ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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調整キャラ試用中……。

とりあえずシルヴァさんが普通に使いやすくなってて良かったです。奥義の使用間隔短縮の方ですけど。


最終局面

 上半身が紛れもない人型へと変わっている。筋肉のつき方やなんかが人にそっくりだ。頭もそのまま備わっていた。だが顔面はのっぺりとしていて目らしき赤い縦の線が走っている。

 通常の肩から伸びた腕とは別に下の方から腕が生えていて、背中から花のようなモノが生えている。更には金属らしき黄金の羽のようなモノを装着している。下半身には白い布を幾重にも纏っておりどうなっているかよくわからない。だが本来脚のある場所を辿っていった先にリヴァイアサンの頭にも似たモノがあった。脚と同じように二つ頭があるが、あれも攻撃してくるのだろうか。

 

 全体的な大きさが上がり威圧感も増している。一旦離れて様子を窺っているが。

 

 ……流石に最終形態だといいんだがな。

 

 これ以上強くなられたら厳しいかもしれない。なにより魔力がもうほとんど残っていない。

 

「ったく。そんな何回も姿変えられたら面倒だっての。なぁ、グラン?」

「うん、そうだね。でもあれを見てそんなことが言えるなんて、流石だな」

「俺だって余裕はねぇよ。……けどま、勝たなきゃいけないんだから死ぬまで勝つ気でいねぇと話にならねぇだろ」

「そうだね、ごめん」

 

 俺に謝る必要はないだろうに。

 

「ダナン君はなにか手ある? 私もう、魔力が尽きちゃって。【ウォーロック】は使えないかな」

 

 回復したグランのところまで戻って話していたところに、ジータが加わってくる。

 

「手はねぇよ。俺の嫌いな分野だが……皆で全力で戦うしかねぇだろ」

 

 他人と共闘するなんてこと自体が俺にとっては経験が少ない。「一足す一は二じゃない、三にも四にもなるんだ!」と平気で言いそうなグランなんかとは違って皆で戦えばなんとかなる、なんて不確かな要素には縋りたくない。

 だがこうして実際に戦ってみれば、事前準備ではなんともならないことばっかりだ。

 

「そうだ、ビィの力で弱体化はしてあんのか?」

「うん。最初からね」

 

 思いついた手を探ってみるが、グランに肯定されてしまう。まぁ正真正銘の最終決戦だろうし、出し惜しみする必要はねぇか。

 

「あと思いつくのは、ルリアやオルキスの力で星晶獣の力を借りて戦うってくらいか。まぁその場合完全に敵と見なされて攻撃対象になる可能性もあるから、一長一短だけどな」

「確かに、二人の力があればもうちょっと戦えるかな」

 

 星晶獣には星晶獣を、という単純な考えだ。だが強力な攻撃をバンバン使ってくるようなら守る対象が増えるので不利になる可能性は捨て切れない。

 

「それなら私達も一緒に戦います!」

「……守りも星晶獣にさせれば大丈夫」

 

 話が聞こえてから近づいてきたのか、ルリアとオルキス、ついでにビィが近くにいた。

 

「嬢ちゃん達の守りは俺達に任せときな」

「指一本触れさせねぇから安心しろ」

 

 そこにオイゲンとラカムが言ってくる。彼らなら遠距離から攻撃するのでフォローもしやすいか。

 

「私達もフォローします。この場での最大戦力はClassⅣなのですから、周りを気にせず存分に戦ってください」

「私もリーシャと同じ意見だな。君達が本気で戦ってくれた方がおそらく楽になる」

 

 こちらに来ていたリーシャとカタリナもそう言った。

 

「そーゆーこと。僕も走り回って疲れちゃったから後衛に回ろうと思ってるしねぇ」

「まぁ、後ろはお前らが気にすることじゃない」

 

 ドランクとスツルムも戻ってきている。アーカーシャは大丈夫なのかと思っていたが、なぜかじっとしている。空気を読んでくれているということはないだろうし、変化の影響だろうか。

 

「そういうことなら任せちゃおっかな。あと私から一個提案があるんだけど」

 

 提案と聞いて集まった全員の視線が、そう口にしたジータへと集中する。

 

「提案って?」

 

 グランが小首を傾げて尋ねた。

 

「さっきも言ったんだけどもう魔力残ってないから、【ウォーロック】を含めてClassⅣを交換しない?」

 

 なるほど。まぁ妥当な提案か。

 

「けど俺も魔力使い果たしてるから【ウォーロック】ができるほどじゃねぇよ?」

「そもそも解放してないから必然僕がやることになるよね」

 

 あー……それは言ってなかったか。

 

「すまん。お前ら二人の英雄武器には触れてたんだ」

「えっ?」

「ルーマシーで別れる時に、ちょいって」

「……」

 

 正直に告白するとグランが驚いていた。ジータはどこかわかっていたかのように微笑んでいる。ジト目を受けてしまうが必要だと思ってやったのだから別にいいだろう。

 

「まぁどっちにしても【ウォーロック】はグランだね。はい」

「あ、うん」

 

 ジータがデモンズシャフトをグランへ手渡した。

 

「じゃあそれを言うなら俺の【義賊】なんか渡してもいねぇんだから交換はお前らだけになるよな」

「あ、それなんだけど」

 

 俺の言葉に対してジータが切り出す。……さっきの流れからすると、と思って先んじてジータにジト目を向けておく。

 

「あはは……実は移動中に触っちゃって。ルーマシーに行く前にシェロさんのところで作ってもらってるの見ちゃったからつい……」

「そういえばジータって武器に目がないんだったね」

 

 頭を掻いて笑うジータをグランが補足する。

 

「それで、こっそり婆さんに教わってたってわけか?」

「うん」

「……うっ。ジータが僕の先を」

 

 笑顔で頷いたジータを見てグランが落ち込んでいる。

 

「それに多分、私達三人の中だと【ベルセルク】への適性が一番低いの私だと思うし。ほら、ダナン君だったらグランの口調を聞く限りあんまり変わらなさそうじゃない?」

「理由が適当すぎんだろ……。まぁ、いいか。言っとくけど【義賊】は純戦闘職じゃねぇからな?」

「わかってる。私だって使えるんだから」

 

 そういうことならと浄瑠璃をジータへ渡した。俺としては【義賊】でパラゾニウム持った方が強いだろうから交換しなくてもいいんだ、ここは全体的な戦力を考えるべきか。

 

「じゃあ、僕がダナンに渡せばいいんだね」

 

 そう言ってグランからベルセルク・オクスを渡される。ずっしりと手元に残る重さを持つ武器だ。斧はあんまり使ってこなかったが、なんとかなるだろう。

 

 交換が終わってアーカーシャの方を向くが、未だ微動だにしていない。……なんか準備してるって考えた方がいいか。

 

「さっきから動かねぇが、まさか寝てるんじゃねぇだろうな?」

「流石にそれはないと思うけど……気になるなら【ベルセルク】で叩き起こしてみれば?」

「そうだね。寝起きの一発はキツめに言った方がいいと思う」

 

 二人から同意が得られたので、モタモタしている場合でもないしさっさと始めるとしようか。

 

「【ベルセルク】」

「【義賊】」

「【ウォーロック】」

 

 三人で並び立ち、それぞれ手に持った武器に従ってClassⅣへと変わる。

 

 俺は首から下の鎧はグランと変わらないが、被っている毛皮が白から黒へと変わっていた。

 

 女版の【義賊】は俺のモノと全く違う。化粧をし金髪をでかい簪でまとめている。服装は派手な着物でなぜか大きく着崩しているため白磁のような肩と鎖骨のラインが露出していた。表情も相俟って普段より大人びた色香を感じさせた。

 

 男版【ウォーロック】となったグランはとんがり帽子にローブを纏った姿だ。ジータの時は紫っぽかったがグランの場合黒くなっている。

 

「……ダナン?」

 

 ふと後ろからオルキスの不安そうな声が聞こえてきた。おそらくどうしても【ベルセルク】は最初の時の印象があるから、俺もそうならないか心配なのだろう。

 

「オルキス」

 

 俺はベルセルク・オクスを肩に担いで振り返らずに名前を呼ぶ。

 

「俺の後ろにいろ。守ってやる」

「……ん」

 

 ちゃんと不安は拭えたようだ。声を聞けばそれくらいわかる。

 

「好きなだけ魔法を撃ち込んでいいなんて、最高の的だよね」

「わっちはただ正義を為せればそれでええよ」

 

 【ウォーロック】はジータである程度知っていたとはいえ【義賊】はほぼ初見だ。俺の時と同じように「正義」とは口にしているが口調が全く違う。思わずそちらを見てしまう。

 

「口調が俺の時と違わねぇか?」

「文句はあるかえ?」

「いや、ねぇな。援護してくれりゃそれでいい」

「……ふっ」

 

 俺がそう言うとジータは蠱惑的な笑みを浮かべてくるりと浄瑠璃を回し煙管のように持ってこちらを流し目で見てきた。

 

「わっちは高いえ」

 

 ……なるほど。そういやなんかの文献で花魁ってヤツを見たな。それの感じなのか。

 

「はっ、上等」

 

 【ベルセルク】になるとどうしても獰猛な笑みを浮かべてしまう。

 

「じゃあいくぜ、てめえら。あの白い野郎をぶっ倒す! 余力なんて考えんなよ!」

「もちろん、全弾ぶっぱが最高だからね」

「わっちも異論はありゃしないねぇ」

 

 言ってから、まず俺が真っ直ぐにアーカーシャへと駆け出す。ヤツはまだ動いていない。俺が近づいても反応しなかった。

 

「おいこら、いつまで寝てやがんだボケェ!!」

 

 俺は近づくと武器を担いだまま左足を上げてヤクザキックをかます。流石にClassⅣ最高の筋力を誇る【ベルセルク】なだけはある。アーカーシャの巨体が一発の蹴りで揺れた。そこでようやくアーカーシャが赤い縦に開いたような目で俺を見下ろしてくる。見上げてにやりと笑った。

 

「ぼさっとしてんじゃねぇよ。てめえの相手はここにいんだろうが!」

 

 次は武器を振り下ろして攻撃する。

 

「――――!」

 

 アーカーシャが悲鳴らしきモノを上げて俺へと攻撃を仕かけてきた。竜のような頭が牙を剥き、光線は光の弾丸などが飛んでくる。

 

「はっ。その程度かよ」

 

 だが俺はそれら全てを無視してアーカーシャ本体へと攻撃を続けた。

 

「ソニックレイド!」

 

 疾風を纏い高速で駆けつけたリーシャが風の斬撃で頭の一つを弾き俺の隣まで到達する。

 

「レックレスレイド」

 

 既に最大まで自己強化をし終わっているスツルムが炎の斬撃でもう片方の頭を弾き俺の反対の隣まで到達した。

 

 光線や光の弾丸はグラン達の魔法やジータ達の弾丸が相殺してくれる。

 

 足元から光が漏れてきたが無視して攻撃を続けた。光の柱が昇り俺の身体を焼いてくるが、無視だ無視。今は俺が最大攻撃力を誇っているので、避けるよりも殴った方が早い。

 そうしてしばらく殴っていると、アーカーシャから赤光が放たれた。今までは白い光だったので警戒していたが、いらぬ心配だったと言えるだろう。

 

 なぜなら、問答無用で室内全てを焼き尽くす焔が放たれたからだ。

 

「ぐっ……!」

 

 至近距離で焼かれると鎧のせいで身体が蒸し焼きにされる。毛皮はチリチリと燃えていた。室内全てとなるとオルキスの身が心配だが、ドランクが守ってくれているだろう。それにあいつらは言った。後ろは気にしなくていいと。

 それなら俺がやるべきことは一つ。

 

「……温いんだよ、この腐れ星晶獣がッ!」

 

 どごん、と再びのヤクザキック。アーカーシャの赤い目がこちらを向いてきた。ヤツの眼前に白い光が集束していく。そして通常よりも大きな光線を放ってきた。俺はそれすら避けず、斧を持っていない右手を伸ばして受ける。

 

「そんなんで俺が殺せるかよ」

 

 正直に言うと右手が超痛いし気を抜いたら吹っ飛ばされそうだった。

 

「おらぁ!」

 

 右手だけで受けながら左手の武器で一撃かますと、ダメージを与えたおかげか光線が中断された。

 しばらく攻撃を続けていると後衛の回復が回ってくる。

 

 俺が存分に攻撃できるように他のヤツらがフォローしてくれるおかげで、ゴリゴリ削っていくことができた。アーカーシャの白い巨体にも傷がつき、明らかにダメージを負っているとわかるようになっている。

 加えてルリアが召喚したらしいコロッサスが巨体から猛撃を繰り出しているのも戦力になっていた。

 このまま押せれば勝てる、というところで。

 

 ばきん。

 

 遥か頭上から不穏な音が聞こえてきた。

 

 はっとして見上げるとアーカーシャーの頭上の空間に亀裂が走っている。その亀裂は徐々に広がっていく。空間に亀裂、と言えば黒騎士の奥義を思い浮かべるがその特徴を有しているのならおそらく、障壁による防御ができない。

 

「回復を準備していてください!」

 

 俺と同じ考えに至ったらしいリーシャが号令を飛ばす。防御できないなら、なんとか耐えてすぐに回復し体勢を立て直すしかない。発動までに倒すという方法もあるが、それができるほどこいつは弱くないだろう。

 

「――――」

 

 そして亀裂が室内全体の上を覆うように広がってから、ぱきぃんと割れる。

 

 ――崩天。

 

 天が砕け散って破片の飛び散る様を見上げていた俺達だったが、

 

「ごふっ……!?」

 

 第二形態の時にされた攻撃よりも大量の血を吐き出し、全身に裂傷が走って鮮血を噴き上げる。力が抜けていって、【ベルセルク】も解かれて普段の姿に戻り床に倒れ込んだ。

 

「……な、にが」

 

 全身が余すことなく痛い。身体が動かない。力が入らず、まともに魔法を唱えることもできない。

 紛れもない瀕死。さっきよりも酷い死にかけの状態に、一瞬でされてしまった。

 他のヤツは無事なのかと視線を動かしてみれば、リーシャが血溜まりに突っ伏している姿が見える。多分全員漏れなく、俺やリーシャのように瀕死にさせられてしまっているだろう。

 

 今攻撃されたら間違いなく死ぬ。

 

 そんな確信が頭の中にあった。そして当然、そのための攻撃なのだと考えればアーカーシャは攻撃を仕かけてくる。意識すらも掠れる中で自分の下から白い光が発せられているのに気づいた。第二形態に変化して使ってきた光の刃が突き出してくる攻撃だろう。なんとか光の範囲から避けようと両腕に力を込めてみるが、身体を持ち上げることすらできない。

 

 ……クソッ。あともうちょっとだってのに。

 

 この激痛にイオが耐えられる保証はない。カタリナとドランクなら耐えるかもしれないが、リーシャは唱えようとはしていても咳き込んで吐血してしまうらしく回復に手を回せていない。二人も同じ状況の可能性があった。

 このままでは全滅だ。なんとかしねぇといけないが、革袋に入っているポーションを手にする力すら残っていない。

 

 下から漏れてくる光が強まり、死が迫ってくる。

 

 もう――と諦めるしかない状態で、やけにはっきりとした呟きが耳に入ってきた。

 

「……マイコニド」

 

 抑揚のない、しかし怪我によってか掠れた声だった。

 その声に呼応してアーカーシャの頭上に巨大な茸が出現する。俺達を瀕死にさせているアーカーシャという強敵に対抗するには、些か以上に力不足に思えた。実際、赤い目でそいつを見上げたアーカーシャが放った特大の光線によって呆気なく倒されてしまう。

 だが消滅する直前に破裂し、室内全体に胞子が降り注いだ。

 

 その胞子が身体に当たった瞬間、傷が少しだけ癒えていく。目を見張ってその光景を見つつ、絶望的だったのに笑みが浮かんでくる。とりあえず動けるようにはなった身体で光の範囲から転がって退避した。

 直後、光の剣が突き出してきてさっきまで俺の身体があった場所を貫く。

 

 落としたベルセルク・オクスを拾い上げて杖代わりにしつつ立ち上がる。

 

「……【ベルセルク】、レイジッ!」

 

 こうなったらもう、押し切るしかない。俺だってそうだが、他のヤツだってもう全快して戦い続けるような魔力は残っていないだろう。

 

「……てめえら! 後先考えずに、ここで決めるぞ!」

 

 じゃないと後がない。倒される前に倒し切らなければならない戦況だ。

 

「わかった。――天災地変!!」

 

 天変地異と見紛うような特大の魔法が放たれる。アーカーシャの巨体を覆い尽くすように地面が無数の闇の柱が立ち昇った。上半身はダメージを負っただけだが下半身の方は直撃した箇所が消失している。

 

「お願い、バハムートッ!」

 

 直後後方から強大な気配を感じ取る。視線を向ければ黒銀の竜が出現していた。ルリアだ。しかもアウギュステで見た時と同じように【ウォーロック】から通常の姿に戻ったグランと手を繋いでいる。

 出現したバハムートは拘束具を引き千切ると、咆哮と共に全てを滅ぼす極大の波動を叩き込む。強力な星晶獣の一撃にアーカーシャが甲高い悲鳴を上げて大きく後退した。

 

「……雷霆公」

 

 オルキスの静かな声に応じて四足歩行に翼の生えた竜のような星晶獣が現れる。雷霆公と呼ばれてはいるがその身から雷と炎を放っていた。いつの間に手に入れていたのかは知らないが、強力な星晶獣なのだろう、アーカーシャについている竜のような頭それぞれに直撃させた。

 

「デモリッシュ・ピアーズ!!」

「ディー・ヤーゲン・カノーネ!!」

 

 おっさん二人がほぼ同時に奥義をぶっ放してアーカーシャに追撃する。パキパキとヤツの足元が凍てついていったかと思うと、

 

「クリスタル・ガスト!」

 

 回復のために待機していたイオが回復に回す分を攻撃へと変換して放った。光と氷による銀色の吹雪が巻き起こってアーカーシャの身体を氷漬けにして動きを止める。

 

「グラキエス・ネイルッ!!」

 

 青の巨大な剣がカタリナの振るう剣に連動して乱舞する。指揮者のようですらある彼女の剣が舞い、華やかさとは別に巨大な剣は無慈悲に敵を切り裂いていく。

 

「ナインス・アワー!!」

 

 ドランクの操る宝珠が乱れ飛び九つあるそれらからレーザーが照射されアーカーシャの身体を焼いた。

 

「フロム・ヘル!!」

 

 いつになく気合いの入った声と共にスツルムの燃える斬撃が襲った。満遍なくダメージを与えるためにドランクの奥義とは別の箇所を斬りつけたのは流石コンビか。

 

「サンライズ・ブレード!!」

 

 勇ましい声を上げてリーシャが身に纏っていた風を全て剣に集め必殺の一撃を放つ。天災レベルの無数の風の斬撃がアーカーシャの全身を切り刻んだ。

 

「ウェポンバースト。【義賊】で、ブレイクアサシンっと」

「ブレイクアサシン。【ウェポンマスター】で、ウェポンバースト」

 

 俺が準備を整える声に続いてジータの声も聞こえてきた。考えることは同じのようだ。

 

 俺は取り出したパラゾニウムを手で弄び、逆手に構える。

 

「【義賊】。で、光彩奪目ッ!!」

 

 先にジータが奥義を放った。銃弾が飛来しアーカーシャの上半身にある胸元を穿つ。

 

「余所見すんなよ、リゾブル・ソウル!!」

 

 続けて俺も渾身の奥義を放つ。俺が持てる最大威力だ。しかしアーカーシャは倒れない。ボロボロになりながらも俺を睨みつけ、奥義後の硬直で動けない俺を狙って攻撃を、というところで思わず不敵な笑みを浮かべてしまった。

 

「……おいおい。なんのためにあいつが()()()()()()()()()と思ってんだ?」

 

 床を蹴って駆ける音がする。

 

「俺じゃねぇだろ……余所見してんじゃねぇよ」

 

 さっきと同じセリフを告げる。

 

「ブレイクアサシン! 【ベルセルク】! ウェポンバースト! 来い、《七星剣》!!」

 

 気合いの入りまくったヤツの声に、ようやくアーカーシャが気づいたようだ。だがもう遅い。あいつは既に跳躍していて、奥義の発動準備に入っている。

 反射なのか無事だった両腕を伸ばしてグランを迎撃しようとしてきた。

 

「邪魔させるかよ!」

 

 俺は『ジョブ』を解除した状態で置いたベルセルク・オクスを握ると腕へとぶん投げた。斧は回転しながらアーカーシャの左腕を切り飛ばす。

 まだ一本残っているがそっちはジータの放った銃弾が吹き飛ばした。

 

「いっけぇ、グラン!!」

 

 ビィの声が大きく響く。

 

 ……ここまでお膳立てしてやったんだ。決めろよ。

 

 もう戦えるだけの力は残っていない。後は野郎に託すしかない。

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 気合い一閃、アーカーシャの身体に七星が刻まれ、それらを結ぶような斬撃が疾る。皆の想いを乗せて、そんな言葉が似合う強烈な一撃が叩き込まれると、

 

「――――!!」

 

 アーカーシャは悲鳴を上げて倒れ込んだ。着地したグランも力を使い果たしたようで、【ベルセルク】が勝手に解けて膝を突いている。

 

 倒れたアーカーシャはぴくりとも動かない。完全に沈黙している。――あいつらの、いや俺達の勝利だ。

 

「……はーっ」

 

 俺は大きく息を吐き出して床に座り込む。ほぼ同時にグランも尻を床に着けていた。部屋全体の空気が弛緩したように感じる。他も気を抜いているようだ。

 

「……ダナン!」

 

 座り込んだ俺の下へオルキスが駆けてきた。そのままの勢いが飛びついてくる。

 

「うおっ」

「……良かった」

「……おう」

 

 正直限界だったので小柄なオルキスの突進でも大ダメージを受けるのだが、嬉しそうな声を聞くと文句も言えなくなってくる。だが無事を喜ぶよりも先に、オルキスにはやるべきことがある。

 

「オルキス。終わったんだから、後でな。今はアーカーシャだ。まだ戦ってるヤツを、先に助けてやらないとな」

「……ん」

 

 終わりの見えない戦いを続けているであろう黒騎士を挙げると、オルキスは真剣な顔でこくんと頷き俺から離れた。

 

「……ルリア」

「うん、オルキスちゃん」

 

 オルキスは同じくグランに駆け寄っていたルリアに声をかける。向こうもやるべきことはわかっているようで、見つめ合って頷くと倒れたアーカーシャの方へと近づいていった。

 

 そして二人の手によって、星晶獣アーカーシャは正常に再起動されたのだった。




割とさっくりアーカーシャが終わってしまった……。

一応補足説明をば。
急に全員瀕死になったりするのは、アーカーシャの特殊技でHPは1%になるヤツをイメージしてます。実際に食らったらマジ訳わかんないっすよね。
前話でも特殊技であるHPを入れ替える、つまりHP 1%の場合は99%になるヤツでほぼほぼ瀕死になってました。全快だと即死なんで理不尽な技です。

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