理の律者は笑わない 作:バイクに乗ったまま戦闘だって!?
そういえばこのSSの初期構想で重装ウサギ19cの中にAIちゃん入れるか入れないかっていうアイデアがあったりします。
「忘れ物はないかな?」
「昨日確認したので大丈夫です。もし忘れたとしてもオールマイト持ってきてくれるはずなので」
「それは私が信用してもらっていると受け取っていいのかな?」
「ご想像にお任せします」
オールマイト宅、玄関前。ブローニャは雄英高校指定のブレザーに袖を通してリュックを背負った。
「行ってきます」
「あぁ、行ってらっしゃい」
「あっ、ブローニャ〜」
バスから降りて雄英高校正門前にたどり着くとブローニャの元へ走り寄ってくる人影が一つ。
「おはようございます、テレサ先生」
「うん、おはよう!」
シスター服に身を包んだテレサが朗らかな顔をしてブローニャを出迎えてくれた。どうやらブローニャのクラスの副担任を担当するらしく、ならばついでにとブローニャを案内しに来たらしい。
「別に一人でも行けますが?」
「いいのよ。あたくしがやりたくてやってることなんだから」
行くわよ!と返事も待たずにテレサは先へと進んでいく。
頭ごなしに案内を断る理由も見つからなかったのでブローニャは大人しくついて行くことにした。
「ここまで大きくなくてもいいと思うんだけどね」
「……それには同意します」
教室の扉の前に立つ二人。その中からは言い争うような声が聞こえてくる。
テレサは扉と自分の身長の差異に少しだけむくれながらもガラリと扉を開けた。
「聡明ィ? クソエリートじゃねーか、ぶっ殺しがいありそうだなぁ!」
「なっ!? 君は本当にヒーロー志望か!? 人を助けるものとしての言葉とは思えないぞ!」
「ケッ……」
「はいはい喧嘩しないの! 君はとりあえず机から足を下ろしなさい」
テレサの雄英での初めてのお仕事はこの言い争いを収めることのようだ。
ブローニャは勝己に見つかると因縁をつけられるだろうと思ったのでぴしゃりと扉を閉めて逆の方から自分の席へ行くことにした。
「あ、ブローニャさん!」
「受かったとは聞いていましたが少しだけ心配していました。おはようございます、出久。ところでそちらの方は……」
振り返ればそこには見事雄英に合格した出久の姿があった。
ブローニャは彼が試験中に自分のキャパを超過した一撃を放ったことで大怪我したと聞き一応生存確認の電話はしておいたのだが、無事な姿をこの目で確認するのは今日が初めてである。
「試験の時以来だね。私麗日お茶子! よろしくね!」
「お茶子ですね。ブローニャ・ザイチクです。よろしく」
「ええと、ブローニャちゃん? でいいんだよね」
「えぇ、ブローニャで構いません。あっちの扉は少々騒がしいのでこちらから行きましょう」
軽く自己紹介を済ませた3人はブローニャの言う通りにテレサとは別な方から入った。
ブローニャはチラりとテレサの方を見ると──
「誓約の十字架の出番のようね……!」
勝己が大量の鎖で天井に釣りあげられていた。鎖の発射元は彼女の目の前にある金色の十字架だ。テレサの性格はまだ関わりの浅いブローニャが深く知るところではないが、身長が小さいことを気にしている節があったので、十中八九勝己がそこのところを馬鹿にしてしまったのだろうとブローニャは結論付けた。実際のところそれは正解である。
「誓約ヒーローTeRiRiがどうして雄英に!!?」
「先生は『あたくし日本ではあまり知られていないのよね』と仰ってましたが知ってる人もいるのですね」
「もちろん! 日本じゃあまり活動していないヒーローだから認知度が低いのも無理はないけど世界規模で見ればTeRiRiは色んな国や地域で活躍しているグローバルなヒーローだからね。各国滞在中に彼女が捕縛したヴィラン件数は中々の数だし、何よりTeRiRiの個性である『誓約の十字架』はああやってヴィランを捕縛するのにうってつけな個性で──先生?……先生!!?」
「ついさっき聞いたばかりですが、確かこのクラスの副担任だったはずです。……よいしょっと」
副担任!?と驚き、では担任は誰だろうと一人思案に耽る出久を尻目にブローニャはさっさと自分の席に座った。よかった、後ろの方であるようだ。
お茶子は思考の海に沈む出久を引っ張りあげようとしている。健気なことである。その後見事浮上に成功した出久はお茶子との距離の近さにアワアワとしていた。ブローニャはそれを瞳に映して、短くため息をついた。
そういえばこのクラスの大半も幼女(らしき見た目の)テレサの行動に対してアワアワしている。ブローニャは特にその事には関心はないようで素直に担任が来るのを待ち続けた。
「テレサさん、その辺にしておきましょう」
フッと鎖や十字架が消えて勝己の自由落下が始まる。いつの間にか真下にいたくたびれた姿の男性が勝己をお姫様抱っこで受け止めた。クラスが少しどよめくいたり黄色い声が聞こえたが彼は意に介さず勝己をゆっくりと地面に下ろした。
「ちょっと消太、まだあたくしのお叱りは終わってないわよ! ガキシスターだのチビセイントだの好き放題に言ってくれちゃって!」
「お叱りも結構ですがそろそろ始業の時間です。個別指導の時間は後からたっぷりとれますから今は収めて下さい」
それを聞いたテレサにじろりと見られた勝己は渋い顔をしながらつっけんどんな態度で席に着いた。
「担任の相澤消太だ、よろしく。入学して早々だが君たちにはこれから個性把握テストを受けてもらう。廊下の段ボールの中から体操服とってグラウンドに出ろ」
そう言うと相澤はスタスタとウィダーをくわえて出て行ってしまった。
「あたくしは副担任を務めるテレサ・アポカリプスよ! さっきの彼、見込み無しと判断したら即座に切り捨てるタイプだから早めに準備した方がいいかもね」
じゃね〜、とテレサもトテトテと出て行った。すると生徒は我先にと廊下に飛び出し体操服を引っ掴んで近くの更衣室へ走っていく。
ちなみにブローニャはテレサが出てから一足先に更衣室へ向かった。先ほど出久がテレサについての話をしている時に既にそれを取り出していたからだ。
三分という中々の高タイムで全員グラウンドに整列した。ちなみに相澤は先ほどのまんまの格好で、テレサは何故か生徒と同じ体操服に着替えていた。
「入学式は!? ガイダンスは!?」
誰かが叫んだ。その発言は至極真っ当なものであるが相澤はそれを切って捨てるようにアンサーを口にする。
「合理性に欠けるので全カットだ。意見は求めん。
「67m」
「じゃ、個性使って投げてみろ。そこの円から出なきゃ何してもいい」
それを聞いた勝己はニヤリと笑みを浮かべて渡されたボールを放りながら円の中へ足を踏み入れた。
ボールをググッと握ってお手本のような投球ホームに入る。あんな性格なのになかなかどうして綺麗フォームなのは彼が才能マンである所以なのだろう。
「死ねぇ!!!」
その口から出た言葉には綺麗さの欠片もなかったが。
掌から起こった爆発の風はボールをぐんぐん遠くまで飛ばしていく。
ピピッと相澤の手に持った端末が音を鳴らす。『705.2m』と表示された結果に一同は沸いた。
「なんだこれすげー面白そうじゃん!」
「705mってマジ? そんなん出せるかなぁ」
「流石ヒーロー科! 個性思いっきり使っていいんだ!」
喜ぶ彼らの声を聞いたテレサはあちゃー、と申し訳なさそうに頭をかいた。彼女は知っている。相澤がこれから何を言わんとしてるかを。
そんな彼女の様子が気になったブローニャは皆とは少し離れた位置にいた彼女に声をかけた。
「テレサ先生?」
「何?ブローニャ」
「いえ、名状しがたき表情をなさっていたので」
「名状しがたき表情って何!?いやそれはともかく……ま、見てれば分かるわよ」
そですか、と素っ気なく頷いたブローニャは言われた通りに相澤に目を向ける。
「面白そう、か。お前たちはヒーローになるための貴重な三年間をそんな腹積もりで過ごす気か?」
「そうだな、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断することにしよう。ま、要は除籍処分な」
「「「「はああぁぁぁあ!!!?」」」」
「……ね?」
「いいのですか?」
「中途半端な覚悟でヒーローになられても困るもの。ま、これもヒーローになるための試練だと思って頑張ってちょうだいね。Plus Ultraよ〜!」
テレサはヒラヒラと手を振ってブローニャに踵を返し、近くの倉庫のような場所にぱたぱたと走っていった。
まぁその通りではありますね、とブローニャは彼女の後ろ姿を見ながら頷き悲観にくれる真っ最中のA組の元へ走っていった。
本来ならば50m走が第一種目だが副担任を有効活用しない手はないという相澤の思惑により出席番号の上半分と下半分で同時並行でテストをすることとなった。
テレサの今日の職務は相澤を見て雄英の方針を学ぶことが本来の目的なのだが、意外にも乗り気である。久々に教師らしいことが出来るのが嬉しいようだ。
第一種目:長座体前屈
「重装ウサギ19c」
突如として出現した異形の物体にテレサ組一同は騒然とするがブローニャは気にすることなく淡々とこなした。元々身体は柔らかい方なのか、19cを使わなくとも意外と好成績であった。
記録:661.5cm
第二種目:上体起こし
「特に活かせることはなさそうですね」
記録:25回
第三種目:ボール投げ
「なぁなぁ、それって何なんだ?」
心底不思議そうな表情をした赤髪の青年がブローニャに話しかけた。彼は重装ウサギ19cのボディをコンコンと手の甲で叩く。それに対して短い駆動音で反応する19cに驚いていた。
「これは重装ウサギ19c。私の個性で創った自立兵器です」
「へ、兵器かぁ〜すっげぇな! 俺、切島鋭児郎ってんだ。よろしくな!」
「ブローニャ・ザイチクです。よろしく」
ブローニャは円の中に入り19cの重砲の中にコロンとボールを投げ入れた。既に弾は装填済みなので後はBOM! と放つだけ。
「FIRE!」
腹に響くような鈍い音が響き弾と共にボールが射出される。しかしブローニャの予想よりもあまり飛距離は伸びなかった。
「記録は557.6ね。一応異形型個性用のバスケットボールくらいの計測ボールもあるけど試す? ちなみに重さは同じよ」
「お願いします」
今度は計測ボールを弾として射出した。多少重砲に無理をさせたがそれは致し方ないことだ。
記録:1635m
第四種目:反復横跳び
種目数が奇数のためにここでテレサ組と相澤組が重なってしまった。ここでどっちが先にやるかとわちゃわちゃしても仕方ないので普通に出席番号順でやることとした。
「では力道さん、計測よろしくお願いします」
「任せとけブローニャ!」
19cに自分を持たせてフィンフィンと音を出しながら高速移動した。
記録:78回
第五種目:立ち幅跳び
(出久が最下位になることはなさそうですね……)
出久はブローニャの介入により原作と違って全力と比べ3%ほどのパワーしか発揮できないが、身体をぶち壊すことなしでOFAを使いこなせるようになっていた。要はフルカウル(弱)である。しかし調整を少しでもしくじれば複雑骨折の運命が待っているので気を抜くことは出来ない。
勝己にガンを飛ばされながらも彼に迫る飛距離のボールを投げる出久を見てブローニャは少しほっとした。
「ブローニャ、いつまで浮いてられる?」
相澤組の様子をブローニャは重装ウサギ19cの腕に身を預けながら見ていた。もちろん19cはふわふわと宙に浮かんでいる。
「重装ウサギ19cのエネルギーが切れるまでですが、ブローニャの精神力が続く限り創り続けられるので……一日弱くらいなら。試算しますか?」
「いや、大丈夫よ。もう降りていいわ」
テレサは手に持った端末に何かを入力して次を促した。
記録:∞
第六種目:握力
「重装ウサギ19c!」
メキョ! と音が鳴って握力計の針が時計のように一周した。異形型個性用で再度試して事なきを得た。
記録:2.43t
第七種目:50m走
ブローニャはこれも反復横跳びと同じ要領で行った。
記録:5.12秒
「それじゃあパパっと結果発表だ」
A組が全員集合している前で相澤は手持ちの端末を操作して順位のホログラムを表示させる。
ブドウ頭が絶望的な表情をしているので恐らくは彼が最下位なのだろう。
「ちなみにだが、除籍はウソだ」
相澤はホログラムを消して端末をポケットにしまった。生徒たちの喧騒は思わず効果音を付けたくなるような静けさへ変わった。
「君らの最大限を引き出すための合理的虚偽」
彼は人の悪い笑みを浮かべながらそう言った。
その後生徒たちの阿鼻叫喚が響いたのは言うまでもないことである。
今回は長め。頑張ったから褒めてもいいのよ?長めだったので今回のブローニャFileはナシです。次話は幕間として長めのブローニャFileを出します。
あ、アンケートにもご協力よろしくお願いします。