他にも追加した方が良さそうなタグがあればいただければと思います。
昨日よりも問題な今回の話……。
人と肌を重ねるってのは不思議な感覚だ。誰かと夜を過ごすことの意義を、それこそ身を持って知ったと言うべきか。
……まぁ、二人共体力があることに物言わせてたら朝になってたのはちょっと反省しないとだが。
なんだかんだオーキスの言う通りアポロって可愛いんだなと思いました。いや絶対にオーキスが言ってたのとは違うんだけど。
そろそろ朝食を作らないと、というところで部屋を出て浴場に行って身体を清めてから厨房へ向かった。
アダムは最初に起きてきて(あいつがちゃんと眠っているのかは兎も角)、次はほとんど変わらずアポロとオーキスが来た。アポロはやはりというか身体を清めてきている。……明るい場所でアポロの顔を見るとやけに気恥ずかしいが、それは向こうも同じようだ。
「……アポロ。どうだった?」
オーキスが耳打ちするように尋ねていた。あいつが素直になったのは、昨日のオーキスとの話し合いが理由のようだ。薄々感づいていたが、おそらく「……アポロもダナンが好きなら素直になるといい」ってことを言って聞かせたんだろう。
「問題ない。お前のおかげだ、オーキス」
アポロは晴れやかな笑顔で言った。その表情と言葉に満足そうだったオーキスだったが、ふと首を傾げる、
「……? アポロ、なんかツヤツヤしてる?」
俺にはよくわからないが、事後だと変わるらしい。
「ああ。ふふ、かなり吹っ切れたからだろう」
「……そう、なら良かった」
アポロは随分と嬉しそうだ。一晩でかなり刺々しさが取れたように見える。そこまで彼女を変えた一因が自分なんだと思うと不思議な気分だったが。
「オーキス。悪いが先に進ませてもらった」
「……っ」
「これでもうキス如きで偉そうにできないということだな」
「……キス、以上」
勝ち誇った顔のアポロと、キスより先と聞いて顔を赤くするオーキス。
おいやめろよお前がオーキス挑発して一番大変になるの俺なんだからな? 言っとくが流石にオーキスには手は出さねぇよ? だって子供だし。アポロはいい歳した大人だからあれだけど。倫理的にマズいだろ、オーキスは。
「ふむ。オーキス様があのまま残っていたら、ダナンさんがエルステの王になっていた可能性があるということですか」
アダムが話に入ってきた。こいつも冗談を言うんだなとしか思わないが。
「やめてくれ。俺は王なんて柄じゃねぇし、仮にそうなったとしても元々女王だったんだろ」
てっきり女系の王国なのかと思ったが。
「……アポロ、えっち」
「オーキスが子供なだけだろう」
顔が赤いままのオーキスが言ってもアポロにはなんのダメージもない様子だ。自分が圧倒的優位だとわかっているからだろう。
「……子供じゃ、ない。アポロと同い年」
「いや、それはオルキスであってオーキスじゃないだろ。オーキスとしての誕生は十年前なんだから」
入りたくはなかったが、出る杭は打たなければなるまい。
「……む」
しかしオーキスはむっとしてしまった。おや、言葉を間違えたか? アポロが笑っているのが見える。……こいつわざと挑発してやがったな?
「……私は子供じゃ、ない。アポロと同じことも、できる」
「い、いやさっきも言ったがオーキスはまだ幼いから……」
「……幼く、ない。子供扱いしないで。私が大人だって、今日証明する」
売り言葉に買い言葉のような気がしなくもないが、オーキスがやる気になってしまった。……クソ、どこで間違った。
「……アポロ。今日は譲って」
「ああ。好きにするといい。今日はゆっくり寝たいからな」
俺も寝たいんだよ。と言いたいがアポロは優しい表情をしている。……要は自分が優位に立ちたいとは思っているが、かと言ってオーキスを置き去りにする気はないってことか。まぁ二人の仲を考えれば当然のことではあるんだが。
「……俺の意思は?」
「……ダナン、アポロとはしたのに私とはダメ?」
尋ねる俺に、オーキスは悲しそうな顔をして言ってきた。……クソ、いつから俺はこんなに甘くなったんだ。
「はぁ。わかったよ、もう。嫌なわけじゃ、ないしな」
「……ん」
諦めて嘆息すると、打って変わって顔を綻ばせる。苦笑して朝食を配膳していった。
「……ちょっと、行ってくる」
「どっか行くのか?」
食後オーキスが一人でどこかに行こうとする。
「……ん。面白いの見つけたから。でも、まだ内緒」
「わかった。まぁいつか見せてくれ」
「……ん」
街に出たら「オルキス王女!?」となってしまうので出られないはずだが、アダム曰く街の方ではなく宮殿でなにかを見つけているらしいとのことだった。
アポロは相変わらずオルキスの下へ向かった。傍に寄り添うことしかできないからだろう。
俺も一旦アポロと一緒に行って、オルキスに薬と朝食を飲ませた。
その後しばらく雑談してから、身体が鈍らないように外で魔物を狩っておく。昼食前には戻って料理を作り、と平穏に過ごしていた。
問題はその夜だ。
「ホントにいいんだな?」
俺は薄着で俺のいる部屋に来たオーキスに最終確認を取る。
「……ん。ダナンになら、いい」
熱に浮かされたような表情をしていると、妙に色っぽく見えた。
「わかった。嫌だったり痛かったりしたら、言うんだぞ」
「……ん。わかった」
アポロもむしろ推奨する姿勢だし無碍にするわけにもいかずという形ではあったが、オーキスと一夜を過ごす結果となる。
◇◆◇◆◇◆
朝目が覚めると俺の上に乗っている温もりと重さがあった。行為の前後でこうも触れ合っている時の感覚が変わるのはなぜだろう。
昨晩致したオーキスが俺の上で寝ていた。流石にオーキスは小さい身体で無理をさせるわけにもいかないため一晩中は無理だった。俺も二日連続徹夜は勘弁願いたいので後処理をし服を着てから一緒に寝ることにしたのだ。
最新のゴーレム技術って凄いんだなと思いました。
ともあれそっとオーキスの頭を撫でる。僅かに身動ぎをして、寝惚け眼を開いた。
「悪い、起こしちまったか?」
「……ん。ダナン」
聞くがオーキスは構わずきゅっと抱き着いてきた。
「……不思議。ダナンと一緒の幸せが大きくなって、もっと好きになった」
「そっか」
どうも、まだ真っ直ぐ好きを伝えられるのには慣れていない。
「……これでアポロと並んだ。私は、負けない」
「俺も、ちゃんと覚悟を決めなきゃな」
「……ん。ダナンが好きになってくれる頃には、ダナンがずっと大好きになってるから、覚悟して」
「ああ。遅れたけど、オーキス」
「……なに?」
顔を上げて首を傾げるオーキスに、心からの感謝を告げた。
「俺を好きになってくれてありがとな、オーキス。こうして一緒にいてくれて、嬉しいよ」
「……っ」
するとオーキスは顔を真っ赤にして、しかし次の瞬間俺の唇に自分の唇を重ねてきた。
「……ダナンは、狡い。そうやってもっと好きにさせる」
すぐに口を離してそんなこと言ってくる。
「はは、じゃあついでにやるか?」
「…………一回だけ」
「はいよ」
俺を心から好きでいてくれる少女のために、文字通り一肌脱いだ。
それからというものその日の夜にはアポロ、次はオーキスという風にローテーションした。五回目の夜は二人で、ということになったのは俺がそろそろ出ていこうと思っているのが伝わったからだろうか。二人同時だと他のヤツに見られているからかまた違った良さが……いやあんま言うのはやめておこう。
妙に性に爛れた日々を送ってしまっていたが。
「……っ!」
オーキスがふとなにかを感じ取ってはっと顔を上げた。朝食後すぐのことだ。
「……オルキス」
ぽつりと呟いて駆け出した彼女に、もしかしてと思い三人で後を追った。
「……あ、あれ……? ここ、は……?」
開きっ放しの部屋の中から聞こえてくる声。それはオーキスと全く同じだったが別だとはっきりわかる声だった。中を見ればベッドの上に眠っていたはずの彼女が、上体を起こしているところだった。
「……オルキス」
先に到着していたオーキスが彼女にぎゅっと抱き着く。
「オーキス。それにアダムも。あと、アポロ? すっかり大人になってて一瞬誰かと思っちゃった。それに……っ!?」
オルキスは抱き着いてきたオーキスを優しく眺め、微笑むアダムに微笑み返し、色々な感情が込み上げてきているのか動けていない様子のアポロを見て苦笑し、次に俺のところに目を向けて顔を真っ赤にした。……んん?
「……あ、あなたはあの時の」
なぜか照れている様子だ。無意識か唇に触れたのを見て、理由が判明した。
「……王女様にとってはノーカウントでいいと思うぜ。流石に。オーキスとの、っていうことで」
「そ、そうですね」
オルキスの身体にいたオーキスが俺に口づけした。だが身体が返還されたのでその口づけ自体はオルキスの身体にカウントされる。だがそれだとあまりにもオルキスが不憫なので、カウントしないということにした。オーキスも嫌だろうしな。
「ほら、行ってこいよ」
話題を変えるためも含めて、ぽんと固まっているアポロの背中を優しく叩く。アポロはそれに押されるようにフラフラとオルキスの方へと歩いていき、オーキスと同じように彼女へと抱き着いた。
「……オルキス……っ。私は、お前をずっと……!」
「うん、知ってる。ずっと王宮にいて、アダムから聞いてたから」
感極まって涙するアポロを、オルキスは優しく撫でていた。感動の再会。その言葉が正しく相応しい場面に、顎に手を当てたアダムはこう言った。
「どちらにしてもダナンさんが王になる可能性が?」
「……お前実は天然ボケだろ」
折角目頭が熱くなっていたというのに台なしだった。……さてと。俺は目覚めたばかりの王女様に、食べやすい朝食を持ってくるとするか。
そう思って三人の邪魔をしないようにそっと部屋を出ていく。そして料理を装って盆に載せて運んでいった。
扉を閉めてしまっていたので開けて入ると、きゅぅという可愛らしい音が聞こえる。顔を赤くしているのでオルキス王女の腹の音だろう。
「目覚めたばかりだろうから流し込めるヤツだ。ゆっくり食べてくれ」
「あ、うん。ありがとう」
オルキスに盆ごと渡す。傍にいる二人が補助してくれるので心配ない。
「あ、美味しい。もしかして私が眠っている間も食べさせてくれたの?」
「ああ」
「やっぱり。朧げだけど美味しいモノを食べてる夢を見た気がするんだ」
手を合わせて笑う。確かにオーキスとは同一人物と思えなかった。とても表情が豊かだ。
「……オルキスはやっぱり食べるのが好き」
「変わらず食いしん坊だな。それで早く目覚めたのではないだろうな」
「確かに、ゴーレムの私でもまた食べたいと思う料理ですからね」
「も、もうっ。三人共」
三者三様に言われてほんのり頰を染めた。俺も三人に同意したのは言うまでもない。
「じゃ、食べ終わったら退散するかな。三人で積もる話もあるだろうし」
「ま、待って。私、あなたからの二人の話が聞きたい」
邪魔者は、と思ったのだがオルキスに引き止められてしまった。
「……ダナンの、私の話」
「ほう、気になるな」
二人も食いついてしまったので逃げ道はないか。
諦めて盆を下げた後で話に加わった。コロコロと表情が変わるので見た目も相俟って年齢より幼さを感じる。
だがまぁ本気で俺のやることはなくなったので、これでもう発てると思ったのだが。
「えっ……? もう行っちゃうの?」
なぜか一番王女様に愕然とされてしまった。ちょっと心が痛まないでもない。
「……仕方ない。ダナンの料理は世界一」
「当然と言えば当然の結果か」
「少なくとも私があなたの腕をトレースするまではいてもらいたいモノですね」
どうやら今までのこともあり胃袋を早速掌握してしまったらしい。というわけで仕方がなく俺の出発は三日後ということにした。ちゃんとこれ以上は延ばさないと断言して。
期限が決まれば当然二人もしばらく会えなくなるからと積極的になり、英気を養うどころか削られていくのだが、まぁそれは仕方がない。
そして旅立ちの日がやってきた。
「そういえば、オルキス様。星晶獣アーカーシャは如何しましょうか」
しかし大事な日になってからアダムが思い出したかのように話題に挙げる。
「我が国にはアーカーシャを厳重に保管する兵も設備もありません。二度と誰の手にも渡らないようにする必要があると思いますが」
「そうですね」
「なんでお前はそんな大事なことを、俺の出発前なんか言うんだよ」
「あなたの知恵もお借りしなければならない議題かと思いまして。ふとあなたが出る前に思い出しただけのことです」
ジト目で言うがアダムは取り合わない。
「……それなら私に考えがある」
そこで真っ先に意見を挙げたのは、なんとオーキスだった。
「……アダム。星晶獣アーカーシャを入れれば、ロイドは動く?」
「ロイドですか……。一体どこでそれを?」
オーキスの言葉を理解できたのは、エルステを知る三人の中でもアダムだけだった。オルキスとアポロはその『ロイド』とやらを知らないらしい。
「……三人も、来て」
「実際に見ていただいた方がよろしいでしょう。ついてきてください」
二人の話に全くついていけなかった俺達は顔を見合わせて二人についていくのだった。
そうして連れてこられた場所に、そのロイドとやらは座していた。
シルクハットに裾がボロボロになった黒いロングコートを着込んでいる。白い仮面に、蒼の長髪をしたゴーレムである。どこか紳士然とした服装だが、なんのために造られここに放置されていたのだろうか。
「これがロイド?」
「はい。ロイドはエルステ王国が誇る技術の推を結集させて造った、超攻撃型のゴーレムです。自我があるという点で私が最高傑作ではありますが、戦闘力で言えば遠く及びません」
「アダムよりも上かよ」
並みのゴーレムとは一線を画す性能のようだ。
「……アダム。ロイドは動く?」
「ええ、アーカーシャのコアを埋め込めば、ロイドは動くでしょう」
渋々アダムは頷いた。しかし、とオーキスを真っ直ぐに見据える。
「それは同時に自我のない殺戮兵器を世に放つということでもあります」
「……最近話してて、仲良くなれたと思うから大丈夫」
それで毎日どこかへ行っていたのか。そういえば他のゴーレムは埃が積もっているヤツもいるが、ロイドは綺麗になっている。掃除してあげていたのだろう。
「そしてアーカーシャを何者かの手に渡らせないために、ひとところに留まることはできなくなります。孤独な旅を強いられることになりますよ」
「えっ? オーキス、この国を出ていっちゃうの?」
アダムの言葉にオルキスが悲しそうな顔をしてみせた。
「……ん。ダナンも、アポロも。一人で旅をする理由がある。私も、もっとこの世界を、私自身の目で見てみたい」
確かな意志の込められた瞳が俺達を射抜く。アポロだけは驚きが全くなかったので、先日話をしたタイミングかどこかである程度聞いていたのだろう。
「……やりたいことは、それ。本当はもっと一緒にいたい。でも私も役に立ちたい。やるべきことを、見つけたかった」
「それがロイドをアーカーシャの番人とし、あなた自身がロイドを従えて旅をするということですか」
「……そう。その後はダナンの騎空団に入るけど、皆となら大丈夫」
「そこに異論はない。だが常に危険がつき纏うことになるぞ」
「……わかってる。でも、私はそれが私自身のやるべきことだと思った。星晶獣アーカーシャの制御も、きっと私にしかできないこと」
意地でも譲らないと言うか、既に覚悟を決めているオーキスになにを言っても無駄なようだ。
「そっか。じゃあしょうがないね」
意外と言うべきか、一番オーキスを心配していたオルキスが困ったように笑って言った。
「いいのですか?」
「うん。だって、少し前までオーキスは私だったんだから。一度言ったら聞かない、頑固だって知ってるよ」
「全くだ。誰に似たんだか」
「頑固な王女様と頑固な騎士様に、だろ」
一度決めたら譲らない、妙に頑固なところは二人の共通点でもある。
「ま、お前が決めたんならそれでいいさ。やりたいことを応援するってのは変わらないしな」
「……ん」
頭を撫でて告げる。……となるとアポロもオーキスも誰かしらに狙われる可能性のある状態になるわけか。俺も、もっと強くならねぇとダメだな。
「……あともう一つ、ロイドが欲しい理由がある」
そう言ってオーキスは抱えていた猫のぬいぐるみの背中に手を差し込んだ。
「……これ。ロイドがいれば必要ないから、私だと思って持ってて欲しい」
そう言ってオーキスは黒紫色の短剣、パラゾニウムを差し出してきた。
「わかった、大切にする」
断っても聞かないだろうということはわかっているので、有り難く受け取っておく。……かなり武器が増えてきたな。というかこいつらから貰った武器って奥義効果が強いとか言われてる天星器より強いんじゃね?
「決まりね。じゃあ早速アーカーシャのコアをロイドに埋め込みましょう」
オルキスが手を軽く叩いてそう言い、彼らの協力によって安置されていたアーカーシャをコアに換えてロイドへと埋め込んだ。埋め込んで数秒経つと、白い仮面に空いた穴が赤く光り出す。
「……ロイド。おはよう、これからは私と一緒に、行こう」
オーキスは言って、専用の鉄糸でロイドを動かす。まだ不慣れなのかぎこちない動作ではあったが、ロイドはお辞儀をしてみせた。
「あの強い星晶獣を動力にした攻撃特化のゴーレム、か。星晶獣並みの戦力だろうな」
「はい。彼一体で、島一つ滅ぼすことも可能でしょう」
「……大丈夫。ロイドとアーカーシャは、私が制御する」
「うん。頑張って」
指先から細く頑丈な鉄糸を操り戦う術を得たオーキス。ゴーレムとなったことで自身の身体能力も上がっているらしいので、今から一緒に旅する時が楽しみだ。
「さて。じゃあ王女様も目覚めたし、オーキスもロイドを得た。アポロの行き先は決まってるみたいだし、俺はもうそろそろ行くかな」
「そ、その前に一つだけいい?」
「うん?」
頃合いを見て俺が切り出すと、オルキスに遮られる。
「い、一度でいいので名前で呼んでもらえないかな?」
オルキスは期待するようにこちらを見上げてくる。……そういや呼んだことなかったな。
「……また一人強敵が増えた?」
「手当たり次第というヤツか」
「やはり彼が王になる可能性が……」
他三人が好き勝手言っているのをジト目で牽制しつつ、俺はオルキスへ向けて苦笑した。
「悪いな、オルキス。ずっとオーキスをオルキスって呼んでたから、混乱しそうだったんだ」
つい、というかオーキスにそうやってきたように、うっかりオルキス王女の頭を撫でてしまう。ちょっと気安かったかと後悔するが、
「っ……うんっ」
大変嬉しそうに笑ってくれたので、良しとしよう。なぜか特にオーキスとアポロからジト目を食らったのは置いておいて。
「じゃ、俺はもう行くな。旅する内に会うかもしれねぇし、会わないかもしれねぇ。まぁいつか同じ船に乗る時まで達者でな」
「はい、お元気で」
「いってらっしゃい」
「お前こそつまらないヘマするなよ」
「……再会した時は、それまでの分取り返すから、覚悟して」
四人に見送られて俺はメフォラシュの王宮から立ち去った。妙にオーキスが積極的な発言をしていたのは、まぁ再会した時に考えよう。
一応アダムの方でオルキス王女が見つかりそうという噂をメフォラシュに流していて、今後容態を見て民へ顔出しし完全な王政の復活を民へ、ひいては全空へ知らしめるつもりだろう。ただまぁエルステ帝国から成り代わるとはいえ信頼できる部下がアダムくらいしかいなのは致命的だ。国を安定して動かすには人手が足りないだろう。
これはリーシャから聞いた話だが、秩序の騎空団が帝都の人々に宰相フリーシアが諸悪の根源だと流布したらしく、半信半疑ではあったようだが怪しげな実験をしていて、その上政治を握っていたので裏があったという事実にも納得する者はいたようだ。まぁ上に立つ者の汚職を疑うのは世の常と言うか。秩序の騎空団が今まで築いてきた信頼の証か。
タワーを最優先で捜索したのだが、結局フリーシア以外は捕らえられなかった。行方知れずとなったのは、中将ガンダルヴァ、少将フュリアス、皇帝ロキ、フェンリル。
俺が知っている中ではもう一人大尉ポンメルンがいるのだが、彼は避難所の人達に熱い擁護を受け逮捕とまではいかず重要参考人として同行してもらう形となった。その前に上に立つ者がごっそりいなくなり不安と混乱に見舞われる民へ向けて演説をぶち上げたらしい。結果彼の支持率は鰻登り。秩序の騎空団が逮捕しようにも反感を買う状態にしたという。
まぁポンメルンは民に支持されるだけの器を持った人物のようなので、王国になっても彼を採用して帝都の民の不満を軽減するしかないだろう。
この空域内の様相もかなり変わってくるだろう。いいことも悪いことも起こるはずだ。
だが俺は俺の道を行くと決めた。
まずは仲間を探しつつ島々を回ろうか。
空を見上げれば澄み渡った青空が広がっている。晴れやかな気持ちで眺めたりはしない。なにせ蒼い空はあいつらの領分だ。
「……必ず追いつく。そんでもって追い抜く。それだけだ」
精々今は先を行くがいい。そう思って不敵に笑い、空を睨みつけて、俺は歩き出す。
これが本当の、俺の――ダナンの旅の始まりだ。
グラン君がルリアに手を出すようなモノ。
あとオルキスの照れはシリアスな場面だったので中断されますた。
一応ここで幕間本編(?)は終わりです。次から番外編になります。
因みにオーキスの身体はアダムさんが作ったんですよ……ふぅん。