というのも投稿する直前になって規約違反っぽくて不安になったんですよね。
……ここは大事なところなんで、割りとそのままにしちゃってました。
大半のセリフがコピペになっちゃったんです。
意味合いは変えたくないんだけどどうしようか、と悩んでいる最中。
一応まんまセリフの数を減らしはしましたが不安なのでマズそうならご指摘いただけると幸いです。
ラビ島は砂漠だった。一面が砂色で景色がいいとも言えず、砂漠なので昼間は暑い。加えて砂に足を取られて歩きにくいときた。どうも王都として栄えていた島には見えない。物資の調達も滞りそうだしな。
「一先ず王宮へ向かう。そこにフリーシアはいるだろう」
黒騎士は砂漠だからなのか茶色い布をマントのように纏っていた。その程度で砂嵐が防げるとは思わないが、ツッコまない方が身のためだろう。
「遅れるなよ」
エルステ王国にいたらしいので、歩きにくい砂の地面をすたすたと歩いていく。グラン達も戸惑いながら砂漠を歩いていった。
足場が悪いこともあってしばらく前衛は安定しなかったが、慣れてくると襲ってくる魔物にも対処しやすくなっていく。俺は基本見ているだけだ。銃撃ったりナイフ投げたりはするが主武器の短剣を失っている。いざとなればイクサバかブルースフィアを使うだろうが、ここはあいつらに任せよう。
足場などの状況にこそ苦しまされたが、強さとしてはそこまで強くなかった。危なげなく突破している。
「ひいぃっ!」
その時、近くから悲鳴が聞こえてきた。年寄りの婆さんだと思われる。緊張が走るがさてどうするか、だよな。助けられればいいんだが今から行ったんじゃ間に合わない可能性も高い。どうせ見殺しにするなら死体は見に行かない方がいいと思うんだが。
「行くぞ!」
グラン達なら行くかなぁと思っていたのだが、予想を外して黒騎士が真っ先に駆け出していた。そうなったら俺も行くしかない。
「あ、おい!」
「私達も行きましょう!」
遅れてグラン達も後からついてくる。俺が先頭になってしまったが俺が見たのは屈んで頭を守り怯える老婆に襲いかかろうとした魔物を、黒騎士が切り伏せているところからだった。
「はぁ……はぁ……」
なにを焦っていたのか珍しく息を乱している。魔物の悲鳴が聞こえたからか他の人の気配を感じたからか老婆が顔を上げて自身に背を向けて立つ黒騎士を見上げている。
「ありがとうございます、旅の方。兵隊さん達は島の周りを守るばっかりで、街には見向きもしてくれませんで……。本当に、なんとお礼を言ったらいいか」
「いや、怪我は……」
老婆の感謝を聞きながら無事を確かめるため振り向く黒騎士だったが、その老婆を見て驚いたように顔を背けた。
「んん? どうしたんだよ、急にそっぽ向いて」
追いついてきたビィが尋ねる。
「黙れ。さぁ、行くぞ」
「お待ちください。大したお礼もできませんが、せめてうちに……ん? あなた、どこかで」
黒騎士の様子からも予想はついていたが、どうやら知り合いらしい。ただここはあまり人がいなさそうとはいえ敵地だ。エルステ帝国の領地である。通報されて四方八方から戦艦に追われるなんてご免だぞ。
「ま、また魔物です!」
「チッ……。さっさと片づけるぞ。この街は、貴様ら低俗な魔物ごときが荒らしていい場所じゃあない!」
黒騎士は苛立たしげに吐き捨てると新たに現れた魔物へと突っ込んでいく。一体ではなかったので他も協力したが、やたらとやる気満々なのであいつ一人でも良かったんじゃないかと思う。……多分、人がって言うよりオルキス王女との思い出の場所だからなんだろうけどな。グラン達がまだ知らないって言うなら、ちょっと黙って成り行きを見守っているとするか。
老婆は魔物を倒す黒騎士を注意深く眺めていた。通報するようなら俺がさくっと撃つ。ここで逃がす手はねぇよな。
「ああ……やっぱり! あなたは……!」
老婆は戦闘の終わった黒騎士に近寄る。警戒していた通りではなさそうだ。顔はとても嬉しそうだ。
「ヤベぇ! 完全にバレちまったみてぇだぞ!」
「仕方ねぇ……。すぐにここから逃げ」
ビィとラカムが慌て出す。お前らは老婆の顔をちゃんと見ろ。
「アポロちゃん! アポロニアちゃんじゃないのかい? ねぇ、そうだろう?」
「……」
とても気安く呼んでいた。黒騎士は妙な気分なのか憮然とした顔になっているが。
「へ? おばーちゃん、この人を知ってるの?」
「ああ……随分久し振りだがねぇ」
イオのきょとんとした問いに、老婆は懐かしむように目を細めた。
「こんなに立派になって。一目見ただけじゃあわからなかったよ。そうだねぇ、十年振りくらいかい? ああ、そうか……。丁度あの頃だったね。オルキス様のことは本当に残念で……」
「!? お、オルキスちゃんのことを知ってるんですか!?」
老婆が昔のことを話している中でオルキスの名前が出てきた。俺からすれば知っていて当然ということになるが、ルリア含め連中は驚いているのでまだそこまで知っていないのだろう
「へ? そりゃあ知っているもなにも――オルキス様は、このエルステの王女様じゃないか」」
「え……?」
ドランク、スツルム、そして俺の三人は当然として。リーシャもある程度黒騎士について調べ上げているのか驚きはなかった。
「な!? ど、どういうことだ!? 説明しろ! 黒騎士!」
「ご婦人の言っていることに間違いはない」
動揺するカタリナに黒騎士は平坦な声音で応えた。
「オルキスは、エルステ帝国の前身であるエルステ王国の王女であり……私の、たった一人の親友だったんだ」
今度は深い感慨の込められた言葉だった。
グラン達は衝撃の事実を突きつけられた、という感じだったが既知の情報だったので話には入っていかない。黒騎士の昔話でからかえそうなモノがあったら口を出すことにしよう。
まぁつってもオルキスとアポロじゃ歳が離れているようにしか見えないからな。そのままに受け取れば困惑するのも無理はない。
「そうだ、久し振りに来てくれたんだからうちに寄っていかないかい? 助けてくれたお礼も兼ねてね」
「いや、私達は行くところが……」
「少しだけならいいだろう? ほら、こっちだよ」
老婆は久し振りに黒騎士と会えたのが嬉しいのか、少し強引に道案内をしてくる。
「……罠だとは考えられないか?」
「食べ物で肥やして俺達を、ってヤツか?」
「あたしその童話読んだことある……」
「この街に来る時は鎧を外さずにいた。黒騎士と私が同一人物だとは思っていないはずだ」
小声で話し合っていたが、黒騎士の判断を信じてついていくことにしたらしい。
その道中で、ルリアが老婆へと近づき勇気を振り絞って尋ねた。
「ね、ねぇお婆ちゃん」
「なんだい?」
「あの……エルステ王国の王女様、オルキス様ってどんな子だったんですか?」
「そうだねぇ。そりゃもう、元気で明るい子だったさ。あの頃は、ヴィオラ女王が国を治めててねぇ。その一人娘だったんだけど、気取らないいい子でねぇ。女王陛下と一緒によく街を周ったりして」
「オルキスちゃんが……」
確かに今のオルキスからは考えられないな。食べ物のこと以外は大人しいし。今は多少変わっているとはいえ。
「それじゃえっと……アポロニアさんとは」
ルリアの振りに黒騎士がぴくりと反応した。触れられたくないのかもしれない。
「ああ! 二人は年も近くって、そりゃもう仲良しでねぇ。ほら、アポロちゃん、覚えてるかい? あのお祭りの日に二人してうちの店へ来て……」
アポロの話になると顔を輝かせ嬉々として語り始めた。微妙に黒騎士の顔が引き攣っている。
「忘れたな……」
「ふふ、そうかい? 兎も角二人は姉妹みたいでねぇ。可愛かったもんさ」
「……」
おい。あの黒騎士が照れてやがるぞ。これは珍しい。
「おいおい……こりゃ一体どーいうことなんだ?」
「僕にもさっぱりだ。わけがわからないよ」
「明らかに私達にはなにか重要な情報が欠けているようだ」
「だな。オルキスちゃんが王女様だの、黒騎士と歳が近いだの。なにがなんだかさっぱりわからねぇ」
「娘のことだってのに……俺にはこんなに知らないことがあるんだな」
「兎も角今は待ちましょう? あの子も遂に、色々と話す気になったみたいだしね」
グラン達がなにやら話し込んでいる。その隙に俺は黒騎士へ声をかけた。
「へぇ? あんたにもそういう時期があったんだなぁ、アポロ?」
「……黙れ。これだから知られたくなかったんだ」
「いやぁ、今は厳つい顔ばっかのアポロちゃんがはしゃいで走り回ってる姿見たかったなぁ」
「貴様……!」
俺の露骨なからかいにも、拳を握ってぷるぷるするしかできないようだ。老婆のいる手前、暴力を使うわけにはいかないのだろう。
「……いやぁ、ダナンってホント恐れ知らずだよねぇ。そういうのは思っても言わない方がいいと思うよ? 僕もちょっと興味あるんだけど」
「ドランク、お前もか。あたしも興味あるな。もっと教えてくれ」
「お前らも一緒じゃねぇかよ」
傭兵コンビの乗っかってくる。
「じゃあ二人の昔話でも……」
「や、やめてくれ」
「わ、私も聞きたいです!」
「二人して運搬型ゴーレムに登って叱られてた時なんか――」
「ま、待ってくれご婦人!」
楽しげに話す老婆を完全に止めることはできず、老婆の家に着くまでの間本人にとっては黒歴史なのだろう話を聞いた。いやぁ、いい話が聞けた。
「二人は本当に仲が良くってねぇ。けど、あんなことがあって……。あれ以来この国は変わっちゃってねぇ。大事なモノをたくさん失って。だからアポロちゃんもこの国を離れたんだろう?」
「そうだ。私にとってもあれは大きなきっかけだ。しかし私は失ったままでいるつもりはない。失った全てを諦めはしない。取り返すため……全てをあるべき形に戻すため、私は戻ってきたんだ」
そこで、例の計画に繋がるわけか。俺としては他のところにも目を向けて欲しいんだがねぇ。まぁ言ってもしょうがないことか。
「黒騎士。必ず全てを説明してもらうぞ」
「わかっている。遅かれ早かれこうなることは覚悟していた。貴様らには知る権利がある。だが……これは私の我が儘でしかないが、今この場は話を合わせて欲しい。必ず話す、それは約束しよう。しかし真実は全ての者に聞かせるわけにはいかないのだ」
「?」
黒騎士の目は先頭を歩く老婆を見据えていた。そして、老婆の家につき嬉々としてご馳走を作ってくれている中、俺達は一室に集まる。俺としては料理を手伝いに行きたかったが、この空気で出ていくつもりはなかった。黒騎士がどう話すのか、どこまで話すのかには興味があるからな。
皆が腰を落ち着けた中、カタリナが口火を切る。
「さぁ、話してもらおうか。黒騎士……貴殿の知る真実をな」
視線が黒騎士へと集中する。
「そうだな。どこから話したものか……」
考え込むようにしながら、一つ一つ話していく。
「まず、私がアウギュステの出身だということは、どうやら既に知っているようだな」
「ああ」
「私は確かにアウギュステで育ったが、随分幼い頃までだ。そう……丁度そこの小娘くらいの歳か。その頃に、私の母が亡くなった」
黒騎士がイオを指して話す。父であるところのオイゲンが顔を歪めていた。
「母が亡くなった時、その男は島にいなくてな。身寄りを失った私はアウギュステ経済特区の支援を受け、特待生としてエルステ王国に渡ったのだ」
黒騎士はオイゲンを見ることなく淡々と話を進めていく。親子の
「エルステは、このファータ・グランデ空域でも有数の長い歴史を持つ国だったからな。星の民襲来以前より続く王国は、歴史を学ぶには最高の環境だった」
そういやこいつが部屋で読んでいる本も歴史の考察本とかだった気がする。そういうのが好きなのかもしれない。
「当時のオルキスはいやに幼くてな。私よりも年下だと思ったくらいだ。しかし、それ故に純真で、明るく……私にないモノを全て持っていた。歳が同じでもこうも違うのかと驚いたよ。そして同時に妬ましくもあった。だが彼女が驕ることは決してなかった。誰に対しても分け隔てなく優しかった。よく笑い、よくはしゃぎ……よく食べる。隣にいるだけで元気になれる、そういう子だったんだ」
アポロがオルキスと出会った時の感覚は、俺がグランと出会った時に近い。同年代で、同じ能力を持ってるってのにキラキラして目ぇしやがって、妙に気になったのを覚えている。
「彼女のご両親、ヴィオラ女王陛下達も私に優しくしてくれてな。私は、一生かかっても返し切れないほどの恩を受けたよ。オルキスと共に過ごした年月は、間違いなく、私の中で最も幸せな時間だった。女王陛下達から受けた恩。彼女と過ごした幸せな時間。それを決して忘れない。だから私は彼女を……オルキスを取り戻すためなら如何なる犠牲も払う。そう決めたのだ」
そのためなら今のオルキスもルリアでさえも、か。悲壮な覚悟だな。もちろん、止めるような真似はしない。俺はこいつらの味方をする。ただ、それだけの話だ。
黒騎士はそれ以上語ることなく口を閉ざした。その後飯を食べて一晩泊めてもらう。慣れない砂漠を歩いて疲れていたので大変有り難いことだ。
翌朝。改めて王宮へと向かった。
グラン達とリーシャは昨日の話が印象的だったのか眠れていないようだ。少し眠そうにしている。元から黒騎士側の俺達三人はぐっすり眠っていたが。肝が据わっているからだろうか。あとグラン達の中でもロゼッタは平然としていた。彼女が取り乱したのはユグドラシルの時か。そんなに見てないな。
「黒騎士さん。昨日黒騎士さんが話してくれたことは、全て真実なんですか?」
「ああ。オルキスについてはあのご婦人も言っていた通りだ」
「じゃあ一体オルキスちゃんにはなにがあったんですか?」
「そうか。それをまだ話していなかったな」
ルリアに言われて黒騎士は思い出したように答える。
「だが、残念ながら私もあの日、あの場所には居合わせなかった。十年ほど前のある日、オルキスのご両親は死に、彼女は今の……人形のようになった。オルキスはあの日以来、成長が止まり、心を失い、人形のようになってしまった」
「おいおい。なにが起きたらそんなことになるってんだよ」
「星晶獣だ。星晶獣に絡んで事故があったらしい」
「らしい、というのは?」
「私が駆けつけた時には全てが終わっていた。私は後になって、その場に居合わせていたフリーシアから全てを教えられたのだ。表向き、オルキスの両親は国外で事故死と報じられ、一人娘のオルキス王女は行方不明ということになっている。そう、国民には知らされている」
「けど実際は行方不明ではなく、今のオルキスちゃんになって帝国に匿われてるってわけね」
「そうだ。そして私はあの日以来、必ずオルキスを元に戻すと誓ったのだ」
言い切って一息吐き少し自嘲気味の笑みを浮かべた。
「後のことは貴様らも知っている通り。挙句フリーシアに裏切られ、今に至るというわけだ」
「それが黒騎士の目的だったのね」
「アポロ。お前、そんなことを……」
「けどよぅ、元に戻すったって、どうやって元に戻すんだよ?」
そこでビィが尤もな疑問を口にする。
「案ずるな、方法はある。だがそのためには今のオルキスが、あの人形が必要なのだ。今貴様らにその方法を話すことはできない。少なくともあの人形を取り戻すという点では目的は一致している。雌雄を決するなら人形を取り返した後だ。まずは進むぞ、王宮を目指す」
まぁ、雌雄を決することにはなるだろうな。その方法が方法だけに。……その時俺は、どうするんだろうか。黒騎士が戦うなら俺もこいつらと戦うんだろうか。それとも、なにか別の立場になってるんだろうか。
とりあえず、少なくとも黒騎士の敵に回ることはねぇなとだけは確信しているが。
そんなことを考えつつ歩いていると王宮へと辿り着いた。うぃ……んという駆動音が聞こえてきたかと思うと、入り口を門番のようにゴーレムが塞いだ。
「な、なんだぁ!?」
「ゴーレムだな。エルステ王国は星の民が襲来して星晶獣が最大の兵器となるまでの間、ゴーレム産業が発達し戦力としても有数の力を持っている国だったからな。今もその名残りで設置されているというわけだ」
「呑気に解説してる場合じゃないでしょ!」
「ふん。こんな木偶如きに手こずる貴様らでもあるまい。早々に突破するぞ!」
黒騎士の勇ましい姿に感化されてかゴーレムへと立ち向かっていく。巨大で目からビームとか放ってきたが、面子が強すぎて話にならなかった。
王宮内へ入るがエルステ帝国の兵士どころか、防衛システムとして以外のゴーレムすら見当たらない。
「……? まぁいい。手分けして王宮内を探すぞ。迷子になっても助けんからな」
「ぐ、グランは黒騎士についていこうぜぇ! 方向音痴だろ!」
「なっ。……別にそういうわけじゃないし。そんなに言うなら僕とラカム、オイゲンとであっち回るからな」
「ま、待てよぅ、グラン!」
ビィに煽られたグランはムッとした様子で男連中を引き連れて行ってしまう。慌ててビィもついていった。
「じゃあ私達も行きましょうか」
ジータが女性陣を率いてグランとは別の道を行く。
「スツルム、ドランク、行くぞ」
「はいは~い」
「わかった」
内部のことをわかっている人が行ってしまった。……どうせなら俺も連れていけよ。
「えっ?」
「……しょうがねぇ。一番人数少ないが一緒に行くかぁ」
「は、はい。そうですね」
「……ようやく、二人っきりになれたな」
「へ、変なこと言わないでくださいっ!」
「へーい」
取り残されてしまった俺とリーシャで残った方向へ歩き出すことになった。
いや、本編で大事なところを書くのって難しい。私の力不足もありますが。