昨日遅れたのは書くのに熱中してたからです。この話から考えると一ヶ月ぐらい毎日更新できそうかな? ……って前も言った気がしますが。
兎も角人形の少女編完結までは書き終えましたので、そこまでは更新が続くことが確定しています。
とりあえずご報告まで。
アマルティア島での騒乱を乗り越え、ガンダルヴァ率いる帝国兵を退けた一行は、全空から集められた貴重な資料のある資料庫を片っ端から探っていた。
探しているのはビィに関する記述とClassⅣに関する資料だ。
しかし膨大な資料の中から探すのは困難を極めるのか、あまり成果は上がっていなかった。
「ないわね……あんたみたいな変わったトカゲの資料」
「オイラはトカゲじゃねぇ! 大体ただのトカゲじゃ星晶獣に対抗できねぇしよ……」
「それもそうね」
イオは変わったトカゲの資料を読み漁るのをやめ別の資料に目を通し始める。
「……」
「なぁ、オルキスちゃん。一つ一つそんな熱心に読んでたらキリねぇよ」
「……待って。今、いいとこ」
読み進めるペースの遅いオルキスをラカムが咎めるが、本人は読んでいる本に集中したいようだ。
「っつぁー……ダメだ。こう細かい字を見てると目が霞んできやがる」
オイゲンは年の影響もあり目の間を摘んだり天井を見上げたりしている。
「むむむ……。ね、ねぇカタリナ。これ、なんて読むの?」
「ん? どれどれ……」
難しい字にルリアが詰まればカタリナが教える。進み具合が遅くなるのは当然だった。
「ねぇスツルム殿。これ見てよ。美味しいだけじゃなくて味方も強化できる料理だって〜。ダナンに今度作ってもらおうよ〜」
「ああ。肉料理を忘れるな」
ドランクとスツルムは全く関係ない資料を漁っているようだ。
「はぁ……。こんな調子でビィ君に関する資料、見つかるのかな……」
リーシャの懸念も尤もだった。今まともに漁っているのは彼女一人という状況だ。
「とはいえ地道に探すしかないですよね……」
棚に並んだ資料の内、背表紙があって関係なさそうなモノは飛ばして人差し指と目で資料を追っていると、一冊の小さい古びた資料を見つけた。
「これは?」
手に取ると「旅の記録」と書かれたとある騎空士の手記であることがわかる。
「記入者……ヴァルフリート!? 父さんの?」
実の父親の手記ともなれば興味が湧く。それにかつてグランとジータの父やダナンの父、それにロゼッタも同行していたという。興味が引かれないわけもなかった。
ほとんど無意識に中を開く。
「あれ? この日誌……ページが破かれてる。前の方がほとんど全部なくなってる。一体誰が……?」
背表紙側に乱雑に破かれた切れ端が残っている。何者かが意図を持って破いたのだと思われる。しかも、前半部分は見せず後半なら読まれてもいい、ということでもあった。手記全体を見られたくないなら、これそのモノを持ち去ってしまえばいいからだ。
前半になにが書かれていたのかは気になるが、残った後半部分を何気なく捲って読み進めていく。
「……『小さな赤き竜』?」
ふとページを捲る手が止まる。その文言とビィを眺めて姿形を改めて確認した。
小さい、というのは間違いない。赤い、というのも正しいだろう。では竜かどうかだが。ビィは確かに竜の特徴である角やトカゲっぽい造形と蝙蝠のような形をした翼を持っている。竜はもう少し鱗に覆われていてビィのようにふさふさではないはずだが、ビィを表現していると言ってもいい言葉だ。
続きが気になって「小さな赤き竜」の特徴を読んでいく。
「……人語を解し、星の力を抑える特異な存在……。その出自は不明だが、星晶獣、ひいては星の力を抑える特殊な能力を持ち……!? こ、これって……! 皆さん! これ――え?」
ようやく見つけたビィの手がかりに他の面々を呼ぶが、続きのとある記述を見て息を呑んだ。
「おう! どうしたリーシャ? なにか見つかったか?」
ビィの無邪気な声が話している間に近づいているのが聞こえて、
「えっ? あ……は、はい! えと……こ、これです!」
続きの記述があった部分を破り取って後ろ手に隠し振り向いた。
「んん? リーシャ、今なんかページ破んなかったか?」
「い、いえ! 紙が擦れた音かなにかじゃないですか? そ、それにほら! この日誌、随分前に、前半の方が破られてるみたいなんです」
動揺がわかりやすく顔に出るリーシャではあったが、なんとか取り繕おうと言い訳を述べる。
「うげっ……なんだこりゃ? 確かに前の方のページがごっそりなくなってるじゃねーか」
ビィに破かれたページを見せることで、一部が破けていても不思議ではないように思わせた。
「ホントだ。貴重な資料なのに勿体ないね」
遅れてやってきたジータとグランも日誌を覗き込む。
「でもこの……『小さな赤き竜』って、ビィ君のことじゃないですか?」
リーシャは日誌をビィ本人へと渡す。説明の記述を三人で読んでいるようで、次第に表情が晴れていくのが見て取れた。
「おっ? 遂に見つけたのか?」
「凄いじゃないリーシャ! 見せて見せて、なにが書いてあるの?」
他の仲間達もようやく見つかった手がかりに顔を綻ばせて日誌のある方へと向かっていく。そんな中、リーシャは一人少し離れてから破り取ったページに記されたことに改めて目を通す。
「『小さな赤き竜』と『蒼の少女』は決して相容れない存在であり、互いのために近づくべきではない……」
「小さな赤き竜」はビィのことであり、「蒼の少女」とはおそらくルリアのことだろう。どちらも出自が不明でその存在についても謎が多いのだが。
「こんな書き方……。これじゃまるで、ビィ君とルリアは敵同士みたいな……」
一行が問題解決の糸口を見つけて喜ぶ中、リーシャは一人新たに見つけた謎に頭を悩ませるのだった。
◇◆◇◆
遂にビィの力に関する手がかりを得た一行。ではこれからどうするか、というところなのだが。
「ビィの力が封印されてる祠、って言ったらあれだよねぇ。ザンクティンゼルにあるヤツ」
「僕も同じこと思った。森の奥深くにある、小さな祠だよね」
ヴァルフリートの手記を読み進めて、ビィの力がザンクティンゼルに封印されているのではないか、というところまで漕ぎ着けた。
「でも英雄というか、ClassⅣについてはなかったね。英雄譚は色々あったけど」
「……アポロはどこかに英雄を支えた侍女がいるって言ってた」
「つっても全空のどっか、ってことだろ? 流石に探すのもなぁ」
「行方もわかっていない人物を探す時間はないだろう。ここは一度ザンクティンゼルに行き、急ぎビィ君の力を解放するべきだと思うが」
それぞれ意見を募ってくれる。双子の団長が最終決定を行うので、二人が顔を見合わせた。
「ザンクティンゼルかぁ。なんか懐かしい気がするね」
「うん。そんなに離れてないはずなのに、話に出てきたら帰りたくなってきちゃった」
そう言って笑い合い仲間達へと向き直る。
「じゃあザンクティンゼルへ行こう!」
「ルリアとカタリナさん以外は知らないだろうから、私達が案内するね!」
遥かなる旅路の途中とはいえ、故郷に帰れるのは嬉しいようだ。
一方で久し振りにアマルティアへと訪れたリーシャはモニカと話していた。
「……そんなことがあったのか」
「はい。ですので私はこのまま彼らの旅に同行しようと思っています。ただその、任務続行に当たりいつまでも船団長不在というのはどうかと思いまして……」
「一理ある。が、ヴァルフリート団長は大抵どこかへ行っている」
「父さんは父さんですよ……。一人で色々とできてしまいますから」
「だが秩序の騎空団のトップがそういった、自分が動いて解決しようとするような男だ。長らく船団長が不在だったところで責める権利はない」
「それはそうかもしれませんけど……」
「なぁに、帝国を打倒するまでの間だろう。以降はまた相談だがな。それに今この島に残っても停滞するだけで先に進めない。なにしろ先の一件の後処理が山積だ。貴重な人材を外に出すのは惜しいが、私情よりもこの空域の秩序を守るべき、だろう?」
「そうですね。モニカさん、ありがとうございます」
「気にするな。いつでも帰りを待っているぞ。無論、我々の力が必要になったらいつでも言ってくれ」
「はいっ!」
二人の話し合いは前向きなモノで終わった。これによりリーシャは全面的にグラン達へと協力することを決める。
そして一行は旅の始まりの場所、ザンクティンゼルへと向かうのだった。
ただし一人と一匹だけは不安を抱えたまま。
◇◆◇◆◇◆
「「ようこそ、ザンクティンゼルへ!」」
途中なんのトラブルもなく、田舎臭くはあるがどこか神秘的な雰囲気を漂わせる島へと到着していた。
久し振りの故郷だからかやたらとテンションの高い双子に連れられて、一行はグランとジータ、そしてビィが長年一緒に過ごしてきたという家へと歩いている。
「……ああして浮かれているのを見ると、二人もまだ子供なんだと思い出すな」
「普段は団長らしく振る舞おうとしてるみてぇだからな。こうして羽を伸ばすことも偶には必要だろ」
「オイゲンのおやっさんはロゼッタがいなくなってからホントに最年長みてぇだな」
「おいラカム、そりゃどういう意味だ?」
明らかに普段と様子の違う二人を微笑ましく見守りながら、仲間達は二人の後をついて歩く。
「あっ、ここが僕達の家だよ」
「埃溜まってるだろうから先に掃除したいかなぁ」
二人についていって辿り着いた彼らの家はなんの変哲もないモノだった。
「ほらビィ、着いたよ? 懐かしい感じがしない?」
「ん? ……あぁ、そうだな」
ジータがどこか不安そうなビィへと微笑みかける。そこで、皆は二人がビィの気を紛らわすために明るく振る舞っているのだと察した。
「じゃあ皆、大してモノはないけど入って――」
「待て」
「賛成~。ちょっと待った方がいいかもね~」
真っ先に傭兵二人が気づき、なぜかと考える前にカタリナ、オイゲン、リーシャが理由を察知する。
「どうかしたの、皆」
ジータはわかっていないらしくきょとんと首を傾げた。そして誰かが答える前に、がちゃりと扉が開く。驚いたグランとジータは思わず跳び退き警戒したようにそちらを見て、顔を顰め腰の武器に手をかけた。
「やぁ。お邪魔してるよ」
扉から出てきた人物は、黒髪に白い肌をした少年のような人物だった。ただ顔に浮かべた薄ら笑いと身に纏う雰囲気がただの子供ではないと訴えかけてきている。
「お前っ……!?」
「……ふん」
全く知らない人物に驚くビィ。少年の後ろに待機した青い髪の少女はつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「……あなた、誰?」
オルキスが少年へと尋ねる。
「おっと……君がそれを聞く? ま、覚えてなくても無理はないか」
「……覚えて? じゃあ私はあなたと……?」
オルキスの質問に答えず、彼は家から歩み出てくる。それに従い入ろうとしていた一行は後退った。少年が出てきたのに続いて中にいた少女も外で出てくる。少女は側頭部に三角の突起、そして尻尾が生えていた。それだけであればエルーンなのかと疑うところだが、彼女の両手は鎖で雁字搦めにされている。目つき悪く睨んでいる様子からは敵意を感じるが。
「立場も変わったからね。改めて名乗らせてもらうよ。……僕の名前はロキ。かつてこの空に降り立った誇り高き星の民の生き残りであり、エルステ帝国初代皇帝のロキだ。よろしくね」
彼の放った言葉は一行に大きな衝撃を齎した。
「ほ、星の民で、エルステの皇帝だと……!?」
「お、おいおーい。嘘は良くないなぁ、少年」
オイゲンほどではないが、ドランクも驚いてはいるようだ。普段と同じ笑顔に見えて若干引き攣っている。
「僕達だってねぇ、なにも知らないわけじゃないのよ? エルステ王国から続くエルステ帝国の皇帝になれる血筋なんて、もうオルキスちゃん以外には……」
「それはどうかな?」
ドランクの言葉を笑んだまま遮った。
「君が言っているのは、オルキスの母方の血筋のことだろ? エルステ王国最後の女王の夫、オルキスの父親……ビューレイストは僕の兄さんさ。これなら僕にもエルステの皇帝になる権利はあるんじゃないかな?」
確かに、ロキの言うことが本当であるならエルステ王国の系譜である。
「お、オルキスちゃんのお父さんの……? そ、それって……」
「……私の、叔父さん?」
「そうだね。その通りだ」
ロキは頷くが、なにも込められていないような瞳でオルキスを見据えた。
「でも、オルキス。僕は君が大っ嫌いだ。二度と叔父さんなんて呼ばないでおくれよ」
「……」
声音こそ変わらなかったが、有無を言わせぬ迫力がある。オルキスは反射的に半歩後退した。
「ったくよぉ……ロキ! お前は話が長ーんだよ!」
話し込んでいたからか、傍に控えていた少女が苛立った声を上げる。
「ああ、ごめんごめん! この子の紹介を忘れてたね。この子はペットのフェンリル。星晶獣のフェンリルだ。ちょっと躾がなっていないところは、大目に見てくれると嬉しいな」
「チッ……そんなのはどうでもいいんだよ」
ロキは忘れていたとばかりに紹介するが、フェンリルは苛立たしげに舌打ちするだけだった。
「それよりロキ。こいつらは喰っていいのかよ?」
「全くもう……フェンリル、お前は食いしん坊だな。もうお腹が減ったのか?」
「煩ぇ! てめえの話が長ぇのが悪いんだよ!」
「仕方ないなぁ。それなら、適当に外で食べておいでよ。餌ならそこら中にいるだろ?」
「……いいのかよ?」
「ああ、構わないよ。元々閉ざされた島の村だからね。村が丸ごと消えたところで誰も気に留めやしないさ」
二人の会話を聞いていた一行は、なにがフェンリルの餌なのかを理解し身体を強張らせる。
「ま、丸ごと……!? ま、まさか貴様……!」
驚きそれぞれ武器に手をかけたところで、
「へへっ。そーいうことなら遠慮はしねーぜ!」
フェンリルは顔を綻ばせた。
「――おやまぁ。帰ってきてたんだね、三人共」
そこへ穏やかな老婆の声が聞こえてくる。腰の曲がった老婆が道なりにこちらへ歩いてきているところだった。老婆を向いたフェンリルの口端が吊り上がる。
「っ!」
「に、逃げてお婆ちゃん!」
グランがすかさず剣を抜き放ってフェンリルを狙い、ジータが切羽詰まった声で老婆へと警告した。だがフェンリルの姿が掻き消えたかと思うと老婆の眼前に迫ってきており、
「まずはてめえからだ!」
フェンリルはまず鎖で縛られた両腕で老婆に殴りかかる。当然一行の行動は間に合わず老婆の頭が潰れ血の華が咲く――ことはなかった。
「……全く。お手をするなら顔じゃなくて手だと思うんだけどねぇ」
「あん?」
確実にフェンリルの攻撃は老婆を直撃したはずだ。だが怪我を負った様子もなければ後退した様子もない。依然としてそこに立っていた。
そして次の瞬間、老婆の手がブレたかと思うとフェンリルの身体がくの字に折れて真っ直ぐ吹き飛んでくる。元々フェンリルがいた地点を通りすぎて地面に転がった。
「「「……」」」
一見どこにでもいる老婆、だったはずだが。誰もが予想していなかった状況に黙り込んでしまっていた。
「……フェンリル?」
「……痛ってぇな。なんだあいつ。ぶっ殺してやる!」
「う~ん。ちょっと分が悪いかな。でもこのまま帰るのも面白くないよね」
ロキは考え込むように顎に手を当ててから、グラン達を眺めて薄ら笑いを浮かべる。
「うん、じゃあこうしよう。誰でもいいから彼らの中から餌にしていいよ。仲間はいっぱいいるみたいだし、一人くらい減ったって大丈夫。それにそこの女の子はそっちの彼と違って命が繋がってないから、一人だけ殺すには丁度いいんじゃないかな」
彼が差しているのがジータだとわかり色めき立つ面々。
「腐ってやがる……! てめえは人をなんだと思ってやがんだ!」
「ははっ! いいよ、うん。今のやり取りはそれっぽいね」
「いいのかよ、ロキ。喰っちまって」
「いいよ。もし退けられたら彼らの健闘を褒め称えないとね」
「上等だ、ぶっ殺してやる!」
フェンリルは体勢を立て直すと大きく魔方陣を描いて吹雪を巻き起こす。一行はロキが手を出すことも考えて一旦距離を取りつつフェンリルと対峙した。
「来い、《パラシュ》、《ウロボロス》!」
グランはすかさず武器を召喚し呼び出した二つの内杖をジータへと渡した。
「【ウェポンマスター】!」
「【ハーミット】!」
二人が最も得意とする『ジョブ』へと姿を変える。
「ディスペルマウント」
カタリナが吹雪による凍結えお防ぐために味方を虹のベールで保護した。これで準備は万端。グランとリーシャ、スツルムが前へ出る。カタリナは後衛に被害が出ないよう中衛として構えた。
人数は後衛が多く一見バランスが悪いように見えるが、ガンダルヴァとの戦闘を経て成長したリーシャにとって、彼より遅いフェンリルを相手にしながら他二人の行動に合わせることなど造作もなかった。
結果として弱くはないはずのフェンリルを圧倒することができている。
「チッ!」
フェンリルは苛立たしげに舌打ちして氷のトゲを放ち後衛を狙おうともするが、カタリナが油断なく構えているせいで一向に通らない。前衛だけでも手いっぱいなのに後衛が隙あらば攻撃してくるのが厄介だった。
戦いの最中リーシャがすっと身を引いたのを見て追い討ちしようとしたら、後衛のオイゲンから頭に銃弾を食らい吹き飛ばされる。正直なところいくら直撃しようが完全に倒されることはないだろう。だが、思うように戦えないということがストレスになっていた。
「おい、ロキ! こいつ外せよ!」
フェンリルはこのままでは一人も殺せないと見てかロキへと鎖で縛られた両腕を掲げて見せる。
「それはダメだよ。必要なモノだからね」
「チッ」
「それにしても、フェンリルを圧倒するだなんてやるじゃないか。正直驚いたよ」
賞賛するように言うが、表情は全く変わっていない。
「うん、これなら将来が楽しくなりそうだ。フェンリル、今日は帰ろうか。目的も達成したしね」
「まだ一人も喰ってねーぞ」
「それは僕に言われてもなぁ。戻ったらまた餌を用意してあげるから」
「チッ……しょうがねーな」
ロキに言われて渋々フェンリルが彼の下へ戻っていく。余計な戦闘はしまいと誰もそれを止めなかった。
「目的と言ったな。貴様の目的はなんだ?」
「宣戦布告、かな。僕は君達の……この空の敵だ。だから、末永くよろしくね
「……」
「じゃあ、その調子で頑張ってね」
ひらひらと手を振り、ふと思い出したかのように続ける。
「そうそう。最後に一つ、忠告だ。皆が皆僕みたいに気が長いわけじゃないなら、あんまり悠長にしていると、折角守った大事なモノを、結局失ってしまうかもしれないよ」
「なんだと? おい、そりゃどういうことだ?」
「どういうことだろうね。ふふ……さぁ、行くよフェンリル」
「ふん」
ロキは最後に意味深な言葉を残し、軽く指を振る。すると周囲に光が溢れ、その光が収まる頃には二人の姿はなかった。
「……なんだってんだよ」
ラカムが全員の気持ちを代弁したその時。
「クソッ! 村に誰もいないだと!? ふざけるな! もっとよく探せよ! 家に隠れてるなら大砲ぶち込んで、森に逃げたなら森を焼き払って! いいから探せよ!」
聞き覚えのある苛立った声が、村の方から聞こえてくるのだった。