グラブルのモチベも影響していて、ハロウィンフロレンスの性能周年まで知らなかったくらい……。
周年経てぼちぼちモチベ回復してきたので更新します。
まぁ、オリ要素弱めのターンなんですけどね。
ナルメアは強い。今でこそ【十の願いに応えし者】のおかげでなんとか上回っているが、『ジョブ』の力なしにあそこまでの高みに至るのはなかなか難しいと思う。……俺が『ジョブ』を捨てるってのはあのクソ親父の思惑通りだから嫌だし、別の道を行きたいが。
そういう個人的な感情は置いておいて。
『黒闇』の騎空団は当然として、『蒼穹』にも凄腕の強者は多い。ナルメアが仲のいいオクトーやフュンフを擁する十天衆もそうだ。『黒闇』には七曜の騎士がいる。刀使いを集めた六刃羅もいる。特にアネンサはナルメアを慕っているようだし、よく一緒に鍛錬しているようだ。ナルメアが扱う刀も大きいが、アネンサの使う刀はもっと大きい。そこから学べることも多いだろうとは思う。
なんにせよ、今ナルメアの強さを引き上げる環境は整っているはずだ。
それでも珍しく俺に鍛錬を頼んできたということは、おそらく他に用があるのだろう。一応【剣豪】で構えているが、ナルメアに限らず強さというのは更新されていくモノだ。そろそろ【剣豪】ぐらいでは抑え切れなくなっているだろうか。そもそもが強い連中なので、【十の願いに応えし者】以外で勝つのは難しいかもしれない。総合的な強さとしてはグランやジータと同じくらいだと思うが、武力という点では及ばないと思っている。匹敵する対応力があるからこその互角だと思う。
十賢者は兎も角、十天衆やナルメアは武力に秀でた者達だ。七曜の騎士もそう。反して俺は武力に特化した『ジョブ』、スタイルが最強ではない。
向き不向きの問題ではあるが、ともあれ【剣豪】で彼女に勝つのは難しいだろうな、と思っていた。素の力の成長が『ジョブ』を使用した時に倍されるので、結果的な強さはそれ以上に変わってくるはずだが、それでも。
気を引き締めて得物を構える俺とナルメアの間を冷たい風が通り抜けた。
集中して機を待つ。
ひらり、と蝶が舞ったかと思うとナルメアの姿が消えた。いや、消えたと思うほどの速度で移動したのだ。俺は視界の端で捉えた彼女に向けて刀を構える。
ナルメアは振るった刃を、しかし俺の刀には当てなかった。触れる寸前で止められる。
ただ、寸止めであっても暴風を巻き起こした。鋭い風で吹き飛ばされないよう耐えながら目を細める。
暴風は俺だけでなく周囲にも影響を与え、最も大きかったのは上空の雲が消え去ったことだろう。
「お見事」
「こっちの台詞だろ」
武器を引いて微笑むナルメアに、『ジョブ』を解いて返した。……言ってしまえば、俺はただ突っ立っていただけだ。
「ふふふ、偶然だよ。寸止めだけで雲が吹き飛ぶなんてことあるわけないよ」
笑って言うが、実際に彼女が空を揺蕩う雲を両断したところを目撃したことがあるので偶然とは思えない。それを踏まえなくとも雲を吹き飛ばしたのはナルメアだと断言できる。それくらいの実力が備わっていることを知っていた。
しかし。
「なんか悩みでもあるのか?」
今の一撃にはナルメアの迷いが見えた。
「あはは……。お姉さんが悩んでること、わかっちゃった……?」
ナルメアは眉尻を下げて苦笑する。剣を交えなくても、珍しいことだからなにかあるだろうとは思っていたが。
彼女が語り出すまで待っていると、ぽつりぽつりと話し始めた。
「お姉さんね、ダナンちゃん達のおかげで自分の強さに気がつけたわ。でも、それだけ。その先が、見えないの。更なる高みへ昇る方法が、ザンバと会ってからわからなくなっちゃって……」
色々な強者は周りにいる。ただ、自分がなにを目標にすればいいのかわからなくなってしまっているようだ。
「どうしたら……お姉さんもっと強くなれるかな?」
まだ強さを追い求め続けているようだ。団長としては団員が強くなることは大歓迎、そうでなくとも力になりたいとは思った。
ただ強さを求めるとなると……俺の場合はどうにも当て嵌まらないことも多い気がするが。大体の場合は『ジョブ』に詳しい変な老婆のいるザンクティンゼルに行くことが多いか。俺は別のところで育ったが、ルーツの原点はそこにある。
だから、原点がある場所に行く、または帰ることを自分がすると伝えた。
「俺の場合は育った場所じゃないが、育った場所なんかの所謂原点がある場所ならなにか得られることがあるかもな」
「私の育った場所……」
生まれも育ちもよくわからない俺と違って、ナルメアには故郷がある。帰郷心が一切ない風来坊みたいな自分なので、月並みな言葉は伝えられた。
しかし、ナルメアはバツが悪そうに俯いてしまう。
「でも……家を飛び出してからもう一度も帰ってないし……。今更、会いに行くなんて……」
家出みたいな感じで飛び出して、顔を合わせるのが気まずいようだ。俺はできることなら肉親の顔なんて二度と見たくはないが、自分が会いたくないのでなければ行った方がいい。
「それなら、尚更だ。家族に会えるんなら会っておいた方がいいんじゃないか」
会いたい気持ちはあるようなので、後押しする言葉を贈る。
「そ、そうかな……。じゃあ、えっと……ダナンちゃんも一緒についてきてくれるかな……?」
一人で行くのは不安なのだろう。……ご両親への挨拶とかじゃないよな?
「当たり前だろ」
俺が頷くと、ナルメアが抱き着いてきた。
「ダナンちゃん、ダナンちゃん! ありがとう、とっても心強いよ!」
とても嬉しそうにするのでこっちまで嬉しくなってくる。
とはいえいつまでもこうしているわけにはいかないので、甘えるナルメアを宥めて彼女と共に彼女の実家へと向かうことにした。
他の団員にはちゃんと断りを入れておいたが、ついてきたがったヤツらは一部の者に押し留めてもらった。流石に大勢で押しかけるのは良くない。
◇◆◇◆◇◆
ナルメアの道案内に従って、彼女の実家がある島へ辿り着く。
世間話を挟みながらついていくと、古風な屋敷の前で足を止めた。どうやらここのようだ。
ナルメアは緊張した面持ちで長屋門に手をかける。
「……」
一呼吸置いてから、長屋門をゆっくりと押し開いた。
開かれた門に気づいて、玄関先で軒先の花に水をあげていた女性が顔を上げる。ナルメアを見て驚き、手に持った桶を落としていた。入っていた水が地面に広がっていく。
女性は見た目の年齢がナルメアとそう変わらないように見える。ただドラフの女性はヒューマン視点だと年齢差がわかりづらいので、姉か母か悩むところではあった。それくらいナルメアに似た容姿の雰囲気を感じる。
「わっ……そんな……ウソ……?」
女性が目を丸くして驚いた声を上げたからか、家からドラフの男性が姿を現した。ドラフ特有の長身で、ただドラフにしては痩躯と言える身体つきをしている。顔には右目にかかる大きな傷跡があった。
「どうした、ラルナ」
男性も女性と同じく、大きく目を開いてナルメアを見つめた。
「……帰ってきたか」
「その……えっと、久し振り……お父さん、お母さん」
男性に言われてナルメアの方からもおずおずと挨拶をする。やはりと言うか、この二人がナルメアのご両親のようだ。流石に姉ではなかったらしい。
「久し振り、なんてモノじゃない! もう、貴方が去って何年経つと……ああ、そんなこともうどうでもいいわ!」
久し振りに帰ってきた娘を見て、母親は感情が追いついていない様子だった。それでもナルメアを抱き締めて、懐かしさの余り涙を浮かべる。
「おかえりなさい。よく帰ってきたわね……」
「お母さん……」
母の言葉に、ナルメア自身もほっとしていた。どう対応されるか不安だったのだろう。
「憧憬の狂気の影に溺れ、修羅に堕ちたと諦めていた。だが……」
父親は声をかけて、無骨な顔を少しだけ和らげる。
「久方振りだ、ああ……。本当に久方振りに……お前の顔が見られた」
「お父さん……」
結構厳つい見た目をしているが、優しい父のようだ。
親子の温かな再会を見守っていると、不意に彼が俺の方を向いた。
「君か」
ナルメアの変化のことを言っているのだろう。
「己はガムシラ。妻の名はラルナと言う」
「ダナンです」
軽く会釈してから名を告げた。
「君なのだな。娘を修羅から人に戻してくれたのは。礼を言わねば」
「ダナンさん……本当に、ありがとう」
娘を抱き締めたままの母も一緒に礼を言ってくれる。……まぁ、少しでも力になれてたんならいいんだけどな。
それからラルナさんはナルメアを放して尋ねる。
「でも、またどうして急に? ……私達の顔が見たくなったの?」
「ずっと見たかったよ。けど、黙って出てきちゃったから、なかなか帰れなくて……」
「苦悩の末、帰る選択を取ってくれたのか。嬉しい限りだ。だが……」
「それだけじゃないでしょ?」
流石は親と言うべきか、ナルメアの目的が顔を見ることだけではないことを悟っていたようだ。
「お見通し、だね」
「……己らはお前の父と母だ。娘の迷いぐらい、わかるさ。積もる話も迷える話も全て聞こう」
ガムシラさんが俺の方を見やった。
「ダナン君。君からも話を聞きたい」
「ナルメアとのお話、たくさん聞かせて欲しいな」
こうなれば逃れる術はない。頷いて、三人に続きナルメアの実家へ足を踏み入れた。
部屋の中に案内されると、対面にナルメアの両親が座り、ナルメアと並んで座らせられる。茶を用意してもらってから、腰を落ち着けてこれまでの話をしていく。
俺とナルメアとの出会い。
旅の果てのザンバ――オクトーとの再会。
そして彼が可愛がるフュンフとの交流などあらゆる出来事を話した。
「あのザンバさんが……? お子さんを引き取った……!?」
特に昔のオクトーを知るからか、今の彼の話をすると驚いていた。
「ふふふ、そっか。ザンバさんも丸くなったのね」
俺としては尖っていた頃のオクトー、じゃないザンバともちょっと会ってみたいんだけどな。
「今ではダナンちゃんとフュンフちゃんと、もう一人のアネンサちゃんって子と一緒によく皆でお茶もするんだよ」
「なるほど。あのザンバと茶を……。時の流れとは、かくも面白い」
ナルメアがいつ家を出たのかは聞いていないが、子供の頃にザンバがいたとなると俺の年齢くらいの年月は経っているのだろうか。
「して、ナルメア。お前の悩みも理解した。しばらくここでゆっくりしていけ。打開策が見つかるかもしれん」
「それなら!」
ガムシラさんの言葉に、ラルナさんが言って立ち上がり部屋を出ていく。なんだろうと思ってナルメアと顔を見合わせながら待っていると、黒い装束を持って現れた。
「これ、我が家の家宝の一つよ。見せたことあったかしら? いつかあなたが帰ってきたら、着て欲しくて……。お母さんが仕立て直しちゃった♪」
笑顔で言われて、ナルメアは愕然としている。
「直しちゃったって……。か、家宝を!? 私のために!?」
「なにを驚く。我が家で最強たるお前こそが引き継ぐモノだ。そのためなら多少手を加えてもよかろう」
前に着ていたのがもしドラフの男性だったなら、間違いなくサイズが合わないだろうからな。元々ある程度直す前提なのかもしれない。
「そ、そうなの、かな?」
「ほらほら、早速着てみて!」
戸惑うナルメアにラルナさんが家宝の装束を渡す。ナルメアは戸惑いつつも受け取った家宝を眺めてから、着替えのために席を立った。
しばらくして着替えを終えたナルメアが戻ってくる。
彼女は家宝の黒い装束を纏い、赤を基調とした服を着込んでいた。よく似合っている。威厳が出ているというのもあるが、同時に凛々しさを感じた。
それなのに、目新しい可愛らしさがある。
「わぁ……似合ってる……似合ってるわよ、ナルメア! ねぇ、あなた!」
「ああ……よもや、家宝を着た娘の姿が見られるとは……」
両親が揃って喜んでいる。俺もなにか言うべきかと思い、少し悩んだ結果素直な感想を口にすることにした。
「可愛いな」
カッコ良さも可愛さも持ち合わせている。ナルメアによく合っていた。
「か、可愛い……? お姉さん、可愛いかな? えへへ……」
ナルメアは照れたようにはにかんでいる。
「ダナンちゃんにそう言われると……お姉さん、とっても嬉しいな」
嬉しいなら良かった。素直に言った甲斐があるというものだ。
「満月が照らす夜空が如く美しい。ああ、ラルナ……。お前と出会った頃を思い出す」
「もう、お父さんったら……お客さんの前よ?」
厳格そうに見えるが、なんだかんだ親バカなようだ。
「もう、お父さんとお母さんったら……二人共昔からこの調子なの」
仲睦まじい親子の姿を見て、思わず頬が緩んでしまう。……俺にはなかったモノだ。だからだろうか、とても眩しくて尊いモノに見えた。
「お母さん、お父さん。ありがとう……なんだか、心機一転できそうな気がする。今ならなにか掴めるかも。お父さん、道場少し借りるね!」
「あら、早速修行? もう少しお話を――」
ナルメアは家宝を着込んで気分が昂ってきたのか、ラルナさんの制止も聞かず道場の方へ行ってしまった。
「あはは……」
「ナルメアらしいな。きっと日が暮れるまで修行をするだろう」
そんな娘の去った方を見る二人は苦笑している。
「代わりにって言うとなんだかおかしいけど」
ラルナさんが俺の方を向いた。
「ダナンさん。ナルメアのお話もっといっぱいしてくれないかな?」
断る理由はない。ないが、言いづらいこともあるのでできれば避けられるようにしつつ、なんとか乗り切りたい。悟られないか心配だ。
◇◆◇◆◇◆
一方その頃。
ナルメアは基礎の練習を積んでいた。
原点に帰る意味での帰省のため、鍛錬も基礎に帰るのは当然の帰結だろう。
一頻り動いた後、彼女は立ち止まり深く息を吸い込んだ。
「この香り……懐かしい。ずっとここで木刀を振ったっけ。薙刀や大剣も全部試して……」
懐かしい思い出を振り返りながら、しかしナルメアはある違和感に気がつく。
「ずっと修行をしてて……それだけ……?」
言っている内も違和感は大きくなっていく。
ナルメアは、修行道具が置かれた棚へ速足で駆け寄った。
そこにはかつて彼女が使用していた道具が保管されている。
「……おかしい。おかしいわ。この道具、全部傷がついてる。素振りや基礎の動きだけじゃ……絶対につかない痕……」
それらの道具には全て、独りで修業していたとは思えない傷がついていた。
「誰かと、打ち合ったってことだよね。独りでの修行だと、つかないもの。でも、一体誰と……?」
自分の胸に聞いてみるが、誰かと打ち合った記憶がない。
「私……ずっと独りで修行した記憶しか……ない」
愕然とする。誰かと一緒に修行しているはずなのに、自分にはその記憶がない。記憶と現実の差異に揺れていた。
「頼もう」
その時、道場に誰かが訪ねてくる。
声のした方を振り向くと、如何にも侍といったような恰好をした白髪の女性ドラフの姿があった。
「父へ用でしょうか? 今すぐ呼んで――」
ナルメアは見覚えのない人物の来訪に対応しようとする。だが、女性の瞳はしっかりとナルメアを見据えていた。
「風の便りに聞いたが……帰還は本当だったか。ナルメアよ」
女性がナルメアの名を呼ぶ。そのことに驚き、尋ねてしまう。
「どうして私の名前を……?」
聞かれた女性は一瞬身体を硬直させると、乾いた笑みを零した。
「ははは。そうか、そうか。此方は其方にとって、やはりその程度の“存在”か。それほど“つまらぬもの”か」
女性は震える声を吐き出すと、目から一縷の血を流す。
「あなた、血が……」
「“つまらぬもの”の」
心配するナルメアを他所に、女性が腰の刀に手をかけた。
「ッ!?」
「心配などしている場合か?」
女性は素早く抜刀してナルメアに容赦なく斬りかかる。
ナルメアは即座に刀を受け止め、彼女の実力を理解する。
(強い! それにあの刀……異様ね。見てるだけで肌が粟立つ……)
普通の侍ではない。刀から妖しさを感じる。
(でも、決して勝てない相手じゃない)
ナルメアは神経を研ぎ澄ませて油断なく刀を構えた。
「……そうだ、その目だ。その目がずぅっと。ずぅっと此方の夢に出る」
「前に……会ったことがあるのかしら」
相手が自分のことを知っている様子なのに、ナルメアには彼女に関する記憶がない。
「ははは。此方を忘れたというのならば、それでいい。だが――」
女性が纏う妖しげな雰囲気が急激に増幅していく。
「ここで斃れ、逝け。それを以って贖いとしろ!」
「ッ!?」
女性が一気にナルメアへと迫った――。
◇◆◇◆◇◆
道場の方が騒がしい。
一際大きな音がしてから、俺はガムシラさんとラルナさんと共に道場へ入った。
「ナルメア、どうし――……」
「……なんだと?」
二人は道場に入って驚き固まる。俺も同じだった。
「あっ……くぅ……」
「チッ……無粋な」
信じられない光景が目に焼きつく。
剣豪たるナルメアが白髪のドラフ女性に首を掴まれ今にもトドメを刺されそうになっていた。
しかし驚くべき点はそれだけではない。彼女の姿は――
「うぅ、あぁ……」
「ナルメアが、子供に……?」
そう。
見慣れた姿が、変貌してしまっていた。年齢にすると十歳くらいの姿に。