ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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『こくう、しんしん』は終わってしまいましたが更新は続きます。

※昨日も更新しています。


EX:『失楽園』罰

 黒い怪物は無尽蔵の黒き光を放ち、カナンと天国の門は崩壊寸前だった。

 それは無秩序な破壊だが、あるいは己を閉塞させる空間を裂き、広い空に出るための本能にも見えた。

 

 そんな中ジータ達は、野放図に放たれる黒き光を搔い潜り、グランサイファーと合流を果たす。だが数々の障害を乗り越えたその艇は、航行するのもやっとの状態だった。

 

「はぁ……。まぁ、滅茶苦茶な状況ではあるが、お前達の顔が見られて安心したぜ」

 

 甲板に降り立ったジータ達を見て、ラカムがほっとしたような笑みを浮かべる。

 

「あぁ! 凄かったんだぜ、双子の嬢ちゃん達! あの怪物の目を掻い潜って来たんだ」

「ありがとう、二人共。君達の尽力がなければルリア達は……」

「はぁ……はぁ……。僕達こそ感謝を。依頼の発端は天司の問題だろう? それに、そこの二人が注意を引いてくれたおかげもある」

「その通りね。予想できなかった状況だけど、問題のエーテルは安定したし」

 

 ハールートは黒い化け物の注意を引くために交戦したグランとダナンを見て、マールートはサンダルフォンを向く。彼は俯き気味に佇んでいてなにも言わなかった。

 

「おっ? なんか右頬腫れてねぇか? やっぱジータに平手打ちでも食らったか?」

「えっ!? あ、うん……そんなとこ……」

 

 茶化すようなダナンの言葉に、ジータが目を逸らして答えた。実際はグーで殴ったとか言えない。

 

「なんなのよ、もう……。ルシフェルさんのことはわかるけど、ちょっとはしゃきっとしなさいよ!」

「今はそっとしておきましょう。それより、あの黒い怪物はなに? 星晶獣と言えば星晶獣のようだけど」

 

 注意するイオを窘め、ロゼッタは話題を暴れ回る怪物へと移す。

 

「多分……あの怪物こそ『ルシファーの遺産』だろう。天国の門で見た光景が事実であれば、原初の星晶獣の叛乱を鎮圧した際に、ルシファーが回収したコアの複合体だ」

「無数のコアと無数の自我を、無理につなぎ合わされてるみたいね。その結果あの怪物自体に、固有の意思はないみたい。ただ力を凝縮させた虚ろな存在よ」

「悪趣味が過ぎるぜ、おい……。今は天国の門が柵になって塞いでるが、カナンを飛び出すのは時間の問題だな」

「オイラ、本能でわかるぜ。あいつは、今まで戦ってきたどんなヤツよりもヤベェ……。なんつーか、胸騒ぎがするんだ。放っといたら、空でも神様でも殺しちまいそうっつーか……」

「俺とグランで挑んで押されるくらいだしな」

「うん。相当に強いよ」

「止めましょう! なんとかして方法を考えないと――」

 

 この中で最も力が強いグランでも力負けするパワーに、ダナンが押し負けた技。どれを取っても個々の力で敵う相手ではなさそうだった。

 

「オオオォォォ!!」

 

 咆哮を上げる怪物を、一行とは別の場所から見ている者がいた。黒い外套を着込みフードで顔を隠した金髪に褐色の肌をした男と、ベリアルである。

 

「フッ……。虚ろな無数の自我、無垢なる純然たる憎悪、苦痛、憤怒。神々の思惑に背きし者。奴の魂の幻影、破壊衝動の化身。正に『アバター』足り得る」

「やっと覚醒したねえ、バブさん。でもちょっと遅いんじゃないの」

「予想以上の精神力だった。まさか天司長の力を継承する迄とは……彼奴の思惟は底が知れぬ。だが後継は只の代替品だ。あの無能に力は使いこなせぬだろう」

「ハハハ、そりゃそうだろう。継承自体、正常に機能してるかどうか」

「で、何故ここに特異点がいる? どれだけ僅かでも可能性の芽は摘めと言ったはずだが」

「あ~……悪かったよ。四大天司共にバレないよう、ずっと力を伏せてたもんでね。天司長が唾つけてただけはある。まぁ、ちょっとはお邪魔がいた方が逆に燃えるってもんだろ? どちらにせよ目的には近づいたんだ。空の民に倣って祝杯でもどうだい?」

「フン」

 

 黒衣の男とベリアルがいることは一行からは見えていなかったが、

 

「しかも、あの怪物だけじゃねぇぞ。あれを見ろ」

 

 知覚範囲の広いダナンが二人がいる方を示した。

 

「変態堕天司じゃねぇか! 横にいるヤツは誰だ……?」

「誰かは知らねぇが、間違いねぇ。あいつがルシフェルを殺ったヤツだ」

「……」

「うん? あ、あの、サンダルフォンさん? 今、なにか言いましたか?」

 

 黒衣の男とベリアルが話している間にも、応急処置で飛んでいる状態のグランサイファーはいつ落ちてもおかしくない状況だった。

 その中で、ルリアは微かにサンダルフォンがなにかを言った気がして尋ねる。しかし答えは返ってこない。

 

 そのサンダルフォンの右頬を、ハールートの平手打ちが襲った。

 

「いい加減にするんだ! 君には君の事情があるんだろうけど、協力もせず呆けてなにが新天司長だ!」

「継承した力が真に覚醒すれば、この状況も変えられるはずよ。複雑だけれど貴方の協力も必要なの!

 

 なにもしないサンダルフォンに、双子が詰め寄ろうとする。そこへルリアが割り込んだ。

 

「ま、待って! 今は責めないであげてもらえませんか? 大変な人の最期を見て心に傷を――」

「……祈っていたんだ」

 

 サンダルフォンが急に喋ったことでややぎょっとする。

 

「うおっ!? いきなり喋ってビックリしたぜ……」

「祈ってた……?」

「冥福を。その魂の行き先を、俺なりに」

 

 サンダルフォンはなにかを探るように空を眺め、ある一点――ダナンが示したベリアルと黒衣の男がいる方に目を留めて睨みつけた。

 

「貴様等か……」

「お、おい、サンダルフォン! なんだぁ、剣を抜いてたぞ!?」

「野郎、一人で行きやがったな」

 

 グランサイファーの甲板からサンダルフォンの姿が消える。黒衣の男の背後に転移していた。

 

「ぬッ……!?」

 

 男の脇腹を剣が貫いており、その切っ先はベリアルを映していた。

 

「ちょ、おいおい……」

「フン……ルシフェルの力、さぞ心地良かろう」

 

 だが貫かれたにしては、余裕を崩さない。

 

「口を慎め、汚らわしい。あの御方の名を語るな。終わらせてやる、なにもかも――」

 

 刺々しい口調で、サンダルフォンは告げた。そして次にベリアルに襲いかかる。

 

「あぁクソ。鬱陶しいヤツだ……! おい、バブさん! いつまで休んでるつもりだよ!?」

 

 ベリアルが声をかけるも、既に黒衣の男の姿はなかった。

 

「あ? オイどこに行ったんだ、あのおっさん! ま~た空の底に落ちたのかよ……」

「安心しろ。貴様も後を追わせてやる」

「ハハハ、イキリ立ってるねえ。仇だの復讐だのってプレイに大興奮だ。だがどんどん鈍ってるぜ、キミの動き。慣れない力に自分自身が消耗している」

「そうか。では尽きる前に終わらせてやる」

「いいね、尽きた後に始めてやる。従順になるまで調教してやるよ。あぁ、そうだ。参考までに聞きたいんだがキミって、ヴァージン?」

「はあぁぁぁ!!」

「ハハハハハッ!!」

 

 こんな状況下であっても変態堕天司は変わらず、サンダルフォンとベリアルが激突する――その寸前、両者の間に突如として黒き光が迸った。視界が一瞬の暗黒に染まり、サンダルフォンは高速で回避を図る。

 

「オオオォォォ!」

 

 割り込んできたのは暴れ回っていた黒い化け物、黒衣の男がアバターと呼んでいた存在だった。

 

「チィッ……『ルシファーの遺産』か……!」

 

 舌打ちしつつ、ベリアルの姿を探すがどこにもない。

 

「ヤツは? ベリアルはどこに消えた? 黒き光に巻き込まれたか、あるいは……」

 

 そう簡単に死ぬような相手ではないだろう。だが隠れてしまったらしくどこにいるのかはわからない。

 

「貴様も、あの二人組も忌々しい過去の亡霊のようなモノ。今のこの世界には不要な存在。約束したんだ。貴様を葬り、空の脅威を排除することを。この六枚羽に懸けて……今、ここで終わらせてやる」

 

 サンダルフォンはアバターと対峙し、滅ぼすべく天司長としての力を使う。

 

「パラダイス……ロスト――!!!」

 

 純白の六枚羽から光が放たれ、アバターを浄化した。致命傷を与えたことでアバターの身体が崩れ去る。

 

「はぁ……はぁ……! ウッ!?」

 

 だが天司長としての力が尽き、その羽が消えて落下してしまう。空の底まで真っ逆さまかと思ったが、途中で誰かの腕に抱き留められた。

 

「よっと……! ギリギリ間に合ったぜ!」

 

 割り込んだのはグランサイファーだった。落下してくるサンダルフォンを受け止めたグランとジータは、彼の身体をゆっくりと下ろす。

 

「む……? まさか、君達……」

「おうよ! 船首も船底もガタガタ言ってるぜ。あんまり無茶させるなってよ!」

「でもやりましたね! あの怪物を倒しちゃいました!」

「天司長様の御業だよ。でも、まぁ……見事だった」

「ウフフ、そうね♪ でもあの力は完全に消えてしまったの?」

「時間が経てば戻るのでは。確証はないが、そういうモノ――」

 

 アバターを倒したことを喜ぶ一行だったが、途中でサンダルフォンは言葉を止める。

 

「待てッ! この気配は……まだ終わっていない!」

「ああ、消し飛んでねぇな」

 

 サンダルフォンの言葉に、知覚に優れたダナンが同意する。振り返った先では、崩れたはずのアバターが再生していた。

 

「ウウウウッ!!」

 

 アバターは唸り声を上げて右手を上に突き出す。そのまま掌の前に赤黒い球体を作り出した。

 

「なんだと……!? マズい、この艇を狙っているぞ!」

「で、でも、なんなの……? こっちを睨んだまま止まってるけど……」

「力を溜め込んでるみたいね! 物凄い力よ、複数の島を滅失できるほどの……!」

「ダナン君、受けられないの!?」

「無理だな。消滅させられるんならさっきもやってる」

「全速前進だ、ラカム! なんとしてでも回避しろぉ!」

「任せろ! こうなりゃあ可能性に賭けるしかねぇ!」

 

 相談している間にもアバターはどんどん力を溜めていく。球体がアバターの巨体と同じほどに大きくなっている。

 

「狙われているのは俺だ……! 君達は前に進め、俺は逆の方向に――」

「うっせぇ、黙って力を蓄えてろ! 空の民の力ってもんを見せてやるよ!」

 

 サンダルフォンの提案を、ラカムが一蹴する。

 

「空の民の力……?」

「あぁそうだ! お前が思ってるより俺達はなぁ――」

 

 応えたラカムの脳裏には、ここに来る前に協力してくれた区長とのやり取りが蘇っていた。

 

『ラカム君。動力機関の強化案だが、こういうのはどうかね?』

『おぉ、こりゃあ凄ぇ! だが資材の調達が間に合わねぇかも……』

『私の乗ってきた艇を使おう。解体して君達の艇に搭載するんだ』

『い、いいのかよ? すまねぇ、助かるぜ!』

 

 ラカムの言葉を受けてオイゲンも同意する。

 

「ははは、違いねぇ! 空の民はいつだって、無茶を可能にしてきたんだ――」

 

 オイゲンが思い出したのは元悪党コンビのやり取りだ。

 

『お、おい……またフラフラしてるぜ、相棒? やっぱ一旦休もう』

『もう時間がねぇ……ここの修繕が終わるまでは……』

『で、でもよぉ……』

『ここが終わるまでだ! 散々世の中に突っ張ってきてよ……自分の弱気に突っ張らねぇでどうする!』

 

 次に口を開いたのはイオだった。

 

「そうよ! 一人一人は弱いかもしれないけど、皆で頑張れば怪物にだって――」

 

 動力機関に魔力を込める作業を手伝ってくれた魔導士とのやり取りを思い返す。

 

『すぅ……すぅ……。あ、私ったら……! ごめんなさい、居眠りしてたみたい』

『うぅん、仕方ないわよ。魔力を込めるのは神経を使うし、あんまり眠れてないんでしょ?』

『まぁ……でも! 災厄の時を思い出して頑張るわ! 絶対に被害を拡大させないんだから!』

 

 ここにいる者の大半が、彼らと同じ気持ちだった。

 

「皆を信じろ、サンダルフォン。後で必ず君の力が必要になる」

 

 最後にカタリナがサンダルフォンへと告げる。彼は一先ず飛び立つような真似をしなくなった。

 

「来るわ……! あの黒き光が放たれる!」

「ウオオオオオッ!!!」

 

 ロゼッタが言った直後、アバターは強大な球体をグランサイファーの方へと放り投げる。

 

「奔れッッッ! グランサイファーぁぁぁ!!!」

 

 舵を握るラカムの叫びが通じたのか。

 甲板が軋み、帆が唸り、鋼鉄は折れて、木材も飛び散り、動力機関には火花が散っていた。だが、それでも……グランサイファーは驚異的な速度で、黒き光の軌道を奔り抜けたのだった。

 

「やったぜ! 流石オイラ達の自慢の艇だぜ!」

「はい、凄いです……! ありがとう、グランサイファー!」

 

 危機を潜り抜けた一行の口元には笑みが浮かんでいる。

 

「空の力、か……」

 

 サンダルフォンは目の当たりにした光景に、ルシフェルが最期に言っていた言葉が浮かんできた。

 

 アバターの攻撃を回避したまま旋回するグランサイファーの進路はアバターに向けられる。

 

「いい風が吹いてる。このままヤツに向かって直進するぞ!」

「あぁ! 次こそアイツをとっちめてやろうぜ!」

「君等も戦うと言うのか? その疲弊した身体で、黒き怪物と……」

「もちろんです! また一人でやろうとしないでくださいね?」

「だが……」

「疲弊した身体なんて、それこそこっちのセリフだな。新米天司長?」

「そうだよ。次無茶したら殴るだけじゃ済まさないからね」

「殴っ――んんっ。えっと、さっき戦った感じ心許ないし一緒に戦ってくれないかな?」

「君と私達の関係を考えれば、確かに複雑かもしれないが……今は目的を共にしている。それに、お互いの力を必要としているはずだろう?」

「あたし達だって複雑だけど、今のあんたはちょっとは信じられる。それに、ここを切り抜けなきゃ全部おしまいよ! だから後で色々考えましょ!」

「さぁ、急ぎましょう。普通の星晶獣より再生が早いみたい。貴方の与えた致命傷が無駄になるわ」

「……疲れてるなら休んでる?」

「事情はわかりませんけど、微力ながらお手伝いしますから一緒に戦いましょう」

「災厄で一番の激戦区になった、アウギュステの攻防は忘れもしねぇ。あの時の根性を見せてみろ。だが今度はオレ達の隣でよ?」

 

 グランサイファーに乗っている全員、かつて災厄を起こしたサンダルフォンと共闘することに異論はないようだった。

 

「…………ならば。特異点……力を貸して欲しい。君達は世界を、俺は約束を守るために」

 

 遂に口にしたサンダルフォンに、全員が揃って頷く。

 

「では……やるぞ! 『ルシファーの遺産』を破壊する!」

「ウオオオオッ!!」

 

 迫るグランサイファーを睨み、咆哮するアバター。

 

「ルシフェル様……。俺に、俺達に力を!」

 

 サンダルフォンは再び、その背中に天司長たる純白の六枚羽を生やす。そしてグランサイファーと共にアバターへと突っ込んだ。

 

「足場が欲しいヤツは俺に任せろ。俺が援護に回ってやる。足引っ張るなよ、新米天司長」

「その呼び方はやめろ!」

「ほら行くよ、サンダルフォン。モタモタしてると私達で倒しちゃうよ?」

「あれ? ジータってサンダルフォンのこと呼び捨てしてたっけ?」

「こんな捻くれ者、呼び捨てで充分――って、今はそんなことどうでもいいでしょ」

 

 【十の願いに応えし者】状態のダナンが本来艇に留まらないといけない近接攻撃手段しか持たない者達に告げる。サンダルフォンはツッコんでいる中、【十天を統べし者】となったグランとジータが空中へ躊躇なく飛び出した。

 ダナンが足場を創ってくれると信頼しているからの迷いのなさである。

 

「……ダナン、私も行ってくる」

「ああ」

「私も行ってくるね。ちょっと慣れないけど、援護お願い」

「任せろ」

 

 オーキスがロイドを連れて空中に身を出す。レオナも参戦するようだが、空中に身を投げるのはやはり怖いのか艇から恐る恐る一歩を踏み出し、地面が創られて足場になったことにほっとしていた。顔を上げてアバターを見据え駆け出す。

 

「あんたは行かないのか?」

「ああ。いざという時にグランサイファーを守れる者がいた方がいいだろう」

 

 ダナンは艇に残るらしいカタリナに尋ねたが、攻撃より防御に重きを置いた彼女の戦い方に合うのはそちらなのだろう。これ以上グランサイファーがボロボロになってしまうのはマズいため、ダナンも意識を援護に向けられることもあってそれで良しとした。

 

 残ったオイゲン、イオ、ロゼッタが遠距離攻撃で援護をして、ラカムはグランサイファーを操縦する。

 

 ダナンが空中に足場を創ったことで、一行はアバターと壮絶な空中戦を繰り広げていた。

 

「はああぁぁぁ!!」

 

 純白の軌跡を描きながら一際速く飛行するサンダルフォンが、擦れ違い様にアバターの左腕と左翼を切り裂く。片翼を失ってバランスを崩したアバターに、他の者達が次々と攻撃を仕かけてダメージを与えていく。

 

「ふっ! ……えっ?」

 

 しかしレオナが振るった薙刀は、再生したアバターの左腕に防がれてしまう。そのまま力任せに押し返され、運悪く誰もいない方向へ飛んでいった。

 

「っと」

 

 しかし、転移したダナンがレオナの身体を受け止める。

 

「あ、ありがとう、ダナン君」

「いや、今のは俺が創った足場の向きが悪かった」

「ううん、ごめんね」

 

 レオナは身体を起こして、足場に立ち上がった。

 

「……慣れないだろうが、俺が足場を創ってやる。だから信じろ」

「なんだか、頼もしいね」

「そりゃ曲がりなりにも団長だからな」

「うん、そうだね……うん。もう、大丈夫。ダナン君を信じて、命を預けるから」

「おう」

 

 レオナの表情が引き締まったのを見て、もう大丈夫かと思い転移でグランサイファーへと戻る。

 ダナンが去った後、レオナは深呼吸を一つすると力強く駆け出した。先ほどとは思い切りの良さが違う。

 

 空中戦を繰り広げているアバターへ一直線に向かうと、気づいたアバターに拳を放たれた。グランやジータですら敵わない力にレオナが敵うはずもない。だが彼女の心に恐れはなかった。

 

 レオナは薙刀の切っ先でアバターの拳を受け流し軌道を逸らすと、身を翻した勢いを利用して薙刀を横に一閃する。先ほどは斬れなかった腕が、切断された。更に斬った腕を足場にして跳び上がると、刃を真上から振り下ろしてアバターの身体に一直線の傷をつける。アバターからは少し下がった場所に出来た足場に着地した。

 

 打って変わった姿に大半の者は驚くが、これが本来のレオナの強さである。

 “獅子”と謳われた戦い方と気迫。そして日頃七曜の騎士であるアリアと鍛錬することでどんどんその強さは増していた。

 

 とはいえアバターの再生能力ではこの程度の傷、すぐに治ってしまう。

 

 しかし本来の戦い方に戻ったレオナが参戦したことで、アバターと互角以上に渡り合っていた。

 

「オオオオッッ!!!」

 

 だが無差別攻撃を放ち五人を近づけさせず、更に頭上に右手を挙げて球体を形成する。アバターの視線はグランサイファーを捉えていた。

 

「させるか……!」

 

 サンダルフォンが溜めを中断させようとするが、その前にアバターは球体を放つ。先ほどとまではいかないものの、島一つを消し飛ばすのに充分な破壊力を持ったエネルギーだった。

 

「私ではあれを受けられない……! ラカム!」

「わかってるよ! だが、クソッ……!!」

 

 防御に優れたカタリナであっても防ぐのは難しい。また回避するしかないが、それでも今のグランサイファーは厳しかった。

 

「なぁ、ワールド。解析(・・)は終わってるか?」

『問題ない。既に完了している』

 

 ダナンの声に、姿を消しているワールドが応える。

 

「なに……?」

「俺に任せろ。もうさっきみたいに、受けられねぇとは言わねぇよ。なぁ、ワールド!」

 

 ダナンが右手を掲げる。彼の背後に黒い人型の星晶獣、ワールドが顕現した。ワールドは後ろからダナンの手の上ほどに合わせて右手を向ける。

 そして、二人の掌の間に赤黒い球体が形成されていく。

 

「そ、それはヤツの……!?」

「同じモノなら、相殺できねぇはずはねぇだろ!!」

 

 驚愕する一行を無視して、ダナンは球体を迫る球体に向けて放った。激突する全く同じ力に大気が震え、どちらが押し負けることもなく空中で爆発する。衝撃がグランサイファーを襲って船体が軋むが、落ちることはなかった。

 代わりに技をパクられたからか、攻撃を防がれたからか、アバターが大きく咆哮する。

 

 だが、それが隙となる。

 

「オーキスさん、合わせてください!!」

「……了解」

「獅子烈爪斬ッ!!!」

「……エンドブリンガー」

 

 アバターに出来た隙を見逃さず、レオナとオーキスの波状攻撃がアバターの身体を引き裂く。

 

「オォ……!!」

「再生させるわけないでしょ……!!」

「ここで、決めるッ!!」

「「レギンレイヴ・天星!!!」」

 

 再生しようとするアバターに、双子の奥義が叩き込まれた。それでも辛うじて抜け出し、再生の時間を稼ごうと飛び去る――だが途中で視えない壁にぶつかる。

 

「四大天司は来れないって言うけど、その力ってあった方がいいと思うんだよな」

 

 力任せに拳やエネルギーを叩きつけて壁を破壊しようとするが、八方を囲まれていて抜け出すことができない。

 不敵に笑うダナンの言葉に応じて、遥か上空に赤、青、茶、緑の四色の帯が伸びてきた。

 

「この力は四大天司様の……!?」

「まさか……!」

「ああ。出発してからずっと、上空にあいつらの力を届けやすい通り道を創っておいたんだよ」

 

 双子の天司が驚く中、四つの帯がアバターの真上で収束する。アバターはなんとか自身を閉じ込める壁を砕いたが。

 

「遅ぇよ。消し飛びな!!」

 

 ダナンの合図と共に四色の混じった極光がアバターへと降り注いだ。並みの星晶獣なら跡形もなく消し飛んで当然の破壊力を持っていたはずだが、それでもアバターが頭と首だけで残っていた。

 

「サンダルフォン!!」

「わかっている! これで終わりだ!!」

 

 しぶといアバターに対して、サンダルフォンが射程圏内に移動し右手を掲げる。掌に神々しい光を集束させていく。

 

「オオオオッ!!」

 

 だがアバターも再生が間に合わないと見てか、手足もない状態で黒い力を溜めて放った。

 

「パラダイスロスト――ッ!!!」

 

 サンダルフォンも天司長としての御業を放ち、黒い球体と激突する。拮抗するかに思えたのは一瞬だけで、アバターの放った球体は消し飛び神々しい光が僅かに残ったアバターの残滓を消滅させるのだった。




明日も夜に更新する予定です。
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