仮面ライダーカブト−If,World,Rider 作:蒼葉 桜木
『東京都学生区西エリア』
主に学生達の通う学校や寮等の施設が集まった区画である。そこに創立されて早20年を迎えた『風音高校』1年5組の教室。何気ない休み時間の今、生徒たちの間ではとある噂で持ちきりだった。
そんな教室で本を読んでいる男子生徒に、一人の女子生徒が話しかけた。
「天音君、知ってる?またワームが現れたらしいよ。」
と、話すこの少女の名は『加賀 有希』このクラスの学級委員を任される責任感の強い少女である。
「知ってるよ。また、ZECTが倒したんだろ?」
こう答えた少年『天音 総貴』常に気怠そうな雰囲気を醸し出す彼は、趣味である読書の邪魔をされたことに苛立ち、雑に言葉を返した。
「もう、もっと愛想良く返事してくれてもいいんじゃないかなぁ。」
「人の邪魔をしておいてよく言うな。そもそも、何で一々俺に構うのかね。」
人が折角本を読んでいるところを毎日邪魔してくるこの少女は毎度毎度彼に話しかけるのである。
「だって、ずっと一人で本読んでるんだもん。寂しいかな〜と思って。」
「寂しい訳あるか!!俺はウサギじゃねぇよ!!」
「怒らないでよ〜。」
こんなやり取りをしているうちに、始業チャイムがなった。
「それじゃあ天音君、また後でね〜!!」
「おう、できれば2度と来るな。」
「ひっどーい。」
日常はいつまでも続くことは無い。この日、彼らはそれを嫌というほど思い知ることとなる。
『ZECT情報通信部』
「情報長官、緊急事態発生。学生区にワームが侵入した模様!!」
「なんだと?何処のエリアだ!?」
「……特定完了しました。西エリアです!!」
「急ぎゼクトルーパー部隊を向かわせろ!!」
緊迫した状況に慌ただしくなる情報通信部の室内に、新たな通信が入る。
『こちらガタック。私が鎮圧に向かいます。』
「何!?ガタック、今お前は何処にいる!?」
『はい、私は高校にいますが。』
「分かった。済まないが至急鎮圧へ向かってくれ!!」
『了解しました。』
その言葉を最後に通信が切れる。その直後、さらなるイレギュラーが発生した。
「情報長官、大変です!」
「今度は何が起こった!!」
「適合者がいない状態のカブトゼクターがゼクター管理区画より脱走しました!!」
『東京都学生区西エリア』
「皆さんはここから離れてください。繰り返します。皆さんは……」
「何があったんだろう……。」
「ゼクトルーパーがいる時点で大体分かるだろ。この西エリアにワームが現れたんだよ。」
「そんな……。ここには来ないよね……?」
あからさまに不吉なことを宣う有希。
「おい待て。そういうのをフラグと言ってだな……。」
「ワームだあああぁっっ!!」
「一般市民の避難を優先しろ!!」
「ほら言っただろうがあああ!!」
パニックになった生徒たちが逃げ惑う。その波に飲まれ、二人ははぐれてしまった。
「おい!有希!何処行った!?返事しろ!!有希!!」
人の波をかき分けて進む総貴。その時、悲鳴が聞こえた。
「キャアアアアアアアア!!」
「!!その声、有希か!?有希!!待ってろ!!」
走り出し、声のもとにたどり着いた総貴。そこには、壁へ叩きつけられた有希と、3匹の幼体ワームがいた。
「有希!!」
「カハッ。総……貴、君?」
「ああ、立てるか?」
「早……く……に、げて……。」
「はぁ!?そんなこと出来るわけねぇだろ!!」
「私を……囮にすれば……逃げられる……から……。」
「なら、答えは一つだな……。アイツらをぶっ倒す。」
「駄目だよ!!あんなのに……敵うはずが……。」
「お前を救って俺も生き残るにはこれしかねぇだろ。」
「やめて……待って……。」
「かかってこいよ……。バケモン風情がぁ!!」
自身を奮い立たせるかのように総貴は叫び、ワームへと駆け出した。
−???視点−
上空からワームを探すが見つけることが出来ない。この小さな機械の体では見つけるのにも一苦労だ。
そんなとき、複数の熱源を確認した。その内の3匹はワーム。
あとの2つは人間のものだろう。その瞬間だった。集音スピーカーがとある音を拾った。
『かかってこいよ……。バケモン風情がぁ!!』
なんと。彼は只の人間でありながらあの怪物へと立ち向かおうと言うのか。
面白い……。彼ならば……。私の適合者となり得るだろうか。
−総貴視点−
「ガッ!?」
地面を転がるたびに肺から空気が押し出される。
「チクショウ……かかってこいなんて言っといてこのザマかよ。ダッセぇな。俺……。」
口の中が血なまぐさい。
「もうやめて!!早く逃げて!!」
有希の叫ぶ声が聞こえてくる。だが、逃げるなんて出来ない。彼女だけでも、助けないと。
「う…ガアアアアアアアアアァァァァッ!!」
叫びを迸らせながら立ち上がる。足はガクガクと震え、体もボロボロだ。
「ギチチチチチチッ!!」
奇声を発しながらこちらへとワームが腕を振り上げる。
「逃げてええええぇ!!」
「死んでたまるかああああっ!!」
刹那。ワームの体が吹き飛ばされた。
「ギッ!?」
ワームにも何が起こったのか分かっていないようだ。
視線を上げると、そこには赤い体を太陽に煌めかせるカブトムシが浮遊していた。
「何だ……?コイツ……?」
ソイツは俺をじっと見つめるとこちらへと突撃してきた!!
「うおっ危ねえ!!」
思わず手で顔を覆う。パシッ。という音が響いた。
手元を見ると、そのカブトムシが俺の手に掴まれていた。
「コイツ……急に大人しくなりやがった……。」
すると、腰へと何かが装着された。
「何だこれ……。ベルト……?」
すると、手が勝手にベルトへと近づいていく。
「な、何で……。って、お前かぁ!!カブトムシィィィ!!」
カブトムシがベルトへと接続される。その時、無機質なシステム音声が流れた。
『HENSIN』
「え?」
何かが俺の体を覆っていく。俺は自分の手を見る。そこには、銀色の鎧を装着した俺の手があった。
「はあぁぁぁぁぁっ!?」
これが、俺、天音 総貴の……『仮面ライダーカブト』の初変身だった。
如何でしたか?もし面白いと思って頂けましたら幸いです。それではまた、次回お会いしましょう。