ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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ダナン視点に戻ると言ったがあれは嘘だ。いや前話は嘘じゃないんですが、この話の三人称を挟んでから完全に戻ります。


最上階までの道中

 意識が覚醒し始めたかと思えば誰かが唇を重ねている感触がしたら、動揺するのは無理ないだろう。

 

 それでも身体が碌に動かないせいでなんとか動かそうとしても指が痙攣するように動くだけだった。それでもその誰かは離れてくれて、久し振りに自力で呼吸したかのような違和感がしたせいで思い切り咳き込んでしまう。

 酸素が充分に行き渡っていないらしい頭ではぼーっとしてしまい、なにかに抉られたような天井を見つめた。

 

「……目ぇ覚めたんならできればヒールオールしといてくれ。生憎俺ももう、限界なんでな」

 

 ここは? と呟いていたら近くから誰かの声が聞こえた。言葉通り限界が近いのか声は掠れていた。そして声のした方を見やると黒髪の少年が力なく倒れ込んで自分の腹部に頭を乗せるところだった。

 

「…………ダナン君?」

 

 ようやく頭が働き始めて今おそらく自分の命を救ってくれて、倒れ込みぴくりとも動かない少年の名前を呼ぶ。

 焦りが生まれたことで急速に頭が回転し始めて、寝転がったまま彼の言われた通りに行動を開始した。

 

「【ビショップ】。ヒールオール!」

 

 回復魔法を使用してダナンの傷を癒す。見えている部分に傷がなくなったことを確認し、ゆっくりと身体を起こした。自然と腹の上にあった頭が太腿へ移動する。仰向けになるように体勢を変えさせて血が通っていること、そして息があることを確認しほっと一息吐いた。

 

「……助けられちゃったね」

 

 意識が落ちているらしい彼の頭を撫でると、命ある温もりが伝わってくる。そういえばと思い返せば直前にレーザー照射から守ってくれていたような気がする。つまり紛れもなく命の恩人だ。

 そして恩人と言えば目覚める直前までの行為。きっとこんな構図だったんだろうと想像しかけ顔が熱くなりそうだったので中断する。

 

 いやしかし逆の立場で考えてみたらどうだろう。

 

 ダナンが死にかけの重体で意識不明。人工呼吸をしなければ助からないとなった時、自分は照れて見殺しにするだろうか。否だ。見殺しになんてできない。例え後で気まずくなったとしても命を救うのに躊躇なんてしてる暇はない。

 つまりは。

 

「救命措置、は仕方ないよね?」

 

 奇しくも彼と同じような言葉を自分に言い聞かせる。そう、あれは命を救うための処置。互いにノーカウント。意識する必要なんてない。リーシャのようになるな。

 

「……うん、大丈夫」

 

 とりあえず一区切りつけることに成功したジータは、とはいえ命の恩人を無碍にもできないので自分の膝に寝かせたまま頭を撫でていた。場所が草原とかならイチャイチャするカップルのように見えなくもない。

 今誰かが上がってきたら確実にからかわれること間違いなしだった。

 

「……随分と仲良くなったモノだな、ジータ」

「っ!?」

 

 後ろから遠慮がちにかけられた声にジータの身体がびくんっと跳ねる。錆びついたようなぎこちない動きで振り返った先には声をかけたカタリナを始めとする下の階に置いてきた面々がいた。オイゲン、ラカム、ロゼッタ、スツルム、ドランク、カタリナ、リーシャ。万全の状態とは言えないが皆無事なようだ。しかし彼らの無事を喜ぶ前にしばければいけないことがあった。

 

「ち、違うんです! これはその、助けてもらったのでそのお礼に……!」

 

 不意打ちだったせいか先程の言い聞かせも無意味になり羞恥やらで顔に熱を持ったまま否定する。

 

「いや、わかっている。ジータも年頃だからな」

「それ絶対わかってないですよね!」

「ジータさん……ダナンは、やめておいた方がいいと思いますよ?」

「リーシャさんだけには言われたくないです」

 

 理解したような顔のカタリナと、複雑な表情をしたリーシャ。

 

「グランがルリアと、ってなるとジータは一人になっちまうからな。いいんじゃねぇか、別に」

「ビィもいるので無理ですよ。というかホントにそういうんじゃないんで」

「人は選らんどけよ、男がロクでもねぇと子供に嫌われちまうからな。……俺みたいに」

「笑えないので自虐しないでくださいオイゲンさん」

 

 なんだかからかわれている内に冷静になってきてしまった。周囲が割りと乗り気だからだろうか。

 

「これでダナンがからかえると思うか?」

「いやぁ、無理じゃないかな〜。適当にあしらわれると思うよ」

 

 傭兵二人はジータではなくダナンをからかいたいようだ。

 最後に経験豊富そうな雰囲気だけはあるロゼッタに目を向ける。ジータの視線に「ロゼッタさんは変な勘違いしませんよね?」という意味が含まれているのは仕方がない。ロゼッタは余裕ある笑みを浮かべて一言。

 

「いいんじゃない? 好きになる相手は家族と反対の人だって言うじゃない」

 

 ダメだこの人悪ノリしてる……! 味方がいないと悟ったジータはがっくりと項垂れた。

 

「……はぁ。なんかもういいです。一回死んだのにからかわれて……」

「「「死っ!?」」」

 

 何気なく口にした一言に仲間達がぎょっとする。……もちろん想定通りの反応である。

 

「うん。さっきまでね。そこを多分リヴァイヴで蘇生されたんだと思う」

「そ、そうか。すまない、その……」

「ううん、別にいいですよ」

 

 ダナンがいなかったらジータは死んでいたかもしれないという事実に、重い空気が流れ始める。そんな中でも話題を変えられるようにダナンをこっそり突いて起こそうとするジータは周りに気を遣いすぎである。

 

「ん、あぁ……?」

 

 そんなジータの突っつきも効果あってかダナンがぼんやりとした声を零す。やがてぱちりと黒い瞳を開けると目が合った。早くに目が覚めたことを喜び顔を綻ばせて声をかけようとする前に、ダナンがすっと手を伸ばしてきて頬に触れる。ぴくっと身体が硬直してしまうが、

 

「……生きてんな」

 

 どうやらちゃんと確認したかっただけのようだ。それだけを言うとさっさと身体を起こし焦げていた右腕の調子などを確かめ始める。

 

「……あ、うん。ありがとね、助けてくれて」

 

 そこでようやく止まっていた身体が動き始める。

 

「別にいい。おっ、お前らも来てたのか。……下にロキとかいなかったか?」

「? いなかったよ? あのよくわかんない皇帝陛下もなにが目的なんだかねぇ」

「皇帝陛下? あいつが?」

「知らなかったの? オルキスちゃんのお父さんの弟、だってさ」

「へぇ」

 

 起き上がったダナンは下の階にいたはずの者達の姿を認めて笑いかける。

 

「……じゃああれは俺だけってことか」

「ん? なんか言った~?」

「いや、なんでも」

 

 ぼそりと呟かれた冷たい一言は、近くにいたジータにしか聞こえなかったらしい。どうやら彼がロキ関連でなにかあったらしいというのと、おそらくアレを気にしていないという話題転換なのだろう。

 

「俺は後から来ただけだから最新の情報はジータか。他のヤツらはどうした?」

「……そうだね」

 

 ダナンの意識してか真剣な声音に誘発されて気を引き締めたジータは立ち上がって服を払うと真面目な顔で集まった全員を見渡した。

 

「私がここに残ったのは暴走するリアクターを止めるため。皆は傷だらけでも上に行ったフリーシア宰相を追ってったの」

「あいつ上にいやがんのか」

「うん。黒騎士さんもいるから多分大丈夫だとは思うんだけど……」

「ま、急いで行くに越したことはねぇか。ならさっさと行こうぜ」

 

 まだ敵が残っていると認識し、早々に階段を上がっていく。ジータとダナンが並んで先頭を歩いた。

 

「そうだ。ダナン君はさ、これが終わったらどうするとかあったりする?」

 

 階段を上がる中でジータがそう尋ねた。

 

「……それ、ロキにも同じこと聞かれたんだが」

「えっ?」

 

 空の世界の敵を自称する怪しげな人物と同じだと言われてジータは微妙な顔をしている。

 

「答えは簡単だ。なにも考えてねぇよ。生憎と目の前のことを乗り越えるだけで精いっぱいだ」

「そうなんだ。でも将来やりたいことを胸に秘めてると力になる、とも言うよ?」

「そんなもんかね。やりたいことなぁ」

「案がないんだったら私達の団に入る? きっと歓迎されるよ?」

 

 その後ろで「いや別に歓迎しねぇけど」とボヤいているラカムはスルーされた。

 

「それだけは絶対しねぇ」

 

 しかしロキにも告げた通り、憮然とした表情で断言した。

 

「え~。ダナン君が加わったら面白いと思うんだけどなぁ」

「それもロキと同じ発言だぞ。……ま、ジータとは兎も角他のヤツらと気が合わねぇからな。仲間になるのは遠慮してぇ」

「そ、そっかぁ」

 

 何気ない言葉ではあったがジータとしては「つまり私とは気が合うと思ってるってこと!?」と内心荒れ模様になりそうな心地だ。

 

 ――そこでふと、ダナンに冗談のような天恵が降りてきた。なんてこともない、普段と変わらぬただの軽口のような天恵だった。

 

「じゃあそうだな――騎空団起ち上げてお前らより先にイスタルシア行くってのも面白いかもな」

 

 ダナンとしては「えっ? お前ら先に旅始めた癖に俺より遅かったの?」と煽るだけのための発言だったのだが。

 

「いいね、それ! そうなったら手強いライバルになりそう。でも絶対負けないから」

 

 軽い冗談のつもりだったのだが、思いの外ジータが真剣に受け取ってしまう。手強いと言いつつも負けないと宣言して笑う辺り、負けん気が強いのかもしれない。

 

「……冗談だよ。騎空団なんて柄じゃねぇ」

「え〜。同じ能力を持つダナン君がライバルになったら面白いと思うんだけどなぁ」

「同じ能力持った、歩けば厄介事に巻き込まれる二人の騎空団とライバルとか面倒しかねぇよ」

「……歩けば厄介事に、ってそんなにトラブルメーカーじゃないからね」

「そうかい」

 

 ジータは膨れっ面をするが、対するダナンはあまり信じていないようだ。自分から首を突っ込んだとはいえ、まさか世界の命運を懸けて戦うことになるとは思いも寄らなかったのだ。それは愚痴も言いたくなる。

 

 後ろをついていく仲間達も興味深そうに二人の話を聞いていたのだが、九階が近づくと戦闘音が聞こえてきて気を引き締める。

 そうして遅れてやってきた彼らが見たモノは、

 

「散れッ!」

 

 黒い甲冑の騎士と

 

「あああぁぁぁぁ!!」

 

 巨大な蜘蛛、もとい蜘蛛の頭から身体を生やした方が本体のフリーシアである。

 黒騎士も本気なのか、奥義を放てばフリーシアの巨体が吹き飛び致命傷を負って元の姿に戻された。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 戦闘力だけなら余裕はありそうだが、疲労している様子だ。そんな長期戦になるようには思えないのだが。

 

 すると疑問に答えるようにフリーシアの近くにミスラ・マリスが姿を現した。そして傷だらけのフリーシアが光に包まれたかと思うと再び()()()()()()()で魔晶を発動した蜘蛛へと変わる。

 

「おい、アポロ! こりゃどうなってやがんだ!?」

 

 オイゲンが叫んだ声を聞いてようやくこちらに気づいたらしい。顔を向けたかと思うと迫ってきているフリーシアを無視して斬撃を放ってきた。……ダナンへと。

 

「おっと」

 

 とはいえ本人は事もなげに屈んで避けていたのだが。

 

「貴様、よくのこのこ顔を出せたモノだな」

 

 余所見をしたまま倒キック(ヤクザキックとも)をフリーシアへかます黒騎士。

 

「いやいや、そう怒るなよ。敵さんに集中した方がいいと思うぞ?」

 

 などと言いながら【アサシン】になって麻痺針をフリーシアへ投擲し黒騎士へと近づいていくダナン。

 やがて顔を突き合わせるような距離まで近づいた二人へとフリーシアが迫るが。

 

「黙れ」

「煩ぇよ」

 

 黒騎士の蹴りが蜘蛛の頭部分を襲い、ダナンの抜き放った銃がフリーシアの眉間を撃ち抜いた。許し難い敵とはいえ躊躇いなく殺した彼に眉を顰める者もいたが、すぐにミスラ・マリスが現れて死んだはずのフリーシアを復活させた。

 

「過去の遺恨は水に流そうぜ。俺はこうしてここに来たわけだし」

「ふん。まぁいい。全てを終わらせた後にじっくりと話すしかないか」

「……俺は別に話す必要はねぇんだけどな」

 

 なんだかんだ言いながらも揃ってフリーシアを倒す様を見ていると、「こいつら仲いいな」と思う他の面々だったのだが。

 

「あああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 理性なき叫び声を上げて再度蜘蛛になったフリーシアが突っ込んできた。

 

「で、こいつはなんでこんなになってんだ?」

 

 黒騎士とダナンは前脚を鎌のように振るってくるフリーシアの攻撃を避けながら会話を始める。確かに最新の魔晶を使ったフリーシアは強いが、ダナンが苦戦したのは腐っても宰相の頭脳を持つフリーシアである。狙いを定めた一撃とそこに敵がいるから振るわれた一撃、どちらが厄介かは言うまでもない。

 

「ミスラが出現しただろう? この女は魔晶を使うだけでは勝てないと見るや、ミスラ本体の“契約”の力を使ったのだ」

「契約だ?」

「ああ。フリーシアは『何度この身を引き裂かれようと、必ず悲願を成就させる』と、ミスラに誓ったのだ」

「なんだと!?」

 

 ミスラの誓約への強制力を知っているラカムは驚きの声を上げた。

 

「つまりフリーシアは……」

「ああ。文字通り何度倒されようと、見ての通り復活する」

 

 カタリナの瞠目に応えるように、黒騎士は今一度フリーシアを両断してみせる。言葉通り、両断されたはずのフリーシアが元通りになってまた襲いかかってくる。

 

「なんてことを……!」

「んなことしたら身体が元通りになっても精神が持たねぇじゃねぇか……」

 

 リーシャとオイゲンは既に正気を失った様子のフリーシアを憐れみの目で見た。

 

「ふん。ここまで来て敵の心配とは、随分と傲慢なモノだな。殺せないなら手段を選んではいられないだろう。そのために上へ他の連中を向かわせている」

「そういえばグラン達がいないですね」

「ミスラの誓約は絶対だ。遵守する以外に道はない。ルリアやオルキスの力でもどうにもできないモノだ。だからこそ、この先にいる星晶獣を使う必要があった」

「……アーカーシャね」

 

 黒騎士の言葉を聞いたロゼッタが口にした名に動揺が広がる。

 

「でもボスぅ~。アーカーシャ使ったら世界滅亡しちゃったりするんじゃないの?」

「よく考えればわかることだろう。確かに過去を書き換えれば今が変わってしまう可能性がある。だが未来を書き換えれば、少なくとも今に影響はない」

「それでアーカーシャを急遽起動させに上へ行かせたってわけか」

「ああ」

 

 彼女が一人フリーシアと戦っているのはそういう理由らしい。

 

「……だが、明らかに遅い。ヤツらが階段を上がってから五分以上経過している。星晶獣を起動しフリーシアの存在を未来から抹消する――それだけのことにこれほど時間がかかるとは思えん」

「あいつらが優しいから敵でも消すのはちょっと、って躊躇ってるとかじゃねぇの?」

「かもしれんが、なにかしらの手は打つはずだ。それがないということは」

「まさかグラン達になにかあったんじゃ……!」

 

 黒騎士の話を聞いて双子の兄達の安否が心配になったらしいジータは、

 

「すみません、黒騎士さん! ここはお任せします!」

「元からそのつもりだ」

 

 一声かけてから全力で十階へと上がっていった。カタリナ、リーシャ、ラカム、ロゼッタも彼女に続く。

 

「……アポロ。俺は死ななかったぜ。だからお前も、死ぬんじゃねぇぞ」

「弱者が強者の心配をすることほど、無駄なことはないな」

 

 オイゲンは振り返らない娘の姿を見つめつつ、それでも仲間の様子が気になるのか階段を駆け上がっていった。

 

「ボスぅ。僕達も加勢した方がいい?」

「疲れてるなら手を貸すぞ」

「誰にモノを言っているつもりだ? お前達も上へ行け。上で予想外の事態が起きていた場合の対処を早く済ませた方が、結果的に楽になる」

「ボスの命令なら仕方ないね~」

「ああ。最初に全額貰ったとはいえ、世界の命運を懸けた戦いなんて割りに合わない仕事だがな」

「ふん。働きに応じて上乗せはしてやる。たかだかミスラ・マリスの模倣体を倒した程度では無理だがな」

「じゃあ頑張って働かないとね、スツルム殿?」

「ああ。報酬はたんまり貰う」

 

 ドランクとスツルムも本気で黒騎士の心配をしているわけではなく、黒騎士の言葉からも二人への信頼が覗いている。オルキスに続いて付き合いが長い彼らは語るまでもなくお互いを信頼していた。

 スツルムとドランクは揃って駆け足で十階へ向かう。

 

 そして残ったのはダナン一人となった。

 

「なんだよ。俺には上に行けって命令しないのか?」

「ふん。どうせお前は勝手に行動するだろう。演技なら兎も角、性格上人の下について動くタイプではないな」

「そう言われると耳が痛い。まぁ、結局はあいつらの手助けしに行くんだけどな」

「そうか」

「ああ。俺は、黒騎士の時のアポロをあんまり心配してないからなぁ」

「蒸し返すなら殴るぞ」

「そんなんじゃねぇよ」

「冗談だ」

 

 二人で軽口を叩き合う。その間も黒騎士はフリーシアを相手にしているのだから、彼女の強さが窺えるだろう。

 

「もしかしたら時間がかかるかもしれないし、そんな我がボスに贈り物だ」

「なに?」

 

 怪訝に思って黒騎士がダナンへ顔を向けると、ごそごそと担いでいた革袋を漁っている。そして透明なケースを取り出した。中には黄色いモノが入っている。

 

「疲労回復レモンの蜂蜜漬け」

「……」

 

 それを戦闘中に食べろと? と黒騎士が呆れたのは言うまでもない。

 

「あと疲労軽減スタミナドリンクだな」

「……少しは空気を読んだらどうだ?」

 

 堪らずツッコミを入れてしまう。

 

「まぁこれは半分冗談だ」

 

 半分も本気があったら充分シリアスブレイクになると思うのだが、というのは置いておいて。

 

「本命はこれだ」

「それは……」

 

 ダナンが取り出したのは禍々しく輝く結晶、つまりは魔晶である。

 

「なんでも身体能力や魔力が上昇する効果がある。まぁつってもデメリットを極力軽減したせいで姿が変化しなかったり再生力がなくなったりしてるんだけどな」

「……そういえば、お前は盗みが本業だったな」

「そういうこった。安心しろ。帝国の説明を鵜呑みにする必要はねぇが……効果は俺の身体で実証済みだ」

「よく試す気になったモノだな、こんな怪しい代物を」

 

 ダナンから手渡された魔晶を繁々と眺める黒騎士。

 

「いやちょっと、フリーシア暗殺しに行ったら魔晶使われてよ。ヤバいかなって思ってClassⅣ使った上にちょっと使ってみたんだ」

「ああ、五階での跡はお前か。だが後ろから来たということは、その状態で負けたのか」

「うっせ。どうやら俺が最初に使ったClassⅣはあいつらのより戦闘向きじゃないっぽいんだよ」

 

 戦いの師匠にジト目を向けられて言い訳をした。

 

「ま、そんなわけで使っても大丈夫なヤツだから安心しろ。あとポーションいくつか置いとくから、なんかあったら使うんだぞ」

「母親か貴様。……まぁいい。この女を倒すのに今のままでも充分だが、いざという時は使わせてもらおう」

「おう。折角拾ってやった命、無駄にすんなよ。俺の知らないところでなんて尚更な」

「ふん。お前がいなくても問題はない。だが、礼を言う」

 

 言い合ってからダナンは必要になりそうなアイテムを置いて革袋を担ぎ直し階段へと向かっていく。最後黒騎士が兜の奥でちょっと照れてたら可愛げがあるんだけどな、と思いながら。


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