グラブルのイベントとは違うので“蒼穹”の一団にヤスが敵うはずもないだろう、ということでこういう形となりました。
そしてまたしてもダナン無双。
前話でわかったかと思いますがイベント本編は端折っています。
ダナンの屋台から離れて祭りを周り満喫するグラン一行。
そんな中でカタヌキの屋台を見つける。
カタヌキとは薄い菓子の板になんらかの模様が彫られており、彫られた形に沿った溝を針で削り刳り貫くモノだ。形を割らずに見事型を抜くことができれば、型の難易度に応じて逆に金を貰うことができる。
興味本位、金銭目的など様々な理由でカタヌキに取り組む人がいる。
一行も折角だからやってみようかと思ったのだが。
「っ!? て、てめえは……」
カタヌキの屋台をやっていた、頭に鉢巻きを巻いた男・ヤスが熊のお面をつけたキュウタを見て驚いた表情をする。
「てめえ、キュウタだな!?」
「ッパ!?」
男がキュウタの腕を掴む。なにか知っているようだったが、キュウタが怯えた様子を見せたのでグランが男の手を払い、ジータがキュウタの身体を引き寄せる。
「……てめえら、なにしやがる」
「それはこっちのセリフです」
「……チッ」
ヤスの声が周囲に聞こえていたのか彼らを見てざわつき始めたことで、彼は舌打ちして力尽くは無理と判断したらしい。
「事情の知らねぇてめえらが出しゃばっていいことじゃねぇ……がどうしてもそいつを連れていきたいんなら俺を倒してからいくんだな!」
ヤスはグラン達に告げると懐からマイ針とカタヌキを何枚が取り出す。「倒してから」という言葉にグラン達が身構える中、ヤスは机にカタヌキを十枚並べた。
「カタヌキ十本勝負。てめえらの一人でも俺より先に十個のカタヌキを終わらせることができたら、見逃してやる。だがもし誰も俺に勝てなかった場合、そいつは返してもらう」
ヤスの目は本気だった。人数差などを考えて彼が敵わないと見たのかカタヌキに絶対の自信を持っているのか。できればグラン達もボッコボコのタコ殴りにするような事態は避けたいので、
「わかりました。その勝負、受けて立ちます!」
グランの宣言によってヤスVS“蒼穹"のカタヌキバトルが始まるのだった。
ルールは簡単。
先に十枚終わった方の勝ち。ただし一度でも割ってしまった場合はその時点で敗北とする。
「一番は私だ! ……あっ」
「儂の拳で打ち砕いてくれる!」
「あたしこういうの苦手なんだけど……」
合流していたベアトリクス、ガンダゴウザ、シグの三人が一枚目で自滅。ヤスは猛然とカタヌキをしており強敵だと判明する。また、彼は内心でこれなら楽勝だな、と確信した。
「面白そうなことやってんじゃねぇか」
「カタヌキか……いっちょ揉んでやるかぁ」
ユカタヴィラ姿のラカム、オイゲン、加えてカタリナ、イオ、ロゼッタまで合流してカタヌキに挑むが、器用な者であってもヤスのスピードには勝てず敗北していく。
いつの間にか野次馬が集まっていたこともあり、なんだなんだと集まって自分達の団長が関わっていると知り参戦していく“蒼穹”の面々だったが、ヤスには勝てず敗北していった。
「こうなったら僕が出るしかないね」
集まってきた団員にルリアまで敗北した今、団長たる自分が出るしかない。ジータの方が器用なため最後に後にして、グランが参戦した。
「頑張ってください、グラン!」
ルリアの声援を受けいざヤスとの勝負に挑む。
今までの“蒼穹”最高戦績はヤスが十終わるまでに七枚目に取りかかったジークフリート。彼の冷静沈着さと器用さ、そして速度を持ってしても敵わない相手。
そこでグランは恐れず思い切り良く削ることでヤスに挑んでいた。なんとかヤスが二枚目に取りかかるところで一枚目を抜き終わり、コツを掴んでより早く二枚目を終えるがヤスには追いつけない。なんとか最高速度を維持し続けるのだが、最終的には八枚目を削っているところでヤスが最後の一枚を抜き終えてしまった。
「後は任せて、グラン」
「ごめん、頼んだ」
“蒼穹”の騎空団最後の砦、ジータの参戦である。グランとバトンタッチしたジータは集中して臨む。速度はグランよりも互角に近い。だがヤスは互角近いと見るや更に速度を上げ、次第にジータを突き放していく。ジータもなんとか食らいつこうとするが、結局は九枚目を抜けそうなところでヤスが終了してしまい、敗北を喫してしまう。
「そ、そんな……」
ジータまでも破れ、後は針が持てるかどうかすら怪しいビィしか残っていない。
「どうした、もう終わりか? なら諦めてとっとと――」
万事休す。勝負に負けて尚駄々を捏ねて逃げるのは野次馬も大勢いる都合上大変よろしくない。大人しくキュウタを引き渡すしかないのか、と思っている中に。
「皆さ~ん!」
間延びしたよく通る声が彼らの耳に届いた。
「強力な助っ人を連れてきましたよ~!」
人混みで姿は見えないが、間違いなくシェロカルテの声だ。彼女の声が聞こえた方向の野次馬達が道を開ける。
そこにいたのは狐の面に黒いユカタヴィラを着込んだ男だった。仮面から黒髪と黒眼が除いている。というかダナンだった。
「……そうか、もしかしたら……」
グランはダナンを強力な助っ人と呼んだことに納得する。三人の『ジョブ』使いの中で、最も器用さが高くトリッキーなタイプと言えるダナン。ジータがいい勝負になったなら、勝てる見込みがあるのかもしれない。
「兄ちゃんが最後の挑戦者ってわけか」
「そういうこった。まぁ、悪いが受けてくれ」
ダナンは言ってヤスの向かいに座る。仮面をしていたら見にくいだろうというヤスの内心のツッコミは届かない。
「誰が相手だろうが関係ねぇ。俺が勝つ!」
「そういうヤツを驚かすのが、楽しいんだろ」
両者が言って、カタヌキを猛然と開始する。ヤスは強力な助っ人という言葉を警戒して最初からトップスピード。ジータを負かした速度で一枚目を抜き終える。針を持った右手を横に伸ばし残心――と鏡を見ているかのように向かいでも同じ恰好が起こった。左手で針を持ったダナンが一枚目を抜き終えたのだ。
ヤスのカタヌキ速度は見ていたが、ダナンが彼に追いついているという事実に野次馬がざわつき始める。ヤスは動揺しそうになる心を抑えつけて二枚目に臨んだ。二枚目を抜いて即座に三枚目に取りかかったのだが、ダナンがほぼ同時に三枚目に移ったことで焦りが生まれ始める。一枚目の時はやや遅く抜き終わっていたはずなのに。
三枚目もほぼ同時。焦燥に駆られて更に速度を上げ四枚目を抜くがこれもほぼ同時。こんなガキに! という悔しさをバネにして速度を上げ続けるが、明確な差が出たのは八枚目。取りかかるのがダナンの方が早かったのだ。
おぉ、とどよめく野次馬達。まだ追いつけると気合いを入れてかかるも、九枚目もダナンの方が早く入る。追いつくどころか差が開いていることに、愕然としてしまう。
そしてダナンが十枚目を抜き終わる瞬間、つい力が入ってしまったのかヤスの持っていた十枚目、最も難しいドラゴン型のカタヌキが割れてしまう。
「俺の勝ち、だな」
自分の抜いたドラゴンをヤスに見せてダナンが宣言した。ヤスを超えたカタヌキ名人の誕生に野次馬達が盛り上がる。
「……クソッ」
ヤスはがっくりと肩を落とし、なんとかキュウタを守り切った一行は野次馬を押し退けて一旦立ち去るのだった。
「お前ら、貸し一つだからな」
というダナンの不吉な言葉は、聞こえなかった方が良かったかもしれない。
◇◆◇◆◇◆
その後、一行はトォノシ島名物の『スシ』を食べに「みや里」というスシ屋に向かう。
スシとは握ったご飯の上に色々な具材を載せて一つの形とし、ご飯と具材のセットを二つで一つの小皿に乗っていることが多い。スシの多くは刺身や貝などの海鮮が載っていることが多いのだ。
海のあるアウギュステで、ということもあり海鮮を載せるスシが特に人気高いのだ。
そこでスシを握っていた大将がキュウタに優しげな声をかけたり。
みや里の大将が客のために連日連夜休みなく働いていることに、ノー残業デーの素晴らしさを世に広めることを生き甲斐とする金髪の女、フライデーが突っかかったり。
スシを堪能した後に神社に辿り着き、その地下でキュウタと同じ種族のカッパ達がみや里の大将の力になるために魚を捌き続けている場面に遭遇した。
そしてキュウタの故郷がここであることを知った一行。
大将は客を喜ばせるために日夜スシを握り続け、カッパ達は大将を手助けするために魚を捌き続けるという循環が、みや里の人気を支えているようだった。
しかし連日スシを作り続けている彼らの様子には、疲労の色が濃く見えている。
身体の限界を迎えるのも時間の問題と思われた。
自分達にできることはないのか、と祭りに戻っていく一行だったが、そこでキュウタがヤスに攫われてしまう。
自分達は勝負に負けたら大人しく引き下がろうと思っていたというのに、負けて尚彼はキュウタを奪ったようだ。慌てて一行が彼を追いかけた先には、先程寄ったみや里があった。丁度入っていく姿が見えたかと思ったら、ヤスの「親父!?」という声が聞こえる。
怪訝に思いつつも一行が入ると、そこには倒れたみや里の大将と大将に呼びかけるヤスとキュウタの姿があった。
ここでヤスが大将の息子であるという事実が判明。どうやらいなくなったキュウタを連れ戻そうとしていたらしい。
大将がいなければスシは握れない。
祭りにはみや里のスシ目当てに来る客も多い。日帰りだとしても祭りを回って夜みや里で食べてから、祭り一番の盛り上がりを迎える光華―火薬を詰め込んだ玉を空に打ち上げて爆発させ光の華を咲かせる独特の文化―大会を観て一日を締める、というのも人気な周り方なのだ。
それができず大勢の客を悲しませてしまう他ない状況に、なりつつあるのだった……。
ところでマギサが当たってホクホクしていたのですが、皆さんは熱い聖夜を過ごすなら
マギサ
アルルメイヤ
どちらがいいですか?
私のゲーム内グラン君が究極の選択肢を突きつけられています。