我が名は豪鬼! メイドを極めし者なり! 作:とんこつラーメン
またもや大人達の出番ばかりになりますが、ある意味で主役は大人達みたいなもんですし、問題無いですよね?
次回から、遂に原作第一期へと突入しようと思います。
メイド喫茶『地獄歌』
毎度のように『ご主人様』で賑わっているこの店だが、今日は少しだけ様子が違った。
というのも、本来ならば絶対に休んだりしない筈の豪鬼が今日は不在だったから。
「あれ? チーフ、今日はウキちゃんは来てないんですか?」
「あぁ……彼女なら、今日はお休みですわよ。ちゃんと事前に休暇届を出していきましたから」
「珍しいですね。あの人の事だから、例え台風の日でも普通に来そうな感じなのに」
「なんでも、今日はとても大切な用事があると言っていましたわ」
「大切な用事?」
「えぇ……。今日は、彼女にとって最も大切な人の命日らしいですわ……」
「命日……」
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私は、自分の中にある記憶を頼りに、ある場所へと足を運んでいた。
そこは嘗て、私と兄が師匠と一緒に修行をし、暮らしていた場所。
私達兄妹にとって、第二の故郷とも言うべき大切な思い出の地。
「良い天気ですね……」
ちゃんとした名称すらも無い大きな山。
周囲は鬱蒼とした木々に覆われ、お世辞にも整地されているとは言い難い。
そんな場所に、私は一人で立っていた。
自分でも律儀とは思うが、常日頃から礼節を重んじていた師匠に習って、今回だけはメイド服を脱ぎ、その代わりに喪服を着て来ている。
喪服で山登りなんて無謀だと思われるかもしれないが、どのような服装であっても山登り程度は軽くこなせなくては『暗殺拳』を習得するなど夢のまた夢。
事実、修業時代はこれ以上に動きにくい服装で水汲みをやらされた記憶もある。
「矢張り、お前も来ておったのか」
「兄上……と、誰ですか?」
全く気配を隠すことなく、後ろからいつも通りの恰好をした兄上がやって来たが、その隣にはこれまた見覚えの無い人物が。
着物を着てはいるが、兄上顔負けの特徴的なお髭に、これでもかと言わんばかりに鋭い目つき。
まるで、視界に入る物を全て射抜くような、そんな眼。
「む。そうか、貴様は初対面だったか。こやつはな……」
「剛拳。儂を馬鹿にしておるのか? 自分の名ぐらい自分で名乗れるわ」
「そうか?」
兄上の事を名前で呼ぶ。
それだけで、この人物がタダ者じゃない事が窺える。
「ふむ……貴様が剛拳の妹の豪鬼とやらか。成る程、兄に似ていい目をしておる」
「それはどうも」
「儂の名は『風鳴訃堂』。どうやら、不肖の息子や孫が世話になっておるようだな」
「風鳴……。それに、息子や孫という事は、まさか……?」
「貴様の予想通りよ。弦十朗は我が息子、翼は我が孫よ」
「そうでしたか……」
風鳴訃堂……。
こんな人物、原作にいたような……いなかったような?
う~む……どうも記憶が曖昧だ。
「初めまして。剛拳の妹の豪鬼と申します」
「うむ」
それだけかい。と言いたいところだが、この人物に洒落た言葉は期待するだけ無駄な気がする。
「訃堂さんは兄とはお知り合いなのですか?」
「フッ……知り合いなどと、そんな生温い関係ではない。我等は若き頃より互いに高みを目指し幾度となく拳を交えた仲。今風に言えば『ライバル』というものよ」
「ライバル……ですか」
リュウとケンのような関係……には見えないな。
彼等のように青春と友情に満ち溢れた間柄にはとても見えない。
「貴様等の師である『轟鉄』とは儂も少々、親交があってな。ほれ、このように……」
訃堂さんの手には、明らかに高級品と思わしき大吟醸が握られていた。
「生前の奴の大好物を携えて来てやったのよ」
「それはそれは……師に変わってお礼を申します。ありがとうございます」
「気にせずともよい。にしても、お前の妹は兄とは違って、きちんと礼節を重んじる人間のようだな?」
「五月蠅いわい」
「いいえ。訃堂さんの仰る通りです。そもそも、昔から兄上はどうも大雑把なところが……」
「ええい! お前の説教なんぞ真っ平じゃ! それよりも、早く師匠に会いに行くぞ!」
照れ隠しなのか、兄上は師匠の墓がある場所へと走っていってしまった。
「全く……図体ばかり大きくなっても、中身はまだまだ子供のままですね」
「ふっ……剛拳。哀れな奴よ」
兄上。ライバルに笑われてますよ。
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轟鉄。
私と兄の師匠にして、物心つく前に両親を失った私達兄妹を幼い頃から育ててくれた養父のような存在。
そして、私達が今でも最も尊敬し、敬愛している唯一の人間。
本質的には暗殺者であるにも拘らず、私達の事を時には厳しく、時には優しく見守り、導いてくれた。
私が殺意の波動を習得した時も、本気で叱ってくれたのは師匠だけだった。
師匠の墓はとても立派で、どこぞの有名人の墓にも決して負けていない。
これは、訃堂さんと同じように生前から親交のあった数多くの人々からの寄付などで立てられた物で、それだけあの人が色んな人々から愛されていた証拠でもある。
「また来たぞ……師匠」
「懐かしいものよな……」
「……………」
師の墓前にて、私達三人が並び立つ。
山林の奥にある例外的に綺麗に整地された場所に、師の墓は存在する。
後で知った事なのだが、ここには定期的にリュウとケンも墓参りに訪れているらしく、ちゃんと墓の周囲が草むしりされているのは彼等のお蔭だろう。
「あ奴等め……粋な事をしよる」
「彼等らしいです」
「剛拳には勿体ない位の男共よ」
ここに来るまでに川で水を汲んできたので、まずは尺を使って墓にそっと水を掛ける。
「今年は暑くなりそうですからね」
「昔から、師匠は暑がりだったからのう」
「轟鉄よ。今年も貴様の好物を持ってきてやったぞ」
静かにそう呟くと、訃堂さんは一升瓶の蓋を開けて、その中身を墓に掛けていった。
「美味いだろう? お前の為だけに特別に取り寄せた逸品だからな」
先程までの刺々しい空気はどこかに消え、今の訃堂さんは純粋に故人を悼んでいた。
もしかしたら、これこそがこの人の本当の姿なのかもしれない。
「ほれ。お前達も飲め。特別に、この儂が酌をしてやる」
「すまんな」
「ありがとうございます」
本来ならば私が酒を注ぐべきだろうが、ここは訃堂さんの御厚意に甘える事にする。
彼が何処からか出した御猪口を手に取り、それに注がれる日本酒を見つめる。
私の後に兄にも注いでくれたが、兄は注ぎ終わった瞬間にすぐに一口で飲み干してしまった。
「美味いな」
「当然よ。豪鬼、貴様も遠慮せず飲め」
「では……頂きます」
御猪口を両手で持ち、中身をそっと口の中へと入れていく。
僅かな苦みの後に、爽やかな甘みが口の中いっぱいに広がる。
確かにこれはとても美味しいお酒だ。
「豪鬼よ」
「はい?」
「今日、儂は日の国の防人としてではなく、風鳴訃堂という一人の人間として来ている。お前も師弟関係やメイドとしてではなく、轟鉄に育てて貰った一人の人間として墓前に立て」
「一人の人間として……」
訃堂さんに促されるがまま、私は二人よりも一歩前に出て、師の墓の正面に立つ。
(私自身は実際に会った事は無い……。一緒に過ごした『思い出』も無い……。貴方の顔も声も知らない……。そんな私でも……そんな私だからこそ……)
「もう一度だけ……もう一度だけでいいから……貴方に会いたかった……『ありがとう』と言いたかった……」
気が付いた時には、私は涙を流していた。
なんで泣いているのかは自分で分からないけど、この涙は自分では止められそうになかった。
「『お義父さん』と……呼びたかった……」
自分の中にある偽らざる気持ち。
こんな借りものだらけの私でも、記憶の中にいる師匠は御指導してくださるのか……知りたかった……。
最後に、私達は三人で揃って手を合わせてから、師匠の冥福をお祈りした。
どうか……安らかにお眠りください……轟鉄師匠……。
『殺意の波動』と『無の波動』の担い手として、我等兄妹の手で必ずや、人の世を乱す者達から世界を守ってみせます……。
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それからも、私は二課に協力しながらノイズと戦っていった。
いつの間にか普通にギースやベガも一緒に戦うようになり、なし崩し的に二課はシャドルーやハワード・コネクションと協力関係になっていた。
特にベガと奏さんがかなり仲良くなっていて、よく一人でワープ能力を駆使して二課の本部に遊びに来るようになった。
確実にサイコパワーの無駄遣いですよね……悪事に使われるよりはずっとマシですけど。
翼さんと奏さんは、私も驚く程に見事にシンフォギア装者とアーティスト活動を両立させていった。
特に、翼さんはそこに学生である身分も加わるので、『二足の草鞋』ならぬ『三足の草鞋』で頑張っていた。
弱音を吐く事なく邁進し続ける彼女達の頑張りが身を結んだのか、最新シングルが前代未聞の大ヒット。まさかのミリオンヒットを記録した。
そこからはあれよあれよと言う内にツヴァイウィングは世界的な有名人となり、日本にいる全ての歌手の夢である武道館ライブも大成功させた。
その間も、私は地道なメイド活動に勤しんでいた。
ずっと前に私がしたライブ乱入がネット上で凄まじい勢いで拡散され、私の仕事場である『地獄歌』は毎日が満員御礼の状態になった。
売り上げが爆上がりし、店の規模も徐々に拡大。
一時期は店自体が取り潰させる寸前まで追い詰められていたらしいが、私が来たお蔭で見違えるように生まれ変わったと、オーナーもチーフも涙を流しながら喜んでくれた。
私は普通にメイドをしているだけなのだが、それで店が活性化するのならば、それに越した事は無い。
今はまだ一般市民である響さんと未来さんは、今までと変わらない穏やかな毎日を過ごしているようだ。
ただ、響さんの成績が危ないと私に泣きついてきたことが度々あったけど。
なんでも、響さんは進学先に翼さんも在学している『私立リディアン音楽院』にするつもりらしいが、それを実現させる為にはどうしても成績が足りない。
仕方がないので、暇な時は私が、それ以外の時はバイト仲間(東大卒)に頼んで、彼女の勉強を見て貰っている。
その代償として、私に抱き着くのだけは止めて欲しいが。
私も私で色々な変化があり、まず、意外過ぎる人物達と会いまくった。
いずれも『豪鬼』という人物と何らかの形で交流した事がある者達ばかりで、僅か数年で私の顔が世界規模で広くなってしまった。
いや……ストリートファイター関係やカプコン関係、SNK関係ぐらいならまだ分かるんだけど、まさか、あんな人物達とも知り合ってしまうとは……。
私がどんな人々と知り合ったのかは、ここではまだ言えない。
いずれ、嫌でも知るだろうから、その時までどうか待っていて欲しい。
そうして月日が流れ……遂に運命が動き出す。
本当の意味で、この世界の『物語』が始まる。
それは、シンフォギア装者だけでなく、私達『ストリートファイター』の本当の戦いが始まる事も意味していた。
やっと……やっと原作に入れます!
早くクリスやマリア、調と切歌たちとメイド豪鬼を会わせたいな~!
ついでに、色んなキャラも登場予定です。
実は既にもう出演が確定しているキャラがいたりして……。
ヒントは『忍者』。