理の律者は笑わない   作:バイクに乗ったまま戦闘だって!?

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いやぁ張り切っちゃったよ柄にもなく。お気に入りが増えただけでこんなにも嬉しいとは思わなかった。ありがとうございます。



入学試験

「ガッチガチですね」

 

「ぶ、ブローニャさんは平気なの?」

 

「もう幾度もVRでシュミレーションを繰り返したので抜かりはありません」

 

 かの有名な雄英高校の門の前でブローニャと出久は歩を止めた。片やガチガチに緊張してスペランカーのようなカクツキを見せる縮れ毛の少年。

 片や鉄仮面銀髪ツインドリルの少女という何ともミスマッチな組み合わせである。

 

 ちなみに出久の服装は折寺中指定の学ラン。ブローニャは所謂戦乙女・戦車の服装だ(腕と脚の装甲は外してます)。

 

「とりあえず、しゃんとしてください。あの人ですらあなたの成長に驚いたのですから自信を持って」

 

(オールマイトに『緑谷少年を励ましておいてくれないか?』と言われたことは伏せておきましょうか)

 

「う、うん! そうだよ、そうだよね!」

 

 少しだけ足取りの軽くなった出久は少しだけ慢心してしまったのかもしれない。ブローニャの言葉を聞いてから初めの一歩の勇み足で運悪く自分の靴紐を踏んでしまった。

 

「のわっ!?」

 

 出久の唇が地面と接吻するまで残り一秒。さすがのブローニャでもそのレベルの速さで落下する彼を支えることは出来ない。かと言って重装ウサギ19cを出そうにも完全に間に合わない。

 

 逡巡も束の間、『出久は助からない。現実は非常である』という結論を出そうとしたブローニャ。しかしその考えはあっさりと否定された。

 

 床ペロ状態になると思った出久の身体が浮遊している。出久本人も状況がよく分かっていない様子だったので、彼が何かを発現しそうな矢に貫かれたり、心の奥底に潜むもう一人の自分が実体化したわけではないようだ。

 

「大丈夫?」

 

 浮かぶ出久の陰から顔を出したのは和らげな笑みを浮かべた少女だった。

 彼女は出久をゆっくりと地面に立たせると両手の五指を合わせて出久の無重力状態を解除した。

 

「ごめんね、でも転んじゃったら縁起悪いもんね!」

 

 どうやらその少女は自分の個性で出久を浮かせてあげたらしい。彼女はお互い頑張ろうね! と言うとそそくさと行ってしまった。

 

「出久、お礼は?」

 

「じょ、女子と喋っちゃった」

 

「あの程度は会話には入りません。ブローニャとの特訓の意味はなんだったんでしょうか……」

 

「その節は大変お世話になりましたァ!!」

 

「オイデク」

 

「わひゃあっ!! か、かっちゃん!?」

 

 ブローニャに対して直角90度の礼をする出久に頭がトゲトゲの金髪男が話しかけてきた。ブローニャはこんな人間でも雄英を受験するんですね、とぼんやり考えていたりする。

 

「俺の前に立つんじゃねぇ! ぶっとばすぞ!」

 

(ゴル〇13……?)

 

 傍から見れば中々に理不尽な怒り方である。出久は何か言おうと口を動かしたが既に彼は先へと行ってしまっていた。

 

「……あれは?」

 

「かっちゃん、爆豪勝己っていうんだ。僕の友達で……ほら、ヘドロヴィラン事件の時の」

 

「あぁ、アレですか。普段からあんな感じなんですか?」

 

「うん。でも実力は本物だよ」

 

 そうですか、と短く答えるブローニャ。正直彼を友達と言う出久の気持ちは1mmも理解出来ないが、それを言えばまたテンパったりしそうなのでやめておいた。

 

 

 

 

 

「今日は俺のライブにようこそォ!! エヴィバディセイヘイ!!」

 

 

 プレゼントマイクの台詞と矛盾するがここはシャレオツなライブ会場ではない。実技試験の説明会場である。

 

「あれが教師になるのを考えると少しゲンナリしますね」

 

「ブローニャさん、シーっ! シーっ!」

 

「うるせぇ銀ドリルぶっとばすぞ」

 

「出久、コイツヴィランの工作員とかじゃないですよね?」

 

「──う、うん! 違う……と思うよ!」

 

「微妙な間を開けるなクソナードがァ!!」

 

「こいつあシヴィー!!! そんじゃあ受験生のリスナー諸君! 実技試験の概要をざっくり説明してくぞォ! ちなみに俺の担当科目は英語だ」

 

「……尚更ゲンナリしますね」

 

 

 ざっくり説明すると市街地を模した試験会場に仮想ヴィランのロボットが現れるからそれを倒したポイントで合否判定! ということらしい。その他各試験場に一体ポイントがない上に馬鹿みたいな巨大さを誇るおじゃま虫が配置されるらしい。

 

 しかし雄英の過去の合格者のデータとオールマイトの証言、その他諸々の要素を加味してブローニャはヴィランを倒すだけが加点されるわけではないと予想していた。

 

 プレゼントマイクの紹介の最中に出久と勝己がメガネのThe優等生のような人に叱られるというハプニングもあったが、ブローニャはこの程度でへこたれるような出久ではないと理解している。勝己は言わずもがな自尊心が二足歩行しているような人物なのでフォローに回る心配も意味もないし、ついでに言えばそんな義理もない。

 

 出久は受験会場がブローニャと別ということを心底寂しがってはいたようだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイスタート!!」

 

創造(Сотворение)・フックショット」

 

 ブローニャは重装ウサギ19cを創り出して直ぐにその重砲に触れて改造を施した。

 19cの重砲をフックショットに改造して自身はその機械の腕に身を預けた。

 

「Fire!」

 

 バシュッ!!と音がして50mほど離れたビルの屋上に極太のワイヤーが絡まる。そしてブローニャが予め入力したコマンドに従って19cは一気にワイヤーを重砲の中に格納を始める。その作用を利用してブローニャは他の受験生に先んじて高い場所を確保することができた。飛行系の仮想ヴィランは紹介されていなかったのですぐに襲われることはまず無いだろう。

 

「重装ウサギ19c、手動制御(マニュアル)から自動制御(オートマチック)に移行。『ストライカー』装備後、敵影補足次第殲滅してください」

 

Да(了解)

 

『ストライカー』を創造し、19cを自身の制御下から切り離して独立行動をさせつつブローニャは次の準備に移った。

 

創造(Сотворение)雪娘(Снегурочка)

 

 ブローニャは自身の身の丈の2.5倍はあろうかという雪原のような色をした狙撃銃を創り出した。

 これはブローニャが射撃の訓練をしていた時にオールマイトがわざわざ呼んでくれたヒーローに一時貸してもらった銃だ。

 

(そういえば彼女のヒーロー名はなんだったんでしょうか。ホワイトフェザー? いや、それは片割れの方でした。ホワイトリッパーだったかムー〇ンだったか……)

 

 およそ試験中に考えるべきでないことを頭に浮かべながらブローニャは雪娘にこれまた白色のローラー付きバイポッドを取り付けて銃弾を装填。適当に目星をつけた場所で照準器を覗き込んだ。

 

 そのスコープの中心に仮想ヴィランが入った瞬間、ブローニャは迷わず引き金を鳴らしてドタマを爆裂四散させる。思考回路を失った仮想ヴィランはゆっくりとその場に倒れ伏した。

 

「……一応練習はしていましたが、鈍ってないようでよかったですね」

 

 ブローニャはスコープから目を外して安心したようにため息をつくと、また一息吸って次なるポイントを見据えた。

 

 

 同じポイントで襲われることなく淡々と銃を撃ち続けていると自分でセットしたタイマーが試験時間残り二分であることを教えてくれる。

 

 既に合格圏内レベルにまでポイントはある。次いでに別の加点ポイント用に幾らか仮想ヴィラン撃破以外の行動もしておいた。だがそろそろ『アレ』が現れてもいいころではないだろうか。

 

 そんなことを考えたせいなのか、明るかったはずのブローニャの真上に影が差す。

 雨でも降るのでしょうか?と空を見上げるとそこには説明会場で紹介された0Pヴィランが無機質な赤い瞳でブローニャを見つめていた。

 

手動制御(マニュアル)ッ! 創造(Сотворение)・フックショット!」

 

 すぐさま19cの制御権を回復させて指示を飛ばす。存外0Pの動きはゆっくりなようで急いだ割には余裕を持って退散出来た。しかしその巨大な鉄腕による攻撃は先程までブローニャがいたビルを倒壊させるのには十分すぎるものだった。もしかしたら瓦礫に埋もれて圧殺されていたかもしれない。

 

「……ブローニャの全力を試すいい機会です。胸を借りるつもりでやってみましょう」

 

 ブローニャはフックショットで四棟ほど先のビルに到着すると0Pに向き直り重砲を構えた。

 

創造(Сотворение)・ヘカトンケイル」

 

 重砲が先程のフックショットやストライカーと違ってみるみるうちに歪な形状を成してゆく。19cの腕のみならず背中にまで重砲から伸びた配線やチューブが接続された。

 

 オーバードウェポン・ヘカトンケイル。それは現在の19cが使用すれば反動に耐えきれず自壊してしまうレベルの武装だ。しかし今のブローニャは特別追い詰められている状況でもないし、どちらかと言えば有利なのはこちらの方である。使えば19cを再び呼び出すまでに多少の冷却時間(クールタイム)を要するが、ここまでポイントを稼いだならば大丈夫だろう。

 

「目標補足……ええーい!!」

 

 ボゴォ!! と派手な音をたてながらその砲弾は発射された。鈍色に光る鉄玉は寸分の狂いもなく0Pの赤い視覚カメラに吸い込まれていき……

 

 

bommmmmmmmmb!!!!! 

 

 

『終了〜!!』

 

 

 0Pはけたましい軋みを上げながらその場に倒れ伏す。ブローニャの入学試験は無事終了した。

 

 




アンケート第一回目ご協力ありがとうございます。引き続き第二回目のアンケートもよろしくお願いします。


武装解説

フックショット:某緑の勇者や某怪盗三世の腕時計などで有名なアレ。それを19cの重砲用に巨大化したもの。

ストライカー:正式名称は分裂ミサイル・ストライカー。そこから射出されるミサイルは発射前にロックオンされた対象に衝突する。早い話が誘導ミサイル。

雪娘:スネグーラチカと読む。とあるヒーローが得物としている武器。詳細はまた後ほど。

ヘカトンケイル:19cが創造された時に持っていた重砲。自身を大破させてしてしまうほどの反動があるがそれを加味しても威力は絶大。

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