ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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今後の展開で大事なところ。とはいえ暁の空編読み返して展開の細かいところを思い出し、「あ、この設定使えんかも」と思ったりもしています。

一応次の章でも活きる予定ではありますが、展開的になかなか難しいところです。
オリジナル路線しつつというところですね。


“蒼穹”と

 らぁめん師匠に教わった“らぁめん"という料理を作り終えた俺達は、宴が始まって何時間後かもよくわかっていない会場へと足を踏み入れた。

 

 もう大半が出来上がっていて、既に酔い潰れた人までいる。俺が見たことのあるヤツや、見たことのないヤツ。大勢の人間が連中の勝利を祝っていた。

 

 ……ってあれ、大食い王レッドラックじゃねぇか。そりゃ食うわけだわ。ルリアと、オーキスと、あとレッドラック。もう一人大食いはいるんだろうが。

 

「おぉ、料理美味かったぜ、兄ちゃん達!」

 

 そのレッドラック、黒髪に赤いバンダナを巻いたドラフの男が声をかけてきた。

 

「そりゃどうも、無敗の大食い王。満腹にはならなくても満足はしてもらえたか?」

「おう。いい腕だったぜ」

 

 まず俺が立ち上がったレッドラックとがっしり握手する。すぐ離して他の四人とも握手していた。

 

「たった五人でこの人数の、俺達が食べたあの量をってんだから惜しいな。是非全員まとめて雇いたいところなんだが」

 

 毎日あれに付き合ってたら身が持たねぇよ、流石に。

 

「もし同じ所属になれば、程々にですが振る舞わせてもらいますよ」

「それは楽しみだ」

 

 どうやらレッドラックもあいつらの騎空団に入るらしい。まぁ大食いの世話をするのは、俺は一人でいいかな。

 

 俺は苦笑して周囲を見渡す。白マントに黒い鎧の十人に、秩序の連中、バルツ公国軍に、四騎士、“組織”のヤツらに、あヤベっナルメアだ。気づかれない内にあいつらのところに行ってしまおう。

 そうして手を振っている青髪のエルーンを発見し、一塊になっていた四人のところへ歩いていく。

 

「お疲れー。美味しかったよ、料理。やっぱ流石だよねぇ。あのシーフードサラダとか!」

「バカ言うな。一番はあのステーキだろ」

「海鮮丼も捨てがたかったがな」

「……アップルパイが、一番」

 

 それぞれが俺の届けさせた料理を一番だと言ってくれる。

 

「当たり前だろ? 俺がお前らのために作って届けさせたんだからな」

「さっすが~。でも他の料理も美味しかったよねぇ。まさかダナンレベルの人があんなに他に四人もいるなんて」

「空は広いってことだろ。まぁ、感心はするが」

「後半からこいつの料理ばかり来ただろう? 持久力では劣るようだがな」

「……ダナンが一番」

 

 やっぱり他のヤツから見ても俺達の五人の腕は拮抗していたらしい。……同じ騎空団に入るなら切磋琢磨できるだろうし、腕を上げるだろうな。俺も負けていられない。

 

「……ダナン。アップルパイタワー、美味しかった」

「そっか。まぁ喜んでくれたなら頑張った甲斐があるもんだな」

 

 オーキスが微かに微笑んで言ってくれたので、頭を撫でてやる。四人の大食いさんの内一人なのでできればもっと自重して欲しいとは思うのだが。

 

「そういや黒騎士はその恰好でいて大丈夫なのか? 元帝国最高顧問なんだろ」

「問題ない。私が“元”帝国最高顧問であることは既にファータ・グランデ空域内に広く知られている」

 

 宴だからか流石に兜は取っていたが、首から下はそのまま黒鎧である。敵ではないかと思う連中もいるかと思ったが、そんなことはないようだ。まぁ仮になぜここにと思ってはいても七曜の騎士に話しかけてくるようなアホはいないか。

 

「おかげで席余ってるのにこうして四人だけで座ってたんだけどねぇ」

「まぁ部外者が立ち入れる空気じゃないのは確かか」

 

 まぁこいつらと一緒ってだけの方が気が楽でいい。……オーキスの距離が妙に近いような気はするが、気にしたら負けだ。

 

「でも見たところエルステに来てなかった人達も呼ばれてるんだよねぇ。その理由は、きっとあの二人が説明してくれるかな~」

 

 意味深なドランクの発言を受けて彼の視線の先を追うと、団長たるグランとジータが会場の一団高い台へと上がっているところだった。マイクという拡声器を手に持っている。それだけなら代表の挨拶にも思えるが。

 

「皆さん。宴もたけなわと思いますが、ちょっと僕達の話を聞いてください」

「大事な話なのでちゃんと聞いてくださいね」

 

 グランとジータがそれぞれ言って二人の登場に気づいていなかった人達を注目させる。

 

「僕達はこのファータ・グランデ空域を旅してきました。そしてそろそろ、次の空域が見えてきたところです」

「空図の欠片も集めて回って、ようやくってところですね。だから当然、私達は次の空域を視野に入れて旅するつもりです」

「そこで、この空域で出会ってきたたくさんの人達にこうして集まってもらったのは、理由があります」

「基本的にはエルステとの戦いに協力してもらった人達ですけど、それ以外の人達が集まっているのはわかったと思います」

「実はシェロカルテさんに頼んでできる限りの人を今日この場に呼んでもらえるよう計らってもらったんです」

 

 視線が一部シェロカルテの方へと向くと、彼女はウインクを返してみせた。

 

「僕達は次の空域に行くことを目標に、団の拡大をしたいと思っています!」

「もしついてきてくれるっていう人がいるなら、この場で応えて欲しいと思います」

 

 二人は言って巻いた紙の両端を片方ずつ持って掲げ、開いて見せる。そこには――“蒼穹(あおぞら)”と書かれていた。

 

「「僕達(私達)の騎空団、“蒼穹”に是非入団してくれませんか?」」

 

 声を揃って大々的な勧誘を終える。一拍の静寂の後、会場から雄叫びが上がった。島々を回り、活躍してきたあいつらへの信頼の証だろう。厨房で会った四人の内三人は入団するつもりらしいからな。その割合でいくと全体の七割近くが入団する可能性もあるってことか。まぁ秩序の騎空団やバルツ公国軍なんかは入団しないのだろうが。

 

「……なるほど。こりゃ効果的だな」

「いい手だよねぇ。元々入るつもりがあるかもしれない人達全員に声をかけていって、浮かれた気分の時に勧誘。集団心理ってヤツで周りが入るなら自分もってなる可能性もあるよね。一気に騎空団を拡大するには持ってこいだよ」

 

 俺とドランクが考察する。こういう時に考察が先に口を出てしまうのは性分だろうか。

 

「で、お前らは入らねぇの?」

 

 ふと気になって四人に尋ねてみる。エルステ帝国が事実上崩壊して黒騎士の目的が達成された今、もうこいつらとも解散だろう。

 

「そう言うダナンはどうなの~? タワーにいた時は入らないって言ってたけど、満更でもないんじゃない?」

「そんなことねぇよ。あいつらの騎空団に入る気はねぇ。気が合わねぇってのが一番だからな。方向性の違いってヤツだ」

「そんなバンドを抜けるような理由を言われても」

「……まぁ、というかちょっと思うところがあってな。しばらく一人で旅しようかと思ってるんだ」

 

 まだ誰にも言っていなかったが、こいつらには話しておくべきだろう。

 

「……また一人でどっか行くのはダメ」

 

 オーキスがきゅっと俺の服を掴んでくる。苦笑して彼女の頭を撫でつつ、

 

「悪いな。そういうんじゃないんだ」

 

 一人で行動した方が都合がいいから、という理由で一人旅をしたいと思っているわけじゃない。俺はきっと、旅をしてなにかを探さなければならない。自分探しの旅なんて縁がないと思っていたが。

 

「えぇ? タワーでは騎空団作るって言ってなかったっけ~?」

「言ってたな。あれは冗談だったのか?」

「冗談というか、咄嗟の思いつきみたいなもんだ。まぁそんなに長く一人旅をする気はねぇし、いつかは団作ってもいいかとは思ってるんだけどな」

 

 旅をするなら騎空団というのもアリだ。だがそれは次の段階であって、これからすぐにっていうモノでもない。

 

「それに騎空団はまず金がかかる。俺には騎空艇がないから騎空挺を購入する金が必要だ」

 

 俺は人差し指を立てて説明する。

 

「次に人。騎空艇を操縦できるヤツが必要だ。少なくともラカムレベルのヤツはいねぇとな。今回みたいに大事に巻き込まれないとも限らねぇし」

 

 二本目の指を立てる。

 

「次も人だ。操舵士は必須だが他にも色々騎空団に入団してもらう必要がある。操舵士と俺の二人だけなんて団とは言えねぇだろ」

 

 三本目。そんなに大勢いなくてもいいんだが、少なくとも十人はいてくれないと団として不安だ。いくら俺が強くなっても戦力という点で不安要素を残してしまう。今回みたいなことには多分ならないだろうが、それでもある程度強敵との遭遇を覚悟しておくべきだ。

 

「お金はしょうがないよねぇ。僕の貯金足しても雀の涙程度だし」

「ああ。あたし達が稼いでも大した足しにはならないだろう」

「生憎と私はエルステを追放された時に財産を没収されている」

「……お金は、ない」

 

 四人がそんなことを口にした。

 

「は? なに言ってんだお前ら。俺がお前らに金借りるとでも思ってんのかよ」

 

 そこまでのお人好しじゃないだろうに。特にドランク。金を借りたら酷い目に遭いそうだ。

 俺はなに言ってんだこいつらという目を向けるのだが、ドランクは笑みを深めた。

 

「そっちこそなに言ってるの? 騎空団に入るならあの二人のよりダナンの騎空団の方がいいに決まってるでしょ~?」

「…………は?」

 

 一瞬、頭が追いつかなかった。ニヤニヤするドランク、普段と同じ無表情のスツルム、少ししてやったりの笑みを浮かべた黒騎士、視線を向けるとこくんと頷くオーキス。

 

「はぁっ!? お、お前らなに言ってんだ? 俺は別に本気で騎空団やるつもりはねぇっていうか……」

 

 思わず腰を浮かせてしまう。

 

「もしもの話だよ。僕は単純に、ダナンとは気が合うからねぇ。同じく双子の団長さん達とは気が合わないなぁと思ってるんだよね~。別に嫌いじゃないんだけど」

「ああ。別にあいつらの騎空団に入りたくないわけじゃない。だが、お前の騎空団の方がいい」

「私はこれからどうするか迷っている。だが今まで見てこなかった世界を回るというのも、悪くはないだろう。当分はオルキスの下にいるつもりだがな」

「……ダナンと一緒にいたい。それは、これからも変わらない」

 

 どうやら心は決まっているらしい。というか俺が騎空団作るなんて冗談を言ったのは傭兵二人の前だけだぞ。

 

「……ってことはお前、二人に騎空団の話しやがったな?」

「もっちろん~。こんなに面白そうなこと、話さないわけないでしょ?」

 

 ……この野郎。

 

「覚えとけよ。お前の飯、これから五回分野菜抜きサラダだけにしてやるからな」

「それただのドレッシングじゃん。ドレッシングも美味しいけど身体に悪いからね?」

「うるせ。俺は別に騎空団を本気でやる気はねぇんだってば。それにお前らノリと勢いで決めてないだろうな」

 

 深く悩まずに面白そうだからっていう理由で決めてるんじゃないかと疑うが、

 

「本心で、お前となら今後も旅をしてもいいと思っている」

 

 黒騎士の言葉に疑うことすらできなくなってしまう。

 

「……おぉ、ボスがデレたよスツルム殿」

「……ああ。穏やかな雇い主とかむしろ不気味だ」

「おい。貴様ら死にたいらしいな」

「「あっ、いつもの感じだ」」

「表へ出るがいい」

 

 ヒソヒソと聞こえる程度の声で話す傭兵コンビに黒騎士が割りとマジで怒っていた。なんか、いつものことのように見える。

 

「……アポロは、いい。リーシャはダメ、絶対」

 

 あいつは麻薬かなんかかよ。というツッコミはさておきなにが良くてなにがダメなのかよくわからない。

 

「おい、オーキス。なぜ私があの小娘と同列になっている」

「……それがわからない、アポロじゃない」

「……」

 

 なぜか言い合いもオーキスの方が有利に見える。以前には見られなかった珍しい光景だ。ドランクがニヤニヤというかニヨニヨしているのは腹立つが、俺にはよく理由がわからないのでまぁ関わらないのが正解か。

 

「……まぁ、時期が来たら誘ってやるよ。目標はあいつらより先に星の島イスタルシアとやらに到達して精いっぱい煽ってやることだ。並みの旅じゃないがホントに付き合う気か?」

「当然。安心安全も大事だけど、やっぱり冒険はロマンだよねぇ。悪巧みも好きだけど全て知ってたら予定調和になっちゃうもんね~」

「どこへ行こうとあたしのやることは変わらない。敵を切って肉を食べる。ただそれだけだ。金が稼げれば一石二鳥だな」

「今は立場が危ういとはいえ七曜の騎士だ。並みで満足できると思うなよ」

「……覚悟はできてる。ついていく」

 

 四人の答えは変わらないようだ。……全く。仕方ないヤツらだな。

 

「じゃあ、今すぐってわけじゃねぇがいつか、な」

 

 断る理由もない。俺も、正直言えば気心知れたこいつらと旅できるのは嬉しい。やるんだったら誘おうとは、一応思ってたしな。

 

 そんな俺の背後から、声をかけてくる人物があった。

 

「――もし本当に騎空団になったら、私達の手強いライバルになりそうだね?」

「――うん。団拡大しようって時にそんな話するなんて、宣戦布告と取っていいのかな?」

 

 最近はもう聞き飽きた双子の声だ。席を立ち上がって不敵な笑みを浮かべて振り返る。そこにはグランとジータを真ん中にルリアやビィ、カタリナ、ラカム、イオ、オイゲン、ロゼッタが佇んでいた。話が聞こえてきて集まってきていたらしい。振り返った俺の後ろで席を立ち上がる音が聞こえた。俺は少し前に進み出て他の四人が来るのを待つ。

 

「ははっ。相変わらず温いなお前らは。俺はさっき、()()()()()()()()()()()()()()()()()っつったんだぜ? それでもライバルじゃないんて悠長だなぁ」

 

 エルステ帝国相手には共闘したが、俺達は本来仲間じゃない。

 

「ほとんど一空域分遅れてるっていうのに、早く辿り着ける気でいるんだ?」

「当然だろ。てめえらは寄り道人助け大好き集団だからな。効率重視すれば余裕だ。そうでなくても、負ける道理はねぇよ」

「へぇ? 言い切るね」

「当たり前だろ。……俺がお前ら二人に劣る理由はねぇ。だったら仲間の差で決まるわけだ。さて、どうだろうな?」

「確かに強敵だね。でも、負けるつもりはないよ」

「そうでなくっちゃ面白くねぇ」

「上等、僕達が先にイスタルシアに行く」

 

 グランが拳を突き出してきた。ジータも同じようにする。……そういうのは柄じゃねぇんだけどな。

 

「精々先行ってな。安心しろ、すぐ追いついてやる」

 

 俺も拳を突き出して、二人の拳へ打ちつけた。

 こうして俺達黒騎士の一味は、なぜか俺の騎空団の団員として認知され、仲間を大幅に増やす“蒼穹”に対抗するライバル騎空団となるのだった。

 

 ……いや、まだ設立してねぇんだけどな?




お ま け

リーシャ「あ、あれ? なんか皆さんいい感じになってるのに私はなんでモニカさん達とお酒を……?」
モニカ「り、リーシャ落ち着け。目から光が消えかけているぞ」
リ「……いいんですいいんですよ。どうせ私なんて真の仲間じゃないんですから。こうなったらもう自棄ですよっ」
団員一同(((……あぁ、荒れてるリーシャ船団長もまた良し……)))



なぜかはぶられてしまったリーシャ。彼女の明日はどっち、なんだろう。

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