った……。なにも見えず、なにも聞こえず……。故に方法を吟味する余裕はない』

「なんだと……? 誰がアンタに……再生は……!?」

『カナンに辿り着いた者よ。君、あるいは君達に頼みたいことがある』

 

 サンダルフォンは強く呼びかけるが、望む答えが返ってくることはなかった。

 

『サンダルフォンという者に、私の言葉を伝えてもらいたい。天司長の座と力を君に継承すると』

「……ッ!」

 

 頼み事を聞けば、サンダルフォンの名前が出てくる。それを聞いているのが本人だということを、五感を失ったルシフェルはわからない。

 

『私達は災厄の罰を受けねばならない。故に私は滅び、君は空の世界を守るために生きるのだ。生き続けて、いつか天司長としての最後の務め……『ルシファーの遺産』を破壊して欲しい』

「なにを……なにを言っている……? 災厄は俺の……どうしてアンタはいつも……!」

 

 災厄とは、サンダルフォンが起こした空の世界を滅ぼそうとした時のことを言っているのだろう。

 

「勝手に背負って勝手に決めて勝手に……死ぬな!!!」

『『ルシファーの遺産』は邪悪だ。空の世界にとって、創世以来最大の脅威となる。ルシファーから奪い、封印していたがこうなっては覚醒も近いだろう。だから、どうか……』

 

 どれだけ呼びかけても、ルシフェルがそれを聞き届けることはない。そのまま話を続けていく。

 

『全て終わった暁には、君の役割は君自身が決めるといい。空の世界は常に進化を遂げている。私達天司もまた役割を自然に還元してただの命として生きることも良いだろう』

「世界、世界、世界……! そんなことはどうでもいい! 俺に天司長の力を与えてみろ! その世界を滅茶苦茶にしてやるぞ! それが嫌なら――」

『ゥ……ア……』

「お、おい! ルシフェル!?」

 

 言葉を続けようとしたサンダルフォンだったが、ルシフェルが呻き声を上げたことで意識がそちらに向く。

 

『もう……時間が限られているようだ……』

「……ッ! どうして最期まで……世界のことより自分のことは厭わないのか! アンタ自身の言葉はないのか!? なあ!!」

『……伝言は以上だ、頼む』

「……」

 

 必死の呼びかけも、ルシフェルには通じない。歯がゆい思いを抱えてサンダルフォンが唇を噛み締めた直後、言っていた天司長の力の継承が起こり始めたのか、彼の周囲を光が舞う。

 

『アァ……どうして……どうして空は蒼いのか……』

「なに……?」

『人は幾千年も問い続けた……原理を教えても問い続ける……。私は……思った……「問い」は「願い」なのだと……。なにかに焦がれて、誰かに惹かれて……手にしては喜び、届かずには泣いて……。なぜ、どうして、どうすれば……。願い続けることが、進化の道筋なのだ……』

「問い……願い……」

 

 伝言は終わったが、ルシフェルの言葉は続く。彼が永い年月をかけて得た答えを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。

 

『私の問い……は……もう一度あの中庭で……君と珈琲を……――』

 

 ルシフェルの口にした「願い」の内容に、サンダルフォンは愕然とする。つまりルシフェルはサンダルフォンと過ごしたあの時間を――

 

「……ッ! 嘘だ……嘘でしょう……?」

 

 サンダルフォンは掠れた声で呟く。

 

「だって貴方は完璧で、皆を導いて皆に愛されて……その貴方がどうして……!?」

 

 ルシフェルの思念は途絶えてしまい、その答えが永遠に返ってくることはない。ルシフェルが完全な最期を遂げたことにより、彼が持っていた天司長の力と座は次の天司長へと継承されていく。

 サンダルフォンの猛禽類のような茶色い羽が純白の羽へと変化した。

 

「……」

 

 力が継承されたということは、ルシフェルの死を意味する。その事実に歯軋りした。

 

「俺の背に……貴方の羽は白すぎる……。ルシフェル……――」

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 場所は変わって、繭のあった場所で目を覚ました三人。いるはずのサンダルフォンの姿が見当たらず、ルリアの力で気配を辿り急いで探していた。

 

「ぜぇ……はぁ……! あ、あの扉の中にいるんだな!?」

「は、はい……! でもこの気配はなんだか……急ぎましょう、ジータ!」

「うん……!」

 

 サンダルフォンの身になにかあったのではないかと思い、神殿の回廊を走り続けている。そして辿り着いた部屋では、神々しい六枚羽が辺りを照らしていた。

 

「……」

 

 立っているのはサンダルフォンだ。

 

「サンダルフォン、さん……!?」

 

 サンダルフォンの変化と気配により、この場で起きた出来事を悟るルリア。ルシフェルの消滅。代行機能を有するサンダルフォンが、新たなる天司長として力を継承した……。ジータ達は、その超常的な現象に驚き、言葉が見つからなかった。

 すると、神殿全体が震動し始める。

 

「な、なんだぁ! 地震か!?」

「きゃあぁぁぁ!?」

 

 ジータは悲鳴を上げるルリアが転ばないように支えた。

 

「こ、これって……!? うぅ……なに、これ……この気配はなんなの……!?」

「どうした、星晶獣の気配か!?」

 

 眉を寄せるルリアの様子に、ビィが声をかける。

 

「神殿の奥になにか……無数の、でも一つに繋ぎ合わされて……言葉では言い表せない異常な……!」

「オオオォォォ!!」

「今のは声か!? おいおい、本当に不気味すぎるぜ……!」

 

 神殿に響き渡る咆哮にびくりと身体を震わせた。

 

「ジータ達! とりあえずここを脱出するぞ! 足場は平気か!?」

「わ、わわわ……!? す、凄い揺れてます! ちゃんと前に進めません……!」

「ルリアは私に掴まって」

「……」

「おい、サンダルフォン! ここを出るぞ、しっかりしろ!」

 

 脱出しようと頭を巡らす中、彼らの下に二つの影が飛んでくる。ハールートとマールートだ。

 

「ジータ、ビィ、ルリア!」

「皆さん、お怪我はありませんか? 飛行して脱出します、私達に掴まって!」

「お前達! 助かったぜ、グランサイファーは――」

 

 これで脱出できる、と喜ぶ三人を他所に、双子の天司は一緒にいるサンダルフォンを見て驚いた。

 

「なッ……! き、君はサンダルフォン!?」

「……」

「そ、その羽は……つまり天司長様はやっぱり……」

「うぅ……その……詳しい状況まではわかりませんが……」

「なんてことだ……だが、こうしてはいられない……!」

 

 ルシフェルの死が確定してしまったことを嘆く時間はない。すぐに気持ちを切り替えた。

 

「さぁ皆、脱出だ! グランサイファーと合流しよう! 急がないと黒い化け物に潰される!」

「黒い化け物だとぉ……? とりあえず、わかったぜ!」

 

 細かい確認は後にして、脱出を優先する。双子の天司に掴まり脱出するところで、未だ動きの遅いサンダルフォンはジータが手首を掴んで引っ張った。

 なんとか神殿を脱出するジータ達。

 

 だがカナンの景色は一変しており、そこには禍々しい巨大な化け物がいた。

 

「オオオォォォ!!」

 

 雲を裂き岩塊を砕き、目に映る全てを破壊するように、化け物は咆哮を轟かせる。

 

 真っ黒な全身は人型のようでありながら、翼と角や尻尾を生やしていた。咆哮しているが顔に口はついておらず赤い目だけがついている。

 

「はああぁぁぁ!!」

 

 そんな黒い化け物に突っ込んでいく影が一つ。白いマントに黒い鎧を纏った【十天を統べし者】のグランだ。拳を構えて突っ込んでいくグランに気づいた化け物も、拳に黒いオーラを纏って迎撃する。両者の拳が激突して大気が震え、しかし拮抗した時間は僅か。勢いをつけていたグランの方が吹っ飛ばされる。

 

「散れッ!!」

 

 空中に立ち、ブルトガングを構えた紺色のローブを着込み背後に黒い人のような星晶獣を顕現させた【十の願いに応えし者】のダナンが、思い切り剣を振るう。空間に叩きつけたブルトガングが亀裂を生み破砕する。闇の奔流が黒い化け物を襲うのだが、黒い化け物は黒い球体を放つとダナンが放った奔流を押し返した。

 

「クソッ!」

 

 敵わないと見て回避しようとするも遅く、直撃を食らって吹き飛ばされてしまう。だが途中で空中に留まっているグランの近くへと転移した。

 

「注意を引きつけるにしちゃ分が悪いか……一旦戻るぞ」

 

 ダナンは双子の天司が運んでいるジータ達を指して告げ、グランと共にグランサイファーへと転移する。黒い化け物にとっては敵と見なしていないのか、追ってくることはなくカナンの破壊を続行していた。

 双子の天司達は黒い化け物に近づかないよう、グランサイファーへと向かうのだった。




あんまり二次創作っぽさが出せないなぁとは思いつつ、ここはサンダルフォンとルシフェル以外いらないんじゃないかな、とも思う複雑なところ。
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