理の律者は笑わない 作:バイクに乗ったまま戦闘だって!?
フカ「このSSのうp主、外伝を投稿したばかりなのに本編を投稿している……妙だな……」
アンケートにご協力ありがとうございます!フカちゃんは公安に勤務することになりました!
「オールマイト……ですか?」
キャスターの質問にコテリと首を傾げたブローニャは暫し考えるように顎に手を当てた。
「世間はオールマイトを大概『ナチュラルボーンヒーロー』とか『No.1ヒーロー』と形容します。ですが、新米教師としての彼の姿は中々に微笑ましいです。例えば授業中にカンペを見たり……」
正確に言うならばカンペを見かけた、が正しい。
オールマイトがカンペを用意していたのを発見したブローニャは彼がその内容を頭に叩き込むまで監視していたのだ。
一時的に寝不足気味になったオールマイトだったが、アメコミ画風による顔面の堀の深さ故に気づかれることはなかった。
後日朝のニュースとして取り上げられたオールマイトについてそこそこ饒舌に語るブローニャがネット界隈で話題になったとか、ならなかったとか。
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「今日のヒーロー基礎学だが……」
相澤はスマホをスワイプして舌打ちを一つ。オールマイトから「私が限界ギリギリまでヒーロー活動してしまった!」といった趣旨の連絡が送られてきたからだ。
非合理の極みだな、と呆れながら電源ボタンを押してポケットの中へとそれを突っ込む。
「はーい! 今日は何やるんすか?」
瀬呂が元気よく手を挙げた。相澤はそれに対して一枚のカードを見せて応える。記された文字列は『RESCUE』。つまるところの災害人命救助訓練だ。
「地震に火災に水難に。何でもござれのレスキュー訓練だ。場所によっては動きを阻害するだろうからコスチュームの着用は各自の判断に任せる。じゃ、10分後にバス前に集合」
「あ、今日の担当はあたくしと相澤、そしてもう一人で担当するわよ!」
相澤がもう一度スマホを操作すると圧縮された空気が開放された音がして壁が迫り出してくる。最早彼らにはお馴染みの風景となったクラスのコスチューム収納庫だ。
各々準備を始める中、ブローニャは自分のコスチュームケースの中身を検めると満足そうに頷いた。自分の要望通りに大幅なデザインの変更と改良をしてくれたようだ。
ケース内に添えられた手紙には要約すると「前のデザインも捨て難いんですけど」的な文書が達筆な文字で記されていた。すみません、ちょっとアレだと動きずらいので、と心の中で言い訳をしながらブローニャは手紙をカバンのファイルの中へと放り込んだ。
「あ、ブローニャちゃん! それ新しいコスチューム?」
隣でコスチュームケースを取り出していた芦戸がブローニャのケースをヒョイと覗いた。
「えぇ、前回のコスチューム(次元限界突破)はちょっと行動が阻害されたりしたので。特に腕の袖口辺りが」
「あー、確かにみゅーんって広がってたよね」
「細かい作業をするには不適切な服装でした。色々とモノを隠すことができるのは高ポイントでしたが」
「……ちなみに何隠してたの?」
「発信機と戦闘訓練で窓を斬るのに使った高周波コンバットナイフとかですね。後は少しならブービートラップ用のカーボンワイヤーもあります」
ブローニャの発言のうちナイフくらいしかまともに理解できなかった芦戸は数秒の間目を点にした後──
「ニンジャ?」
「……否定はしません。どちらかと言えばアサシンの方かもしれませんが」
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「ブローニャさん……だいぶこう、一新したね!」
「前回のコスチュームは機動性に難ありだったので変更してもらえました。やはり動けるというのはいいですね」
ブローニャは戦闘訓練時に着用していた次元限界突破のコスチュームから銀狼の黎明のコスチュームへと変更していた。
出久も前回のコスチュームとは別のものだ。というか、雄英高校指定の体育着である。
「そういえばデクくんはコスチューム着ないの?」
「あ、ブローニャもそれは思っていました。勝己のアレで焼け焦げてしまいましたか?」
「そうなんだ。今はサポート会社が修復をしてくれてるらしいからそれ待ち」
施設へと向かうバスに乗り込むA組一行。少し前のマスコミ騒ぎでの功績を称えられ委員長となった飯田が出席番号順に並ぶように張り切っていたが、後部を除いて左右に向かい合うタイプのバスだったために彼の頑張りは徒労に終わってしまった。
「こういうタイプのバスだったか……」
「張り切るのは構いませんが、無駄骨でしたね」
「くうぅ!」
バスが発進すると車内ではクラスメイトの個性談義が始まった。
緑谷の個性が蛙吹に看破されかけた時はヒヤヒヤしたブローニャだったが事情を知らないはずの切島が的確なフォローをかけてくれたので事なきを得た。
「でもやっぱり、派手で強ぇ個性っつったら轟と爆豪だな!」
その声は両名の耳には届いていたようだが轟はスルー、爆豪はケッ! とつまらなそうにそっぽを向いた。
「照れてますか?」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」
「照れてねぇわ!出すわ!!」
「照れ隠しですね」「ホラ」
「てめぇら何だコラ殺すぞ!!!」
窓を眺める爆豪にブローニャと蛙吹が特大の釣り針を仕掛ける。見事引っかかった爆豪はその後上鳴の「クソを下水で煮込んだような性格」という火に油を注ぐような評価にツッコミながら憤慨した。
「もう着くからいい加減にしとけよ。それとテレサさん──」
「
「しれっと生徒に混じって菓子を食べないでください」
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「痛い……個性消してからのチョップは反則でしょ!!」
「これ以上威厳を損なわれても困ります。暫く反省してください」
「クッ! あたくしの完敗よ……ぐぅの音も出ないわ」
デフォルメチックな画風になりながらハンカチを噛むテレサ。
外見は10歳そこらだが中身は四十路を超えるおば様と言われても問題ない年齢である。わざわざそんな地雷を踏むようなことを相澤が口に出すことはないが。
「皆さん!お──僕がつくったウソの災害や事故ルームへようこそ」
『USJだった!!!!』
全員が心の中でせーの!もないのにご唱和してしまった。
ここはスペースヒーロー13号が考案し作り上げた様々な非日常的な状況をシュミレーションするアトラクションだ。
彼女は自らの災害救助での経験を活かしてこの演習場を作ったらしい。
「あー、開始前に忠言を一つ、二つ……いや、頑張ってまとめるから気楽に聞いてくれていい」
「僕の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまうことができる」
この個性を最大限に生かして彼女は災害現場でめざましい活躍をしてきたのだが、一歩間違えば簡単に人を殺めてしまう力だと語る。
彼女だけでなくこの場にいる全員が『いきすぎた個性』を持っているのだと自覚して欲しい。そう切に訴えた。
「この授業では心機一転して人々の尊い命を守るため、個性をどのように活用していくか一緒に学んでいこう。以上、ご清聴ありがとうございました」
恭しく13号が礼をすると緑谷の拍手を皮切りに皆パチパチと13号に惜しみのない拍手を送った。
「んじゃあまずは……」
相澤が本日最初のカリキュラムを言おうとしたところだった。USJの階段の麓、噴水広場のような場所に黒い淀みが生じる。
徐々にそれは膨張し、中からずるりと人の形をした途方もない悪意が顔を見せた。まるでこの世の全てを呪うかのような目をこちらへと向けた。
「全員ひとかたまりになって動くな!!」
相澤が檄を飛ばしてゴーグルを装着、首に巻いていた捕縛布を緩める。
テレサは誓約の十字架を自身の背後に召喚し、その中から射出された矛を手に取った。
「なんだぁ?また入試みたいなもう始まってんぞ!パターンか?」
「でもその割にはちょっとガチ過ぎる格好っていうかなんというか」
切島が呑気な顔をして眼下に広がるヴィランの群れを見下ろし、葉隠が訓練にしては、と恐らく頭があるであろう空間に疑問符を浮かべる。
「あれはヴィランだ! 13号、お前は生徒たちを連れて避難しろ」
「了解し──ました。もしかしてお一人で食い止める気で?」
「二人でだ。テレサさんがいるから多少は楽になるだろう。万が一俺たちが突破された時は……頼むぞ」
「あたくしがいるからには万一なんて起こさせない。えぇ、必ず守るわ」
「珍しくやる気ですね」
「ちょっと? いつも出してないみたいに言わないでよ!」
ザリ、とヴィランたちの方へと歩を進める相澤。彼らがここに来た理由は不明だが……出頭しに来たとかそういうことではあるまい。確実に、何らかの悪意を持ってここにいる。
テレサは十字架を扇のように展開、その中から放たれた多数の光の武具を空中で待機させた。
「イレイザーヘッドの基本戦闘スタイルは奇襲からの捕縛だ。正面戦闘は──」
難しい、無理だ。ともかく緑谷はマイナスのイメージがつきそうな言葉を発そうとした。イレイザーヘッドは片手を上げてそれを制し、ゴーグルの中の視線を向けてこう言った。
「一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん」
「心配いらないわ。相澤はあたくしが守るもの!」
これから外伝も投稿するので読者様方のしおりがズレてしまう可能性が出てきます。何卒ご了承ください。