理の律者は笑わない   作:バイクに乗ったまま戦闘だって!?

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待たせたな(某老蛇並感)(スライディング土下座)(許してつかぁさい)(あけましておめでとうございます)


ヴィラン強襲②

 イレイザーが階段を滑るように飛び降りながら前方に構える射撃部隊を視認する。

 射撃部隊は馬鹿正直に突っ込んでくるヒーローを嘲笑いながら自らの個性の照準を合わせるが────視界に飛び込んできたのは蜂の巣になったヒーローではなく、仲間の顔面だった。

 

 個性の撃鉄を起こすこともできない彼らは相澤にとって格好の的だ。視界に星が煌めき意識が混濁した彼らに向かってテレサの光の矛が殺到する。矛は激突直前に光の鎖に形を変えヴィランをキツく縛り上げた。

 

「俺は前衛向きではないんですがね」

「じゃああたくしも前衛やるわよ。そのかわり援護は期待しないでよね!」

 

 ボヤくイレイザーの背後でいつの間にかガイナ立ちをしているテレサ。前衛やる〜!と宣言した彼女はあろうことか中長距離射撃武器である十字架を両手に抱えて鈍器さながらにヴィランの腹を殴打しフィニッシュにはブーメランのように十字架を投擲した。

 

「十字架の空気抵抗を制約したのはまずかったかしら?」

「息があるなら大丈夫でしょう。しかし……」

 

 未だ不敵に笑うだけの数多の手に掴まれた男、そして身体の輪郭すら分からない霧を纏った何か、最後にその後ろに控える脳剥き出しの巨躯。こいつらはヤバい、そう彼の心がひどく警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

 

 ⚫

 

 

 

 

「テレサ先生……そこそこ動けたんですね」

「アレはそこそこのレベルじゃないよブローニャちゃん!?というか観戦してないで早く逃げよ!」

 

 十字架を大上段に振り上げたテレサを見たヴィランはシスター服も相まって彼女の後ろに天国を幻視したことだろう。何故かこうも圧倒的だとヴィランの方がご愁傷さまという気分になってきたブローニャ。

 

 いつの間にか彼女はテレサとイレイザーの蹂躙を見入っていたらしい。すぐ行きます、と麗日に返事をして皆の元へ行こうとした。しかしブローニャの視界の端でイレイザーと相対しているヴィランが一名、溶けるように消失した。

 

「お茶子!今すぐ皆を……」

 

 時すでに遅し。振り向いたブローニャの目にA組の約半数を覆い尽くした黒い霧が広がっていた。

 

「19c!」

 

 ブローニャの背後に創造された重装ウサギ19cは彼女の指示を受ける前にモヤへと突貫、一部モヤが隠れていない部分に鋭いジャブを繰り出した。

 即座に反応した黒モヤは恐らく実態であろう部分を個性で覆ってその攻撃を回避する。

 

「おっと、危ない危ない。金の卵とはいえ油断は禁物。……では余った子どもたちはこちらで処分するとしましょうか」

 

 モヤがぶわりと拡張し、その中から白い異形が顔を出す。

 異常に発達した上半身、首と肩のない胴体、目のようなものすら確認できない頭部。凡そ人とは思えぬ怪物が十数体、門を守護するように陣取っていた。

 

「なんだありゃ?」

「ロボットとはまた違うみたいだが……」

「あれは人ではありません。熱源反応0、心臓に該当する部位も見当たらない。大方個性で作られた人形のようなものでしょう」

 

 瀬呂と飯田が疑問を呈しそれにブローニャが回答した。

 

「確かにこれは人形と言って差し支えないでしょうね。しかしあなた方の息の根を止めるにはこれで十分。──やれ」

 

 黒もやの合図に反応して白き獣は目の前の対象を圧殺せんと進撃を開始する。

 

 

 ──戦うしかない。

 

 

 そう身構えた生徒たちを守るように13号が立ち塞がった。その姿に黒モヤは愉快げにその目を歪ませた。

 

「あなたの個性は近接戦闘には向いていない。確かに個性でコレを処理するのは簡単でしょうが……全員守りきることができますか?」

「あぁできるとも。少なくとも『彼女』ではない『俺』ならば」

 

〝俺〟?とブローニャ含むその場の全員が首を傾げた。

 

「このまま数時間、慣れない13号のフリをしているつもりだったがそうもいかなくなった」

 

 13号のガワが崩れるように消え失せる。中から現れたのは形容しがたい雰囲気を纏った男性だった。

 短い茶髪にフチあり眼鏡、その手には紫色の宝玉のようなものを携えている。

 彼は生徒を守るように赤雷迸る球体状の黒い力場を展開して黒霧を見据えた。

 

「シーリンは何処にいる?答えてもらおう、黒霧」

「これはこれは……我々は一本取られてしまったようですね。あなたがいるだなんて聞いていませんよ、ヴェルト・ヨウ」

「当然だ。今頃屋久島縄文杉ツアーに行ってる13号にしか言ってなかったからな」

 

 

 

 

 ⚫

 

 

 

 

「相澤ァ!」

「俺が行きます!」

「それを許すと思うか?やれ、脳無」

 

 言い合いを取り止め即時に散開する二人。数秒前まで立っていた地面には巨大なクレーターが穿たれた。

 下手人はもちろん死柄木の隣に佇んでいた巨躯の男。彼は恐らく異形型にカテゴライズされる個性なので正面戦闘を不得意とする相澤との相性はめっぽう悪い。

 

 テレサは脳内のリミッターを『制約』することで火事場の馬鹿力状態を常態的に引き出すことで脳無との大立ち回りを繰り広げているがそれも長くは持たないだろう。

 

 初手で脳無の抵抗力に制約をかけたが、あろうことか容易く光の鎖を引きちぎられてしまった。

 誓約の十字架の『制約』効果は精神が強い存在には跳ね除けられてしまうというデメリットがある。

 脳無は死柄木から出されたオーダーを一意専心に取り組むため、それ以外に対しての一切の雑念が存在しない。それ即ち意思がそれ以外に向かない、精神が強靭ということに他ならない。

 

「肉達磨の癖してすばしっこいわね!」

「そりゃそうさ。対オールマイト用に調整してあるからな。象徴に劣る有象無象のヒーロー共がまともに相手できるとでも思ってんのか?」

「ハッ!上等よ。床ペロさせてあげるから覚悟なさい!」

 

 絨毯爆撃のように降り注ぐ矛で脳無の侵攻を妨げ相澤をゲートの方へと向かわせるテレサ。

 拮抗は相澤が階段にたどり着くまでは稼ぐことができたが、負傷をものともしない脳無のショルダータックルによってテレサは投球をしくじったスライダーのように2、3とバウンドして地面を転がった。

 

「で、誰が誰を床ペロさせるって?」

「あたくしがそこの筋肉達磨をよ!」

 

 自身の個性で痛覚に『制約』をかける。

 まだ動けるならそれでいい。何としても生徒たちにこいつらの矛が向かないようにしなければ。

 

「難儀なもんだな。相手を縛る制約は一つ、されど自分を戒める制約は幾重にも重ねがけできる。まるで戒律に厳しい聖職者だ。あんたもう身体ボロボロだろう?」

「あたくしは不朽不屈よ?たかがヴィランに遅れをとるわけないじゃない」

「いいね、俄然それを壊してみたくなった」

 

 死柄木はあろうことか脳無に手を出すなと支持すると、懐から小さな宝石のようなものを取り出した。黒と紅が入り交じったような色をした不気味なものだった。

 彼はそれを付けていたネックレスのようなものにある窪みにカチリとはめ込んだ。

 

 

Plague-gem install──』

 

 

 翻訳アプリで読み上げられたような抑揚のない声が響く。

 瞬間、死柄木の身体を紫炎が覆い尽くした。

 テレサは怪訝に思う。彼の個性は触れたものを崩壊させる個性のはずだが……

 

「さ、初めよう。せめて10分くらいは耐えてくれよ?」

 

 黒と紫が混じったような焔をさながら外装のように纏った死柄木は薄く、それでいて底の見えない悪意を孕んだ微笑みをテレサへと向けた。

 

 




遅れて申し訳ない……。何分年末年始は忙しいものでして。

感想もらえるととっても嬉しいです。

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