ナンダーク・ファンタジー   作:砂城

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昨日後書きに書いたマギサとアルルメイヤどっちが、という質問ですが今のところアルルメイヤの票数が多いですね。

クリスマス、浴衣とバージョンも多いですし、アルルメイヤの方が人気なのかなぁ。

私の予想では「どっちか? バカが、二人共だろ」という猛者が一番多いと思ってました(笑)


EX:四人の若大将

 翌朝。

 看病によって目を覚ました大将は、過労で倒れたということもあり昨晩フライデーから「やりがいだけではダメ」と諭されたことで、みや里を閉めようと思っていると語った。

 

 大将がスシを振る舞い客を喜ばせたいと常々思っていることを知っていたキュウタは、大将の代わりにスシを握ると宣言する。

 キュウタの熱意を応援するためにグランやジータも協力を申し出て、“蒼穹"一同みや里に助力することを宣言するのだった。

 

 カッパ達も疲労が蓄積しているため、食材切り分けにも団員を割き、グランとジータがキュウタと一緒にスシを握ることにした。

 

 とはいえスシは一日でなんとかなるモノではない。一時休業して最大の盛り上がりを迎える光華大会当日に向けて修行を始めることとなった。

 

 とはいえ人手も少なく料理のできない団員も存在している。更に言えばみや里は人気店のため下手なモノを出すわけにもいかない。

 果たしてキュウタ、グラン、ジータの三人で店を回せるのかという不安もある。ルリア、ビィも料理の配膳や席の案内などを手伝うにしても大半が食材の調達やら地下の作業場に割かれてしまっている。余裕を持たせるためにもあと一人スシを握る要員が欲しいところだが。

 

「……料理ができて、大勢の客を捌けるヤツか」

 

 ビィの呟きに、「都合良くいるなぁ、そういう人」と双子が顔を見合わせる。

 ということで早速その人物に会いに行き、協力を要請する、のだが。

 

「やだよ。大体お前らカタヌキの件で俺に貸し一つだろうが」

 

 当然のことながらダナンである。というかこれを口にしている時も屋台に並んでいる大勢の客を捌きながらのことである。紛れもなく適任と言えるのだが。

 

「こ、この間のは僕への貸しで、今回のはジータへの貸しってことで」

「それやったらお前らの団員全員に貸し作るまでタダ働き確定じゃねぇかよ」

「これ以上は重ねないから。お願いっ」

 

 頼む、と二人とビィとルリアまで揃って両手を合わせ頭を下げる。ダナンはどうすっか、と頭の後ろを掻いていた。

 

「……ダナンの握ったおスシ、食べたい」

 

 今日も屋台の手伝いをしていたらしいオーキスが、彼の顔をじっと見上げて告げた。一見なんの感情も映っていない瞳で見つめられたダナンは困ったようにアポロへと視線を向ける。

 

「ん? 悩む余地があるのか? お前のことだから手伝うどころか嬉々として参加すると思っていたが」

 

 アポロはむしろ断ると思っていなかった様子だ。

 

「……ったく。しょうがねぇ。じゃあ手伝ってやるかぁ」

 

 ということで、みや里へのダナンの参戦が決定するのだった。

 そうして早速修行に取りかかるグラン達。味見をするのは大将の息子としてスシを食べて育ってきたヤスである。

 

 食材の下処理は地下の団員とカッパ達がしてくれるので、キュウタ、グラン、ジータ、ダナンの四人は酢を混ぜた飯の形を整え、適度な大きさに切った刺身や貝を載せるだけ。

 ではあるのだが。

 

「ダメだな。全然、ダメだ」

 

 彼らのスシを食べたヤスの心からのダメ出しが入った……もちろん、ダナン以外に。

 スシを握ること自体は、しばらく練習して全員ができるようになった。『ジョブ』を持っていることもあり多様な才能を持つ三人は当然として、キュウタも魚を捌くために必要は器用さを持ち合わせている。四人の中では最も苦戦したのだが、それでもあっさりできたと言っていい習得速度だった。

 今はその次の段階。美味しいか、美味しくないかである。

 

 客に出すということは、即ち金を出す価値があるモノであるということ。

 しかも今回は大将の代理でスシを握る。つまり自分達が大将と同等以上のモノを出さなければ客を満足させることはできず、手伝うどころか評判を落とす結果にもなりかねない。

 

「……だがてめえ、ダナンっつったか? カタヌキも相当だったが、料理もできんのかよ」

 

 キュウタ、グラン、ジータの三人にはダメ出しをしたが唯一ダナンのスシには美味いという評価をしていた。

 

「まぁな。俺の得意分野の一つだ。こいつらとは違って、実際に店にも関わってることだしな」

 

 ダナンは素直にヤスの評価を受け入れる。その言葉にグランとジータはより強く差を実感して自らを奮い立たせた。

 

「なるほど、そりゃ美味いわけだ」

 

 ヤスは納得したように頷き、このままではなにも変わらないと思ってかダナンに助言してもらえ、と言って祭りの運営に戻っていった。彼も彼でやることがあり忙しいのだろう。

 というわけで胃袋無尽蔵のルリア&オーキスに味見をしてもらい、美味しいスシを握るための修行を続けていく。

 

「ダナン君と私達、なにが違うんだろう?」

 

 ジータが顎に手を当てて考え込む。

 

「うーん……」

 

 グランも腕を組んで考え込んでいた。キュウタは練習のために桶で酢飯を作っている。

 

「元々のセンス」

 

 ダナンはあっけらかんと言って、三十秒で握ったマグロのスシ十貫をカウンター席に座ったオーキスへと出した。身も蓋もない彼の言葉に他三人がジト目を向ける。オーキスはスシを試食しまくれてご満悦だ。

 

「ってのもあるだろうが、まず心構えじゃねぇか?」

 

 貝、イカ、タコなど十貫全て違うスシを握ってオーキスの隣に座るアポロへと出しながら続ける。

 

「心構え?」

 

 三人はきょとんとし揃って首を傾げた。

 

「ああ。それがわからねぇってことは、お前らがまだ【シェフ】の『ジョブ』を解放してねぇってことだろうが……」

「そ、そんな『ジョブ』があるの?」

「ああ。お前らんとこの団員、バウタオーダとエルメラウラは出場してたから知ってるかもしれないが、WCCっつう料理の大会があってな。そこで優勝した時に解放した『ジョブ』だ。お前らなら別に優勝しなくても、そこに至れるだけの腕前とかがあればできるとは思うが」

 

 その言葉に、そういえば二人がダナンが優勝したって聞いたような、と思い返す。その時は「へぇ、凄いなぁ」としか思わなかったのだが、どうやらそれすら『ジョブ』になってしまうらしい。

 

「で、その【シェフ】になる条件と今回のスシは、同じだ。人に料理を振る舞うってことがな」

「そっか。それでダナンは最初から美味しいスシが握れるんだね」

「だろうな」

 

 ダナンは話を続けながら早々に食べ終わったオーキスに次の十貫を出す。ルリアは美味しそうにスシを食べていくオーキスを羨ましそうに見つめていた。

 

「それでその心構えってなんだッパ?」

 

 キュウタもダナンの話には興味があるのかそう尋ねる。

 

「答えを教えてやるのは簡単だが、それじゃあ約束が違う。俺はみや里の営業は手伝うが、お前らの上達を手伝う気はねぇ。最悪俺一人でも回せるしな」

 

 一見不可能そうな言葉でも、ダナンならやり遂げてしまいそうだと思ってしまうくらいには彼の料理の速度を知っている双子である。

 

「お前らがスシ握るのはなんのためだ? つってもあれだろ、大将とかそこのキュウタのためだ」

「え、まぁ、そうだけど……」

「それじゃあダメだな。いや、正確にはそれだけじゃダメだ。果たして、お前らが代わりを務める大将はなにを考えてスシを握ってたんだっけな?」

 

 ダナンはそう告げると三人に見向きもせずオーキス達にスシを握っていく。

 

「大将がなにを考えてスシを握っていたか、か」

「む、難しいッパ〜」

「話の流れから考えて、大将は少なくともこの店でやっていく仲間……例えばカッパさん達のためにスシを握ってたわけじゃない、ってことかな」

「そうだね……。キュウタはじゃあ、大将がいつもなんて言ってたとか思い当たることない?」

 

 美味しいスシを握るため。三人はそれぞれ話し合っていく。グランとジータの視線を受けてキュウタはうーんと唸りながら首を捻った。

 

「あっ! わかったッパ!」

 

 しばらくして、キュウタの顔が晴れやかになる。

 

「大将はいつも、お客さんの笑顔のためって言ってたッパ!」

「「それだ!」」

 

 キュウタの言葉に双子も同意する。

 

「わかったらさっさとスシ握れ。そこでお預け食らってるヤツが涎垂らして待ってるぞ」

 

 ダナンの声が聞こえてカウンターの方を見ると、そこには食材をじーっと見つめるルリアの姿が……。

 

「あはは……ちょっと待ってて。今作るから」

「は、はいっ。涎は垂らしてません!」

 

 グランが苦笑して言うと慌てて口元を拭っていた。

 

「……おスシ、美味しい。いっぱい食べる」

 

 しかし追い打ちのようなオーキスの幸せそうな言葉に、どうしても目が食材を追ってしまう。

 

「へい、お待ちッパ!」

 

 キュウタが大将を真似て握ったスシをルリアへと出した。

 

「わぁい! 美味しいですぅ!」

 

 お預けを食らっていたせいか物凄い勢いで十貫のスシを平らげるルリア。気のせいか一気に吸い込まれていったような気が。

 

「……ルリアよりも、いっぱい食べる」

「負けないからね、オーキスちゃんっ」

 

 スシを食べる二人の視線が交差し火花を散らす。と、そこに赤き竜が割って入った。

 

「お前ら二人がいっぱい食べたら、店開ける前に食材がなくなっちまうぜ」

 

 あくまでも本番は当日、お客様に振るう分だと忠告する。意外と冷静なビィである。

 

「ああ。在庫にも限りはあるからな。練習用にも限りはある。ま、精々限度を超える前に習得してくれ。大将がやってたっつう元気のいい挨拶やなんかに、店を回すために掃除や食器洗いなんかも覚えなきゃいけねぇだろ。俺は今日以外自分の屋台の方に戻るから、その辺は任せた」

 

 店に関わったことのあるダナンはその辺りを知っているのだろう。事実、翌日から当日までの間彼は来なかった。しかしそれでも初日からヤスに美味いと言わしめた腕前は健在だろう。

 グラン、ジータ、キュウタは一層気を引き締めて修行に取りかかった。スシを握ることに加えて接客なども覚えなくてはならない。ビィとルリアには当日客の案内をしてもらい、他の団員達には地下の作業場を回してもらっている。合わせて船を出し食材の確保に動いていた。

 ヤスも自分の屋台があるというのに頻繁に顔を出してくれて、“蒼穹”一丸となってみや里の援護をした。

 

 そして、いよいよ光華大会当日を迎える。


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