ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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言い忘れてましたが
「「「◯◯◯◯」」」
みたいな表記は三人以上が、という意味です。複数書いてたらキリがないんでそんな感じのルールにしています。


帝国の襲撃

 翌日は朝から警報が鳴り響いていた。

 

「総員! 厳戒態勢を取れ! 各部隊は集合し持ち場へ移動! すぐにだ!」

 

 モニカの切迫した指示が飛ぶ。

 

「帝国の兵士はどこを目指していますか!?」

「か、監獄塔と思われます!」

「黒騎士が狙いですか……!」

「お、おそらく」

 

 リーシャは報告を聞いて、おそらく頭の中で作戦を練っている。

 無意識かコートのポケットに手がいっていた。……あそこに枷の鍵が。

 

「……仕方ありません。どなたかグランさん達を呼んできてください! 私とモニカさんと一緒に黒騎士の保護へ向かいます!」

 

 彼女は黒騎士を確保し、その上で連中の力も借りるようだ。指示を出している最中は鍵から意識が離れたようだ。その隙にするりと鍵を抜き取る。誰にも動きは捉えられない。なにせ、俺の本業はこっちだ。戦闘や料理なんかよりよっぽど上手くやれる。

 

「リーシャ。昨日は魔物退治にすらあの者達の力を借りるのを嫌がっていたというのに……どういう心境の変化だ?」

「知りません。兎も角、私は私に今できる最大限をやるだけですから」

「ほう。一晩でこうも変わるとはな。遂に男でもできたか」

「も、モニカさんっ! こんな時にふざけないでください!」

 

 相変わらずすぐ動揺するが、部隊に指示を出していく姿は勇ましい上官そのものだ。やればできるじゃねぇか。

 

「新入り! 俺達も行くぞ!」

 

 俺も部隊の人達と一緒に庁舎の外へ出て配置につく。

 

「あの、自分達は戦艦から監獄塔までの方向と結構離れてますけど……こっちにも来るんですか?」

 

 移動中先輩に尋ねる。俺達は戦艦の正面から離れた位置に配置された。しかも一部隊で、だ。

 

「おそらく来る。大半は真っ直ぐ来るだろうが、一部回り道をしてから攻め込んでくることがある。そのための俺達というわけだ」

 

 なるほど。で、俺達はある程度バラけた状態で茂みに隠れ来るかもしれない帝国兵を警戒する。

 独特の静けさと緊張感が俺達を支配した。

 

「……来たぞ! 銃を構えろ。合図したら一斉に打て」

 

 部隊を仕切る先輩が指示を出してくる。がさがさがちゃがちゃと帝国の兵士が走っているのが見えた。固唾を飲んで合図を待つ。そして、

 

「今だ! 撃てーっ!」

 

 号令があって引き鉄を引く。帝国の兵士五人の内二人の足に当たり戦闘不能になった。五人で撃って二発か。俺がいなけりゃ一発だぞ。ったく。

 

「敵だ! 身を隠せ、向こうから撃ってきたぞ!」

 

 当然敵に居場所がバレる。茂みの後ろで移動しながらの銃撃戦が始まった。……なんとか離脱したいんだが、一日とはいえ関わった連中を俺が殺すのはマズい。できれば相打ちになってくれると嬉しいんだが。

 と思っていたら二人死んだ。茂み越しに撃たれて運悪く急所に当たったようだ。……クソッ。だからって死んで欲しいわけじゃねぇんだぞ。

 

 三人目は動揺して音を立てたところを三人に撃たれた。

 

「……新入り。お前だけでも逃げろ」

 

 残った先輩が言ってきて、少し離れたところで音を立てて立ち上がり発砲。兵士一人を射殺後頭を撃ち抜かれた。……バカだろ、どいつもこいつも。俺は赤の他人だってのに。

 

「……舐めるなよ、帝国兵」

 

 俺は立ち上がって銃を構え一人の頭を撃ち抜き殺す。もう一人が銃を向けてきたのですかさず木の後ろに隠れる。それから近くに落ちていた石を近くの茂みの方へ投げて音を立てた。そっちに移動したと思ったのかすぐに発砲音が聞こえたので立ち上がり最後の一人を撃った。……俺一人の方がやりやすかったな。

 

「……胸糞悪い話だ」

 

 足を撃たれて蹲っている二人はきちんと始末しておき、俺は移動する。これからは単独行動だ。やるべきことを、やらねぇとな。

 

 ◇◆◇◆

 

 スツルムとドランクは物陰に隠れて騒動を見守っていた。帝国の戦艦がアマルティアに到着して黒騎士を殺すべく動くのを見ている、のだが。

 

「貴様ら帝国兵ではないな。昨日の侵入者か。手を挙げろ」

 

 ドランクの後頭部に銃口が突きつけられ、二人の身体が硬直する。

 

「……おっかしいなぁ。僕油断してなかったはずなんだけど。秩序の騎空団っていつの間に腕上げたの?」

「そりゃ俺だからな」

「「えっ?」」

 

 銃を下ろして言った俺を、二人が驚いて振り返る。……そんなにわかんなかったのかよ。帽子を脱いで素顔を晒したことで、二人はほっと胸を撫で下ろす。

 

「な、なんだダナンだったのね。びっくりしたぁ〜」

「おいおい薄情だな。俺の声を聞いてわからないとは」

「お前の演技は上手いんだ。心臓に悪い」

「悪かったよ。黒騎士助ける算段はついたから許してくれ」

「おっ。さっすが〜。で、これからダナンはどうするの?」

「黒騎士はリーシャとモニカが保護しに行った。グラン達も出る。となれば混乱は更に大きくなるはずだ。そこで、グラン達がリーシャと合流したところで二人を誘き寄せるようにしたいんだよ」

「具体案はあるのか?」

「ああ」

 

 そうして俺は思いついていた策を二人に話す。

 

「それはまた、悪どいことを考えるねぇ」

「確かにそれなら二人が出る他なさそうだな。わかった、あたし達はなにをすればいい?」

「当初の予定通り退路の確保でいい。あと俺の荷物返してくれ。動く」

「はいよ〜。じゃあお願いね、ダナン」

「おう。後でな」

 

 無事二人と合流できた俺は、荷物を回収してまた分かれる。そして思いついた策を実行すべく移動していくのだった。

 そして監獄塔にまで辿り着く。見張りの二人を【アサシン】の麻痺針で仕留めて中に入る。看守が気づく前に麻痺針で動けなくしておいた。……もう黒騎士はここを出たみたいだな。

 

 看守室から適当に鍵を拝借する。そして監獄塔の牢屋の方へ向かった。

 

「よぉ。秩序の騎空団に無様に捕まった情けない犯罪者共」

 

 俺は大きな声でそう告げる。フードを被った恰好で、にやにやと笑いながら。

 

「どうだ? ここから出て暴れたくはねぇか?」

「あ? てめえなんだよ。偉そうにしやがって! ぶち殺してや――」

「煩ぇ」

 

 俺は暗器の一つである投げナイフを格子の隙間からそいつへ投擲して頭に刺し殺す。

 

「「「……」」」

「わかったか? 気に入らないならそれでいい。俺に協力するっていうなら出してやってもいい、って言ってんだ。なぁ――てめえらの命握ってんは俺だからな? 言葉は選べよ」

 

 俺を罵倒していた者達も一斉に静まり返る。そんな中で殺気を撒いて威圧する。

 

「……わ、わかった。あんたに協力する! だからここから出してくれ!」

 

 一人がそう言えば後は雪崩れのようだった。

 

「わかればいいんだよ。ほら、開けてやる。手錠はてめえらで外せよ」

「へへっ。助かるぜ」

「出たらここの西へ向かえ。そこは比較的手薄だから逃げやすいだろうぜ。武器とかは自分で調達しろよ」

 

 俺は言って次々と犯罪者共を解放していく。後はあいつらを全員捕えられる人員――リーシャとモニカに居場所を伝えるだけでいい。全員行ったことを確認して早速通信するかと思っていたら。

 

「なァ、アンタ。面白ェなァ」

 

 人気のない牢獄から声をかけられた。……なんだ? 大人数の部屋だってのにたった一人で居座ってやがる? 身に纏う闘気もその辺のヤツらとは桁違いだぞ。こいつとは俺が戦っても互角じゃねぇか?

 

「……あんた、あいつら雑魚とは違うみたいだな。最上位のS級でなけりゃ基本は上になればなるほどこの塔の上に捕えられるって聞いたんだが?」

「ハハッ。話が早ェ。その通り、オレはA級犯罪者に指定されてンだ。ここにいンのは、同じ部屋のヤツらとちょっと喧嘩してなァ」

 

 殺し合いでもしたのかよ。とんだ問題児だな。俺が言えたことでもねぇか。

 俺はそいつをじっと見つめる。牢屋の暗がりに胡坐を掻いて座った男だ。年齢は俺より少し上くらいか。赤髪に褐色の肌を持つヒューマンだ。目つきの悪さはいい勝負だな。俺にはあまり馴染みのない和服を着込んでいる。

 

「で、そのあんたが俺になんの用だ?」

「オレをこっから出してくれ。したらアンタに手ェ貸す。オレはこんなところで終わるわけにはいかねェンだよ」

 

 ぎらりと光る赤い瞳には昏い決意が宿っていた。……ふぅん。こいつとの縁はいつか利用できるかもしれねぇな。

 

「……わかった。ちょっと待ってろ」

「あン?」

 

 俺は牢屋の鍵を開けて枷の鍵を探り、A級と書かれていた場所にかかっていた鍵で枷を外す。

 

「……ンだよ。随分あっさり解放してくれンな。俺がアンタ殺すとか考えねェのかよ?」

「大丈夫だ。武器も持ってねぇヤツに負ける気はねぇよ。武器を取り戻したらわかんねぇけどな」

「ハハッ。上等だ。気に入ったぜ、アンタ」

 

 愉快そうに笑う男は立ち上がる。俺と背丈は変わらないが引き締まった筋肉質な身体をしていた。

 

「オレはゼオ、ってンだ。アンタは?」

「俺はダナンだ。つっても俺は脱出の手伝いはしねぇから自力で出ろよ」

「オイオイ。冷てェなァ」

「それくらいできるだろ。多分あんたの武器はそこの武器庫にあるはずだ。ほら、鍵はやる」

「おっ。助かるぜ」

「じゃあ、生きてたらまたいつか会おうぜ。そん時はあんたを扱き使ってやる」

「ハハハッ! いいねェ、益々気に入った! そン時が来たらオレも扱き使われてやンぜ!」

 

 そうして俺は荒っぽい男ゼオと別れた。

 

「……ドランク。聞こえるか?」

 

 監獄塔を出て一人になってから玉を使ってドランクへ通信する。

 

『はいは~い。聞こえてるよ~ん』

「今からリーシャへ俺が演技で通信する。お前は悪役っぽい感じで合わせてくれ」

『え、急! まぁいいよ~。任せといて』

「ああ」

 

 俺はドランクとの通信をそのままに、【アサシン】を解除してリーシャへと通信を送る。

 

「り、リーシャ船団長! こちら西で待機中の部隊! げ、現在帝国の兵士の侵攻を許したのか脱獄した犯罪者が大勢後ろから襲ってきています!」

 

 切迫した声で報告する。

 

『えっ!? 脱獄!? な、なにがどうなって――』

『オイオイオイ。こんなとこにまだ一人いんじゃねぇかよぉ。さぁ、てめえはどんな死に面晒してくれんだぁ!?』

「え、ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!」

『っ!! お、応答を! 応答してくださ――』

 

 リーシャの焦った声が聞こえたところで通信機器を踏み潰されたかのように乱暴に切断する。これでこっちの声はリーシャに届かなくなったな。

 

「ナイスだ、ドランク。いい演技だったぜ」

『ふっふ~ん。そうでしょぉ? ダナンの迫真の演技には負けるけどねぇ』

「ははっ、寄せよ」

『……この二人組ませたらダメだな、やっぱり』

 

 案外様になった悪役の声だった。流石だ。スツルムの呆れた声が聞こえてきた気がするが気にしないでおく。

 

「……これでリーシャとモニカが西へ向かうだろう。そうなったらグラン達が黒騎士を連れて逃げていくだろうから、騎空艇までの退路を確保できるようにすりゃいい、ってことだ」

『そういうことだね。じゃあ僕らもそろそろ通信できなくなるから』

「おう。気をつけろよ」

『そっちもね~』

 

 ドランクとの通信も切って、俺もこの島から脱出するためにちょっと遠いが正面の港の方へと移動を始めた。

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 秩序の騎空団の通信を聞いてどういった戦況なのかを確認しながら移動していく。

 そして正面の港までの広場で、アマルティアの騒動は佳境に差しかかっていた。

 

「どういうことなのか、説明していただけますか」

「私から逃げられるとは思わないことですねェ」

「くっ……」

 

 リーシャとモニカ率いる秩序の騎空団。ポンメルン大尉率いる帝国兵。そして枷に囚われた黒騎士を守るかのように構えるグラン達。……これは一体どういう状況だ?

 俺はと言うと、近くの建物の上からこっそり眺めている状態だ。グラン達が秩序の騎空団とも敵対しているような状況なのが気になるところだ。

 

 ふと玉が光っていることに気づいて魔力を込める。

 

『説明しよう! って一回言ってみたかったんだよね~』

「ドランク。このタイミングでってことはそっちから見えてんのか?」

『もっちろん。ここだよ~。手ぇ振ってるの見える?』

 

 言われて退路――騎空艇方面へ目を向けると物陰から手が覗いていた。

 

「見えた。なるほど、退路ってのはそういうことか」

『察しがいいね。もちろんホントにピンチなら僕達も参加するよ』

「そうしてくれ。で、状況は?」

 

 先を促す。

 

『それはねぇ。なんかボスが脱獄させろって要請したみたいで、ダナンが秩序の二人を誘き寄せたタイミングで逃げ出そうとし始めたんだよねぇ。それがバレて、今の三つ巴の状態、ってわけ』

「なるほどねぇ」

 

 しかしあの犯罪者集団を俺がこっちに来るまでの間に捕縛して戻ってくるとはな。モニカはもちろんリーシャも相当優秀らしい。

 

『あ、僕らもいるから四つ巴かもね~』

「確かにな。精々引っ掻き回してやるとするかな」

 

 俺達はそのどこに味方するでもない。黒騎士の味方として動いている。

 

「黒騎士の身柄をこちらへ渡してください。もしその人の脱獄を手助けしたとなれば、あなた方は犯罪者となります。そうなればこちらも見逃すことはできません」

 

 リーシャの毅然とした声が響く。

 

「黒騎士の身柄を渡すんですねェ。然るべき処置を、執らなければならないんですよォ」

 

 ポンメルンが睨みつけるように告げた。

 

「……すみません。黒騎士は渡せません」

 

 しかし気丈にもジータはどちらも拒否している。黒騎士がなんか話したんだろうな。そこまでは察せないが、あいつらは俺達にとって今敵じゃないということは確かなようだ。

 

「だがこの手勢を相手にお前達だけで足りるか?」

「厳しいだろうな……この人数に加えてポンメルン大尉、そしてリーシャ殿とモニカ殿」

「だろうな」

 

 広場の中央に追い詰められ、全ての道を敵が埋め尽くされているグラン達はピンチなようだ。

 

「黒騎士……あなたが捕まった状態なのが残念でなりませんねェ。この魔晶の力で、あなたを超えると証明したかったのですが……」

 

 ポンメルンは言って懐から禍々しい光を放つ結晶を取り出した。

 

「……モニカさん、やりますよ。彼らに渡すわけにも、ヤツらに殺させるわけにもいきません!」

「無論だ」

 

 リーシャとモニカも戦闘態勢に入り、険しい表情のグラン一行が半歩下がる。……よし。ここだな。

 

「……り、リーシャ船団長! 屋根の上に敵影です!」

 

 俺は立ち上がり声を作って大声で叫ぶ。

 

「え――」

 

 リーシャは目を見開いてこちらを見上げてくる。秩序の騎空団の制服を着込んだ俺が立っているのだから当然か。なにせ、犯罪者に襲われたことになっているんだからな。

 

「……なんてな。盛り上がってるところ悪ぃな、お前ら」

 

 俺は言ってにやりと笑い、服を早脱ぎして放り投げ姿を見せないようにしつつ普段の服装へと早着替えする。

 

「俺達も混ぜろよ」

「なっ……!」

 

 グラン達やポンメルン、リーシャ達も驚く中、俺と黒騎士、そして少し離れた場所にいる傭兵二人だけが笑っていた。特にリーシャの驚きようったら半端じゃない。

 

「……あ、あなたは黒騎士の……!? いえでもさっきの声は……」

「実は昨日の朝から潜入してたんだ。本物のハリソン・ラフォードは今頃養護室のベッドの下だ」

「っ……!」

「いやぁ、丁度いい変装相手がいて良かったぜ。声も似てたもんだから全然バレねぇんだもん」

「そ、そんな……」

 

 リーシャのショックが一番大きいようだ。一番二人でいる時間が長かった分気づきやすかったのではと思っているのか。

 

「……まさか秩序の騎空団に潜入されているとはな。私が気づかないとは予想外だった」

 

 モニカは帽子を下げて悔いる。

 

「俺はそういうのが得意なんだ。――よし。じゃあさっさとおっ始めて、うちの黒騎士さん返してもらうとするかぁ! 援護してくれ!」

『了解~っと。その玉投げといて』

 

 俺は屋根の上から黒騎士達のいる方へと跳躍する。玉から声が聞こえたので俺の近くにいる秩序の騎空団へと放り投げた。玉はぴたりと空中で止まり、近くにいた者達へと炎を放ち道を開けてくれる。

 

「ぐわああぁぁぁ!!」

 

 加えて騎空艇までの道を塞いでいた帝国兵達が次々と悲鳴を上げて切り伏せられていく。

 

「ボス~。おっひさ~」

「無駄口叩いてないで手を動かせ」

「はいは~い」

 

 スツルムとドランクが、兵士達を蹴散らして退路を確保しようとしてきた。俺はその間に黒騎士の下へと辿り着く。

 

「ふん。ようやく来たか。早くしろ」

 

 黒騎士は仄かに笑いつつ両手を差し出してくる。

 

「はいよ」

 

 俺はポケットを漁って鍵を取り出し枷の鍵穴に嵌める。すると魔方陣が描かれて枷が自動的に外れる。

 

「えっ? あ、あれ?」

 

 それを見て困惑したのはリーシャだった。鍵を入れていたはずのポケットなどに手を入れたり引っ繰り返したりしている。

 

「リーシャ……一体どういうことだ?」

「た、確かに庁舎を出る前まではここに……」

 

 ここは唯一答えを知っている俺が説明してやるとしよう。

 

「元々俺は戦闘や料理なんかより()()()専門だったんでね。誰にも気づかれずモノを盗むなんて容易いんだよ。いやぁ、昨晩はありがとうございましたリーシャ船団長。おかげで鍵の在り処がわかってこうして盗めましたんで。感謝してもし切れないですわ」

「っ……!!」

 

 俺の言葉にリーシャが羞恥と怒りで顔を真っ赤にする。昨日の相手が俺だとわかっての羞恥だろう。

 

「ほれ、黒騎士。あんたが昔使ってたヤツならマシに戦えんだろ?」

 

 俺は革袋からブルドガングを取り出して手渡す。

 

「気が利いているな」

「だろ?」

 

 剣を手に取り肩を回して身体を解す。

 

「私も戦力として数えられるようにはなったな。これで形勢逆転というわけだ。五体満足で帰れると思うなよ!」

 

 黒騎士が吼えると同時にその身に宿す覇気を振り撒く。それだけで集まっていた者達が僅かに後退した。

 

「……そういえばポンメルン大尉。貴様魔晶があればこの私を超えられるとかほざいていたな。いい機会だ、それが驕りだと証明してやる。かかってくるがいい」

 

 しかし黒騎士は魔晶を持って立つポンメルンへと向き直った。

 

「……ッ。い、いいでしょう。この魔晶で、あなたを叩き潰してやりますよォ……!」

 

 怯むポンメルンだったが、こうなったらやってやるとばかりに魔晶を使い巨大化する。

 

「直接、私の手で、殺してあげますねェ!」

「ふん。貴様程度がいくら魔晶を使ったところで、私に遠く及ばん」

 

 魔晶を使ったポンメルンと黒騎士が向かい合い、

 

「あなたという人は! 絶対に許しません!」

「そんな怖い顔しないでくださいよ。可愛い顔が台無しですよ、リーシャ船・団・長?」

 

 俺を完全に敵視したリーシャが剣の切っ先を向けてくる。こいつは俺が相手しなくちゃならないようだ。

 

「後ろは任せといて~」

 

 スツルムとドランクは退路を確保すべく兵士達と戦っている。

 

「仕方がない。少々手荒だが、貴公らは私が相手するとしよう」

「皆、気を引き締めてかかるよ!」

 

 モニカとグラン達が対峙する。

 

 こうしてアマルティア島での、最後の戦いが始まった。




☆今日のワンポント☆

ド「さぁ、てめえはどんな死に面晒してくれんだぁ!?」

悪どいCV杉田智和。聞きたい。というか聞いたことあるんじゃないかと思います。小物感出てると尚良し。

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