昨日言い忘れていましたが古戦場が始まり、黒騎士の最終解放が実装されましたね。……まだレベル上げ中ですが。
騎空団の名前を“蒼穹”に改名し、団員数を大幅に増やしたグラン達。
しかしその結果グランサイファーだけでは全団員が乗り込めないという事態が発生してしまった。定員オーバーというヤツである。
それなら仕方がない、騎空艇を増やそう。ということになり今資金集めに団員総出で奔走していた。
急に空域超えるかも、と言われた新団員達の準備などもあるのでしばらく下準備の期間にすることにしている。
新しい団員の部屋割りや管理するための名簿の作成などの対応に追われていた主力メンバーと言える彼らだったが、旅を続けるに当たってもっと強くなるべきだと考えた。
要は、空域を超えるとそう簡単にザンクティンゼルに戻ってこれなくなることが予想されるので、ClassⅣを全て解放してからにしようと思ったわけである。
というわけでパンデモニウム攻略に臨んだのだが。
その途中でおそらくClassⅣに該当しないであろう武器のレプリカを発見してしまい、まさか追加されたのでは? となっていた。
「これってもしかして、EXジョブの専用武器なんじゃない?」
武器種と『ジョブ』を照らし合わせていった結果、ジータがそう告げる。
「うん、そうみたいだね。これなんかは銃だけど、浄瑠璃の元になってるオリバーじゃない。【サイドワインダー】は弓だろうから、多分ガンスリンガー辺りの武器じゃないかな」
グランも彼女に同意する。つまり当初予定していたよりも数が多くなっているということだ。それでもやるしかない。元より全て集める気で来ている。少し増えたくらいで予定は変わらない。
気合いを入れ直してパンデモニウムを探索する一行だったが、
「はわっ! すっごく美味しそうなお料理の匂いがしますぅ!」
突如ルリアが目を輝かせて言った。他の面々は「こんなところに料理?」と首を傾げるしかない。きっと空腹が限界に達したせいだろうと思った、のだが。
「……あれ、ホントに美味しい匂いがする?」
「ま、待て。こんなところに料理などあるわけがない。罠の可能性が高いぞ」
やがて他も美味しそうな匂いを嗅ぎつけ困惑する。それでも足がそちらに向かってしまうのはそろそろ休憩したかったからだろうか。
そして、
「「「あっ……」」」
「あん?」
彼らの他にパンデモニウムに用事がある者など、研究者以外では彼しかいない。
ダナンだった。
彼は鍋をぐつぐつと煮込んでいる。……その傍に身体の大半を失くした黒い怪物の死体が転がっているのはどういう了見だろうか。
「ああ、なんだお前らか。まぁ、当然ClassⅣ目的だろ?」
ダナンの方は特に驚きもなく平然としていた。
「あ、うん。ダナンもだよね。というかこんなところで料理なんて大丈夫? 匂いに釣られて敵が来るかもしれないのに」
「それなら倒すだけだ。向こうから来てくれるなら楽でいいしな」
続けて、料理に釘づけなルリアに代わってオイゲンが尋ねる。
「他の連中はどうしたんだ? 姿が見えないが」
「ん? ……ああ、あいつらか。スツルムとドランクの行き先は知らないが、オーキスと黒騎士ならメフォラシュに行ったぞ。オルキスの様子を見に行くんだと」
「お、おい。まさかお前さん独りでここにいるってぇのか?」
「ああ。あいつらにも用事はあるだろうし、俺達はお前らとは違ってまだ騎空団でもないしな」
平然と答えるダナンに、オイゲンの顔が引き攣った。
ここパンデモニウムは、腕利きの騎空士でなければ入場が認められないような危険な場所だ。そんな場所に、たった一人で挑んでいるというのだ。
「えっと、因みにいつからなの?」
イオが躊躇いがちに聞く。
「んー……一週間前からだったか? おかげでもうちょっとでEXの方の素材も集め切れそうだ」
「い、一週間もこんなところで……」
一行が戦慄していると、ダナンがふと顔を上げてあらぬ方向を見た。
「……来てるな。お前ら、鍋の中身はやるから来たヤツは俺に寄越せ」
「えっ、あ、うん」
なにも感じなかったジータが戸惑いながらも頷くと話だけは聞いていたらしいルリアが鍋に近づいていく。口端からは涎が垂れそうである。
「因みにこれはなんて料理だ?」
「ディアボロスの味噌煮込み」
「「「……」」」
ラカムの問いに対して返ってきた答えに、一行は沈黙した。確かに鍋の中を見れば黒い肉片が浮いている。
「わぁ、いただきまーっす!」
反してルリアは嬉々として器に装いそれを口にした。
「お、おいルリア!」
カタリナが慌てるが、
「ん~! 美味しいですぅ!」
ルリアは顔を綻ばせて次々と得体の知れない料理を頬張っていく。しかしその美味しそうな顔に、仲間達も疑心暗鬼ながら口にして、意外な美味しさに驚いていた。
「……ジータ」
「……うん、わかってる」
そんな中二人の団長は真剣な表情で、新たに現れたディアボロスと戦うダナンを見つめている。
ダナンは『ジョブ』を発動していない状態で、どこにでも市販されているような剣で戦っていた。それでもディアボロスの放つ魔法を掻い潜り攻撃を加えていく。
「動きの無駄を削ってるね。最小限の動きで最大の成果を得るために」
「うん。ここに一人で来たのも邪魔されず戦いの感覚を研ぎ澄ますためだったのかな」
「多分ね。あとさっき誰も気づいてなかった敵の接近に気づいた」
「だね。強くなるために必要な感覚を研ぎ澄ませてるんだ」
「それが一週間、か」
二人は顔を見合わせて苦笑した。
「ライバルは手強いね」
「うん。けど、だからこそやりがいがある」
しかし負けていられないと闘志を燃やす。
食事の後、妙にやる気満々の団長二人に連れられて一行はパンデモニウムを探索していった。一応ダナンからパンデモニウムにいる敵の調理方法を聞いて、全ての武器を作れるだけの素材を集めていった。
彼らが遭遇した日から数えて、ダナンが翌日、一行が五日後にパンデモニウムを出たのだが。
ClassⅣを会得するためには、三つの工程が必要となる。
パンデモニウムで専用武器を作るための素材を集め。
集めた素材で武器を作成してもらい。
武器に対応した『ジョブ』を習得する。
つまり
「皆さん、私を過労死させるつもりですか〜」
「あんた達、あたしを過労死させる気なのかねぇ」
と武器を作る商人と習得のための修行をつける老婆が言ったのは仕方のないことだった。当然、二人が過労死するなど考えられないため冗談と少しだけの文句なのだろうが。
少しズレたとはいえ行き先は同じなので、結局度々顔を合わせることになった。
「少し早かったとはいえ、結果的に同じラインか」
「目的が同じだからね」
全てのClassⅣと、ClassEXの上位ClassEXⅡの『ジョブ』を会得したダナン、グラン、ジータの三人が集まっていた。
「じゃあ後は騎空団としてお前達に追いつくだけか」
「ふふ、そう簡単にはいかないけどね」
「追いつけずこのまま僕達が先に行っちゃうかもしれないし」
「は、バカ言え。面倒事に巻き込まれやすいお前達より遅いってことはねぇよ。なによりファータ・グランデ空域の空図ならさくっと集められそうだしな」
「あ、狡い。私達が星晶獣のあれこれを解決してから集めるなんて」
「利用できるモノは利用する主義なんだよ」
ダナンの言う通り、既に一行が旅をして空図を集めてきたので場所はわかっているし、一行が出会った時のようになんらかの騒動に巻き込まれる心配もない。ただ戦って認めてもらうだけでいい。そして今のダナンなら一人でもいとも簡単に倒してのけるだろう。
「さて、と。じゃあもう行くかぁ」
「ダナン君はこれからどうするの?」
「まずはオーキスと黒騎士のいるメフォラシュに行って挨拶だな。あいつらがこれからどうするのかは知らないが、しばらく会わないだろうし」
「そっか」
「それから騎空艇を買うための資金集め。これはちょっと案があって、一応話は通してあるから大丈夫だろ。で、それに加えて仲間集め。特に操舵士は必須だ。そう簡単に見つかるとは思わねぇが、なんとかなるだろ」
「どんなヤツが操舵士になろうが、俺に敵うヤツはいねぇよ」
「言ったな? ……で、人数はお前らみたく大勢にする気はねぇが、元のお前らと同じくらいの人数にはなるよう確保したいところはあってな」
「えっと、じゃあ……私、グラン、ルリア、ビィ、カタリナさん、ラカムさん、イオちゃん、オイゲンさん、ロゼッタさんで……九人だから」
ジータが指折り数えていく。
「あと二人だな」
「二人? じゃあ……ダナン、オーキス、黒騎士さんにスツルムさんとドランクさんもか。そういえばあの人から相談あったから多分間違いないだろうし。あと一人は?」
「さぁ、誰だろうな。一応宛てがあるってことだ。とはいえ操舵士は欲しいし、あと一人か二人ぐらいで考えてはいる」
「ふぅん。じゃあきっと決まってる一人はあの子よね?」
グランが数えて首を傾げるとダナンは意味深な返事をした。しかしロゼッタは察したらしい。
「主力メンバーを空域渡って増やすことも考えるともうちょっといてもいいかもしれねぇが、まぁそこは追々だな。設立する前から色々細かく決めたって仕方ねぇだろ」
「まぁ確かにね。じゃあやっぱり人数多くしても関係なくライバルになりそう。私達も余裕でいられないね」
「うん。僕達も頑張っていこう」
一応真面目に考えてはいるらしいダナンの様子と、今でも腕の立つ者が多いのに更に増えると考えた時、間違いなくライバルなり得ると思ったのだ。
「いや、いくらなんでも無理だろ。だってお前ら――十天衆入団させたんだろ?」
ダナンの呆れたような言葉に二人は苦笑した。
そう。宴の夜ダナンとオクトーが戦ったことから始まった、天星器由来の戦闘。二人で五人ずつではなく二人それぞれが十人と戦わされたのだが、それは置いておいて。
「十天衆を丸ごと迎え入れるなんて真似しておいてライバルとか言ったって皮肉にしかならねぇって」
「あはは……でもまだ正式に仲間になってない人もいるんだよ?」
「と言ってもエッセルさんとカトルさんだけだけど」
「つまり十天衆の八人は確定してるってことじゃねぇかよ」
齢十五歳にして百単位の団員を抱える騎空団の団長をやり、その団員には最強の十人、十天衆がいるという。どんなヤバい騎空団だそれとダナンがツッコみたくなる気持ちはよくわかる。なにせ間違いなく現存する騎空団では全空に存在している秩序の騎空団を除けば最大規模である。しかも面子がとんでもない。
……もしかして戦力を集結させてるこいつらの方が全空の脅威なんじゃねぇの?
と思うダナンなのであった。しかし彼らに劣るのも嫌なのでライバルとして相応しい騎空団にしたいなと思う辺り彼も割りとヤバい騎空団予備軍であるのだが。
「……なんか十天衆に対抗できるような連中いねぇかなぁ」
「はは、そんな人達がいてもしダナンの騎空団に入ったら凄い脅威だね」
「十天衆みたいな人達がそんなにいっぱいいるとは思いたくないなぁ」
ダナンの呟きに二人それぞれに笑う。
――彼らは知らなかった。その何気ない言葉が、未来に実現することを。
「まぁ不確かな話しててもしょうがねぇ」
そう言ってダナンが踵を返す。
「じゃあな、てめえら。お前らが行く前に会うかもしれねぇが、会わないかもしれねぇし。精々首洗って待ってろ」
肩越しに手を振って去っていく彼の背中に、二人の団長が声をかけた。
「うん。追いつけるモノなら、追いついてくればいいよ」
「待たないからね、先に行ってる」
あくまでも自分達の方が先に行っているのだと告げて、生涯のライバルとなり得る少年の背中を見送る。
「さてと、じゃあ皆。次の場所へ行こう」
「他の皆が動いてくれてるとはいえ、僕達もお金を稼がなきゃね」
振り向いた双子の瞳にやる気という名の炎が宿っているのがわかり、仲間達は「応」と声を揃えるのだった。
こうして帝国を巡る一連の騒動で邂逅した、数奇な運命を持つ双子と、同じ『ジョブ』の力を持つ少年は再び道を分かつ。
しかしこれで終わりではない。
彼らと彼の旅路はこれからも続いていく。
目標とする空の果て、星の島イスタルシアに辿り着くまでは――。
ClassⅣとEXⅡ(トーメンターまで)を一気に取得させました。めんどくさいという作者の都合です。だってドクターとか色々必要なことあってめんどくさいですし。
幕間終わり感ありますが、まだもうちょっと続きます。