ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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あともうちょっとで古戦場本戦が終わる……騎空士の皆様お疲れ様です。

自分は「とりま十万入ればいいっしょ〜」みたいな感じで走ってるのであれですが(笑)


束の間の

 浮上してくる意識と引き換えに、腹部がずきずきと痛むことを認識した。痛みもあって寝惚けることなきすぐ目を開ける。

 

「……ここは家、か」

 

 見慣れた天井でそう判断し、室内を見渡す。

 

「……オルキス?」

 

 暗いので時間帯は夜だとわかる。そして俺の寝ているベッドにうつ伏せになった体勢で眠る蒼髪の少女を見つけた。小さな手が俺の手を握っている。……心配、してくれたんかね。

 随分と懐かれたもんだと苦笑し、身体を起こす。完治はしているようだ。おそらく魔法で治療したので痛みが残っているのだろう。

 

 そっとオルキスの頭を撫でてから、手を外してベッドから降りる。ズボンだけの恰好だったのでシャツを着込むと起こさないようそっと家を出た。行き先は決まっている。

 

 俺は家を出て夜更けの街を歩く。そして、ある場所に到着した。そこにいる人物に声をかける。

 

「シェロカルテ」

 

 俺はこんな夜でも店を開けているハーヴィンの商人を見据える。

 

「……ダナンさん」

 

 いつもの笑顔はなく、少し真面目な顔をしていた。

 

「よっ」

 

 俺は普段通りを装って手を挙げる。

 

「……やっぱり来てしまいましたか〜。例の件ですよね〜?」

 

 彼女は諦めたように嘆息した。

 

「ああ。あんた、【ベルセルク】を知ってるだろ?」

 

 俺は真剣な表情で尋ねる。……そう。俺はシェロカルテに、あれについて尋ねに来ていたのだ。あの時の様子から、グランが武器の実物を持っていることは明白だ。そして武器の名前が「ベルセルク・オクス」だというなら俺が知らないあの『ジョブ』を解放するにはまず武器を手に入れる必要があると推測が成り立つ。

 ではなぜシェロカルテに聞いたか。俺が思うに、シェロカルテは他の商人が知っている程度の情報なら持っている。つまりシェロカルテが知らない情報はない。

 

 シェロカルテはしばらくの間黙っていたが観念したように嘆息した。

 

「……はい。グランさんとジータさんが言うところのClassⅣ、【ベルセルク】を解放するための武器、ベルセルク・オクスを作ったのは私ですからね〜」

「やっぱあれが基点か。あれはどこでどうやって手に入れるんだ?」

「あれはかつて実在した英雄の方々が使っていた武器を復活させたモノになりますね〜。英雄武器と呼ばれていますよ~。元を返せばレプリカですが、素材を使って強化していく内に本物へ、という形になります〜」

「レプリカからねぇ。そりゃ凄いな」

「そうでしょうとも〜。大変でしたよ〜、レプリカを本物に近づけるためにどの素材がどの程度あればいいのか見極めるのは〜。苦労した甲斐あって凄い武器になったんですけどね〜」

 

 誇らしげに胸を張っていたが、やがて表情が沈む。……そういやこいつが作ったんだってな。情報網が広くて見識も深いってどんな人生送ってきたんだこの人。

 

「結果として、俺は死にかけたけどな」

「……」

 

 俺がそう言うとシェロカルテは暗い表情で俯いてしまう。

 

「まさか気に病んでるのか?」

「まぁそうですね~。一応武器の製作にも精通している身として、いくら本人の意志があったとしても過ぎた力を与えるべきではなかったのかなと思ってしまって~」

 

 なるほどなぁ。彼女にもそういった悩みはあるらしい。

 

「まぁ武器と武器を作った人に罪はねぇよ。今回は俺も悪かったし、武器を使うって決めたのはグランのヤツだからな」

「そう言ってもらえると助かります~」

 

 シェロカルテは再び笑顔を見せる。

 

「で、そのレプリカってのは買えるのか?」

「……。買えはしますけど貴族が装飾品として使うようなモノですからね~。購入するよりは時間をかけて探索した方がいいと思いますよ~」

 

 高値になるってことか。あんまり個人で多額は消費できないしな。

 

「一応どこにあるか聞いてもいいか?」

「パンデモニウムと呼ばれる特殊な島ですね~」

 

 またそれか。まぁ手間が省けたと思っておくか。

 

「そこならいつか行こうと思ってたんだ。ついでに探してみるとするか。で、強化に必要なモノは?」

「これがリストになります~。不足分はルピで購入してもいいですけど、在庫や稀少性などの関係で提供できないモノは赤字で書いてありますから、そちらを優先していただくとスムーズですよ~」

 

 用意がいい。購入できるモノも一個あたりの金額が書かれていた。……相当数必要だな。金も素材も。できるだけ素材を集めた方が懐に優しいが、集めるのに時間がかかる。

 

「助かる。どの武器がどの『ジョブ』に対応してるかはわかるのか?」

「一応わかりますよ~。かつての英雄がどの武器を得意としていたか、それを伝えれば『ジョブ』の力を持つダナンさん達には伝わりますしね~」

「それもそうか」

「けど注意してくださいね~。あなた方にはまだ過ぎた力。武器を手にし『ジョブ』を解放するだけでは使いこなすことはできないみたいです~」

「……わかってる。だがまぁ、どうしようもない時のために一本持っておいた方がいいとは思ってるからな。なにより出遅れてるのが気に入らん」

「そうですか~。では私もできる限り協力させていただきますね~」

「そうしてくれ。また来る」

「はい~。またのお越しを、お待ちしております~」

 

 シェロカルテとの話を終えて家に戻ろうかと街を歩いていたところで、きょろきょろと周囲を見渡している少女を見かけた。オルキスだ。

 やがて俺が声をかける前にオルキスがこちらを向いて目が合うと、驚いたように目を少し大きく開く。そして俺の方に駆けてきたかと思うと、そのまま抱き着いてきた。

 

「……心配した」

 

 なんの感情もない声ではなかった。初めて聞くとわからないだろうが、よく聞く声なので俺にもわかる。声は微かに震えていた。

 

「……悪かったな」

 

 起こさないように出てきたつもりだったが起きてしまい、そして怪我で寝込んでいたはずの俺が忽然と姿を消したことに驚いて探し回っていた、というところだろうか。どんな時でも肌身離さず持っているぬいぐるみを置いてくるぐらい焦っていたのかもしれない。嬉しい半分申し訳ない。

 頭を撫でてやって不安を解消させる。

 

「……ん。勝手にどっか行っちゃダメ」

「わかったから離れてくれ。もう用事は済んだから帰るところだしな」

「……ん」

 

 オルキスは俺から離れて右手を伸ばしてくる。

 

「……どっか行かないように、手繋いで」

「もう帰るだけだって言ったろ?」

「……ダメ」

 

 随分と我が儘になったようだ。自分のしたいことが出来てきて、それを口にすることが増えてきている。それはとてもいいことだとは思うがこうして言われてみると少し困るような気もする。

 

「はいはい」

 

 仕方がないかと思い、彼女の小さな手を握って二人並んで家へと向かっていった。

 

「おやぁ? 随分と仲良しさんになったみたいだねぇ」

「やっと帰ってきたか」

「ふん。待つ意味などなかったと思うがな」

 

 家の扉の前に馴染みの顔が三つ並んでいた。

 

「おう。お前ら二人も戻ってきてたんだな」

「まぁね~。スツルム殿とちょっと旅行を――痛ってぇ!」

「帝国の動きを探っていただけだ」

 

 相変わらずドランクとスツルムはこんな感じらしい。

 

「ようやく目が覚めたか。手間をかけさせるな」

 

 黒騎士も変わらず無愛想だ。

 

「そんなこと言ってぇ。ダナンが瀕死の時僕に戻ってこいって凄い必死に頼んでたのボスでうぎゃっ! 痛い! 痛いから腕を捩じらないでぇ!」

 

 ドランクがにやにやと言って腕を捩じ上げられていた。

 

「……アポロ、頑張って治してた。薬いっぱい使って」

 

 しかしオルキスも援護したことでぱっと手を離す。

 

「人形まで……。いいか、私はお前という貴重な駒を失うわけにはいかなかっただけだ。なにより一度帝国に顔を出させた以上、死んだ場合私の名前に傷がつく」

 

 兜をしているのでどんな表情なのかはわからなかったが。ドランクがこっそりにやにやしていたのでおそらくそれは建前、なのかもしれない。

 

「まぁ命助けてくれたのは本当みたいだからな、感謝しとく」

 

 あえてからかう方には加わらず礼を告げる。

 

「ふん。助けるだけの価値が今の貴様にあるとは思えないがな」

「いつか返してやるさ。長い付き合いになりそうだからな」

「虚言でないといいのだがな。今日は寝るぞ。明日からまた鍛え直さなければな」

「おう、頼むわ」

 

 黒騎士の言葉で全員が家の中に入り、今日のところは寝ることにする。あまり眠くなかったが寝ていようとベッドに入ったらオルキスが近づいてきた。

 

「……ダナン。一緒に寝ていい?」

「ん? あー……まぁいいか。狭いけど我慢しろよ」

「……ん」

 

 オルキスはぬいぐるみを抱えて俺の横に寝転がる。

 

「……勝手にどっか行っちゃダメ。わかった?」

「わかってるよ。安心して寝とけ」

 

 俺はまだ心配をやめないオルキスの頭を撫でてやり、彼女が眠るまでそうしていた。……さて、ベッドからは出ないとしてどうするかなぁ。ま、考え事してればその内寝れるか。

 そう思い、ClassⅣのことなどこれからのことを考えながら過ごすのだった。

 

 ◇◆◇◆

 

 翌朝。一足先に起きた俺はこれまで通り五人分の朝食を作り始める。某人形少女以外は軽く済ませる程度なので、適当にベーコンエッグとトーストでも作ってやればいい。スツルムは肉が好きなのでベーコンの枚数を少し増やしておく。

 一番小柄な癖に一番食べるあの子のために、アップルパイを焼いたりトーストの枚数を増やしたり量をたくさん作っておいた。皆が起きて席に着く頃には出来上がっており、朝食をテーブルに並べた。

 

「なんでこんなに普通のご飯なのに美味しいんだろうねぇ。出先でもスツルム殿なんか『飯が物足りない』って言って不貞腐れてたよ痛った、くない? あれ? スツルム殿?」

「事実だからな。ダナンの飯は美味い。夜はステーキを所望する。分厚いヤツ」

 

 珍しく刺されなかったことに驚く彼を放って俺に告げてくる。……ステーキねぇ。専用の器具がないと本格的には作れないよなぁ。ちょっとシェロカルテに相談してみるか。店の手伝いをする代わりにタレの作り方とかを教わって。

 

「了解。まぁちょっと作ってみるわ。他は食べたいモノあるか?」

「……アップルパイ」

「今食べてるでしょ」

「……もっと欲しい」

「はいはい。また作ってやろうな」

 

 俺は他二人に聞いたつもりだったが、オルキスが現在進行形でアップルパイを食べながら言ってきた。……結局アップルパイを超えるお気に入りは作れてないな。いつか塗り替えてやりたい。

 

「僕はステーキと一緒に野菜をいっぱい食べたいかなぁ。炒めたヤツでお願いね~」

「邪道だ。肉単品で食え」

「僕は野菜もあった方が美味しいと思うけどなぁ」

 

 どうやら食に関しては気が合わないらしい。簡単な要望だったので頷いておく。

 

「黒騎士はなんかあるか?」

「特にはないが……そうだな。海鮮モノをあまり作ってもらっていない気がするな」

「あぁ、確かにな。じゃあ昼は海鮮にしよう。夜はステーキな。材料の買い出しは任せた」

「人任せでいいのか? 作るお前が買ってきた方がいいだろう」

「問題ねぇよ。食べたいもん買ってこい。全部調理してやるから」

「ホント、料理に関しては頼もしい限りだよねぇ」

 

 ナルメアに教わった技術とこの街に来てから手伝って得た技術があれば、大体なんとかなる。オルキスに色んなモノを食べさせてやりたいという気持ちもあって色々技術を先行して会得していってるからな。

 そして全員が食べ終わってから、いつもの食後会議が始まる。

 

「これからの予定について話すか。まずはこれまでの報告からだな」

 

 黒騎士が司会を務める。

 

「はいは~い。僕達は休暇を兼ねて色んな島飛び回ってたんだけど、その中でアルビオンってところに帝国のフュリアスがいるって聞いたよ。しかもあの子達に接触する気、って聞いたからもう接触してるんじゃないかな。多分距離を考えてももうアルビオンにいると思うよ~」

 

 ドランクがまず軽い調子で報告してくる。

 

「あたし達が調べたところによると、帝国は連中と和解する気らしい。まぁ嘘だろう。フュリアスだからな」

「ふん。小賢しいあいつのことだ、十中八九罠なのは間違いない、か。だが特に私へは情報が来ていない。帝国の戦艦がルーマシーに降り立ったのは確認している。おそらくそれがフュリアスの遣わした船だろう。放っておいて問題ない」

「了解~、っと。次はえ~っと、きな臭い十天衆の話かなぁ。情報を聞き回ってるみたいだけど、口止めされてるのか聞かれたことは答えてくれなかったね。とんでもない大罪人を追ってる可能性が高いけど」

「不確定な情報だ。少なくともこの街にはいない。それでいいだろう」

 

 ドランクを補足するスツルムの言葉に、それでいいのかよと思わないでもないが。少なくとも俺は一度接触してボコボコにされているので、できれば関わり合いになりたくないところではある。おそらくClassⅣでも勝つには工夫が必要そうなくらい強いと考えれば、まだまだ遠い存在だと理解できる。

 

「わかった。他にはなにかあるか?」

「グラン君達がアルビオンに出た後のことだからもうちょっと先になると思うんだけどぉ。多分行き先があそこになるんじゃないかなぁ、って思うところがあってね~。僕ちょっとそこに先回りしておきたいんだよ」

「珍しいな、ドランクが自分から行動するとは」

「まぁ僕にもやっておきたいことはあるってことだよね~。ってことで五日ぐらいしたらまたここを出るからよろしく~」

「報告になっていないぞ、ドランク。……まぁいい。あたし達の方で得た情報はそれくらいだ」

 

 ドランクの話があってから、スツルムは報告を締め括る。

 

「そうか。では私の方からも話をしておこう。ルーマシー群島でなにがあったのかをな」

 

 そう言って黒騎士は語り始める。

 ルーマシー群島でグラン一行と戦闘し、その時に【ベルセルク】というとんでもなく強い『ジョブ』を発動された結果俺が死にかけたこと。そして『ジョブ』を使うと精神性が著しく変化してしまうこと。

 

「【ベルセルク】、ねぇ。かつての英雄の呼び名と一緒だけど、なにか関係あるの?」

 

 話を聞いたドランクはそんな感想を零した。

 

「私が本で見たことのある姿とほぼ一致する。その英雄の力を『ジョブ』に落とし込んだ、という認識で問題ないだろう」

 

 黒騎士もそれを知っているらしい。

 

「ふぅん。俺はその英雄ってのは知らないが、昨夜シェロカルテのとこ言って聞いてみたら、あいつが作ったんだってよ。かつてその英雄が使っていた武器、通称英雄武器を手にすることで『ジョブ』が解放される。【ベルセルク】は俺もまだ解放されていないClassⅣ、なんだってよ」

「シェロさんは色んなことできて凄いというか怖いよねぇ」

「ちなみに作るにはパンデモニウムとやらでレプリカを入手した方が安く済むらしく、それをこれらの素材で強化していって本物にするんだとよ」

 

 そう言って俺は昨日貰ったリストをテーブルに置く。

 

「う~ん。見たことない名前ばっかりだね。パンデモニウムにあるのかな?」

「だろうな。赤字で書いてあるのは金額が高いか書いてない。購入できない素材ってことか」

「そうそう。だから俺がもしClassⅣに手を出すなら、パンデモニウムに行って素材やらを集めてルピ稼がないと無理ってことだな」

「……ダメ。ダナンがあんな風になったら困る」

「大丈夫おいそれとは使わねぇよ。第一そう簡単に作れるもんじゃなさそうだしな。作れるようになった時にはもうちょっと強くなってんだろ」

 

 不安そうなオルキスを撫でながら推論を口にする。【ウエポンマスター】から【ベルセルク】になった時の差が激しすぎる。制御できてないのは、まだその力を持つには早いからだ。となれば時間をかければそれだけClassⅣになった時のデメリットも軽減できる、かもしれない。

 

「まだ強くなっちゃうんだねぇ。僕達もうかうかしてられないかな? ね、スツルム殿?」

「あいつらと同じ力を持っている時点で伸びしろはあった。後はこいつの努力次第だろ」

 

 確かにClassⅣを使いこなせば二人同時でもいい勝負ができるだろう。だがまだまだ遠い話だ。

 

「ClassⅣについては機会があればパンデモニウムへ行って準備を進める。これでいいだろう。ただ使いこなすまでが遠い。当面は地力を上げることだな、ダナン」

「わかってる」

 

 黒騎士のまとめを受けて頷く。……あいつらに先を行かれているというのもあるが、それでも焦りは禁物だ。焦ったらあいつみたく暴走してこいつらを傷つけかねない。黒騎士に止めてもらうしかないんだから簡単には使えないだろう。

 

「あとClassⅣついでに、『ジョブ』にClassEXってのがあると聞いてな。それはパンデモニウムにいる特定の敵を倒すと解放されるらしい。俺もそろそろ刀を使う『ジョブ』を解放したいし、近い内に一度挑んでおきたいところはある」

「わかった。考えておこう。お前の戦略の幅が広がるのは、そのまま対応力の高さに繋がる。ClassⅣは兎も角EXとやらは解放するだけしておくべきだろう。時間のある時に一度パンデモニウムへ向かうか」

「そうしてくれると助かる」

 

 パンデモニウムに行く理由が一つ増えた。俺も折角習った剣術を発揮しないまま過ごすのはどうかと思っている。二刀流はもうちょっと練習しないとな。

 

「じゃあダナンの戦力アップ、ってことでぇ。僕からプレゼントがあるんだ?」

「爆弾ってオチじゃねぇよな?」

「僕をなんだと思ってるのかなぁもう。これ、ちょっと行って取ってきたんだぁ」

 

 ドランクはそう言って青い球体を取り出した。彼が魔法で使っているモノと似ているように見えるが、こっちの方が大きい。

 

「ブルースフィア。宝珠魔法を使えないと扱えないけど、ダナンはオールラウンダーだからねぇ。多分使えると思うんだ。まぁ僕みたいに小さいので使うのは無理だと思うけどね。大きいのなら使えると思うよん」

「ほぅ」

「信頼の証だと思っといていいよ~。昔僕が使ってたヤツだからちょっと古いのは勘弁してね。あんまり数がない貴重なモノなんだから、さ」

 

 ウインクしてくるドランクはちょっとイラッとさせてくるがそう言うなら受け取る他ない。これを受け取らないということは、彼の信頼を無碍にするに等しい行為だからな。

 

「わかった。ってことはお前が出るまでの間に宝珠魔法を教えてくれるってことでいいんだな?」

「もちろん。精いっぱい協力させてもらうよ」

 

 こうして見るとドランクの笑顔が胡散臭くなくていいヤツの笑顔に見えてくるから不思議だ。

 

「あたしからこれをやる」

 

 今度はスツルムから刀を手渡された。無骨で抜いた刀身は朱殷に染まっている。

 

「これは?」

「イクサバ。昔依頼の時に手に入れた刀だが、あたしは使わない。ならお前に渡した方が有意義だろう」

「ほう。なんか悪いな、二人して」

「まぁこれまでの頑張りを見てのモノだからそんなに気にせず、大切に使ってくれればいいよ。ボスだけ渡して僕達が渡さないっていうのもねぇ」

 

 ドランクの言葉に一箇所からごそごそとなにかを漁る音がする。

 

「……」

 

 見るとオルキスが手に刃が黒紫の宝石で出来た短剣を取り出していた。

 

「それは?」

「……護身用に、アポロから貰った」

「じゃあそれはオルキスのだな」

「……でも」

「気にすんな。もしオルキスがいつか戦えるようになって、その時短剣使わないなら渡してくれ」

「……わかった」

 

 俺の言葉にオルキスは納得したのか短剣をぬいぐるみの背中にしまう。……あ、それ収納になってたんだ。

 

「ドランクが余計なことを言うからだ」

「痛ってぇ! 確かにちょっとごめんねぇ!」

 

 ドランクの発言から自分もなにか渡さなければ、と思ってしまったのかもしれない。不用意な言葉を発したドランクの処置はスツルムに任せておくとしよう。

 まぁなにかを与えるってことは、そもそもなにかを持っていなければならない。オルキスはまだ持っているモノが少ないのだから渡せなくて当然だ。

 

「一先ずの報告はこんなところか。今後の方針としては、しばらくダナンを鍛えることにする。スツルムとドランクは連中がアルビオンの次の島で待ち受けると言っていたな、その次の行き先がわかったら戻ってこい。それまでに帝国から要請があれば別だがな」

「了解」

「はいは〜い」

「わかった」

 

 三人が声に出して返事をし、一人は無言で頷いた。

 こうしてまた、五人で楽しく過ごす日々が始まるのだった。


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