ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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胃袋を掴めば大抵なんとかなる()

そういえば光古戦場までにガイゼンボーガでも取ろうかと思っていたのですが、勲章が足りず玉髄が入手できませんでした……。本戦中に取ってオートで殴ってもらおうかと思っています。ロザミアさんならフルオートで簡単に落ちてくれそうですし。


EX:ラーメン好きのアイドル

 小柄なハーヴィンの少女に呼び止められたが、彼女の言葉の一切が俺にはわからなかった。

 

「うぅ……やっぱりあなたも記憶にないんですね」

 

 俺に心当たりがなさそうだったので、少女はしょんぼりと肩を落としてしまう。

 

()って言ったが、俺以外のそのグループとやらに聞いてみたのか?」

 

 流石に話を聞かず「人違いだから、じゃあ」で済ませることはできそうにもない。そうした場合少女が悲しそうな顔をして周囲からの視線が痛いことになる。イタイドスの呼び名が否定できなくなってしまう。

 

「は、はい。その『キミとボクのミライ』っていう歌があるんですけど、その歌を歌っていたアイドルがいるんです」

「ほう」

「それがジータさんと、ルリアちゃんと、ヴィーラさんと、マリーさんっていう団員さん達なんですけど」

「……あいつかよ」

 

 どうやらジータのことだったらしい。

 

「リルルは間違いなく皆さんのアイドル姿を見ているんです。でも皆さんは記憶にない、って。人違いだ、って」

 

 リルルというらしい少女の顔が深く沈んでいく。

 

「なるほどなぁ。まぁ本人がそう言うなら、そうなんだろうが」

「ですよね……」

「でもそれはお前の記憶にも言えることだろ?」

「えっ?」

 

 俺の言葉にリルルは顔を上げる。

 

「俺にも記憶にねぇ話だが、俺の名前知ってるとも思えない。確かリルルはあの宴の場にいなかったからな。俺の名前を知ってるってことは、実際にリルルが見たってことに他ならないわけだ。つまり、お前が信じてる限り嘘にはならない」

「っ……」

 

 リルルは少し嬉しそうな顔で大きな瞳を潤ませる。

 

「……と、当然です! リルルの憧れは決して幻なんかじゃありませんから!」

 

 はっとしてごしごしと袖で目元を拭い笑った。

 

「で、因みに俺がプロデューサーってのは?」

「あ、はい。ジータさん達はグランさんによってプロデュースされたアイドルグループなんです。スカイブルーという名前で活動しているんです。そしてそのスカイブルーと対になっているバンドグループが」

「俺がプロデュースしたバンドってわけか」

「はい! その名もダークブラック。蒼髪のそっくりな姉妹二人がデュエットボーカルで、ギターの茶髪美人さん、ベースの赤髪ドラフさん、ドラムの黒髪赤目の少女がメンバーです!」

 

 そっくりな姉妹……と来たらオーキスとオルキスのことか? 茶髪美人がアポロで、赤髪ドラフはスツルムだろ。残りの黒髪赤目の少女とやらに心当たりがないが、概ね俺の知り合いらしき人物像だ。ただの妄想と切り捨てるには偶然が過ぎるような気がしてならない。

 

 少なくともあいつらでバンドを組んでいたということはあり得ないはずなので、実在していないのは間違いないはずなのだが。

 

「なるほどなぁ。話はわかった。で、今回リルルは出場するのか?」

「はい、もちろんです。リルル一人では出場できないので、今回限りの特別なコラボレーションもするんですよ」

「へぇ、そりゃ凄いな」

「……もしかしてリルルのこと知らないんですか?」

 

 俺の反応が想定より薄かったからなのか、そんなことを言ってきた。

 

「ああ、まぁな」

「……そうだったんですね。リルルはアイドルとしてまだまだです。でも今回のライブを見てもらえれば、ファンになってもらえるはずです! 見ててくださいね、絶対リルルのファンにさせてみますから!」

 

 落ち込んだのも束の間、気持ちを切り替えて意気込んだ。

 

「そりゃ楽しみだ」

 

 そこまで言うなら、彼女のステージを見せてもらおうじゃないか。

 と、いい感じに話が終わったところでくぅと可愛らしい腹の音が聞こえた。

 

「……あぅ」

 

 恥ずかしかったのかリルルの顔が真っ赤に染まる。

 

「ここで会ったのもなにかの縁だ。好きな食べ物はあるか?」

 

 苦笑して尋ねる。

 

「……ラーメン」

 

 ぼそりと返ってきた答えな意外なモノだったが、問題ない。

 

「わかった。じゃあ俺の奢りだ、食べに行こうぜ」

「えっ? で、でも……今はステージに向けてダイエット中で……」

「いいから。ほら行くぞ」

「あ、ちょっと」

 

 渋るリルルの手を取って強引に、ある場所へと赴いた。

 

「ここって……シェロカルテさんの?」

「ああ」

 

 俺が彼女を連れてきたのは万事屋シェロカルテだった。街を練り歩いていた時に見かけていたのだ。

 

「あれ~? ダナンさんにリルルさんじゃないですか~。どうかしましたか~?」

 

 シェロカルテは店にいてくれた。

 

「ちょっと厨房借りていいか?」

「はい〜。こちらですよ〜」

 

 あっさりと了承が取れたので、彼女の案内で早速厨房に向かう。

 

「えっ? あなたが作るんですか?」

「ああ。らぁめんはまだ広まっていない料理だからな。店探すよりかは楽だろ」

「いくら団長さん達のライバルでもあっさりラーメンを作れるなんて……」

 

 リルルと話しながら手を洗って料理に着手する。

 

「でもホントにラーメンを作れるんですか? リルルはラーメンという名の創作料理をいくつも食べてきました」

「そこは大丈夫だろ。らぁめん師匠のお墨つきだ」

「ラーメン師匠?」

「ああ。俺にらぁめんがなんたるかを教えてくれた、らぁめん一筋のおっさんだ」

「あ、もしかしてイッパツさんですか?」

「知ってたか」

「はい。リルルも偶に一緒にラーメンを食べに行ってますから」

 

 あのらぁめん師匠と食べに行くなんて、リルルも案外本気なんだな。好きな食べ物は、と聞かれて好物を答えたとしても好物について熱く語れるかと言われれば悩むところだ。そこをあのらぁめん師匠は熱く語る。それに付き合えるのは、リルルもそういうところがあるからだろう。

 

「とはいえ、今回は手早く作るからな。美味いらぁめんとはまた別だ。味は保証するが、時間をかけた最高のらぁめんとは違うってのは念頭に置いといてくれ」

「わかっています。リルルにだって、ラーメンがどれほど手間暇かけて作られるかわかりますから」

「そりゃ助かる」

 

 俺が言った通り、らぁめんというのは本気で作ろうと思うと時間がかかるモノだ。だが今回は空腹を満たすためのらぁめんを作るので、あまり過度な期待はしないで欲しい、という自分で言うのもなんだが俺にしては珍しく殊勝なお願いをしたわけだ。

 料理にはある程度自信のある俺だが、どうにもならないモノもある。その一つが本気らぁめんの調理時間というわけだった。

 

 リルルはらぁめん師匠の名前がわかったからか期待した目で俺が調理する様を眺めている。

 偶に「手際はなかなか」とか「そんな手法が!?」とか「お、美味しそうな匂い……い、いえリルルは食べるまで信じません」などと一人で言っていた。アイドルをやっているとリアクションが求められることもあるのだろう。一人でなんか喋っていた。

 

「へい、お待ち」

 

 もうすぐ出来そうだから座っとけ、と言ったことで椅子に腰かけしかしそわそわしているリルルの眼前に俺の作ったらぁめんを置く。あからさまに彼女の目が輝き、しかしふるふると首を振って、けれど期待せざるを得ないという表情で、早速一口。

 

「お、美味しい……!」

 

 らぁめん師匠と店を巡るくらいらしいので舌が肥えていそうだとは思っていたのだが、どうやら無事気に入ってもらえたようだ。

 偶像(アイドル)なのだからもう少し上品というか、人目を気にした食べ方をするのかと思っていたのだが、割りといい食べっぷりだった。作ったこっちとしても嬉しくなってくるくらいだ。

 

「……ぷはっ」

 

 丼を掲げてスープまで飲み干して、ごとっと丼をテーブルに置いた。

 

「美味しかったです! コシのある麺と短時間で作られたはずなのにコクのあるスープ。蕩けるような煮込みチャーシューと味玉は一級品ですし、全ての要素がラーメンという一つの丼に集約されています。極力脂身を取り除いたことによるあっさり感と食べやすさ、カロリーの削減がなによりも嬉しいです!」

 

 一息に評価してくれる。流石はらぁめん師匠の知り合いだ。

 

「でもやっぱり脂の旨みはなくなっちゃうので、本格ラーメンとして見るならもちろん物足りなさはありますけどね」

「まぁ、それはどうしようもねぇな。普通に作るらぁめんの十分の一未満にカロリーを抑える代わりに、そこは切り捨てたモノだ。チャーシューも脂身なしのヤツだからな」

「はい。でもこれならステージ前でも食べれそうです!」

「言っとくがおかわりは禁止な。カロリー削減を謳っていてもいっぱい食べたら元も子もないからな」

「うっ……わかってます、わかってますよ。その代わり、GMFが終わったらダナンさんの本気ラーメン、食べさせてくださいね?」

「おう。“蒼穹"がいるなららぁめん師匠もいるだろうし。折角だ、二人に今の俺の本気をご馳走してやらないとな」

「はい、楽しみにしていますね」

 

 ラーメン好きのアイドル、リルルとそんな約束を交わしているとふと思い起こされることがあった。

 

「あ、そういや。このらぁめん考えてたのには理由があって、らぁめん師匠から女性でもカロリーを気にせず食べられるらぁめんを考えてくれ、って言われたんだよな」

「えっ?」

「もしかしてそれって、ステージのためにらぁめん断食をするリルルのためだったりしてな」

「い、イッパツさん……」

 

 俺の言葉にリルルが感激していた。あの人らぁめん一筋だから、らぁめんに厳しいがらぁめんに優しいんだよな。リルルのことをこっそり慮っていたのかもしれない。

 

「あの~」

 

 遠慮がちに声をかけられて、二人でそちらを見るとシェロカルテや他の店員が顔を覗かせていた。

 

「美味しい匂いに釣られちゃいまして~。私達の分もあったりします~?」

 

 苦笑しての言葉にリルルと顔を見合わせて笑った。

 

「ああ。食材借りてるのもあるし、ご馳走しようと思って十人前くらい作ってやるから、八人までなら用意してあるぞ」

「料理に関しては流石ですね~。助かります~」

 

 ということで、俺は万屋の人達にもらぁめんを食べてもらい、意見を求めて更なる改良案を構築していくのだった。


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