ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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もとい、ダナン無双。

グラブル内のイベント、『カッパサマー・クロニクル』のアレンジ番外編です。
前述した通りダナンが色々と無双します。


EX:『カッパサマー・クロニクル』もとい

 サメに関する一連の騒動を無事解決したグラン、ジータ一行。

 

 ベネーラビーチで夏を満喫した後に、もう一つの夏の風物詩として祭りに行くことになった。

 それがアウギュステ列島の小島の一つ、トォノシ島で開催されるカワロウ祭りである。

 

 トォノシ島では『スシ』と呼ばれる名物料理があり、カワロウ祭り開催期間中は街の通りに屋台が立ち並ぶ。

 実際に訪れて多くの屋台、灯篭に照らされた街並みを見て興奮し、購入していたユカタヴィラに身を包んで祭りを満喫していた。ビーチの方で遭遇したアウギュステ由来の伝説の種族、カッパという緑色の動物のようなキュウタを連れて祭りを回っている。

 キュウタが祭りを怖いと言うのでグランとジータがそれぞれの手を握って歩いているため、傍目から見れば親子のようにも見えなくもない。

 

 グランは青いユカタヴィラに帽子という恰好だが、なぜか拘りのフードが飛び出ている。

 ジータはピンクの花柄のユカタヴィラを着込んでいる。赤い髪飾りで髪の片側を上げているため項が露わになっている。

 一緒に歩いているルリア、ゼタ、ベアトリクス、カシウスもユカタヴィラの恰好である。ビィはそのままだ。

 

「はわっ! すっごく美味しそうな匂いがしますぅ!」

 

 ルリアの嗅覚が美味しい料理の匂いを嗅ぎつけた。一同がそこら中からいい匂いしてるけど? と苦笑したのは当然である。ルリアの少しだけ早くなった歩みについていくと、通りに並んでいる行列があった。最後尾からは列の前が見えない状態だ。行列は一応他の店の真ん前ではなく通りの真ん中に出来ている。ただし向かいの店に行くのが大変なので、通りたい人には道を空けるようにしているようだ。譲り合いの精神が大切。

 

「な、なんだよこの行列……」

 

 ビィがぎょっとして言う。行列はゆっくり歩くくらいの速度で進んでいたが、それでも次から次へと最後尾に並ぶ人がいるため一向に減っていっていない。

 

「この行列の先に美味しい匂いがします!」

 

 ルリアが確信を持って言った。グランとジータは顔を見合わせて、そんなに美味しいなら並んでみようかと、グランとジータとルリアとビィとキュウタという面子で行列に並ぶことにした。他の人達には適当に回っていてもらう。加えて良さそうなモノがあったら買ってきて欲しいと言っておく。

 

 そうして途中途中食べ物などを買ってきてもらいつつ行列を進んでいくと、ようやく行列の先が見えた。

 ただの屋台に見えるが、出し物の種類は万屋と書かれている。どうやら万の食べ物を扱っているらしく、猛然と調理し次から次へと品物を出している。焼きそば、リンゴ飴、チョコバナナ、お好み焼き。注文に合わせて色々なモノを作り続けるとんでもない店主が、と思ったら黒いユカタヴィラを着込み頭の左上に狐の仮面をつけた恰好のダナンだった。

 

 その姿を見た途端「あ、やっぱり」とグラン達が思ってしまったのも必然なのだろうか。

 

「ここ、ダナンさんのお店だったんですねっ」

 

 ルリアは既にダナンの腕を知っているため期待満点に笑顔で言った。そこでダナンがようやく顔を上げて一行の姿を認める。

 

「おう、お前らか。リンゴ飴は書いてある通りの値段、焼きそばのゼンマシマシエベレストは書いてる焼きそばの十倍の値段だ。うち特有の品物はパイだな」

 

 ダナンはしかし恰好を茶化したりせず手を動かし続けた。挙げた料理に目を輝かせた二人がいたのは彼の狙い通りか。

 

「オイラはリンゴ飴!」

「私はえぇっと、ゼンマシマシ……?」

 

 ルリアが聞き取れなかったのか小首を傾げると、屋台の方からフォローがあった。

 

「……ゼンマシマシエベレストの焼きそば?」

「そうです、それです! って、オーキスちゃん!?」

 

 ルリアが驚いた通り、料理するダナンに後ろから大きな平たい紙皿を渡しているのはオーキスだった。彼女も睡蓮の柄が入った水色のユカタヴィラを着ている。長い髪を団子にしてまとめ、ダナンとお揃いの狐の面を頭の左上に載せていた。

 

「……ん。いらっしゃい、ルリア」

 

 オーキスは久し振りに会えて嬉しいのかわかる程度に顔を綻ばせている。ダナンはおよそ十人前の焼きそばを焼き上げるとオーキスの持つ大皿にバランス良く盛りつけている。ゴーレムの身体になったことで身体能力が向上している今のオーキスなら、それを支えるくらいわけなかった。

 

「はは、オーキスちゃんも来てたんだ。二人は一緒に? あ、とりあえずパイってヤツを全種類一個ずつ」

 

 グランが世間話をしながら注文を行う。

 

「はいよ。とりあえずほい、リンゴ飴と焼きそばな」

 

 注文を承りつつ用意されたリンゴ飴とオーキスの持つ大盛りすぎる焼きそばをそれぞれ注文した相手に渡す。焼きそばは食べるのに手が使えなくなるためジータが持った。

 

「オーキスとは別で来てたんだよ。俺はこうして万屋シェロカルテの名前を借りて出店を担当中。メインのパイは万屋経由で出店するから、その宣伝も兼ねてって感じか」

「ああ、シェロさんの。じゃあオーキスちゃんは?」

「……私は屋台食べ歩きのために来た。ダナンの料理の匂いがしたから、お手伝いしてる。お金を払えばダナンの手料理が食べられて、屋台の料理もほとんど網羅できる」

「よ、良かったね」

 

 屋台を回るのも祭りの楽しみなんじゃ? というツッコミは思い浮かべるだけにしたグランであった。

 

「もちろん一段落したら一緒に回る予定なんだけどな。なんか行列になっちまって、全然途切れん」

「ははは、そうなんだ」

「結構な速度で回してるはずなんだけどな。ほれ、パイ全種一個ずつ」

「ありがとう。じゃあこれお代」

「……ん。まいどあり」

 

 グランの出したルピをオーキスが受け取り数えて丁度であることを確認、ルピを箱にしまった。

 

「おい、ダナン。まだ行列は終わらなさそうだぞ……と、お前達か」

 

 更に屋台の裏からダナンへ声をかけてきた人物がいた。グラン達を知るその人を見て、一瞬彼らは呆然とした。

 花火柄の黒いユカタヴィラを着て、花の髪飾りで左側の髪を上げている。濃すぎないナチュラルメイクをした様子と覗く首筋、そしてユカタヴィラの上からでもわかるスタイルの良さが大人の色香を漂わせている。

 

「……ふっ。ほら見ろ、お前を見てこいつら固まってんぞ、アポロ」

 

 見惚れた様子のグラン達を見て吹き出したダナンが言い、ようやく動き出す。

 

「く、黒騎士さん! すっごく綺麗ですよ!」

「一瞬誰かと思っちゃうくらいびっくりしちゃいました」

 

 ルリアとジータが彼女のユカタヴィラ姿を褒める。というかいつの間にか焼きそばがなくなってるんだがそれは。

 

「……そうか?」

 

 暗に普段の様子からは想像もつかないと言われたからかアポロは少し眉を寄せる。

 

「それだけ綺麗だってことだろ。ほい、リンゴ飴」

「……まぁ、悪い気はしないか」

 

 ダナンは褒めつつ食べ物を与えてアポロを複雑そうな表情を変える。大分扱いに手慣れているようだ。

 

「黒騎士さんは、どうしてここに?」

「私はオルキスに土産でもと思ってな」

「あ、そういえばオルキスちゃん目覚めたんですよね」

「ああ、そうだ。オルキスは今エルステ王国をまとめるので忙しい。だがどうしても行きたかったようでな、私に土産を買ってくるように言ってきたんだ。そこでダナンとオーキスに会い、こうして手伝わされているというわけだ」

「……ダナンと一緒に回るのは、お手伝いと交換条件」

「オーキス。余計なことは言わなくていい」

 

 そのやり取りで大体の事情を把握した。

 

「で、そこの熊の面つけたヤツは誰だ?」

 

 ようやく、ダナンがグランの傍にいたキュウタの存在に触れる。

 

「ああ、カッパか」

 

 アポロがダナンの視線の先を追ってキュウタを見つけ、その正体を口にする。

 

「カッパ?」

「ああ。アウギュステに伝わる伝説の種族だ。ここトォノシ島に由来している。このカワロウ祭りの“カワロウ”もカッパという意味だな」

「へぇ。ってことはお前らはそれもあってここに来たってことか。相変わらずトラブルの種になりそうなことに遭遇してんなぁ」

 

 ダナンの苦笑しての言葉に、グランやジータも苦笑で返すしかなかった。

 その時、

 

「あっづぅ!!?」

 

 彼らの後ろで突如叫び声が上がる。一行が驚愕して振り返ると、男が熱された炭を落とし赤くなった手を押さえているところだった。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 ルリアが心配そうに駆け寄て声をかける。

 

「あ、ああ。だ、大丈夫だ」

「火傷してるかもしれませんし、ちょっと診せてください」

 

 ジータが男の手を取って回復させようとする。男は火傷したからか冷や汗を掻いていた。

 

「ジータ、よくやった。そいつをそのまま捕まえといてくれ」

「えっ、あ、うん」

 

 ダナンの言葉を怪訝に思ったジータだったが、大人しく従って男の手をキツめに掴む。男は彼の言葉にびくりと身体を震わせた。

 

「あ、ダナンさん~。今そっちにスリ犯が~、って……ジータさんが捕まえてくださったんですね~」

 

 そこに自警団を伴ったシェロカルテが駆けつける。

 

「……クソッ!」

 

 男は悪態を吐いて走り出そうとするが、ジータは素早く足をかけて男を転ばせ腕を捻って取り押さえた。

 

「ぐっ!」

「ナイスです、ジータさん~」

 

 ジタバタするが身動きの取れない男を、シェロカルテの連れてきた男二人が引き受け両手首を縄で縛りどこかへ連れていく。

 

「えっと、あの人はスリなんですか?」

「はい~。それにしてもよくわかりましたね~。おかげで助かりました~」

「あ、いえ。ダナン君が捕まえておけ、って言ってくれたので」

「? そうなんですか~?」

「ああ」

 

 頷いたダナンに視線が集中する。

 

「そもそも、あいつが火傷したのも俺の仕業だしな」

「え? あ、でも確かになんで炭持ってるんだろうとは思ったかな」

「だろ? 俺が、ジータの鞄に入ってる財布をスられる瞬間に炭に変えてやったんだ」

「えっ!? 嘘、全然気づかなかった……」

 

 ダナンの言葉にジータ含む全員が驚いていた。オーキスだけはなぜか自分のことのように誇らしげだ。

 

「ダナンさん、よく気づきましたね~」

 

 シェロカルテの言葉に、ダナンはニヤリを笑う。

 

「なに言ってんだよ。俺の本業は()()()だ。言うだろ、蛇の道は蛇、って」

「「「……」」」

 

 そういやそうだった、とジト目になる一行とシェロカルテ。そう、ダナンはデフォルトの『ジョブ』もグラン、ジータの戦士(ファイター)ではなく盗賊(シーフ)なのだ。しかも幼い頃から横暴なマフィア相手にスリを働いてきた本職である。

 

「話終わったんならさっさと場所を開けてくれ。スリはこういう人混みで、祭りに浮かれて油断した連中を狙うことが多い。わかったら気をつけて、祭りを楽しんでこい」

 

 ダナンは一行を追い払うように手を動かす。そこでずっと順番待ちを阻害していたとこを思い出し、慌てて退く。

 

「なぁ、アポロ。カッパの好物ってなんかあったりするか?」

「ん? そうだな……きゅうりが有名だろう」

「そうか。きゅうりなぁ。確かあれが一本あったか」

「?」

 

 ダナンがカッパの名前を出したことでキュウタが不思議そうに首を傾げていた。

 

「ほら。やるよ」

 

 彼はキュウタに串の刺さったきゅうりを差し出す。新鮮で瑞々しい生のきゅうりではないようだ。色が深みを帯びていた。

 キュウタは目を輝かせるが、ちらりとグランを見上げる。グランが頷いたことで受け取った。

 

「お代は?」

「いらねぇよ。そいつ、祭りが初めてなんだろ? おまけしてやるよ、目いっぱい楽しんでこい」

「うん、ありがとう!」

 

 キュウタは礼を言ってきゅうりに齧りつく。

 

「美味しいけど、なんだ? 普通のきゅうりと違う……」

「それは漬け物だ。今準備中だから、また食べたいなら買いに来い」

「わかった!」

 

 面倒見のいいところもあるんだな、と感心しているところでふとあることに気づいた。

 

「あれ? キュウタが祭り初めてだってなんで知ってるの?」

「そりゃあ簡単だ。見るモノ全てに驚いてるみたいだったしな」

 

 よく見ている。と、登場から料理、盗み、観察とダナンの特技が乱立したところでそろそろ後ろの人達が苛立ちを見せているので退散した。

 

 グラン一行以外にダナン達も来ている中、トォノシ島での騒動が始まろうとしていた。


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