明日はこの番外編のキャラ設定的なあれをまとめたヤツを更新します。
イベントを読んでたら特に見る必要はないかもしれません。
まぁでも本編で書いてないことも書いているので、興味があれば。
GMFが終わった翌日。
俺は厨房で最高のらぁめんを作っていた。
リルルと約束した、カロリー度外視の美味しいらぁめんである。
とはいえもう既に完成間近だ。
湯切りした麺を器に入れ、特製のスープをかける。トッピングは味玉、チャーシュー、メンマ、海苔、なると。味は今回二人の要望により醤油らぁめんとなっていた。
「へい、お待ち」
カウンター席に腰かけたリルルとその隣のイッパツの前にらぁめんを差し出す。
二人はいざ実食、とまずはズルズル一口麺を啜った。
「「ん〜っ!!」」
そして歓喜の雄叫びを上げる。……よし勝った。
「お、美味しい! 脂があって時間をかけるだけで何倍も美味しくなってます!」
「いやぁ、また腕を上げましたねダナンさん」
「だろ、今のところこれが俺の最高らぁめんだ」
二人は瞬く間に平らげてスープまで飲み干した。相変わらずリルルはアイドルとは思えないくらいいい食べっぷりである。
完食したら二人からの講評タイムとなる。二人の意見は非常に参考になるので、こちらとしても有り難い。感想を聞き終えてから集まっていた他のヤツの飯を用意していく。
「難点はちょっと高くなることだな」
「任せてください。言い値で払いますよ」
リルルは小さな胸を張って言った。
「流石、最優秀賞受賞者は違うな」
結局、発表された最優秀賞はリルルだった。なんでもサラスヴァティを退けた歌を聴いて決めたらしい。ステージ外の演奏だが会場が壊れたことで街にも届いていたようだ。審査外ではとも思ったが、慌てて逃げ惑う人達に刺さり、勇気づける歌だったので仕方がない。……というかサラスヴァティは俺の動機が変わったことについても気づいてたみたいだったし、元々リルルが『鏡花水月』を歌えるって知ってたんじゃないか? もしかしてリルルの歌をただのお遊びと称してるヤツがいたから、今回のことを起こしたとか? いや、流石にそれは考えすぎか。
因みにそれがなければ審査員全員を虜にした『炎舞三人娘』というかアンスリアだった。次点で俺達というところだったが、まぁ善戦した方だろう。アオイドスとバアルがいて最優秀賞獲れなかったのは残念だが、それだけ他のヤツらも凄かったということだ。
残念ではあるが悔いはない。次の開催に出る気はないのでいい思い出としては充分だ。賞金は得られなかったがシェロカルテの店で働いた金で多少稼ぎにはなったか。
「それにしてもびっくりしたよね。ダナン君が出場したこともそうだけど、まさか【ライジングフォース】だなんて」
カウンター席の別のところに座っているジータが注文したチャーハンを一口頬張った後に言ってくる。
「俺もびっくりだった。なにせ前日に取得したからな」
「へぇ?」
「【ドラムマスター】の上位互換で、お前らもギターやってれば会得できんだろ。俺と組んだアオイドスとバアルもお前らの騎空団だし、一緒に練習して取得すればいい」
どうやって会得するのかと言われれば、条件はギターが上手くなることと音楽への熱意。加えておそらくだが、こうなりたいという理想を掲げることだろうか。その全てを教える気はない。精々悩んでしまえ。
「そうだね。頼めるかな?」
「もちろんだとも。団長の頼みとあっては断る気はない」
「団長は団長って呼ぶのかよ」
「ああ。特にグラン団長は名づけると俺と同じアオイドスになりそうだからな」
「そんな理由かい」
命名センスだけはないアオイドス。確かにグランやルリアはアオイドスと名づけられそうな見た目ではある。被るから名づけない。なるほど。
「ほい、辛味噌らぁめんに、こっちが黒胡椒らぁめん」
順にアオイドスとバアルにもらぁめんを出してやる。グランは豚骨、ジータは塩だった。
「で、これが満腹らぁめんゼンマシマシチョモランマ」
「わぁい、すっごく美味しそうですぅ!」
当店(?)最大のボリュームを誇る満腹らぁめんは、大盛のらぁめんに大盛のチャーハン、そして大盛の餃子と漬物がセットになったモノだ。加えてゼンマシマシチョモランマとは、高い高い山のように具材やらをもっともっと載せる超弩級の追加オーダー。満腹らぁめんのセット全てに適用すると、らぁめんもチャーハンも餃子も漬物も、それぞれがタワーのようにそそり立つようになってしまう。運ぶのが大変なんだ。
「は、はは……。私は普通でいいな、普通で」
ルリアは嬉しそうだが、他は割りと引いていた。流石に常人が食べられる代物じゃないだろう。
「で、コク辛坦々麺に肉味噌らぁめん」
「おう」
「……」
カウンターにはいないラカムとオイゲンにもらぁめんを出してやる。ラカムは片手を上げて応えたが、オイゲンはシカトした。……そうかそうか。あんたがそういう態度だっていうなら仕方ねぇなぁ。
オイゲンがなにも言わずにらぁめんを口に含んだタイミングを見計らい、
「お義父さん!」
「ごふぅ!?」
呼ばれたくないと思っているであろう名称で呼んでやった。噴き出しそうになって直前で押し留め一気に飲み込んだので盛大に咽ていた。
「て、てめえ! なんてことしやがる!」
オイゲンは俺の狙い通りに睨み上げてくる。
「いやぁ、まさか自分の娘より小さいアイドルにハマってるなんてなぁ。グッズも買い込んで握手会にも並ぶんだって?」
「て、てめえまさか……」
「安心しろよ、アポロには絶対言わねぇから」
「て、てめっ……! マジでやめろよ!? なぁ!」
俺のにっこり笑顔を信用していないのかオイゲンが焦燥していた。
「当たり前だろ? 父親がアイドルにハマってウン万注ぎ込んだなんて、口が裂けても言えねぇなぁ」
「や、やめろ! ホントにやめてくれ!」
オイゲンはガチで必死だった。これ以上軽蔑されたくないらしい。……ふむ。どうやらこの話は聞きたくないようだ。なら別の話をしてやろう。
「じゃあしょうがねぇ。ベッドの上でのアポロの話でも――」
「うわああぁぁぁぁぁ!!」
俺が口にするとオイゲンは耳を塞いで叫び始めた。
「お、おい! 折角音楽で立ち直りかけてきたってのに……! しっかりしろオイゲン!」
ラカムがオイゲンの精神を立て直す作業に入った。一頻り遊んだので戻ろうとすると、周囲からジト目を受けていることに気づく。無視して戻ったが。
「……いつの間にボスとそんなに仲良くなったの?」
「まぁ、色々あってな」
我に返ってみるとなかなか恥ずかしい。なにせドランクやスツルムにも聞かれていたのだ。
「オーキスにあいつにと、手が早いな」
「俺だってこうなるとは思ってなかったんだよ。物好きに遭遇する確率が高すぎてるだけだ」
茶化すのは楽しいが茶化されるのは苦手だ。
「あ、そんなことよりあれだ。お前ら、オルキスが目覚めたから機会があったら会いに行ってやれ」
無理矢理話題を変えるために少し顔を赤くしている初心な双子やらへ視線を向ける。……ルリアやジータはまだしもなんでアポロとそう歳の変わらないカタリナまで赤くなってんだよ。
「お、オルキスちゃんがですか?」
俺の話題は無視できないモノだったからかルリアが食いつく。
「ああ。【ドクター】取得したのが良かったのか、早めにな」
「それってボスに早く会わせたいからだったりして〜」
「まぁそれもある。あいつもメフォラシュを出なきゃいけないみたいだからな」
ドランクの茶化しに平然と返す。即答するとは思っていなかったのか逆に驚かれた。
「まぁ、あいつらのことはいい。しばらく会えないだろうからな。……それで、黒騎士と同じことをオーキスにもしたのか?」
スツルムもそういうところに興味を示すのか、と妙な驚きはあったが。なんだかとても答えづらい質問をされてしまった。……ゴーレムだしできるわけないだろ、と嘘を吐くのは簡単なんだが。いつかバレることでもあるような気はする。
「……ああ」
大人しく頷く他なかった。途端に店内がざわつく。「あんな子供に」とか「ゴーレムでもいいんだ」とか不名誉な言葉が聞こえてくる。
そんな中、
「……へぇ? ダナン君って凄くオトナなんだねぇ」
妙に背筋がぞわっとする声が聞こえた。見ればジータが頬杖を突いて微笑んでいる。……あれ、なんか怒ってないか?
「ジータ? 怒ってないか?」
「ううん、怒ってないよ。だって私が怒る理由なんてないもん」
とは言うが怒っているような気がする。近くにいたグランとビィが青褪めていることからもわかった。
「黒騎士さんに、オーキスちゃんもかぁ。そっかぁ」
なんだか怖いジータの様子を怪訝に思いながら言い訳を述べる。
「……言っとくが、自分基準で考えるなよ? アポロは事実大人だ。俺の九個上なんだぞ。むしろ遅いくらいだ。それに、あいつがオーキスを蔑ろにするわけがない。ってなったらまぁ、そうなるだろ」
言い訳がましいのはわかっているが、自然な流れだとは思っている。確かアポロは二十五歳だ。いい年齢だろう。オーキスはまぁ、兎も角として。
「そうだとしても手が早いと思うんだけどなぁ。手当たり次第って言うか」
しかしジータは引き下がらない。……なんだってんだ全く。もしかしたらジータもそういうことに興味があるんだろうか。まぁお年頃だしな。思春期というヤツだ、意外ってわけでもない。
「ふぅん。興味があるんだったら俺が」
「えっ?」
「お前んとこの団員で経験豊富そうなヤツにそれとなく声かけてやろうか?」
「…………」
なぜか物凄くぶすっとした顔をされた。
「……なんだよ」
「知らない。もういいでーす」
ジータは拗ねた様子でらぁめんを啜り始める。
「?」
「……ダナンさんってなんか、凄く大人なんですね。リルルと三つしか違わないのに」
「そりゃ気のせいだ」
「えっ? ダナンって十六歳だったの?」
リルルの呆れた言葉に適当な返しをしていると、グランから驚きの声が上がった。
「ん? 言ってなかったか? 正確にはわかんねぇけど、大体十六だぞ」
「一応年上だったんだ……」
「そう変わらねぇだろ、お前らとなんか」
同年代とは言ったが年齢は言ってなかったか? まぁそんな大した差じゃない。十代半ばぐらいなのは間違いないしな。
とりあえず、あまりよろしくない話題ばかりだったので既知の二人と話をしておく。
「そういやお前らがここにいるとは思ってなかったんだが、この後はどこ行くつもりだ?」
「僕達~? ちょぉ~っとザンクティンゼルに行こうと思ってるんだよねぇ」
「へぇ? ま、生きて帰ってこいよ」
「あ、事情は聞かないんだ?」
「聞いたって答えないことは答えないだろ。それに、お前が必要ない行動をするとも思えねぇしな」
「信用されてるんだねぇ」
「他人事かよ」
ドランクの真意は大抵の場合読むことができない。だがこいつは必要なら行う、必要なら行わないという区別くらいはつけるヤツだ。ならザンクティンゼルになにかあるんだろう。
「ドランクのことはスツルムに任せた。適当に面倒見てやってくれ」
「わかっている」
「え~? 二人共僕の強さ信用してないの? そんなに心配しなくても大丈夫だよ~」
? ドランクのことだから「じゃあスツルム殿、僕のこと守ってね?」とでも言うのかと思ったんだが……。まぁこいつの考えてることは、気が合うとは思ってる俺でも読みづらいからな。
「そうか。だってよ、スツルム殿。甚振って連れ回しても問題ねぇって」
「それは言いすぎだよねぇ?」
「わかった」
「スツルム殿もわからなくていいよ?」
珍しくドランクがツッコミに回るという状態だった。
「ま、安心しろ。囚われの王子様を助けるために島ごとぶっ壊すぐらいならやってやるからよ」
「……お前なら本当にやりそうだな」
「……というか島ごとだと僕も一緒に死んでるよね? 助ける気ないよね?」
「まぁな」
「そこは頷いて欲しくなかったなぁ」
軽口を叩きつつ他の客にも料理を振る舞っていく。
スツルムとドランクの二人はさっさと行ってしまった。こうして料理をしていても来なかったので、もうオーキスはこの島にいないと見て良さそうだ。
結局ほぼ一日中料理をしてしまったので、俺はその翌日に島を出ることにしたのだった。
「じゃ、お前らともここでお別れだな」
俺はわざわざ見送りに出てきた一部の“蒼穹"の騎空団団員達を振り返って告げる。
「イタイドス。いい演奏だった。次はもっと熱いパトスを、共に奏でよう」
アオイドスがいつもの調子で言って右手を差し出してきた。
「そっちこそな。寄った島でステージがあれば聴きに行くよ」
彼の手を右手で掴み握手を交わす。
「これは旅立つイタイドスへの、俺からの贈り物だ」
そう言ってアオイドスは赤いギターを手渡してくる。
「いや、受け取れねぇって。俺のギターだって買ってもらったし、こいつがありゃギターはもういいだろ?」
「これはギターじゃあない」
「いやどう見てもギターだろ」
「いや、ギターじゃないんだ。イタイドスはギターをもう持っている。ならなにを贈り物にすればいい? 友情の証として俺の相棒をモデルにした武器をあげればいい、と思ってね。これは斧なんだ」
「……お前やっぱバカだろ」
「天才は常識で測れないモノさ」
くれるって言うなら貰おうか、と受け取って弦を試しに弾いてみる。あ、ホントだ。音が出ない。楽器じゃねぇのかよ紛らわしい。
「そういうことなら俺からはこいつを。俺の力を込めた槍だ」
「おう」
バアルからは変わった形の槍を手渡される。……ん? 俺の力?
「お前の力ってなんだ? 音が出るのか、これ」
俺は不思議に思って受け取った槍を回してみるが、別に穴が空いていて音が鳴るということもない。楽器じゃないのか。
「ああ、そういえば言ってなかったな。俺は星晶獣だ」
「はあ!?」
今回一番の驚きである。確かにヒトとしてはちょっと肌が白すぎるような気はする。謎の猫は鳴かず、食べず、ただじっとしているだけだし。
「……いや、だからサラスヴァティと親しげにしてたのか」
それなら納得はできる。
「親しいというほどでもないが……まぁ腐れ縁だ。音楽を好む星晶獣同士、な」
「そうかい」
いやもう、なんで星晶獣が騎空団に入ってるんだよ。いや、こいつらのことで驚く方が悪いのか? というかロゼッタがそうだから今更なのか。
「因みにもう何人か“蒼穹”に星晶獣が入団している」
「……もうツッコまねぇぞ」
とんでもねぇ連中だ。ホント、こいつらのライバル騎空団とかなれる気がしてこないんだが。
「兎も角、その槍には星晶獣バアルとしての力が宿っている。雷を操る力だ」
「へぇ? まぁ有り難く貰っておくとするか」
「ああ。次に機会があったら、今度は二人でセッションしよう」
「おう。機会があったらな」
俺はバアルとも握手を交わす。
「次はリルルですね」
ひょこっとやってきた小柄な少女に、俺の視線が大きく下がった。
「次会う時は、リルルの新曲の伴奏をお願いしてもいいですか?」
「いいけど、俺はハープみたいなのと太鼓とギターしか弾けないぞ?」
「……それだけ弾ければ充分な気が。いいんです、今度の曲はロックな感じにしてみますから」
「そっか。まぁ頑張れよ、アイドル」
「はいっ」
曇りない笑顔のリルルは、確かに見ている者に元気を与えられそうだ。
「それで、リルルも贈り物を。特注品なんですよ、キラキラで可愛いでしょう?」
リルルからは蒼い晶球にラッパの口のようなモノのある楽器? を渡される。試しに手に取ってみると、晶球のところに指を滑らせることで口から音が出てきた。まともな楽器武器のようだ。
「有り難く貰っとく。頑張れよ。次機会があれば、『ダークブラック』の連中のステージでもやらせてみるからさ」
「はい、待ってます!」
ずっしりと重くなった荷物を担いで他のヤツらに目を向けると、
「……ギターみたいな斧。雷を使える槍、綺麗な楽器」
「あん?」
ぶつぶつとグランは俯きがちに呟いていた。ジータがあちゃーという顔をしている。
「……全部僕が持ってないヤツだ。僕が何回『召喚』しても引けないヤツ……」
顔を上げたグランの目に光がなかった。これにはぎょっとしている団員もいる。
「……ダナン。一回でいいから触らせて!」
「嫌だね。てめえが欲しいんならてめえが貰えよっ!」
グランが飛びかかってきたので、とりあえず容赦なく鳩尾に蹴りを叩き込んで悶絶させてやった。普段なら兎も角理性を失って俺に勝てると思うなよ。
「おふぅ……」
地面に沈む情けない団長。
「じゃ、またなてめえら。縁があったら会おうぜ」
俺はグランを無視してひらひらと手を振り去っていく。少し離れて後ろからギターの音が鳴り響いたのにはびっくりしたが、振り返らなくても誰の演奏かわかった。アオイドスとバアルだ。
思わず笑ってしまう。
……悪くない、見送りだな。
ゲームの方では『プラチナ・スカイⅡ』が開始しましたね。
『プラチナ・スカイ』のナンダク版は考えていたのですが、
ダナンとドランクが共謀して安い費用で作ったヤツに乗り、
有望な選手のところに紐をつけて楽をしつつ、
ゴール目前で外して賞金だけ掻っ攫うというのも思いつきました。
アポロとオーキスで出場してナイトサイファーとどっちが早いか!
みたいなテンションを出しておいて脇で不正を働こうとするので
確実に叱られますね。
割かしほのぼのしそうだったので没にしました。